桂米紫のブログ

米朝一門の落語家、四代目桂米紫(かつらべいし)の、独り言であります。


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今日は久しぶりに、映画館へ映画を観に行く。

…と言っても「ロードショー作品」ではなく、五十年以上も前のフランスの短編映画。

‘梅田ガーデンシネマ’で一日一回だけ上映されている、アルベール・ラモリス監督作品…『赤い風船』と『白い馬』である。


どちらも僕の大好きな映画(特に『赤い風船』は二十年近く前に観てから、いまだに僕の“ベスト1”の座を譲らない作品)なのだか、今までビデオ…もしくは衛星放送で、ブラウン管を通じてしか観た事がなかった。

今回は待望のリバイバル上映という事で、何としてもスクリーンで観てみたく、一人で映画館に赴いたのだ。


劇場に着いてから気付いたのだが、今日は映画割引デー。
その為もあってか、劇場は満席だった。

「割引デーだから観よう」というお客さんもいたかも知れないが…どんな事情であれ“僕のベスト1”にも関わらず、周りに観た人のほとんどいない『赤い風船』をたくさんの人が観に来ているというのは、何だか我が事のように嬉しかった。

そして、スクリーンで初体験する『赤い風船』と『白い馬』は、やはり金無垢のような映画だった。


『赤い風船』も『白い馬』も、とてもシンプルな映画である。
物語的にも、小難しい所は一つもない。

ただその【シンプルさ】が、全て【感覚】として心に沁みてくる。
“視覚”で捉えた映像が、そのまま“心”に直結するような感じ…とでも言おうか。


およそ芸術というものは、僕は「頭で考える」のではなく、「心で感じる」ものだと思っている。
その【感性に直接伝わる】感覚が、アルベール・ラモリスの映画には満ち溢れている。
まさに、「映画の塊」みたいな映画…。

そして、両作品ともエンディングは童話の如くファンタジックでありながら、そこに一抹の哀しさが漂うのだ。


『白い馬』の主人公である少年は、馬を我がものにしたいと企む大人達の追跡を逃れて、大好きな白い馬に跨がったまま、海の彼方へと消えてゆく。
大人達が己の物欲を悔やみ、「馬はお前にやるから戻ってこい!」といくら叫んでも、少年と白い馬は戻ってはこない。
波の間に遠く見えなくなってゆくその姿に、ナレーションがかぶさる。
「馬は、少年を遠い遠いところへ連れてゆきました。そこは馬と人間が、共に幸せに暮らせる楽園でした」


『赤い風船』の主人公の少年は、パリの下町で大きな赤い風船と出逢う。
どこまでも少年の後を付いてくるその素敵な風船を悪ガキ共が妬み、ついには石をぶつけ足で踏み付け、無残にも割ってしまう。
すると悲しむ少年の元へ、町中の風船という風船が集まってくる。
嬉しそうに風船を手にしたまま、少年は大空高く舞い上がり、色とりどりのたくさんの風船たちと共に、どこまでもどこまでも空を昇ってゆく…。


どちらも“メルヘン”を装いながら、その底には“現実と相容れなかった者の悲哀”が滲んでいるようで、観る度に涙の零れる…哀しくも美しいラストシーンである。


「虚」と「実」の間に、上質の「ファンタジー」は存在する。

やはり“ベスト1”の座は、当分揺るぎそうにない。


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