2010-02-02 00:31:01

変容する中国の労働法

テーマ:九大アジア叢書
へんよ変容する中国の労働法—「世界の工場」のワークルール (九大アジア叢書 14)
山下 昇

九州大学出版会
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新書版の九大アジア叢書だが、スタートしてもう8年になるのか。年に2冊か3冊のペースだけど続いているだけで大したもん。大学出版会も自給自足で新書シリーズでも出せば、著書のない教員の救済策になるし、ハードカバーのテキスト買わされるくらいなら、学生にとってもテキストは新書で十分だろう。九大アジア叢書は東京の書店ではさっぱり見かけないが、図書館には結構来てるから元はとれてるんじゃないかな。他の専業新書みたいに自転車操業で点数だけ出している訳ではなかろうし。ということで今回も博士課程一人を含む4人の共作となっているのだが、文体は統一がとれている。中国も金融危機以降、企業倒産が未曾有の規模と伝えられる一方で、失業した農民工が一斉に引き揚げたため、労働市場は一気に売り手市場になったとも伝えられるのだが、労働法の整備を待たずとも、韓国や香港系の「夜逃げ企業」は淘汰されていく運命にあるのだろう。日系企業は体質的に簡単に夜逃げなどできないし、反日の縛りもあるから、中国側の撤退ガードが高い。もっとも、夜逃げできるほど、投資を回収し終わった日系進出企業など、ほとんど無いだろうから、否応無く運命を天に任せるか、中国に騙されたことにして、銀行を騙すしかない。撤退の理由を突き詰めれば、販売不振とそれに伴う低コスト化の失敗にある事が多いのだが、そうなると、かつての韓国の様に労働争議リスクというものを政府の投資振興と切り離して考える必要があろう。工会を労働組合とするのは間違いという指摘があるが、その工会も急速に無力化している現状では政府の介入がむしろ仇となるケースも出て来よう。「反日」と結びかねない日系企業の争議は政府も警戒しているところだろうし、事実、反日デモ時に便乗があったのだが、こうなると、今後は「協力工場」という名の請け負い企業へのシフトが進みそうだ。
★★
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2009-06-02 12:14:50

アジアと向きあう

テーマ:九大アジア叢書
アジアと向きあう―研究協力見聞録 (九大アジア叢書 13)アジアと向きあう―研究協力見聞録 (九大アジア叢書 13)
柳 哲雄

九州大学出版会 2009-03
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なんか広報みたいだな。
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2009-04-07 23:41:24

香港の都市再開発と保全

テーマ:九大アジア叢書
hk.jpg香港の都市再開発と保全―市民によるアイデンティティとホームの再構築 (九大アジア叢書 12)
福島 綾子

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大学出版会唯一(たぶん)の新書進出である「九大アジア叢書」も久しぶりだな。著者はもちろん自己調達だけど、読者と併せての自給自足率も高そうだ。著者は文化保存学というのが専門の人の様で、利東街とか、スターフェリー船着場など保存運動を通した香港アイデンティティの解釈。単著としてあるが、大部分の内容は香港人の友人から聞き取ったものをまとめただけとしている。如何にもそんな感じの本ではあるのだが、著者にとって、そうした協力的な香港人との出会いが一番の収穫であった様だ。そこでお決まりの、日本人は外国人に非協力的だ。私は日本を故郷だなんて思えないといった返す刀な陳腐なステレオタイプに毒されてしまうのだが、はたして香港人が日本人と比べて外国人に協力的かというと、それは首を傾げざるをえない。ぶっちゃげ著者が「香港人の友人」にとって、利用価値があると思えた日本人女性であったということに過ぎないのではないかとも思う。日本人が国内の多様性に眼を向けないという批判は、自分がそうであったということである。もっとも、国内の外国人が日本人と交流したいと思っているかというと、一概にそうだとも言えない。同世代の異性とかなら付き合いかとも思うだろうが、巷の「国際交流会」にはヒマな爺婆しか出てこない。実際には多くの外国人は生活に追われているので、日本人と付き合うヒマがあれば、アルバイトをしたいだろうし、疲労困憊した身では日本人と話すなど面倒なことである。香港人が日本人と友人付き合いすることはあっても、域内の外国人マジョリティであるフィリピン人、パキスタン人、大陸人などを友人とすることは少ない。そんな事情を知ってか知らずか、著者は自分のアイデンティティとホームを見つめなおすきっかけになったということでメデタシめでたしなのだが、研究者なのに、日本が国内の多様性に眼を向けないとか、外国人の存在を見えないものとするとかよく言えるよな。私はその手のものをテーマにした研究者がゴマンといて、その手の本もゴマンも出ているので、いささか食傷気味だというのに。
★★
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2008-06-21 11:39:48

中国のエネルギー構造と課題 

テーマ:九大アジア叢書
中国のエネルギー構造と課題―石炭に依存する経済成長 (九大アジア叢書 9)中国のエネルギー構造と課題―石炭に依存する経済成長 (九大アジア叢書 9)
楊 慶敏

九州大学出版会 2007-10
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九大アジア叢書も置いてあるところがなかなか見つけられないのだが、普段、立ち寄らない技術書棚に一冊埋まってた。この楊慶敏さんという人は九大で学位をとった人らしく、これもその博論が元らしい。三輪さんというのが指導教授の様で、二人の共著になってるが、三輪さんが書いたのは序章と付け足しみたいな「石油編」、コラムといったところで、中身のほとんどが、楊さんのもの。別に単著でもよさそうなものだが、そうは問屋が卸さなかったのか。で、中身は中国の石炭政策であって、九州大学石炭研究資料センター教授だった三輪さんが「石油」を加えて、「中国のエネルギー構造と課題」になった次第。中国の炭鉱と言えば、かつての圧制ヤマの本場、九州も顔負けの地獄一丁目の世界なのだが、女性の楊さんは果敢にも「個人炭鉱」の実態調査に出たらしい。国営の重点炭鉱などは、それなりに最新鋭の機械や安全対策が施されているみたいだが、これも、大手と中小、社員と下請け、孫請けといった間の格差社会が広がっていた筑豊を髣髴させる構図である。それにしても三輪さんはコラムでリースマンの日記をわざわざ取り上げるのは、どういう意図か。

「わたしと議論している日本の学者は果たして、中国で現在進行しつつある事態をどれだけはっきり把握しているのだろうか」

『日本日記』(1969)の抜粋だそうだが、後の世代の中国研究者にとっては、この時代の中国研究者に対するアンチテーゼが出発点であるケースは多そうだ。
★★
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2008-01-12 01:31:34

国際保健政策からみた中国 

テーマ:九大アジア叢書



大谷 順子
国際保健政策からみた中国―政策実施の現場から (九大アジア叢書 8)

「九大アジア叢書」もなかなかお目にかかれないと思ったら、改称してからまだ4冊しか出てなかったのか。中国の石炭政策のヤツが新刊みたいだけど、九大でもやはり「アジア」は中国か。ということで、こちらも自給自足の九大の先生が書いた本。人口からエイズ、環境、サーズ、タバコに酒まで一通り、説明がなされている。そうした基本事項が報告書チックになるのは、著者が元WHO(初の)中国駐在日本人職員という人だったから。ちなみに世銀(初の)日本人保健専門家という経歴でもあるそうだが、世銀にそんな専門職があること自体知らなかった。とはいえ、一応新書タイプなのだから、教科書ではなく、読み物としての色をつけることに苦心した跡は覗える。新書なのに複数の人からコラムを募って、その筋の専門からのナマの報告を載せるようにしていたりもする。中国についての本を出すのが長年の夢だったそうだが、なんでも、ジュネーブ本部勤務を辞してまで、九大に赴任したのも、「中国に近い」からという理由だそうだ。それだけ恋しいという中国なのだが、本文からは全くその気配が伝わってこないのも「国際公務員」の「品格」ということなのだろうか。サーズの時も中国勤務だったそうで、その裏話などは興味深い。WHOの下部組織が、純粋な地域割りになっていなくて、モンゴルが「モスクワで教育を受けたから」という理由で、ヨーロッパに入ったり、パキスタンが「インドと一緒はイヤだ」と地中海に入ったり、タイが「東南アジアに中国が入るなら大国扱いされないからイヤ」と日本が入る太平洋に行ったりといった事情は面白い。しかし、当時の中国最大の「WHO問題」とは、台湾問題であったろう。あの時の恨みを「台湾人民」は決して忘れない訳だが、その点については完全に無視。この辺は「国際公務員の品格」ではなく、「中国が恋しい」という旧国立大教員の事情を表しているのかもね。
★★
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2006-11-09 23:07:13

スペイン市民戦争とアジア 

テーマ:九大アジア叢書


石川 捷治, 中村 尚樹
スペイン市民戦争とアジア―遥かなる自由と理想のために

最近は猫も杓子も新書に進出しているが、ついに大学までその波に乗ってきた。これは「九大アジア叢書」というシリーズらしいが、サイズや中身は新書系。叢書は選書という説もあるが、この辺に何か定義があるのだろうか。いずれにしても、あまり書店に並ぶ気配がない新書なのだけど、ラインアップを見ると結構面白そう。九州地区の図書館には完備しているのだろうか。九州といえば、長崎新聞が新聞社系では朝日より早く新書を始めているのだが(軍艦島のは面白かった)、こういう試みは全国に広がってほしいものだ。で、本題に戻ると、このシリーズは「九大アジアセンター」というところが一手に引き受けているらしく、執筆陣も自前の様だ。教授とその教え子のコンビらしいが、特にスペイン市民戦争の専門という訳ではなさそうだが、テーマ的には興味深い。新書なので概説にも重点を置いているのだが、「スペイン市民戦争」という呼称にえらくこだわっているのが気にかかる。別にそこまで言わなくても「スペイン市民戦争」は日本語でも「市民権」を得ていると思うのだが、やはり「スペイン内戦」の方がポピュラーなのだろうか、しかし、今時「スペイン内乱」などと言う人はいないと思うのだが。それで肝心の「アジア」との関係なのだが、ここでぶつかるのが「資料」の壁。義勇兵に中国人が多く参加していたのは知られているのだが、まともな本は台湾で出たのが一冊さという。ただ、これも引用文を見る限り、あまり信用度が無い様な気もするのがどうだろう。他にもベトナムとかインドネシア、フィリピン出身の義勇兵も発掘(というかほとんど名前だけ)しているのだが、朝鮮人を見つけようと頑張って、何も出てこなくて、『東亜日報』の戦争記事や、満州での独立運動まで引っ張り出してきているのが、涙ぐるしい。一方、よく知られているジャック白井や他の日本人義勇兵についてはあっさりしたもので、駐在武官のマドリード視察をフランコ側に参戦した日本人がいたなどと捉えており、ここでもファシスト日本に対する抵抗史観。どうもスペイン市民戦争が中国の抗日戦争の嚆矢になったという話に持っていきたい様だが、それはどうだろうか。たしかにぺチューンやメンハンラル・アタルといった人がスペインから中国に移動したのは事実であるが、何だかアフガンからボスニア、チェチェンにイラクと渡り歩く現代のイスラム義勇兵を想起させられる話でもある。
★★
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