『サブプライム金融危機』
テーマ:政治・経済
大恐慌が起きなければいいのだけれど。
サブプライム住宅ローン問題を抱える金融経済は2007年8月に最初の直下型の大揺れが起きました。何が原因だったのでしょうか。
2007年12月に出版された『 サブプライム金融危機 21世紀型経済ショックの深層 』(みずほ総合研究所編、日本経済新聞出版社)
は、予備校の名物講師の授業や副読本を彷彿(ほうふつ)とさせます。つまり、「分かった気になる」。大事なことですよね。分かった、ととりあえず自信を持つのは。
サブプライム問題を正面から知ろうとすると、ややこしさに面食らいますよね。ノンエージェンシーMBS、ジャンボローン、コンフォーミングローン、フレディマック、PAC債、ネガティブ・アモタイズド・ローン、CLO、CBO、ABSCDO、ABCP、HEL、SIV、コンデュイット、Alt―B…。
『サブプライム金融危機…』を読む時は、付箋張りや自分なりの索引作りをした方が、理解が深まります。 専門家筋には、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の分析はないので、その点は残念かも。
(ご参考までに、 CDSというのは、言わば企業の生命保険。 企業が借金を返せないデフォルトになった時に備えた仕組みです。
融資した側は、“掛け捨ての保険料”をヘッジファンドなどに売り、取りっぱぐれを防ぐプロテクションというものを買います。売った
ヘッジファンドなどは、プレミアムという名の“掛け捨ての保険料”、つまりリスク請負代金を受け取りますが、企業が倒産したら、
借金返済を肩代わりしなければいけません。CDSのSはスワップ(交換)の意味。1995年ごろから銀行間で始まったけれども、
ここ数年でヘッジファンドなどが参加。保険最大手AIGが熱烈盛んにCDSを取引し、サブプライム問題を契機にCDS市場も危機
的状況となりました。デリバティブは使い方を誤ると、いつもみんなが苦しんでしまう…。政権だって揺さぶられる…。
CDSの仕組みは詳細ならhttp://www.j-cds.com/jp/about_cds.html
)
ニューディール政策、不良債権買い取り![]()
ブラックユーモアのような実話も載っています。
米国で初めて金融機関から住宅ローンでお金を借りたのはリッチさんという自治区保安官。何とも縁起のいい名前の御仁が1831年にローンをスタートしたそうです。住宅修繕費用のローンも、米国で初めて受けました。リッチさんはその後、返済が滞って住宅を手放した…。
『サブプライム金融危機…』によると、現在の住宅金融システムの嚆矢は、住宅差し押さえ増加を受けたニューディール政策の一環。 暫定組織の住宅所有者資金貸付会社(HOLC)が金融機関から不良債権化した住宅ローンを買い取り、借り手に新たに30年間の元本分割返済型で貸しました。
「 銀行監督当局によるサブプライムの判断例 」という表を読むと驚く。借り手が過去5年間で破産したことがあったり、月収から返済額を差し引いた額が生計費に満たないなど。 ローンの内容もすごい。返済額が金利を下回り、その分だけ元本が逓増するネガティブ・アモタイズド・ローンなどが挙げられています。
ネガティブ・アモタイズド・ローンは、ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ先生
も、こっぴどく批判していることは、ご存じの方も多いでしょうね。
一休さんのとんち話のような…![]()
『サブプライム金融危機…』によると、、サブプライムローンが広がり始めたのは2003年ごろ。プライム(きっちり返済できる所得がある)層向けの住宅ローン市場が成熟化したことや、金利上昇がもたらした借り換えのブームが去ってしまったため、「連邦政府支援機関(GSE)が関与しない民間ベースの証券化ブームと相まって(返済能力が低いサブプライム層へのローンが)爆発的な広がりを見せることになった」そうです。
GSEの個別の企業体は、頭文字をとった愛称でファニーメイやフレディマックが有名。伊吹文明財務相(当時)は2008年9月19日の参院の閉会中審査で、政府と日銀が、米国の連邦住宅抵当公庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)が発行した債券を総額約8兆円相当を保有していることを認める答弁をしたことは、新聞でご存じの通り。
それにしても、とんでもないことが起きたものです。
冷戦終結で起きたI T革命と金融工学の躍進、世界的規模の労働人口増、生産地・販路の拡大、先進国長期金利の低水準安定…。 ちょっと先の明るい未来まで続いていた希望の橋は崩落しました。
橋がまだ工事中だったのに、みんなが次々と渡っていくから気が大きくなって、「端をわたらなければいいんだよね」と一休さん
のとんち話顔負けの行動をしているうちに、とんでもないことになってしまった…。 国際金融市場の「時代の気分」は多分、こんな感じだったのでは。
簡髪而櫛、数米而炊,窃窃乎又何足以済世哉。=『莊子』から=
(意訳 髪の毛を一本ずつ選んで櫛を入れたり、米粒を数えて炊くような、そんなコセコセし
たことでは、世を救う、なんてことはできやしませんよ。 超訳 ― イケイケどんどんが大事。)
あるいは、今から考えれば「蛙の願立て」。 あるいは、ダモクレスの脳天に剣がグサッと突き刺さるような、そんな感じでしょう。
米政府は2008年9月19日、民間金融機関から不良債権、不良資産を買い取る現代版RTCをつくる計画を発表しました。買い取り規模は最大で総額7000億ドル(1ドル=105円で換算すると73兆5000億円)。税金を使うため、今までよりも厳しい資産査定が始まる可能性が高い。これまでと同じ資産査定基準でも、最終処理は実現損を大きくさせる恐れがあります。米欧の金融機関は、一段と損失を計上する可能性があるわけです。公的な資本注入は時間の問題なのかもしれません。
FRB(米連邦準備制度理事会)は、850億ドル(約9兆円)を上限に、世界最大、最強、トリプルAが自慢だった米保険会社AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)につなぎ融資をする公的救済を始めました。日銀はFRBに依頼され、日本国内で、初めて米ドルを銀行や証券会社に融資する…。つづく(書評が、ですよ)








