「友達との外食などこれまで我慢していたことができるようになりました」。東京都で二つの団体のパート職員を掛け持ちする三十代女性は、厚生年金に加入したことによる変化をこう語る。
現行制度で厚生年金や健康保険に加入するためには、正社員の四分の三以上(週三十時間以上)の労働時間が必要。女性のように、二カ所を掛け持ちし、正社員並みの週四十時間働いていても、一方で三十時間を超えない場合は加入できない。
女性は今年一月、片方の職場と交渉し、週二十時間のパート労働者として、任意で厚生保険と健康保険に入れてもらい、保険料の月額は計一万一千七百三十八円。国民年金と国民健康保険に比べ約七千二百円低くなったという。保険料が労使折半になるため、月収が低い短時間の労働者の場合、厚生年金への加入で保険料負担が軽くなる。
月収は十七万円で一人暮らし。「七千二百円は二週間分の食費や光熱費と水道代の一カ月分に相当し、とても大きな金額」。職場の理解があって厚生年金に加入できたが「正社員で働きたいのにパートやアルバイトしかなく、将来の見通しが立たない人がたくさんいる。対象者の拡大はそういう人たちにとって光となるはず」と訴える。
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「自分も厚生年金に加入できるかと期待していたが、今回は除外されてしまった。人を雇う以上、きちんと厚生年金に入れてほしい」。先日、日弁連が東京都内で開いた集会で、一人で働きながら二人の子どもを育てる女性は訴えた。
事務のアルバイトで週四日働き、月収は七万~八万円。「何かあっても守ってもらえない」と不安を抱える。
厚生労働省の二〇〇六年度の調査によると、母子世帯になる前に働いていなかった人のうち、調査時点で働いていたのは75・6%。うち、臨時職員やパート職員が51・6%を占め、母子世帯の多くが非正規労働に従事している実態がある。
母子家庭を支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(東京都)の赤石千衣子理事は「若い人たちが社会保険への信頼感を失っている。制度を良くしていくことが必要だ」と、さらなる適用拡大を求める。
正規、非正規にかかわらず、労働者を雇用すれば社会保険の適用を義務付けるべきだとの立場をとるのは、日本女子大の大沢真知子教授(労働経済学)。「もともとパート労働者は親や夫に養われている前提で、労働市場や社会保険制度ができてきた。自力で生活している人も非正規労働になっているのに、セーフティーネットがない」と指摘する。
◆企業反発で対象縮小
短時間労働者への厚生年金などの適用拡大を目指した政府・民主党は昨年9月、厚生労働省の社会保障審議会に特別部会を設置し、検討を進めてきた。当初、雇用保険の加入要件と同じ週20時間以上に要件を引き下げ、拡大の対象は、週20時間以上30時間未満の労働者約370万人とする考えだった。
しかし、試算で半分の保険料を納める企業の負担は年間5400億円にも上るとされ、特にパートの多い流通業や外食産業が反発。週20時間以上の上に▽年収94万円以上▽勤続期間1年以上▽従業員501人以上-の要件も加えた結果、対象は約45万人にまで縮小された。2016年4月の実施に向け、現在関連法案が国会で審議されている。
夫の被扶養者として年収130万円未満のパートで働く主婦からは、要件緩和に反対の声も上がる。


