桂米紫のブログ

米朝一門の落語家、四代目桂米紫(かつらべいし)の、独り言であります。


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黒澤明監督、晩年の作品『八月の狂詩曲』を、久しぶりにビデオで見た。

これは、僕がリアルタイムで触れる事の出来た数少ない黒澤監督作品の一本で、映画館で初見した時には上映後、席を立てないぐらいに感動し号泣したのを覚えている。

ひょっとしたら、僕の一番好きな映画かも知れない。

しかし悔しいことにこの作品は、世間の評価がさほど高くないような気がする。

公開当時にも、「期待外れ」だの「黒澤明は衰えた」だのといった感想を、よく聞いたものだ。

確かに『八月の狂詩曲』には、『七人の侍』や『用心棒』といった往年の黒澤作品のような、観客の襟首を掴んで放さない「アクション活劇」の魅力はないかもしれない。

でもこの作品は、往年の名作群に決して引けをとらない…いや、どちらかと言えばより純粋な‘映画らしい映画’だと思うのだ。

『八月の狂詩曲』は、長崎の田舎に住むおばあちゃんと、その家に遊びに来た四人の孫たちとの、ある夏休みの出来事を描いた作品である。

ラスト…激しい嵐の空を見て、おばあちゃんの心の時計は、原爆が投下された日に逆戻りしてしまう。

激しい暴風雨の中、傘をさして一人ヨロヨロと、爆死したはずのおじいちゃんを長崎の町まで探しに向かうおばあちゃん。
…その後を、四人の孫たちが必死で追いかける。

傘をさしたおばあちゃんは、激しい風と雨に今にも飛ばされそうになりながらも、しかしひたすらおじいちゃんの事だけを思って、脇目も振らずに長崎の町へ向かって歩いて行く。

「おばあちゃーん」「おばあちゃーん」という孫たちの声も、次第に嵐の音にかき消されてゆく。

嵐が一段と激しくなり、ついにおばあちゃんの傘が‘バサッ!’っとひっくり返る。

その‘バサッ!’という音と共に、現実の音が全て消え去り、同時に児童合唱団による「野ばら」の、澄んだ歌声が流れ始める。

…というこのラストに、完全にやられてしまった。

何もここに、「お涙頂戴」の要素はない。

ただ、何故だか分からない、理屈抜きの‘純粋さ’と‘力強さ’に、観る度涙が止まらなくなるのだ。

皆さん、『セカチュー』とか『ピカチュー』とかも面白いかも知れませんが…一度お暇があれば『八月の狂詩曲』を、是非御覧下さいまし。

あなたのお気に召すと良いのですが。


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