Screamadelica 20th Anniversary Edition | Yokohama Beat Junkie

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自由と孤独、音楽を愛する旅人

今でこそロックとダンスミュージックの境目は完全に崩壊しているものの、90年代初頭は両者の間に圧倒的な壁が立ちはだかっていた。ロックリスナーはロックを、クラバーはダンスミュージックを聴き、両者が交わることはまずなかった。

当時20代前半だった僕はイビサ島やUKの倉庫から聴こえてくるダンスミュージックやを聴き初めていた。それとは別に、芳醇なグルーヴに囲まれたロックが大好きだった。シアトル発のグランジ~オルタナティブロックは勿論の事、中期ストーンズを根っこに持つようなロックに惹かれていた。だからたまたまこのアルバムを手にして、リードトラック「Movin’On Up」が流れてきたときは即座に反応した。ただ2曲目以降の曲の流れに面食らった。「…これがロックなのか?」。質感というか目に見えぬ肌触りはロックであるものの、体裁は明らかにハウスであり、テクノであり、ダブだった。でも当時の音楽シーンはそんな安っぽいジャンルの壁を押し流してしまうほど、混沌としたものだったことを覚えている。

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Screamadelica 20th Anniversary Edition : Primal Scream

さて、「世紀の名盤」という陳腐な言葉が一番しっくりくる本作が、20周年記念盤としてリイシューされました。この記念盤には様々なバージョンがありまして、アナログ盤やスリップマット、Tシャツなどが付属した超豪華BOXセットもあれば、Dixie Narco ep(過去レビュー )との2枚組もあったりと、どれも「帯に短し襷に長し」でした。しばらく指をくわえていたところ、5月末に日本独自企画としてリミックスCD、ライヴCDとDVDという完璧な組み合わせバージョンが登場したのでソソクサと購入。

リミックス集に名曲「Loaded」のオリジナルとなる「I'm Losing More Than I'll Ever Have」がボーナストラックとして収録されているのが心憎い。更に素晴らしいのが、92年にハリウッドのPalladiumで収録されたライヴ。アルバムの曲順をなぞらえながら、「I'm Losing More Than I'll Ever Have」を、更には「Loaded」を演奏しているのがファンの心をくすぐる。しかもアルバムタイトルを冠しながら、アルバム未収録となっている陰の名曲「Screamadelica」も演奏されている。更には更には「麻薬の禁断症状」という意味のスラングであるジョン・レノンの「Cold Turkey」と、ピストルズもカバーしたThe Stoogesの「No Fun」も演奏しているのは最高にロック。

DVDにはメイキングと各収録曲のPVが収められているんだけど、特に前者が興味深い。メンバー始め制作関係者のインタビューが収録されており、制作に関わる逸話や裏話を紳士的に語っている。2曲目「Slip Inside This House」ではインフルエンザで倒れたボビーの代わりに、Robert Youngが歌っていることを初めて知った。しかもボビーの歌い方を完コピしている(笑)。他にも興味深い逸話が多数収録されており、ファンは必見の映像となっています。いや、この企画盤自体が家宝級の作品です。