桂米紫のブログ

米朝一門の落語家、四代目桂米紫(かつらべいし)の、独り言であります。


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「僕は、群れるのがイヤでね」

純白の鳩はそう言った。

「僕らの種族は“主体性”というものを重んじない傾向にあるのです。だからほら、あんな風に…」

指をさす代わりに彼は顔をひねって、嘴で指し示した。

公園の隅で三十羽程の土鳩が、地べたに落ちた人間の食べこぼしを求めて、首を前後に振りながら忙しなく歩き回っていた。

「僕ぁあんな“団体行動”には向かないのです。どうしてアイツ達は、ああも浅ましいのだろう…」

そう言うと彼は土鳩の群れに軽蔑のまなざしを向け、哀しそうな声で「プルップー」と鳴いた。


私は、心底感心してしまった。

その落ち着きのある話し振り、知性を宿した瞳、神々しいまでに純白な羽毛…どこを取っても、到底ただの鳩とは思えなかった。

公園のベンチに腰掛け、缶コーヒーを飲み菓子パンを囓りながらその話を聞いている私の方が、余程馬鹿のように思えてきた。


「へぇー、貴方は立派な鳩なのですね」

私は何とか自分の尊厳を保とうと思ったが、口をついて出たのはそんなお追従みたいな台詞だけだった。

その“鳩優位”の妙な空気を誤魔化す事もままならず、する事もない私は仕方なく、所在無さげに再び菓子パンに齧り付いた。

「心此所に在らず」だった為か、私の口の端から菓子パンの屑がボロボロとこぼれ落ち、私は更に情けない気分に陥った。


しかし、そんな気分も長くは続かなかった。

それまでさながら哲学者のような空気を醸し出していた純白の鳩が、私のこぼした菓子パンの屑の上にバサバサと降り立ち、そのパン屑を凄い勢いで啄み始めたのである。

その姿は、他の凡庸な鳩と何ら変わりの無い浅ましいもので…私は急に、全てが馬鹿らしくなってしまった。


桂米紫のブログ-冬の樹.jpg
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