救急医の挑戦 in 宮崎

宮崎県という縁もゆかりもない土地で、一人の救急総合診療医が救急医療を変えようと奮闘する日々を綴ったブログ


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本日は『粟粒結核:miliary tuberculosis』のお話です。


粟粒結核とは結核菌が血行性に全身に播種し、多臓器に結核病変が形成される重症の結核症です。


私の患者さんの場合はレントゲンで『両側びまん性の小粒状影』が出現し、鑑別の中に『粟粒結核』を考慮するのは困難な事ではありませんでしたが粟粒結核を発症した背景を振り返ってみると、内科医として常に頭に入れとかなければならない疾患だと感じ、今回お話をさせていただこうと思います。



救急医の挑戦 in 宮崎



このようにレントゲンで特徴的な陰影を呈すれば誰でも疑うことはできると思いますが、時に『不明熱』の原疾患の一つとして考慮しなければなりません。診断の遅れは生命予後を不良(致死率30%、73歳以上では50%と高く、診断の遅れが死亡率の上昇を招く)にするため、不明熱患者においては常に本症を頭にいれて診療する必要があります。


特に『感染症』をある程度否定した段階において、PMRや成人still病といった疾患を疑い『ステロイド』を使用する際は、この疾患がないか注意が必要であるし、『間質性肺炎』の診断のもとにステロイドパルスを抗結核薬の併用なしにするのは慎重にしなければならないと思います。


今回お話するポイントは以下の2点です。


①不明熱の鑑別疾患として考慮すること(粟粒結核や肺外結核)

②粟粒結核の診断


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まずは『結核の疫学と病態』をyoutubeの動画ですが、患者さん向けにとても平易な英語で分かりやすく説明しています(英語のsubtitleもありますので初心者でもOKです)

潜在性結核』について良く理解できると思います。

http://www.youtube.com/watch?v=JtyX694ubio&feature=related



次に『粟粒結核』についてですが、①不明熱の鑑別に考慮する際にどのような臨床所見が手がかりになるのでしょうか。)


臨床症状としては、発熱、食欲低下、全身倦怠感、咳、体重減少であるが、いずれも非特異的な症状です。


(ちなみに体重減少の定義は6-12か月で体重の5%以上減少することをいいます。)


画像上、80~100%で典型的な両側びまん性小粒状影を認めますが、感染してから画像上に出現するまでに約3週間程要すると言われています。


早期診断の重要性はお話した通りですから、レントゲンでの陰影が出現する前にどのくらい疑うことができるか、また肺外結核の場合にはどうしたら疑うことができるかが重要です。


この論文には朝に見られるspike feverをみた場合にはチフス、結節性多発動脈炎とともに粟粒結核を鑑別に入れると良いとしています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19150533


熱型からの鑑別は難しいのですが、このmorning spike feverは覚えておくといいでしょう。


実際、私の患者さんでもレントゲンでの陰影がでる1週間程前からspike feverが見られるようになり、CV感染を疑ってCV抜去、血培をしたところ、カテ先と血培からカンジダが検出されたために治療を開始しましたが、抗結核薬を開始するまでは熱型に変化が見られませんでした。


血液検査ではAST、ALT、ALP、低Alb、リンパ球減少、貧血などが言われていますが、特にALPの上昇は粟粒結核に特徴的(特異的ではありませんよ)といわれ、粟粒結核の67.6%の患者にALP高値例を認めたとしています。


これも私の患者さんでも同様にAST,ALTの上昇に比してALPの高値を認めていました。


これらの所見から積極的に粟粒結核を疑い診断へのステップをしていくことが大事なんでしょう。




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それでは、次に『どのように診断していくか』をみていきましょう。


10年間にある施設に入院した18例の粟粒結核を対象にstudyしたものです。

http://journal.kansensho.or.jp/Disp?pdf=0780110929.pdf


実は私の患者さんはこの施設に転院搬送を依頼させて頂いたのですが、このstudyを基にお話します。


このstudyによると結核菌は喀痰から塗末61%、PCR79%、培養94%で検出されたとし、喀痰の塗抹およびPCRが陰性の症例は5例あり、1例は気管支洗浄されて塗抹、PCRともに陽性。3例は肺病変に先行して胸腹膜炎、傍脊柱膿瘍、副睾丸炎がみられており、それぞれ胸腹水、穿刺膿、尿より結核菌が検出されていた。残りの1例は出産後で膣分泌物の塗抹が陽性であった。 


・・・塗抹ではなかなか検出されにくいのです



各種検体における結核菌培養陽性率は以下の通りです。


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喀痰の塗抹やPCRで陰性の場合にも『結核』の疑いが強ければ除外せずに、気管支洗浄液を調べたり、尿、血液、骨髄と積極的に検査を進めていくことが大切になります。(他にリンパ節生検、肝生検)


他には眼底所見で脈絡膜に結節を認めることもあります(感度30%程度と報告あり)


レントゲンは初期にははっきりしないことも多いです。(retrospectiveに考えて、また強く疑ってみると見えるかもですが、なかなか難しいと言われています)


CTではこのstudyの中にあるように基本は『両側びまん性小粒状影』ですが、部分的にも『粒状影の癒合』や『浸潤影』を呈する場合がありますので、典型的な陰影を呈さないからといって否定しないようにしましょう。



救急医の挑戦 in 宮崎


救急医の挑戦 in 宮崎

(粟粒結核→ARDSの症例)


原因不明のARDS様の陰影をみたら結核(粟粒結核)を鑑別に入れれるようにしましょう。


結核の易感染性宿主として、糖尿病、胃切除、腎透析、AIDS、高齢者、ステロイドや免疫抑制薬の使用、悪性腫瘍などが挙げられます。


つまり細胞性免疫が低下するものですね。


私の患者さんも透析やステロイドの内服 長期入院に伴う低栄養状態で『結核』を発症するriskはたくさんありました。


studyの中でも粟粒結核ではその他の結核症と比較して栄養状態が不良で末梢血リンパ球数が少ないものが多かったとしています。(発症や増悪要因のひとつとして考えられています)



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不明熱』の患者さんをみる際にはこうした『患者背景』もとても大事で『粟粒結核』を鑑別にいれるのを忘れないようにしたいです。実際画像にでてくる前に診断するのは難しいと思いますが、いつも頭の中に入れておきたいものですね。



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本日は以上です。

























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