発熱性好中球減少症
テーマ:血液疾患外来で発熱の患者さんに血液検査をしてみたら『白血球』が少なくて、これってどうするの???って思う時ありますか?
外来でfollowできるのか、入院させた方が良いのか、抗生剤は何を選択するのか、G-CSFの使用は?って迷うことはありませんか?
ちょうど発熱性好中球減少症(febrile neutropenia)の患者さんの主治医になってるので、本日は『発熱性好中球減少症』のお話を少ししたいと思います。(当院には血液内科専門医の先生もいるので必要に応じて相談しながら治療をしています。)
まず、『好中球減少症』は好中球の絶対数から次の3つに分類することができます。
- Mild neutropenia (1000 <= ANC < 1500) — minimal risk of infection
- Moderate neutropenia (500 <= ANC < 1000) — moderate risk of infection
- Severe neutropenia (ANC < 500) — severe risk of infection.
主な原因は
- 感染症 (more commonly viral infections, but also bacterial or parasitic infections). Examples include:HIV、Tb、EBVなど
- 薬剤 that may damage the bone marrow or neutrophils, including cancer chemotherapy
- ビタミン欠乏 (megaloblastic anemia due to vitamin B12 and/or folate deficiency);
- 骨髄障害 such as leukemias, myelodysplastic syndrome、 aplastic anemia、myelofibrosis
- 放射線治療
- 先天性疾患 of bone marrow function or of neutrophil production, for example, Kostmann syndrome
- 自己免疫疾患 of neutrophils (either as a primary condition or associated with another disease such as Felty's syndrome) or from drugs stimulating the immune system to attack the cells
- 脾機能亢進, which refers to the increased sequestration and/or destruction of blood cells by the spleen
そして、『発熱性好中球減少症:FN』の定義ですが、表1のようになっています。
ただしこれらの数値の絶対値に固執しないことも大切です。経過をみて、また状態を把握しながら必要に応じてカテゴリーの範疇に入れることが重要です。(高齢者やステロイドを投与されている患者さんでは発熱しないこともあります。その場合でも感染症が疑われる場合には速やかに治療しなければなりません)
発熱、WBC上昇といった典型的な感染症の症状や症候がでないこともあります。好中球減少症では感染巣が見つかるのは30~50%と言われています。肺炎でも浸潤すべき白血球の欠如、減少により典型的な胸部X線像を作らないこともあります。
FNはmedical emergencyと言われています。通常、炎症部位には好中球が浸潤してマクロファージが後に続きます。そのためFNは感染症に対する最大の危険因子となるのです。発熱の原因が感染症でないと判明するまでは感染症として治療しておくことが大切です。
悪性腫瘍に用いられる抗腫瘍薬のほとんどは好中球の産生、増殖に悪影響を与えます。またステロイドは好中球の増殖を促し末梢から動員させますが、遊走能、貪食能、細胞内殺菌能を低下させます。
『問題となる微生物』
問題となる頻度の高い病原体は表2のようになっています。70年代まではグラム陰性桿菌が主流でありましたが、80年代以降はグラム陽性球菌の増加、真菌の増加が特に指摘されていた。背景にはキノロンなどのグラム陰性桿菌に有効な抗菌薬の使用、血管カテーテルの使用の増加があったと考えられている。そして最近はまたグラム陰性桿菌が増加傾向にあるとされています。
抗がん剤使用中の場合は抗癌剤によって直接的な皮膚や粘膜のバリア機能の破綻が生じる。抗癌剤による粘膜炎は消化管系全体に生じ,細菌が消化管内の細菌叢から血中に流れ込むこと(bacterial translocation)がFN の主な原因であるといわれている。
ブドウ球菌やグラム陰性桿菌、さらにCandidaといった微生物は培養で検出される場合には比較的速やかに陽性になります。問題はCandidaなどの深部感染症を起こしていても培養で検出できない場合が少なくないことが病理解剖などで明らかになっている点である。β-Dグルカンが汎用されているが、真菌感染の検出においてgold standardがないため、この検査の感度、特異度は不明である。β-Dグルカンはあくまでも参考であり、最終的には臨床的判断が優先する。
Candida血症を疑う所見としてはすでに広域スペクトラムの抗菌薬が使用されている、血管カテーテルが使用されている、好中球減少症の期間が1週間以上続いている、喀痰、尿などの培養からCandidaが検出されていることなどが挙げられます。
『感染症を生じる部位』
基本的には不明熱の形をとり、感染巣は不明である場合が多い事を理解しあわてない。しかしながら以下の部位は侵入門戸となりうるので丁寧に診察を行う。
・消化管の入り口(咽頭部、歯周囲、食道)と出口(大腸、肛門周囲)が重要
・眼球
・皮膚
・医療行為関連(骨髄穿刺部、中心静脈などのカテーテル)
・肺
・逆に尿道カテーテルなどによる二次的な感染を除けば尿路感染症は驚くほど少ない。
『発熱性好中球減少症の治療開始』
好中球が1000/mm3以下になると感染症の頻度が増加し始め、さらに500/mm3以下になるとグラム陰性桿菌やグラム陽性球菌による菌血症や重症感染症が急激に増加する、このような患者に発熱が見られた時は培養の結果を待たずに主として好気性グラム陰性桿菌にただちに治療を開始することにより患者の救命率を上げるのが基本である。
『低リスクと高リスクの分類』
米国では在院期間を短縮し外来治療可能な症例を選ぶため、臨床的に感染症などの合併症が少なく問題のない症例を抽出する検討が行われている。必ずしもリスクの低い症例と高い症例を明確に分けることはできないが、臨床的にある程度の分類は可能と考えられている。
基本は『入院して静注による抗菌薬の投与』である。腫瘍の化学療法に精通した腫瘍専門医が限定された非常に理解のある協力的な患者に対してのみ『経口抗菌薬による外来治療』を考慮すべきである。
『治療』
基本的に治療対象は好気性グラム陰性桿菌である。MRSAなどのグラム陽性球菌は検出、同定されてから治療対象としてよい。ただしカテーテル関連血流感染症などが初期から強く疑われるような場合、皮膚、軟部組織の感染症、またグラム陽性球菌の問題が非常に多い施設では最初からグラム陽性球菌にスペクトラムを広げてバンコマイシンを初期から併用してよい。
G-CSF の投与
G-CSF の投与によって,好中球減少や入院の期間を軽減させることは多くの臨床試験で示されているが,死亡率の低下にはつながらず,その利益は少ない。発熱と好中球減少の患者に対してルーチンに使用すべきではない。しかし,肺炎,血圧低下,臓器不全のような重症患者や,骨髄機能の回復が遅いことが予想されるような特別な状況下においては検討され得る。
本日は以上です。『感染症診療マニュアル』から抜粋してご紹介させて頂きました。IDSAのガイドラインも参考にしてください http://cid.oxfordjournals.org/content/52/4/e56.full










