札幌の繁華街「すすきの」の近くにある原則ご紹介制のワインバーです。フランスワインが中心です。ご予約でお料理もお出しします。
http://t-desk.net/grenier/

  • 19 Jul
    • グリーストラップ

        その名の通り、『油脂捕獲装置』のことだ。   グリーストラップは、調理をする飲食店であればほぼほぼ装備されているはずのもので、油脂類が下水管に直接流れ込むのを防ぐ設備である。   グリーストラップがないと、下水管に流れ込んだ油脂類が経年で管内に付着し、『動脈硬化』のような状態になって、果ては汚水が逆流して床を浸水してしまう。実に恐ろしい光景である。事実、店主の知り合いの店で、そのような惨状を目撃したことがある。かように、飲食店にとってなくてはならないものなのだ。   グリーストラップの構造は実にシンプル。 シンクから流下する汚水をいったん槽に溜め、水と油の比重差を利用して、浮遊した油脂だけを槽内に残留させる仕組みだ。本格的な厨房を備える店では槽も大きく、また床下に埋め込まれているのが一般的。邪魔にならない。しかしながら、当店のようなオフィスビル改装のテナントではそうもいかず、シンクの下に「どでん」と設置されているから目障りこの上ない。   また、グリーストラップは、定期的なメンテナンスを要求する。先述のとおり、油脂類を浮遊させて槽内に「一時的に捕獲」しているので、これらを除去する必要があるのだ。また、槽の底にはヘドロが溜まるため、これらも取り除かなければならない。この作業が、なかなかにしてツライ。臭いもそうだし、油でぎとぎとしているし、なかなかきれいになってくれないのである。夏場のトラップ清掃は、苦痛以外の何者でもない。   今年、店が6周年を迎えるにあたり、はじめて専門の業者さんにトラップ清掃を依頼してみた。ちょっとしたゼイタクだ。当日は作業員の方が単独でいらして、30分ほどでぴかぴかにしてくれた。なんでも、市販されていない『特殊な薬剤』を使って油を溶かし、水圧で一気に流してしまうのだとか。清掃後は、溜まった水が透明で、槽の底部を目視することができた。まるで新品。感動。そのクスリ、売ってくれ。   …というように、店を健全に維持していくためにはそれなりにいろいろな仕事があるわけで、それらの日々の小さな積み重ねが、結果的にお客様の満足度に繋がっていくと信じている。つまり、見えないところでも手を抜いてはいけない、ということだ。   それにしても、業者さんのトラップ清掃には、すっかり味をしめてしまった。決してお安くはないけれど、あそこまでキレイになるならまた近々依頼してしまおうかと、ついつい心が揺れる。いかん、いかん。   というわけで、そろそろトラップ清掃をしなくちゃなー、ヤダなーと思い悩むついでに、小blogでもグリーストラップを話題にしてみたわけなのである。  

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  • 07 Jul
    • これは『買ってはいけない』

        キャンプ用品の話だ。   店主はキャンプが大好きだ。東京在住時には一切関心がなく、経験も皆無だったが、北海道に移住して10年ほど経った頃、友人の導きでこの世界にハマった。それからすでに約15年のキャリアを積み、多種のキャンプ用品に触れてそれなりの知見ができたので、例によって新しいテーマを立ててブログネタにしてみる。   で、いきなり『買ってはいけない』ときた。   お断りしておくが、この記事はあくまで「個人的感想」により書かれている。世の中にはいろんな主観の持ち主がいるので、中には読んで気分を害す方もおられようが、そういう方はどうか、スルーしてください。    ビッグマン(BIGMAN) インフレータブルマット    ここ数年、自身のキャンプ装備簡素化の一環として車中泊をすることが増えたため、ラゲッジスペースに敷けるスリープマットを探していた。空気注入式のテントマットはすでに所有しているが、快適ではあるもののサイズが大きすぎるのと、使用の度に空気を入れたり抜いたりするのが億劫になってきたのが動機だ。   検索してみると、『インフレータブルマット』というものが紹介されているではないか。日本語訳すれば『自動膨張式』ということで、マットを展開してバルブを開くと、自然に空気が充填され、スリープマットになるというもの。収納時は丸めながら空気を抜くとコンパクトに納まり携帯性も高い。これしかない。   品質に疑念を持ちつつも、Amazonでくだんの商品を発見し、さらに「送料・税込¥1,780」という破格のショップがあったので、2個まとめて注文。商品は、3日ほど後に無事、到着した。   梱包を解き、マットを出してみる。ショボいペライチの取り扱い説明書は無視して、さっそく展開およびバルブ解放。じっと待つ。じっと待つが…なにも変わらない。おやおや。 そこで初めて説明書に目を通す。いわく、「長期間収納されていた場合は膨らみづらい」とある。さらに、「バルブから息を吹き込んで膨らませる」よう指示があった。実践してみる。なるほど、空気が入り、マットが膨らんだ。説明書にはなかったが、ピロー部は最初から空気を注入する仕様になっている。 寝てみる。臀部が重みで沈み込み、臀部に限っては空気のサポートを受けている感覚はない。高いピローと合わせて、体がVの字になった状態で寝ることになりそうだ。体を動かすと空気が移動して、なんだかふわふわした感じがする。それでも、床に直接寝るよりはだいぶ「マシ」であろう。寝心地はやや難ありだが、価格を考えれば必要十分ではないかということで、その日は収納の上、次回のキャンプに備えた。   そして、キャンプ当日。シャトルのラゲッジにマットを展開し、例によってバルブから息を吹き込んで膨らませた。昼から酒を飲んでいい感じになっていたので、早めに寝袋にくるまり眠りに落ちる。 深夜、違和感を覚えて目が醒めた。ピローがしぼんで、頭部が下がっていたのだ。マットの空気感もなんだか希薄。仕方ないので、パーカーを丸めて頭の下に敷き、枕代りに。マットが硬いのはもはやいかんともしがたく、そのまま耐えることにして再び寝る。…という具合だったので、まぁ、清々しいとは程遠い朝を迎えることとなった。   ちなみに、2個購入したうちのひとつは、その日のキャンプ仲間にもったいぶって貸与したのだが、こちらはピローは健在だったものの、マットのほうは空気が完全に抜けており、もはやただの安っぽい迷彩柄のビニールの敷物と化していた。どうやらその方は、ほとんど眠れなかったらしい。なんだか却って悪いことをしたみたいだ。   めちゃくちゃ腹が立ったので、その日のうちにキャンプ場のゴミステーションにふたつとも廃棄して帰ってきた。   という訳で、久々にとんでもない買い物をしてしまった。こういうのを、『安物買いの銭失い』というのであろう。いまさらだがこの商品を検索して、複数のショップのレビューを読むと、賛否両論が際立っていた。店主同様、「膨らまない」「破裂した」「役に立たない」などのコメントが目立つ。一方で、「この価格でこれなら十分」という賞賛も。十人十色とはいうものの、生物学的かつ人間工学的にはそこまで乖離した個人差があるとは思えないので、これは、多分、このメーカーの品質のバラツキなのではないかと類推される。店主は、2個購入して、100%ロスだったという顛末だ。最初からレビューを研究して、最終判断を下すべきであった。自業自得である。   実は、この反省を踏まえ、すぐに別のスリープマット購入に踏み切った。サーマレスト(Thermarest)社のトレイルスカウトという商品だ。価格は¥8,000(!)ほどするものの、キャンパーたちからかなり高い評価を受けている定番商品だ。これなら間違いないだろう。最初からそうしろよ、という話だ。     失敗は成功の素だ。ブランド品を買うという選択が賢明なのはわかるが、もしかしたら同等の満足感をより低価格で得られるかも、というチャレンジもある意味でキャンプグッズ選びの楽しみのひとつだし、さらなるキャンプスキル向上のための経験値にもつながるんじゃなかろうかと思うわけだ。 …もやはここまでくると「負け惜しみ」以外のなにものでもないが、今回の件はもう、こうして自身の愚かさを慰めてみるほかないのである。   マジで腹立った! くそー、ビッグマンめ。    

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  • 03 Jul
    • EZOBITO  -えぞびと-

          先月、北海道をテーマにしたwebディアを、新規に立ち上げた。   EZOBITO(えぞびと)というタイトルのエッセイ集で、「北海道ゆかりの人々が、北海道のさまざまなテーマについて、自由にエッセイを書く」というのがテーマだ。   https://www.ezobito.jp/   毎週水曜、1点のエッセイを追加していく予定。それぞれのエッセイについて、札幌在住の画家、蒲原みどり(かんばら みどり)さんが雰囲気のある挿絵を描き下ろしてくれることになっている。   編集スタッフには、札幌でご活躍のフードライター、小西由稀(こにし ゆき)さんをお招きした。彼女は、食を中心に、全道をまたにかけた取材活動を精力的にこなしており、人脈も太い。また、サイトのテクニカルアドバイスは、北海道ECサービス代表の栄花 均(えいが ひとし)さんにお願いしている。おふたりとも、卓越したスキルに加え経験豊富で心強い。   エッセイの執筆をお願いするのは、北海道出身もしくは在住の「北海道にゆかりのある」方々。できるだけ職業やプロフィールがバラけるように人選させていただいている。原則、毎回書き手を変えていくつもりで、ほとんどは文章を生業としていない一般人だ。現時点で9点のエッセイを掲載中。うち4点は関係者なので、実質5名分の「北海道にゆかりのある」エッセイが紹介されていることになる。   このエッセイ集の目的は、ずばり「地道に北海道のファンを増やす」ということ。店主自身が、北海道に魅せられて東京から移住してきた『北海道ファン』だ。このエッセイを通じて、ひとりでも多くの『北海道ファン』が増えてくれれば本望だし、逆に道産子の方々にとっても、北海道の素晴らしさを再認識する機会になればと願っている。そのためには、継続が必要だ。 幸い、運営母体である『株式会社 山ト小笠原商店』様には当企画にご賛同いただき、最低でも1年以上の全面的サポートをお約束いただいている。同社代表取締役社長の小笠原 航(おがさわら わたる)さんには、ひたすら感謝、感謝である。いつも偉そうなことばかりいってスミマセン。   とはいえ、SNS全盛のイージーな情報伝達が主流の世の中にあって、タレントでもない「普通の人々」が書く長文を誰が読むんだ、なんていう嘲笑もいただけそうだ。正直、店主もそう思わないではない。しかし、そこをあえてチャレンジしていくところに意義を感じている。「もしかして、なんかいいかんじなんじゃないの?」あたりの評価をじわじわと狙いたいところだ。   最後に宣伝。 まずは、蒲原さんのイラストを見にきてください。とっても雰囲気のある鉛筆画で、これを毎週楽しみにしてくれるだけでもいいかも。 Facebookページもあるので、コメントやご意見をいただければ拝読します。 気に入ってくれたら、お友達にも拡散してください。   よろしくお願いします!   EZOBITOエッセイ集 ⇒ https://www.ezobito.jp/ 公式Facebookページ ⇒ https://www.facebook.com/ezobito/          

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  • 26 Jun
    • クリミナルズ La Peur de L'au

        新しく、映画についてのカテゴリを設けてみた。   店主は、映画マニアではない。監督や俳優の名前は、誰でも知っているような特定の有名人以外はちんぷんかんぷんだし、作品を深堀りして「行間を読む」こともない。ましてや、映画館に足を運ぶのは、もはや人生の一部と化している『STAR WARS』の封切のときくらいか。   でも映画は習慣的に観る。10年近く前、テニスグランドスラム大会のライブ中継観たさに加入したWOWOWが、あるときから3チャネル化され、映画専用チャネルができたのをきっかけに、時間が許す限り鑑賞するようになったのだ。   WOWOWも加入者数拡大のために、プログラムの多様化に必死だ。映画専用チャネルでは『STAR WARS』などのメジャーなハリウッド映画はもちろん、『ディズニー特集』、『香港ノワール特集』、『カンヌ映画祭受賞作品集』、『男はつらいよ全作品一挙放送!』…などなど、かなり工夫を凝らしていて興味深い。視聴者からのリクエストに応えるプログラムも、定期的に組まれている。   で、最近、WOWOWが紹介する「メジャーでなない」秀作にハマっている。   それは、主に北欧だったりスペインだったりドイツだったりベルギーだったり…、いわゆる『ハリウッドもの』でなく、映画好きならふつうに知ってるのかもしれないけど一般の人はそれこそお目にかかる機会すらないのでは的な、決して「メジャーでなない」作品のことだ。 WOWOWの番宣や、番組表で気になったタイトルを見つけると、とりあえず録画しておくことにしている。いつ観られるかはわからないが、録画しておけば、いつかは観られる。   …ということで、最近観て店主的にヒットした映画が、掲題の『クリミナルズ La Peur de L'au(ラ・プール・ドゥ・ロ)』だ。2011年のカナダ作で、フランス語。原題の直訳は『水の恐怖』ということになる犯罪サスペンス映画だ。ご存知のとおり、カナダの公用語はフランス語と英語だが、東部では主にフランス語が多用される。     舞台は、カナダ東端部のケベック州、セントローレンス湾に浮かぶマドレーヌ諸島のイル・ド・キャップ・オ・ムール市。風光明媚だがどこか寒々しく寂しくて、いかにも、漁業と観光で暮らす北の島嶼部(とうしょぶ)という風情だ。主人公は、地元警察のアンドレ・シュプレナン巡査部長。     ある夜、「島で初めて」の殺人事件が発生する。市長の、美形だが素行不良のひとり娘ロザリーが絞殺のうえレイプされ、海岸の崖下に遺棄された。アンドレは初動捜査に乗り出すが、署長はモントリオール署の敏腕捜査官ジングラに応援を請い、捜査の指揮を委ねる。ジングラの緻密なプロファイリングにより、レイプ前歴のある容疑者が特定されていくのだが…。   …話の筋としてはこれくらい説明すれば十分で、この作品のキモは、美しい自然と島嶼部で生きる人々の人間模様の描写、そして、なによりもキャストのキャラクター設定にあると感じている。   主人公のアンドレは、モントリオール在住の妻と別居中。同居する16歳の娘はヤクに手を出して荒れ放題。ここまでは、わりとありがちな設定だが、なんと彼はうつ病患者で、水が怖い。さらに体型が「ぽっちゃり」していて、表情もどこか気の弱そうな印象なのだ。犯罪サスペンスというよりは、ハートフルドラマがお似合いな感じで、まず、このギャップがいい。 さらに、店主が特に気に入っているのが、アンドレの助手を務める新米女性巡査サボア。これがまた、すごくいい味を出している。美人ではないが、なんとも不思議な魅力を発散する役だ。彼女は、こんな頼りなさげなアンドレを心底尊敬し、そしてなんと本気で惚れているのである。   作品には、次々と浮かび上がる容疑者とその動機設定に加え、住民たちのしがらみにまみれた相関関係、島に巣食う麻薬取引の陰、微妙な男女の恋愛問題、親子の人間ドラマなどなど、盛りだくさんな内容がプロットされている。もちろん、アンドレが真犯人を特定していくプロセスはスリリングで、ラストにはちょっとしたサプライズも用意されるなど、脚本も興味深いから単純に鑑賞しても面白い作品なのではないだろうか。   「店主は映画マニアではない」、と冒頭で宣言したが、実は、この作品はこれまで立て続けに3回もリピートした。あまりに店が静かだった夜、ついついWOWOWのオンデマンド配信を活用してしまったのだ。そんな暇があったら仕込みをするなり店を掃除するなりグラスを磨くなりなんなりしろよと自分でも思うのだが、つまり、それくらい繰り返しみたくなる「メジャーでなない」秀作だ、ということなのである。     いかがでしょう。観てみたくなったかな?    

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  • 12 Jun
    • BBQで上手に塊肉を焼きたいって?

        北海道でも、アウトドアが快適な季節になってきた。   もっとも、店主はキャンプ場がオープンする5月初旬からクローズする9月末ぎりぎりまで、時間の許す限りキャンプを営んで遊んでいるから、正確には「なってきた」ではなく、「なっている」だ。毎週休みがくると、そわそわする。   キャンプの醍醐味は、『自然に囲まれてぼーっとする幸せ』、『昼から飲み放題のビール&ワイン』、『星空の下のキャンプファイア』、それと『炭火で焼く塊肉』ではなかろうか。   炭火で焼けば、肉がぐんとおいしくなるのは当たり前。スーパーで売っている『焼肉セット』もお手軽でいいけれど、ここはぜひ、でっかい塊肉の調理に挑戦してもらいたい。   塊肉は、対面販売の肉店であれば間違いなく手に入る。確実を期したい人は、事前に予約をしておけば精神衛生上もよいだろう。スーパーの売場であっても、バックヤードがある店舗ならよっぽどのことがないかぎり予約販売の対応をしてくれるはずだ。 部位は、炭火でダイナミックに焼くなら、『もも肉』がおすすめ。脂身が少ない赤身の肉がよい。焼きやすい大きさは600〜800g程度か。   上手に焼くコツは… ●肉は常温に戻しておく ●炭火はできる限り強力にしておく(少し煽げばすぐ業火になるくらい) ●肉の全面に塩胡椒を「これでもか」とまぶして20分ほど置く(置かなくてもよい) ●浮いてきた水分はペーパーで吸い取っておく ●肉は網の上に放置せず面を変えながら均一に「よく」焼いていく ●全体に焦げる寸前まで焼きこんだらアルミホイルにくるんで網の端で休ませる ●よく切れる包丁を準備しておく ●焼きあがってもすぐには切らない   …と、まぁ、こんなところだろうか。塩胡椒は「えー、こんなにしていいの」というくらい振る。もちろん程度問題はあるけれど、こんがり焼けて塩気のきいた周囲部がこれまたうまいのだ。 アルミホイルに包んでからは、直火は避け、手をかざして温かいくらいの場所で、ときどき向きを変えながら休ませる。周囲を焼いただけでは、中心部はまだ血も滴る生の状態だから、余熱でゆっくりと火を入れていくためだ。 実は、この熱の入れ加減が成否を決める「すべて」と言えるのだが、これはもう、肉の状態や火力によってマチマチなので、一概に「何分」といえないのが難しいところ。180℃のオーブンなら15〜20分程度が目安なんだが…。   熱の入り方を確かめる方法として、金串を中心部まで刺して5秒ほど待ち、引き抜いて唇に当てるやり方がある。微妙なところだが、体温よりやや低い状態でミディアムレア。熱かったら入れすぎだ。プロは肉を触って確認する。肉が膨らんで、指で押すと反発する力加減で状態を理解する。   火入れが確認できたら、さらに常温で休ませよう。温かい状態で食べたいところだが、ローストビーフは常温にしたほうが肉が落ち着いておいしくなる。味が足りなければ、マスタードやわさび醤油をつけて。できるだけ薄く切って、箸で食べられるようにしてあげると、さらにあなたの株が上昇することだろう。   当店でローストビーフを焼くときは、肉の卸業者さんから『十勝ハーブ牛』を仕入れている。『十勝ハーブ牛』は、黒毛和牛とホルスタインの交雑種で、上士幌町の肥育業者が事業化したブランド。赤身を重視した肉質を追求している。いわゆる『A5』などの格付けとは関係ないのだが、肉の味が濃く、歯ごたえも適当で、コストバランスが比較的よいという長所がある。   …というわけで、こういうテーマについて書いていると、無性にキャンプにでかけたくなる。しかし、今月の定休日はすでに予定が埋まってしまった。うーむ。   こうなったら、平日に臨時休業するしかないか。ご来店いただき、たまたま臨時休業していたら、どこぞのキャンプ場で呑んだくれていると思って許してください。    

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  • 04 Jun
    • 帰国子女の悲哀

        店主は、帰国子女である。   小2から小6の約4年半ほど(1972〜1976)、ベルギーの首都、ブリュッセル(Bruxelles)に滞在した。父は当時大蔵官僚で国際金融の仕事をしており、所定の出世コースとして外務省への出向がプログラムされていたのだ。   赴任先はまちまちで、それこそ日本と外交関係のある世界中の国々が対象。そこからヨーロッパを選択できたということは、エリートの中でも力がある証拠らしい。実際のところ、父はその後、日本の好景気の波に乗って局長まで登りつめ、金融業界の天地を揺るがすバブル崩壊前夜に退官した。実に、運のよい官僚人生である。   いまでこそ在外邦人は130万を超えるが、70年代においては、まだ珍しい存在だった(30万人くらい?)。ヨーロッパの人々にとって、東洋人とえば『シノワ(Chinois)』であって、つまり中国人。しかも、実物を見る機会はほとんどないから、街を歩くと振り返りつつガン見されたり、子供に指をさされたりして傷ついたものである。珍獣じゃないっつーの。   傑作なのは、学校だ。両親いわく、「あの頃ブリュッセルに日本人学校はなかった」ということで、渡航した年の9月から、現地の小学校(男子校)に放り込まれてしまった。もちろん、フランス語の読み書きはまったくできない。校内に日本人はおろか、東洋人ですら自分だけ。現代用語を引用すれば、「アウェイ感満載」といったところか。   店主は、そもそも好都合な記憶中枢を持っており、いやなことはほぼ忘れてしまうという長所(?)がある。…という理由ゆえ、当時、苦労したという記憶がない。記憶はないが、こんなシチュエーションがつらくないわけがない。だいぶあとになって母親が回顧するに、「学校に行きたくないと毎日大暴れした」らしい。当たり前だ。乱暴すぎる。   それでも、半年後にはフツーに友人たちと遊んでいたようだ。子供の言語に理屈はいらない。ほどなく地元の小学校から、フランス政府が運営する『リセ・フランセ(Lycee Francais)』に転校してさらにフランス語に磨きをかけた。帰国する頃には、4歳年上の姉との会話が日本語とフランス語のハイブリッドになっていて、母は深刻に行く末を憂いだという。   そして、帰国。ここで店主の運命は大きく舵を切られることとなる。   前述のとおり、店主の父親は、東大法科卒の国家権力のエリートである。しかも、驚くことに、母親も東大英文科卒というインテリだ。親は子供に自身を投影する。 「パパのように偉くなりなさい」。かくして、店主は両親の期待と願望を一身に背負って、日本的教育の渦中に引き戻されてしまった。 ちなみに、4歳年上の姉は帰国時には高1で、日本の高校の受け入れがなかったという理由から、暁星学園内に設立された『リセ・フランコ・ジャポネ(Lycee Franco-Japonais)』に編入され、フランス語教育を継続した。現在はフリーの仏語通訳として活躍している(仕事承ります)。   人間の価値観は、主に初等教育によって形成される。店主は、この最も大切な時期を国外で過ごした。そして、帰国して四谷の区立小学校に編入され、6年生の2学期に『転校生』としてデビューしてすぐ、猛烈な違和感に襲われることとなった。 いまの時代、もはや帰国子女は珍しくないと思うが、新宿区の小学校、港区の中学校を通じて、学年はもとより、全校内でも帰国子女は自分だけだった。生徒たちはもちろんのこと、教育者たちにとっても、帰国子女の扱いは初めてだったはずだ。   小中を通して、とにかく、クラスの中で「浮きまくって」いたのは間違いない。なにか意見を発言すると、他の生徒から「生意気だ!」となじられる。家庭科の授業で、教師が「ジーンズに革靴は合わない」と教えるので、そんなことはないと反論すると怒られる。雑巾の縫い方を知らないと、教えてくれるのではなく「そんなことも知らないのか」と怒られる。あの頃は、どうしてこんなにも違和感があるのか理解できなかった。理解できないまま、なんとか順応しようと必死だったが、敵わなかった。   中2のとき、いわゆる『いじめ』に合った。きっかけは、当時仲の良かった『F』という男子生徒とのトラブルだ。詳細はもはや記憶にないが、他愛もないことで議論をしていて『F』が怒り、付き合いのあった番長グループを巻き込んで、「あいつは生意気だからみんなでシカトしよう」というふうに結託したものだ。実に陰険なやり口だ。   たしかに、自分は「生意気」な性格だと思う。言いたいことは遠慮なく発言するし、言い方も攻撃的になりがちだ。自分の価値観を主張して、迎合することをしない。もちろん、これらは生まれ持った気性もあると思うが、やはり、在外時代、後天的に植えつけられたものだと自覚している。   リセ・フランセでは、教師から「他人と違うことの美しさ」や「潔い自己主張」を強く奨励されるのだ。   その後については、既発の記事にも書いたしあまりにも長文になってきているしということで割愛するが、いまでも、日本人に戻りきれていない自分を発見することしばしばだ。少なからず商売にも影響している気がしていて、それなりに気を遣っているつもりではあるものの、治らないものは治らないのだから仕方がない。   自分の非を徹底的に認めないのもフランス人流である。   そうはいいつつ、自分は帰国子女でよかったと、マジで思う。誰もが経験できることではないし、なにより、密かにこんな自分の性格が気に入っているからだ。親の意に沿えなかったばかりか、結果的にはドロップアウトという社会の落伍者になるきっかけにもなったわけだけれど、それらもぜんぶ含めて、この境遇が気に入っているのだ。   惜しむらくは、言語である。帰国時には日本語よりもフランス語の方が「すらり」と出てくるほどだったのに、いまや「カタコト」。20年近く前、札幌の『アリアンシス・フランセーズ』に通った時期もあったが、仕事の繁忙に負けてフェイドアウトしてしまった。歪んだ性格はともかく、言語についてはせっかくの素地を活かして、周囲から敬服されるようになりたいものだ、なーんて考えたりしている。     …というわけで、帰国子女のあなたは、どんな半生だったでしょうか?        

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  • 25 May
    • 昼の仕事はこんなこと <撮影編>

        前回の記事で、「昼も仕事しなきゃ食えない」的な泣き言を吐きまくったので、今回は、「では、昼はどんな仕事をしているのか」という一例を記事にしてみる。   まずは、撮影の仕事だ。   店主は、カメラマンではない。結果的に写真を撮って、それでギャラを頂戴しているからにはカメラマンだろう、といわれるかもしれないが、自身には『職業カメラマン』という自覚はない。あくまで「制作の一環として写真も撮っちゃってます、すみません」という認識だ。   背景を詳しく書くと長くなるので手短かにまとめると、店主は高校を中退して東京でドロップアウト生活を送っていた1980年代、アルバイト先の同僚の影響でグラフィックデザイナーを志し、タコ部屋的デザイン事務所で修業しながら夜間の美術専門学校を卒業した。そのタコ部屋が経営難から事務所を畳むことにり、やむを得ず転職活動をしたところ株式会社リクルートという大会社に奇跡的に拾われ、ここで広告ディレクターを皮切りに、プロデューサー、エディター、マーケッターを歴任し、札幌支社への異動、旅行情報誌の立ち上げ、食の通販ムックの出版責任者といった好き放題な経験をさせていただき、40歳で独立、制作事務所を起業した。 つまり、ロットリング、カラス口、溝引き、ペーセメ、ペコペコなどを駆使した版下制作から情報誌の編集責任者、はてはエリア・マーケティングの責任者まで、20年ほどの間に、相当に幅広い業界業務に携わることができたのだ。   その結果、制作業務全般にわたり、高度な『器用貧乏的スキル』を身につけたのである。学校の成績で言えば、「100点や90点は取れないけれど、どの教科もどうやら及第レベルらしい」といったところか。 クライアントにしてみれば、企画から取材、撮影、デザインまで丸投げできて楽チンだし、事務所はほとんど外注しないで済むから、利益率がハンパなく高い。外注ディレクションがないということは、制作ポリシーの一貫性が保持され、結果的にハイクオリティが狙えるというメリットもある。     撮影にまつわるスキルは、『北海道の旅行情報誌』の編集デスク時代に得た。 同誌の編集部は大会社の中でもかなり「ワケあり」な組織だったため、使える編集予算が極めて少なく、編集担当が取材に赴く場合は編集業務のほかに「書くか」「撮るか」のどちらか、あるいはその両方をこなさなければならなかった。ほかの編集者はみな「書く」を選択する中、店主はあえて「撮る」ほうを選んだのだ。そこにも諸事情があるのだが、ますます話が長くなるので、この項はまた別の機会に。   当時、印刷用の写真は『リバーサルフィルム(いわゆるポジフィルム)』で撮影する必要があった。リバーサルフィルムの撮影は難しい。ネガフィルムは「紙焼き」する段階で明暗やコントラストをある程度調整できるが、リバーサルの現像は「ほぼ一発」と考えて相違ない。つまり、現場でライティングなどを完璧に近く決めないと、まったく素材として利用できないリスクがあるのだ。当時、デジタルカメラはほんの一部の超高級カメラ(100万円以上!)のみで、まだまだフィルム撮影が全盛だったのである。   ここで登場するのが『師匠』である。『師匠』なくしていまの自分はない、といっても過言ではない恩人だ。『師匠』は、ベテランの商業カメラマンで、自前のスタジオとスタッフ数名を擁する札幌の業界の大御所。札幌に移住したての25年ほど前、ひょんなことから知り合い、かわいがってもらったついでに、図々しくも、さまざまな撮影のノウハウを伝授いただいた。     ▲師匠の写真集。ここ数年は花に特化した仕事をなさっている 岡本和行『花すがた』   「暗い店内を均一に明るく撮る方法」とか、「料理がおいしそうに見える撮り方」とか、「持参する機材は最低限にして現場にあるものを活用しろ」とか、ロケに対応した実践的なテクニックを、実演付きで詳細に指導してくれたものである。おかげで、店主が撮影した写真は、無事、数万の読者の目にするところとなったわけだ。     現在の撮影の仕事の内訳は、クライアントの業態の関係で、ほぼ食品関係。中には調理が必要なものもあり、かつての事務所にもそれに対応した調理道具が揃っていた。 いまは、店の中で機材を広げて撮影している。調理設備はプロ並みである(当たり前か)。   ▲トップの画像の撮影風景。この季節、日中の店内は暑いのでこの格好   撮影の仕事は楽しい。食品については、それが「おいしそう」に見える必要があって、そのための工夫をあれやこれや考えながらファインダーを覗く。本格的な料理撮影になると、実際に食べておいしい状態と、写真で「おいしそう」に見える状態がぜんぜん違うケースも多くて、その辺りが腕の見せ所、ということになる。   もっとも、しょせんは「器用貧乏的スキル」の延長。この仕事だけで食べている「プロ」のアウトプットと比べると、その足元にも及ばないのは歴然なのだが…。     夜の仕事だけで食べていければ、と思う反面、昼の仕事は脳みその違うリソースを使うだけに気持ちの切り替えになるから、経済的な理由だけでなく、精神的な支えとして、これからも続けていければと願ってやまない。    

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  • 12 May
    • 気づけば6周年だったという件

        5/10で、ワインバーAu Grenier(オ・グルニエ)の、開業6周年を迎えた。   実のところ、当日の夜になるまでその事実をすっかり失念していて、当店非常勤スタッフの『ソムリエゆーこりん』もやっぱりそれを忘れていて、結局、なにもできないまま、大切な周年記念日を通常営業で過ごしてしまった。マヌケである。   それにしても、6年もやっていると、それなりにいろいろと「サマ」になってくるものだ。売り上げの低空飛行が慢性化していてアタマが痛いということ以外は、わりと平穏無事である。   よく、「3年もてば10年イケる」とか、そんな同業者の励ましを耳にする。しかし、実のところ、当店がここまで続けてこられたのは、なにより「借金がない」、という優位性の存在に尽きる。これには、サラリーマン時代の高給と退職金、さらに退職後に起業した広告制作業でかなり利益が出ていて、それをセコく蓄積してきたという背景がある。   とはいうものの、開業以来、収支はかなり厳しい状態で、このままでは未来永劫、初期投資回収の見通しが立たないばかりか、店の利益だけでは家計は赤字、というのが実情だ。   幸い、昼の広告制作業のほうも、実は細々と継続していて、これが生活費の貴重な支えになっている。ありがたいことに、昨年後半あたりから毎月コンスタントに受注が入るようになり、額も増加傾向にある。目下、安定したレギュラー契約が取れるかもしれない勢いだ。   こうしてみると、商売の成り行きとは皮肉なものである。   思い起こせば、Au Grenierの開業を決意したのは、広告業のメインクライアントから、発注の完全ストップを宣告されたタイミングだった。47歳の晩夏のことである。 そもそも、「50歳になったらワインバーをやる」と目標を設定していたので、計画を2年ほど前倒しして、2011年の5月に開業に至った。   開業初年度は、初期投資の減価償却費を除いても、大幅な赤字を計上した。次年度でやや改善はしたものの、引き続きの赤字。3年目、一念発起して、ワイン会などの企画を積極的に展開した結果、客足が伸びて初の単年度黒字を達成。しかし、好調も束の間、開業3周年を迎える直前、娘が重度の難病に冒され、低下する気力と比例して業績が急降下。そこから毎年、少しずつ挽回はしているものの、3年目のような勢いを回復できないまま、あがき続けている。そして、7年目の今年は、また「踊り場」に陥ったようなジリ貧状態だ。   …で、このタイミングで、昼の仕事のオファーが本格化している。しゃかりきに営業活動を展開したわけではない。ただ、自然の流れでそうなりつつある。 かつて、昼の仕事が切れたから夜の仕事を起業したのに、夜の仕事が低迷したら、こんどは昼の仕事が増えてきた。実に、皮肉なものである。     このありがたいオファーを受けるにしても、「昼の仕事が増えるから夜は手を抜こう」、ということではない。実力不足といってしまえばそれまでだが、店の経営を継続し、品質を維持するためにも、『もうひとつのエンジン』が必要なのだ。     …というわけで、このありがたい皮肉に身を任せて、これからも精一杯やっていこうと心に誓う、6周年の夜なのであった。              

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  • 25 Apr
    • Helinox のチェアがスゲーという話

        ある日アポイント先に向かう途中、ふと立ち寄ったmont-bellのショールームで、神のようなアウトドア・チェアを発見し、迷わず速攻で購入した。   Helinoxの新製品『チェアツー』である。   Helinox(ヘリノックス)とは、韓国のテントポールメーカーDAC社が、2009年に立ち上げたアウトドア・ファニチャのブランドだ。 その最大の特徴は、テントポールの設計・製造で培ったノウハウを活かし、極めて軽量コンパクトに仕上がっていること。チェアシリーズ中で比較的大柄の『チェアツー』でさえ重量はわずか1kg強。収納サイズも大きめのウェストポーチ程度といったところで、すでにこの時点ですばらしく画期的である。   実際に展開してみると、なるほど、ポールが勝手にさくさくと連結され、動きがたいへんスムーズ。組みあがった骨組みに、ナイロンキャンバスのシートをはめ込む構造になっている。一般的なフォールディングチェアと比較すると、ワンタッチで展開とはいかないものの、キャンプでひんぱんに出したりしまったりを繰り返すこともなかろうから、これはさして問題にならない。   驚きなのは、その座り心地だ。   実は、たった今も『チェアツー』に座って、ゆらゆらと揺れながらこの記事を書いている。試しに組み立てて座ってみたところ、あまりに気持ち良いので、そのまま居間に置きっぱなしなのだ。 そのうち、妻に小言を言われるに違いない。   ▲撮影用にベランダに出してみた。これからの季節は気持ち良さそうだ *ロッキング・フットは別売     ところで、この記事を書くにあたり、DAC社のことを調べていて、どこの国のメーカーなのかがなかなか判明しなかった。公式サイトも無国籍なかんじだ。 調べを進めるうち、どうやら韓国のメーカーだということがわかったのだが、『2ちゃんねる』的なサイトでは、相変わらず嫌韓的な書き込みが目について気が滅入った。   この、やや難しいお隣の国とは、いろいろな摩擦や行き違いが後を絶たないのは事実ではある。しかし、「オトナな日本人」を自覚するのであれば、それがどこの国の製造物であろうとも、優れたものは素直に取り入れるくらいの、おおらかな気持ちを大切にしたいものだ。   …そんなことを、ゆらゆらしながら考えてみる、早春の昼下がりなのであった。    

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  • 17 Apr
    • 当世流行のメイクで発見したこと

      店主には、17歳になるひとり娘がいる。   とある事情により、小学校3年生(9歳)の夏からUSA認定の北海道インターナショナルスクール(H.I.S)に転校させてみたところ、親の思惑どおり、ここまできわめて自由奔放に育ってくれている。   同スクールは、当たり前だが実にアメリカのパブリックスクールらしく、生徒の人種や宗教も雑多。校則は、必要最低限以上はあってないようなものだから、当家の娘も昨年あたりから髪を脱色するわ、ピアス穴は開けるわで、毎朝慌ただしい中、きっちり身だしなみとメイクを整えてから登校するようになった。もちろん、両親公認のもと、である。   年頃の娘がいると、週末に札幌中心街を行き交う、同世代の少女たちのファッションやメイクに、ついつい目が行ってしまうものだ。そんな中、昨年あたりから急増しているメイクが、ずっと気になって仕方がない。   ▲『ドファサルメイク』のサンプル(娘じゃないよ)。この子は似合っている     娘にヒアリングしてみたところ、そのメイクは韓国の流行を輸入したもので、『ドファサルメイク』または『オルチャンメイク』というらしい。日本でも若年層を中心に大流行しているとのことだった。なるほど、よく見かけるわけだ。   ちなみに、『ドファサル』とは、韓国語で「すべての男を魅了する」という意味なのだそうだ。   このメイクの特徴は、肌はとにかく白く、チークやアイシャドウに淡く赤を効かせ、ものすごく赤いリップで仕上げる、というもの。 リップの塗り方に特徴があり、唇と肌の継ぎ目をぼかして、唇の内側だけに真っ赤なティント(というようだ…)を塗るのだとか。   遠目に見ると、なんだか『おちょぼ口』のように見えなくもない。浮世絵? 舞妓さん?   さらに、『ドファサルメイク』の少女たちは、ファッションも類似する傾向にある(札幌だけかもしれないけど)。 GUなどのファストブランドがアピールしているワイドパンツに、MA−1やスタジャンを薄手にしたようなジャンパーをはおり、足元はスニーカー。キャップやニット帽をかぶっている子もいる。髪はたいていブリーチされた明るめの色で、おかっぱだったり、前髪を垂らしてうしろでまとめたり、とかとか…。   みな同じように見えるのは、気のせいなのか?      ▲ワイドパンツファッション。この子は似合っている   こういう「同じような顔かたち」をした少女たちが、楽しそうに街を闊歩している姿は、店主にとって「なんか不思議な、どっかで見たような…」的な既視感をもたらし続けていて、なんだかずっと気になっていた。   …が、つい先日、この既視感の出どころを発見したのだ。     これだっ!       『鳥毛立女屏風(とりげりつじょのびょうぶ)』。   いわずと知れた日本の至宝だ。東大寺正倉院(しょうそういん)に収蔵される、西暦756年頃の奈良時代の作品で、屏風は6扇(せん)で構成され、1扇ずつ樹木を背にして立つ唐美人が描かれている。作者は不明。     「ファッションのトレンドは一定期間で巡る」というのは、周知の事実だ。きっと、流行をしかける側が、そのへんを計算しつつ発信しているのだろう。 実際、最近の娘のワードローブの中には、80年代の『シャツイン・ハイウェスト』や『ストーンウオッシュ・デニム』など、それらが現役だった時代の、店主にとってはもはや思い出したくもない、恥ずかしすぎるアイテムが含まれている。   しかし、『ドファサルメイク』は、どうやらそんなみみっちい循環の類ではないようだ。はるか1000年以上の時空を超えて、かつての「美人メイク」が復活したのである。     ところで、お揃いの『ドファサルメイク』でキメる彼女たちに、『オトコ』を意識させるものは感じられない。単に若すぎるからかもしれないけれど、おそらく、彼女たちは流行に興味があるのであって、『オトコ』の関心に興味はないのだろう。   『必殺オトコ殺しのメイク』の視線は、かんじんのオトコどもを素通りして、次にやってくる流行を、追い続けているのに違いない。      

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  • 11 Apr
    • クスクス Couscous

        『クスクス(Couscous)』とは、北西アフリカ(マグレブ)を起源とする家庭料理の総称。粒状のパスタに、煮込んだ肉や魚とそのスープをかけて食べる。   フランスではわりとポピュラーなメニューで、パリのビストロなどでもよく見かける。これは、1960年頃まで、フランス植民地帝国がこの一帯を支配していたことに由来している。フランスが、第二次世界大戦後もなかなか植民地を手放さなかったのは、有名な話だ。いかにもフランス人らしい。   『クスクス』は料理の名前であると同時に、パスタそのものも指す。これは、たいへんまぎらわしい。フランスでは粒状パスタを『スムール(Smoule)』と区別する場合があって、当店でもそのように使い分けている。 スムールは、デュラム小麦に水を含ませ、専用のマシンで1mm大ほどの粒状に成形してつくられる。本来は、お母さんが手をこすり合わせて粒状にしていたらしい。かなり、いろんなものが含まれていそうで、ちょっと興味深い。 一般に市販されているものは袋入りの乾燥粒なので、熱湯をかけて戻すというか、蒸らして食べる。実は、この戻し方にコツがあって、水分が多すぎても少なすぎても仕上がりがいまいちとなってしまうから注意が必要だ。     20年近く前、まだ札幌に移住して間もないころ、札幌でも某店でクスクスが食べられるという情報を得て、喜び勇んで訪れたことがある。しかしながら、このときは出てきたスムールが「くたくた」に戻され過ぎていて、べちゃっとしており、かなりがっかりしたものだ。「これはクスクスではない!」。以来、食べたくなったときは、スムールを買ってきて自分でつくってきた。   クスクスの具としては、やはり、羊肉の煮込みが鉄板だろう。当店でも思いつきで仕込んでいる。羊のショルダー肉を大きめの塊のまま煮込み、スプーンでほぐれるくらいまで柔らかく仕上げるのがポイントだ。 また、アクアパッツアに合わせてもぴったりだ。マルセイユなど、フランス南部の地中海沿いでは、魚介のクスクスも一般的である。     クスクスをつくっていていつも思い出すのが、フランス映画『クスクス粒の秘密(原題:La graine et le mullet)』だ。2007年の制作で、同年のヴェネチア映画祭で審査員特別賞を受賞。その他のプライズも多数受賞するなど国際的に高く評価された作品ある。     詳しいストーリーは…DVDを買うなどでご覧いただくとして、まぁ、なんともいえない結末が印象的で、「もぞもぞ」とした後味が楽しめ(?)る、とだけ紹介しておこう。フランス映画らしいといえば、とてもフランス映画らしい。   それにしても、邦題のつけかたは謎だ。また、日本向けの紹介コピーには「こんなにも愛おしく切ない晩餐があったでしょうか…」とある。どう観たらこういうふうに解釈できるのかと、思わず首をかしげてしまいそうだが、この作品に限らず、原題のままリリースしたほうがいいよなーという映画は多いような気がする。   もっとも、この作品の原題を直訳すると、『穀物とボラ』となってしまい、愛おしいどころか滑稽なかんじで、誰も観たいと思わないかもしれないが…。     クスクスの話から、最後は映画の邦題の話になってしまった。相変わらず、店主の脳みそには、一貫性が不足しているようだ。    

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  • 02 Apr
    • 月寒あんぱん

          北海道にゆかりのある人なら、たいていは知っているであろう郷土菓子、『月寒(つきさむ)あんぱん』。先日、昼の仕事で、月寒あんぱんを製造する『株式会社ほんま』を取材してきた。     『月寒あんぱん』は、いまから100年以上前の1906年(明治39年)、札幌南部の豊平村月寒(つきさっぷ)地区で誕生した。その時代、同地区には帝国陸軍歩兵第25連隊が駐屯しており、連隊内で菓子を販売していた仙台出身の菓子職人、大沼勘三郎が発案したとされる。   ある日、勘三郎は、当時東京で人気を博していた木村屋総本店の『桜あんぱん』の評判を聞きつけ、自分も作ってやろうと試みる。ところが、困ったことに、彼は現物を一度も見たことがない。そこで、ウワサからの想像だけで『あんぱん』をひねりだしたところ、結果的に手のひらサイズの月餅のような和菓子になった。   もちろん、ほんものの『あんぱん』とは似ても似つかないものだが、当時の月寒の人たちは誰も『あんぱん』を見たことがないから、問題にならなかったのだろう。   そんな滑稽な勘違いはあったものの、『月寒あんぱん』はすぐに評判となり、飛ぶように売れたという。以後、地区内には連隊の需要を背景に、『月寒あんぱん』を売る店が軒をつらねるようになる。 しかし、最盛期には7軒あったというあんぱん店は、太平洋戦争中ことごとく廃業。唯一、戦後の動乱を乗り越えて復活したのが、今回取材した『株式会社ほんま』の前身だったというわけだ。     『月寒あんぱん』は、あんぱん、というよりは饅頭に近い。たっぷりのこしあんを饅頭の生地で包み、平たく成形してから表面に卵液を塗って焼いてある。 シンプルで素朴な味、という月並みな表現がしっくりくる銘菓だ。原料はほぼ道産品、添加物もほとんど使わないところに、同舗の真面目な姿勢がにじみ出ている。   ▲現在、成形は機械化されているが最近まで職人さんの手作業だった   しかし、販売となると、その道のりは必ずしも安泰ではないようだ。餡ものの需要が相対的に低迷しているのが最大の理由で、札幌市内の「高感度な」モールに積極的に出店しているにもかかわらず、売れ行きは横ばい状態という。     近年の、おみやげスイーツの開発競争は熾烈を極めている。なにか一発当たると、それに各メーカーがいっせいに追随して、似たようなものが売り場やネットに溢れ出る始末だ。 それでも、結局のところ、北海道のおみやげスイーツは『白い恋人』のひとり勝ちなのである。『白い恋人』はたしかにいい商品だと思う。思うが、大きな工場のオートメーションラインで、整然とつくられる大量生産品だ。なんだか愛が感じられないではないか。     ▲株式会社ほんまの本間社長。ひょうきんで楽しい人だ   先月から株式会社ほんまの本間社長と、新商品開発の施策を練り始めた。 実現するかわからないし、実現したとしてどれくらい売れるかも未知数だが、トライする価値は十分にあると思っている。なにより、このメーカーさんにはお菓子に対する愛がある。愛があれば、きっとうまくいく。   心配ない。必ず最後に愛が勝つ、…に違いないのである。      

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  • 29 Mar
    • ボルゲリ・ロッソ BOLGHERI ROSSO

        イタリア中部、トスカーナ州産の赤ワインである。   トスカーナ地方のポピュラーなワインといえば、キャンティ・クラシコ、あるいはブルネッロ・ディ・モンタルチーノなど。そして、それらに使われる葡萄品種はサンジョヴェーゼというのが一般的なワイン愛好家の常識ではなかろうか。 ボルゲリはそういったトスカーナワインの本流とはコンセプトを異にする産地である。実際、地図上で見ても、メジャーな産地が州都フィレンツェから南の内陸部に集中しているのに対し、同地区は地中海沿いにある。   ボルゲリで主力となる葡萄は、ボルドー地方からもたらされたカベルネ・ソヴィニョンと、メルロ、カベルネ・フランといったフランス品種が中心だ。生産者によって異なるが、これらのフランス品種にサンジョヴェーゼがブレンドされる。   味わいは、カベルネ・ソヴィニョンの香りがしっかりするものの、ボルドーよりも軽快な甘みがあり、そして適度な酸も感じられるという、なんだかいいとこどりみたいなもの。単独で飲んでも飲み疲れせず、かつ食事にも合わせやすい。   ボルゲリ地区の知名度を一気に押し上げたのは、ユニークなワイナリー、『テヌータ・サン・グイド』。そして、そのフラッグシップワイン『サッシカイア』である。 同ワイナリーの起源は1944年。この地ゆかりのマリオ・インチーザ侯爵が、ボルドーのシャトー・ラフィットから葡萄の苗木を譲り受け、自家消費用ワインの生産を開始したのが始まりという。なんと、自家消費用である。   ▲サッシカイア 実勢価格15,000円以上の高嶺の花   1970年代に入り、サッシカイアは一般市場へ販売されると同時に高い評価を受け、1978年の品評会ではシャトー・マルゴーを抑えて部門賞を受賞するに至った。 これだけの高評価を得ながらも、テヌータ・サン・グイドの産地がDOC認定ではなく、格下のIGT(現在のIGP=保護地地理表示ワイン)であったことから、サッシカイアは『スーパー・タスカン』と呼ばれ、以降のトスカーナワインブームの火付け役となったというわけだ。 (*サッシカイアは1992年に『ボルゲリ・サッシカイア』としてDOCに昇格。唯一、単一ワイナリーに与えられた呼称として有名)   で、今回のお題目のDOCボルゲリ・ロッソ2014は、1977年創業の『グラッタマッコ(Gurattamacco)』によるもの(輸入業者:モンテ物産)。グラスワインでのご提供は正直、原価的にややギリギリ感があるものの、顧客の嗜好に対応するレンジが幅広いので使いやすいし、失敗がないので重宝している。   こういうワインは、主にインポーターさんや酒販店さん主催の試飲会で味わいを確認して仕入れを決める。彼らの営業努力があったればこそ、お客様に楽しんでいただけるというわけだ。ありがたや、ありがたや。    

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  • 24 Mar
    • 木彫りの探検クマ

        新千歳空港内でおみやげショップを経営する『株式会社山ト小笠原商店』様からご依頼いただき、同社ネットショップのキャラクターを作成した。   木彫りのクマをモチーフにした、その名も『木彫りの探検クマ』という。   『北海道お土産探検隊』 ⇒ http://www.rakuten.co.jp/hokkaido-omiyage/     クマは、ヒグマである。口にくわえているのは、もちろんサケ。ただし、「1万本に1本」といわれる希少なサケ、『ケイジ』だ。 あるとき探検クマが知床の森を散策していたところ、川で溺れかけたケイジを見つけて助けてやった。探検クマは元来シャイでネクラな性格なのだが、お調子者で明るいケイジとすっかり意気投合。ふたり(1頭+1尾)して北海道中のおいしい食材を探して探検する、という設定である。   おかげさまで、このベタなキャラはクライアントの女性チームから好評をいただき、立ち姿も追加オーダーとなったのでご用意した。     …という具合に、昼もがんばって仕事している。早く夜の収入だけで生活を成り立たせたいが、道のりはまだまだ遠いようだ。   まぁ、楽しいからいいんだけどね。        

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  • 20 Mar
    • アミューズ=ブッシュ

      ▲本日のアミューズ=ブッシュ、スモークサーモンリエットのクリスプサンドとスープピストゥ     アミューズ=ブッシュの話だ。     『アミューズ』とはフランス語で『楽しむ(Amuse)』、『ブッシュ』は同じく『くち(Bouche)』という意味。合わせてアミューズ=ブッシュ、直訳すれば「くちを楽しませる」となり、フレンチのコース料理の冒頭で供される「ひとくち大ほどのオードブル」のことである。日本では、単にアミューズと表現されることが多い。   アミューズ=ブッシュとオードブルの違いはなにか、というと、アミューズ=ブッシュは「より洗練されたオードブル」で、ヌーベルキュイジーヌが登場した70年代以降に定着したとされている。   料理を繊細かつ美しく演出するヌーベルキュイジーヌのコンセプトにおいて、オードブルもシェフの美的センスを表現する重要な一品として変化し、アミューズ=ブッシュになったというわけである。   ちなみに、『オードブル』はフランス語で『Hors-d'oeuvre(オール=ドゥーヴル)』と記述し、直訳は「作品の外」。つまり、コース料理に組み込まれていないサプライズ的おまけ料理で、スープや前菜より前に登場するおつまみ、という位置付けだ。これは、アミューズ=ブッシュも同様。日本のお通しと異なり、席料ではないから無料である。   このように、アミューズ=ブッシュは、シェフからのサービス品なので無料なのはもちろん、本来メニューにも載らないはずである。が、店によってはコースメニューに『アミューズ』が登場していたりする。これは、厳密にいえばおかしい。おかしいのだが、シェフが創意工夫をこらしてお客様を楽しませようと用意した一品なので、メニューに載せたくなる気持ちは痛いほどよくわかる。だから、これはまぁ、いいじゃないか、ということで。     うんちくは続く。この記事を書くにあたり調べものをしていたら、アミューズ=ブッシュは本来、『アミューズ=グール』と称するのが正式とあった。『グール(Gueule)』とは主に『大きく開く動物の口』という意味である。人に対して使う場合、侮蔑的なニュアンスを持つ。よって、慣例的にアミューズ=ブッシュといわれるようになったらしい。   そういえば、小学校時代に通っていたブリュッセルの現地の小学校で、最初の頃に覚えたフランス語のひとつが、『 T'a gueule (タ・グール)』であった。これは、直訳すれば「お前の口」なのだが、「ふじゃけんじゃねぇよ、てめえ」というふうに解釈される。子供は、こういう汚い言葉から覚えるのである。困ったもんだ。     というわけで、アミューズ=ブッシュは本来、無料のサプライズ品でコースメニューに載らないものであるが、いまどきは必ずしもそうではないということと、正式にはアミューズ=グールと称するものであることがわかった。このように、時につれ言葉の意味や使い方は自然と変化していく。   店主の両親は昭和一桁のインテリで、とにかく「本来の意味・使い方」にこだわる傾向がある。先日も、高校生の孫に対して「らぬき言葉」の不適を指摘しており、思わず失笑してしまった。 日本語の変化(乱れ)として、「らぬき言葉」は話題の代表といえる。しかしながら、2016年9月の文化庁の発表によると、世代を超えて「らぬき言葉」が多数派になったということなので、こうなるともう、どちらが正しいのかという議論自体がナンセンスになってくるように思う。 さらに調べを進めてみると、歴史的にはそもそも「らぬき言葉」のほうが一般的で、「ら入り言葉」は江戸弁を標準語化したものだという説まで登場する始末で、もう、わけがわからない…。   …わからないんだが、なんだか話が脱線してきているので、このへんでやめておこう。    

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  • 13 Mar
    • カニが食べられなくなる日は近い

      ▲ズワイガニと菜の花のリゾット、アメリケーヌソース、チーズのチュイル添え       カニの話だ。     ここ数年、カニの価格が暴騰している。高すぎて買い手が少ないためか、札幌の市場でも明らかに売り物が減っている気がする。特に活カニ(活きたカニ)の減少が顕著だ。   とあるお客様主催の貸切パーティで、本州からのゲストが多いという理由からカニ料理をリクエストいただいた。鮮魚関係の仕入れは、知り合いの郷土料理店を通じて、札幌中央市場に上場しているものを目利きしてもらう。ところが今回、料理店の大将から「カニはやめとけ」といわれてしまった。コストパフォーマンスが悪すぎる、というのだ。     結果的には、すすきのの鮮魚店で、冷凍の『オホーツク産浜ゆで特大毛ガニ』を予約手配することになった。ボイル&冷凍とはいえ、いまどきなかなか珍しい1kgアップの立派な毛ガニで、カタチもよく、見るからに身入りが良さそうな秀品だ。 しかし、値札がすごい。仕入れ値でほぼ9,000円! 歩留まりが60%前後と見積もると、可食部のキロあたりの単価はなんと約15,000円にもなる。この単価なら、デパ地下で『高級和牛ヒレ肉ステーキ用』が買える。なんとも絶望的な高値である。     なんでこれほど急激に高くなったかといえば、それはもう、おとなり中国の消費急増にほかならない。   昨年の暮れだったか、NHKの情報番組かなにかで「日本の食卓からカニが消える」的な特集が組まれていた。品物自体が手に入らず、年末年始の国内需要に追いつかないという内容だ。その理由として、北海道に観光で訪れた中国人富裕層たちが日本のカニの旨さに感激し、自国に戻っても輸入品を食べるようになったからという。これまで、彼の国の人たちにとって、『カニ』とはすなわち『上海蟹』のことだったのである。 中国人富裕層の食欲はすさまじい。親族総出で巨大な円卓を囲み、中央の大皿にタラバガニや毛ガニをてんこ盛りにして、じいさんもばあさんも孫に至るまで、ばりばり食べている画像が紹介された。   「日本のカニは、中国のものよりおいしいね!」   …それはそうかもしれないが…。     「北海道=カニ」、というイメージは根強いが、実際のところ道内で流通しているカニのほとんどは、ロシアを中心とする外国産の輸入である。近海でも毛ガニを中心とした水揚げはあるものの、厳しい資源保護下に管理されており、漁の規模は極めて小さい。   つまり、北海道とはいえ需要の大部分は輸入に頼っているわけで、それらが中国に寡占されるようになった影響は深刻だ。くだんの番組では、上海の水産業者のインタビューもあり、背景の生簀には、活きたタラバガニや毛ガニがぎゅうぎゅうづめになっていた。 …だめだ、こりゃ。     店主は、決して「中国人が悪い」といっているのではない。かつての日本がそうだったように、経済発展の結果、強大なマネーを持った需要大国に供給は流れる。これは必然といえる。ただ、このままでいけば資源の枯渇は時間の問題だ。必然とはいうものの、もう少しその、なんとかならんかなぁ…と思うわけだ。     店主が北海道に移住した25年ほど前、毛ガニの価格は現在の半値から1/3程度だったろうか。ところが、同世代の道産子たちは、その時点ですでにカニの価格暴騰を嘆いていたのである。   「中学校の頃は、毛ガニがおやつ代わりだったんだけどね、いまや高級品だね」   そんな彼らは、いまどきのカニ価格相場狂乱を、いったいどんな気持ちで眺めているのだろうか。      

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  • 10 Mar
    • 合鴨はガチョウではない

        馴染みのお客様であるMさんと、『合鴨』の話になった。   Mさんは、当店の大切なお客様であると同時に古くからの知人であり、気兼ねなく話せることも手伝って、ほかにお客様がいない時はふたりしていろんな話題について議論を展開することも多い。 釣り好きのMさんと、キャッチ&リリースの是非について(店主は否定派)意見を戦わせたこともある。このときは、後からいらしたお客様をふたりのくだらない論争に巻き込んでしまい、結果、そのお客様のご気分を損ね、「二度と来ない」と捨て台詞を吐かれてしまった。開業まもない頃の、苦い思い出である。ちなみに、その方は、台詞どおりその後二度とご来店いただけていない。   それで、『合鴨』の話である。   どういうわけか、Mさんは、「合鴨はガチョウと同じだ」といって譲らない。なぜ、そのような見当違いに行き当たったのかは謎だ。かなりの自信を持って「合鴨はガチョウと同じだ」と主張する。違うってば。 かつては、このような誤認や誤解を看過することができず、完膚なきまでやり込めたものだが、最近ではやんわりとスルーすることにしている。肯定はもちろんしないけれど、あえて強く否定もしないというスタンスだ。理由は単純で、いい歳こいて自分の確信を否定されるのは、たとえそれが誤りであったとしても、まったくもって気分が悪いのではないかと気づいたからだ。   「見当違いは恥ずかしいものだから、知人だからこそちゃんと是正してあげなくては」などというおせっかいは、ともすると逆効果になるのではなかろうか。未来ある若者の過ちは、大人たちが責任を持って正してあげるべきだが、おっさんの見当違いはもう、そっとしておいてあげよう、と思うに至ったわけである。   ちなみに、合鴨はマガモとアヒルの交配種である。マガモは野生のカモだ。アヒルは、マガモを家禽化したもの。そして、ガチョウは雁を家禽化したものである。アヒル(特に白アヒル)とガチョウの外見は似ていなくもないが、生物学的には別種。これに対して合鴨、アヒル、マガモは同種である。これ以上いうまでもなく、合鴨とガチョウは別ものである。   ところで、蕎麦屋の鴨南蛮につかわれる肉は、ほぼアヒルであるという事実に驚く人がいる。しかし先述のとおり、アヒルは野生のマガモを家禽化したものだから、生物学的には同種なので、実は驚くに値しない。野生のマガモをつかったら、鴨南蛮1杯でいったいいくらするのだろうか。   合鴨は、アヒルの肉質をよりマガモに近づけるために作り出された家禽だ。たっぷりとした肉には適度に脂がのっていて、柔らかく、かつ肉の味もしっかりしている。力の入った蕎麦屋では、鴨南蛮に合鴨をつかっているところもある。当店ではコース料理の定番メニューとして活用していて、滝川産のものを仕入れている。お値段的には、ちょとした牛肉のもも肉と同じくらいの単価で、決して安くない。   それにしても、こういう優秀な素材はほんとうに助かる。店主のように調理スキルが低い者にとって、よい素材を探し出すことそのものが、生き残りのための必須条件に近いのだ。   …というわけで、ご予約があれば合鴨を調理しますよ!    

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  • 07 Mar
    • ショートで巨乳にひるむ

      Facebookやblogなど無料のプロバイダーを利用すると、自身のページに必ずランダムな広告が表示される。これは、ビジネス的に当たり前なのでまったく問題ないのだが、ゲームの広告がとにかく多いのに驚く。しかも、『美少女』をモチーフしたゲームである確率が高くて、なんだか見ていて「ひるむ」という件だ。     たまたま、当blogでさきほどランダムに表示されたゲームの広告をチャプタしてみた。もちろん、ゲームの内容は知らない。   それにしても、この『美少女』はどうだろう。ボーイッシュなショートヘアで、すごく巨乳だ。やたらセクシーな水着にギリシア神話のサンダル的腕飾りの組み合わせ。腰には不思議なリングに忍者の武器『クナイ』のようなものが吊るされている。そして、なぜか足元は草履だ。うーん、なんだ、これは。やはり、この、現実世界ではありえない、極端なアンバランスが当世の二次元的価値感なのだろうか。   店主もアニメは好きでしばしば観るし(ジブリとかピクサーとか)、二次元の世界にのめり込んでいる人たちについてどうこういうつもりはまったくないのだが、この手の広告がひんぱんに表示されると、やっぱりひるんでしまうのである。せめて、肌の露出をもっと控えてくれ、といいたくなる。あるいは、もっと「こっそり」やってくれないか。淫靡なかんじで。 もっとも、いまどきの若年層は、こういう画像を見ても「クールだね」なんて軽く流してしまうのだろうか。それはそれで、寂しい気がする。   まぁ、こんなことにいちいち気恥ずかしさを感じていること自体が、すでに若者文化からリジェクトされているという事実であり、そのたび自らの年齢を思い出したりして、ちょっとだけ寂しくなったりするのであるが。      

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  • 05 Mar
    • 村上龍のことば

      村上龍は好きな作家のひとり。レギュラー出演の経済TV番組『カンブリア宮殿』でのコメントが気に入ったので記事にしてみる。     ▲若かりし(?)ころの村上龍。かっこいいじゃないか   ゲストは『羽田市場(はねだいちば)』という革新的な鮮魚流通システムをビジネス化した、51歳の経営者だ。いまでこそ注目される業界の寵児だが、高校卒業後、数年間フリーター生活をしていたという。   「やりたいことが見つからなかった」「毎日パチンコをして過ごした」   ご実家が商売をしていて、かつバブルで日本中が豊かだったという都合のよい背景があったにせよ、現在のご活躍とのギャップが面白い。   村上龍は経営者のプロフィールをこう評した(録画してないので要約)。   「脳が受験戦争で消耗することなく、必要なそのときまで余裕を持っていたんですね」   回り道をすることでいろんな経験をしたのでは、とか、出会いや気づきがあったのでは、なんていうかんじのコメントは誰でも出せそうだが、「脳みそに余裕があった」とは。そうきたか。さすが、村上龍。     かくいう自分は、高校中退だ。受験戦争は敵前逃亡してしまったし、とにかく勉強がキライで難しいことは考えない主義だから、そういう意味では脳みそはかなり新品に近いはずである。 …が、今年53歳になろうかというのに、いまだにこの体たらくだ。くだんの経営者と同世代で、放蕩生活も似ているはずなんだが。なんだ、この差は。     ところで、冒頭で「村上龍が好き」といってみたけれど、ちゃんと振り返ってみると彼の作品をむさぼり読んだというわけでもないことにいまさら気づいた。何冊かの小説とTV番組やエッセイで、なんとなく知った気持ちになっていたのかもしれない。   今日にでも、BOOKOFFに行ってみよう(新品で買えよ)。     ▲やたら共感するテーマが多いエッセイ集『すべての男は消耗品である。』  

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  • 23 Feb
    • ソムリエ呼称資格認定試験の対策

        何人かのお客様に、ソムリエ試験対策の勉強方法を聞かれたので、自分の経験を記事にしてみた。あくまで個人的な経験談であり、内容についてなんら責任は持てないので、あらかじめご了承いただきたい。   前回の記事 ⇒ http://ameblo.jp/bistro-tati/entry-12246800637.html       ソムリエ呼称資格認定試験の対策     <一次試験>   四択式マークシートの筆記試験。 膨大な情報量を前にしてまず途方に暮れるが、これはもう、がんばって丸暗記するしかない。暗記が得意な人はともかく、一般的な頭脳の持ち主にはたいへん厳しい関門だ。不合格者の大半は、この一次試験でつまずくのであるからして、しっかり対策して臨みたいところだ。一次試験突破のポイントは…   ・とにかく早期に勉強を始める ・自分にあった対策本を準備する ・本気で勉強する   …である。   試験は例年8月下旬だ。店主は、元日に受験を思い立ち、1月末から徐々に一次試験対策を開始した。7ヶ月の余裕があったわけで、結果的に毎日少しずつ、無理のないペースで勉強することができた。   受験対策本は数種類出版されているから、書店で自分にあったものを直感的に選び出すのがよいだろう。店主が購入したのは、杉山明日香氏の『ソムリエ試験対策講座』(リトルモア刊)。シンプルかつ分かりやすい編集が気に入って選んだ。地図帳が付録されていて便利。同氏は『受験のプロ』と称されているらしく、なるほど学習参考書の要領で構成されているので、記憶に刷り込まれやすいのかもしれない。   ただし地図帳は要注意で、やや正確性を欠いていた。地図問題は正確性が求められるので、適宜協会発行の『日本ソムリエ教本』と比較して訂正することをお勧めしておこう。 また、2016年度の一次試験にはオーストリアのニーダーエストライヒ州の地図が登場し、その中から産地を選択するという難問が出題された。これは、くだんの地図帳ではまったく歯が立たなかった(店主も不正解)。 巻頭には過去数年分遡った出題傾向がまとめられていて、勉強の優先順位づけの参考になる。今回はけっこう予想がズレたといわざるを得ないので、過信は禁物だ。 対策本の新年度版は、3月末ころに発売されると思われる。これは、教本の最新版の発行を待って編集しているからだが、前年度版を買ってでも、できるだけ早く勉強をスタートさせるべきである。そして、新年度版が発売されたら、迷わず買い直そう。お金はもったいないが、そうするだけの価値はある。 ちなみに、店主はケチって新年度版に買い換えなかったことで、おそらく、2〜3問ほどロスしたような気がする。一問あたり1,000円と考えれば高くないか?   対策本のほかに、児島速人氏の『ワインの問題集』(イカロスMOOK刊)も購入。これは、同著の『ワイン教本』に対応した問題集だが、店主は『教本』は買わず、問題集のみを活用した。過去問題も紹介されているので、雰囲気に慣れるという意味では有効だ。 過去問題で90%以上コンスタントに正答できれば、当日多少予想がズレたとしても、合格ラインには乗れるのではないだろうか。推測だが。     あとは、対策サイト『ワイン受験.com』(https://www.wine-jyuken.com/)も活用した。会員登録と会費がかかるものの、スマートフォンでクイズ形式の問題が閲覧できるので、通勤中やちょっとした待ち時間も勉強に充てられる。   これらの教材を活用することは必須要件に違いない。しかし究極的には、とにかく「本気で勉強する」ことだ。四択マークシートだからといって決してナメてはいけない。知ってるつもりは非常に危険だ。 とはいえ、ソムリエ受験資格者は同時に勤め人でもあるはずなので、自由になる時間は限られている。店主は、一日のべ90分程度は一次試験対策に割くよう努力した。もちろん、まったく時間が取れない日も多々あったが、早くから対策を始めたことで切羽詰まることはなかった。   ちなみに、一次試験の合格ラインは正答率80%程度といわれているようだが、真実は不明。協会は、おそらく正答率ではなく合格者数を設定しているものと思う。つまり、問題が難しければ正答率のラインは下がるし、逆なら上がるということだ。       <二次試験>   テイスティングと論述。 テイスティングは、一次試験と異なり「付け焼刃」が難しい。日頃からワインを深く味わっている人は蓄積があるはずだから、それを頭の中で整理すればよい。そうじゃない人は…どうしよう?? ひとつ確かなのは、「闇雲に飲まなない」ことだ。蓄積が不十分なままあれこれと手を出すと、高い確率で迷宮入りしてしまう。そこでまず、『シャルドネ』を確実にインプリントしたい。出題率が高いことに加え、赤も含めたすべてのブドウ品種の基準となる香りと味わいだからだ。バーでテイスティングの練習をするときも、必ずシャルドネはオーダーすること。シャルドネが確実に当てられるようになったら、『ソヴィニョン・ブラン』、『リースリング』に手を伸ばす。この三種類に自信が持てれば、白は問題ないだろう。 赤は、『シラー(シラーズ)』を押さえたい。次に『ピノ・ノワール』。このふたつが確実になったら、あとはこれらとの相対的な違いでおおよその判断がつく。少なくとも、大外しすることはないはずだ。   スティルワイン以外のテイスティングは、正直、たいへん困難だ。ハードリカーの蓄積を持っている人は稀だろう。残念ながら、ここにはティップスなない。飲むと体に悪いから、香りだけでも判断できるようにしたい。『カルヴァドス』、『アルマニャック』、『ウィスキー』、『ジン』、『シェリー』、『ポルト』…を覚えれば十分…かな?    テイスティングコメントの回答は、前述の『ワイン受験.com』の対策講座を参考にした。品種に対しての模範解答が紹介されているので、丸暗記で問題ないだろう。   論述は2016年度から新登場となったテーマで、以下3問が出題された。   ・「赤ワインを冷やして飲みたいお客様にお勧めするワインとそれに合う料理とは」 ・「テイスティング試験二番目のワインをお客様にわかりやすく説明する」 ・「日本酒の ひやおろし について簡潔に説明する」   1問目については、正解がないといってよいだろう。無茶な設問である。このように、どんな問題が出るかはまったくわからないので、常日頃から知識を蓄えておくしかないか。いくつか自分で問題を想定して、それについて実際に書いてみる練習は効果的と思う。特にキーボード世代は文字を書く習慣が薄れているので、いざというときにまごつくと困る。200文字くらいを目安に、せっせと書いてみてはどうか。   二次試験の合格ラインは、謎のベールに包まれている。テイスティングを全問外しても合格した人がいるとか…。ちなみに、店主はテイスティング5問中2問を外したがセーフだった。一次試験とテイスティングは試験終了後にwebで正解が速報されるのに比べ、コメントや論述、三次試験については一切のフィードバックがない。合格してしまえばそれでよいといえなくもないが、協会には、もっとこのあたりをディスクローズしてもらいたいものだ。     <三次試験>   サービス実技だ。受験対象者には、協会から事前に模範演技の画像が配信されるので、実際にそのとおりに反復練習すればよい。日頃のサービスと違う所作が求められる上、3名同時に演技させられるので、たいへんやりづらい。…が、平常心で臨めば大丈夫だろう。       以上、私見ではあるが、自分なりの経験をふまえて対策をまとめてみた。 結局のところ、とにかく一次試験を突破することがなによりも大切で、そのためにはちゃんと時間を作って、早め早めに準備することが肝要だ。逆に二次、三次は、よっぽどのことがないかぎり落ちないと考えてよいのではないかと思う。 これから受験される諸兄の成功を祈るとともに、当記事が少しでも参考になれば幸いだ。      

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プロフィール

店主tati

誕生日:
1964年東京生まれ、ベルギー育ちの帰国子女。大手情報出版社在籍中に札幌に転勤になり、そのまま居ついてしまった。昼はクリエイター、夜はワインバーのオーナーソムリエ。
血液型:
O型
お住まいの地域:
北海道

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