「異常行動」の機長を乗客取り押さえ、米旅客機が緊急着陸[サンアントニオ 27日 ロイター] 27日に米ニューヨークからラスベガスへ向かっていた格安航空会社..........≪続きを読む≫「盟主ミーシャ。ミハイル・ウラジニコフの消息が判明しました」
「同志クレムリン。大儀であった。して、ミハイルの身柄は?」
「現在ミハイルはアメリカにいます。ジェットブルー191便でラスベガスに向かっています」
「確かか?」
「はい、裏は取れています」
「ベガス!なんということだ!ベガスはミハイルとその仲間の勢力圏。ベガスまでやつを逃してしまったらもうお終いだ。亡命に成功されて国家機密を漏らされる前に、ヤツを始末しなければ我が国はお終いだ」
「ベガスでヤツを殺るわけにはいかないのでしょうか?」
「それは難しい。あそこにはやつの仲間の根城がある。応戦しても我らには太刀打ちできるだけの力がない」
「盟主ミーシャ。どういたしましょう?あと数時間でミハイルはベガスに着陸いたします」
「同志クレムリン。私に考えがある。時間がないがやってみよう。やるしか我らには選択肢がないのだ。大丈夫だ。私に策がある。運は我らに味方している」
順調なフライトだった。
機長はこの道30年のベテランパイロットだった。
離陸さえしてしまえば、あとは自動操縦でも問題はない。今日もいつもと同じように同じ手順で同じ作業を繰り返していた
「君は副パイロットになって、どれくらいになる?」
機長は隣に座っている副機長に話しかけた。
「はい。私がこの機に乗ってから、今月でちょうど一年になります」
答えたのは20代後半の誠実そうな青年だった。
「どうだね?少しはこの仕事にも慣れてきたかね?」
「いえ。これだけ神経を酷使する仕事だというのに、ほとんど休みも取れませんし、フリーな時間も少ないので、正直参っております。機長はタフですよね。今日もベガスで回す予定ですか?」
「いや、こないだ大損したばかりなんで、今日は静かにしているよ」
厚い雲を抜けると眼下には山と砂漠、そしてその間に都市が見えてきた。
そのときだった。
モニターの右にある無線が突然、音を拾った。
「191便。聞こえるか。こちらはアルカイダ。ビンラディンの意思を告ぐものだ。一時、無線をジャックしている。機長に告ぐ。今すぐ、この機を旋回し我らが言う空港へ引き返されたし。今すぐ、この機を旋回し我らが言う空港へ引き返されたし」
「こちら191便機長。その要求には応えかねる。できるはずがない」
機長は動じることなく答えた。
「そちらには、130数名の乗客が乗っていることは分かっている」
相手はさらに続けてきた。
「何が言いたいんだ?」
「テロリストが要求をするときに、何の準備もしていないと思っているわけでもあるまい。たとえば、機内に爆弾が仕掛けられているとか」
「無理だ。要求には応じられない。できるはずがない」
「乗客は皆死ぬぞ。お前が殺すんだぞ。いいんだな」
「ハッタリだ」
「ハッタリではない。なんなら証拠をお見せしよう。右上だ」
「右上?」
そのとき、激しい音とともに計器が爆発して砕け散った。右上の計器だった。
機長の顔色が変わった。
「まだ、ブラフだと思うか?では、左下だ」
今度は左下にある床の一部が爆発して鉄板の下の地肌がのぞいた。
「もし、まだ疑っているようだったら、今度は客室に・・・・」
「わ・・・わかった。引き返そう。引き返す」
機長は取り乱しながら答えた。
しばし沈黙があった。
「賢明な選択だ。では、これから言う暗号が表す空港に着陸されたし」
相手は暗号を読み始めた。
「0995mif; /koi/……」
「これは?」
「お前が解くんだ。この暗号通りの空港に着陸しなかった場合、どうなるかはご想像に任せる。答えが出る頃には、もう答えを知ることもできないだろうがな」
「待ってくれ。どこの空港だ。分からない。暗号なんて解けない。何を言ってるのか全然分からないんだ。お願いだ。教えてくれ」
無線は切れた。
「機長、どうしましょう。このままでは、この機は爆発させられてしまいます。暗号をと解いて、やつらの言う通りにしなければ」
副機長の声が呻くように言った。
「分かっている。分かっているのだが、どうにも分からない。頼む、アルカイダよ。もう一度連絡をよこしてくれ、お願いだ」
機長は無線のボタンを何度も叩くように押してみた。しかし、無線はテロリストにも管制塔にもつながらなかった。
「機長、早くしないと、我々は・・・」
「分かっている!分かっているんだ!」
「機長!」
機長は頭をかかえて、思わず操縦室を飛び出していた。
客室に飛び込み、彼は頭を抱えた。
「もうおしまいだ。この機は墜落する。爆発だ。イラクのアルカイダ。ああ、神様どうかお救いください。どうか私たちをお助けください」
彼は天井を仰ぎ、目をつむった。
狂気から醒め、正常を取り戻した彼は再び操縦席に戻ろうとした。
しかし。
扉は中から鍵をかけられていた。
「おい!開けろ。開けるんだ。わかってるだろ。アルカイダが今にもこの機を爆発させようとしているんだぞ。イラクが。アルカイダが・・・。時間がないんだ。悪ふざけはよせ」
額に汗がにじみ、シャツの背中まで汗でびっしょりだった。
いかに呼びかけても、扉を叩いても中からの応答はない。
彼は、壊れんとばかりに扉を叩き続けた。髪は降り乱れ、目は血走り、まるで狂人のようだった。
屈強な乗客に取り押さえられたとき、彼は叫んだ。
「この機内には爆弾が仕掛けられている。イラクだ。アルカイダだ。皆、祈るんだ。もう終わりだ」
それからすぐ、無線の電波がつながり、管制塔と連絡を取った副機長は、途中のテキサスの空港へと着陸をした
機長は病院へと連行された
「盟主ミーシャ。ミハイルのベガス入りを食い止め、身柄を確保されたとのこと。おめでとうございます」
「うむ。テキサスは我らの勢力圏内。ベガスでミハイルを待ち受けていた奴らを見事出し抜くのに成功したな」
「アルカイダを名乗ったというのも考えましたね」
「左様。アメリカはテロには敏感だからな」
「しかし、うまくいったものですね。拳銃一つ使うことなく」
「同志クレムリン。我らには運が味方していると言ったではないか」
「と言いますと?」
「実はあの機内には我らに通じている者がいたのだよ。後で使おうと思って1年前から潜らせておいた同志が」
「もしかして・・・・盟主ミーシャ」
「そう。副機長だよ。我らの無線と合わせて、こっそり仕掛けた小型の爆薬を爆破してくれたのだよ」
「なるほど、それで機長は、我らの言うがままに機内に爆弾が仕掛けられていると信じ込んだわけですね」
「その通りだ。同志クレムリン」
「我らの無線と同時に操縦室で爆発を起こし、機長に機内に爆弾が仕掛けられていることを信じ込ませた。そして、機長の不安を煽り、操縦室から締め出し、我らの根城のあるテキサス空港へと飛行機を導いた。そして、ミハイルは我らの手に落ちた。ベガスでミハイルを待っていた連中には、突然のことでどうしようもなかったというわけど」
「ところで盟主ミーシャ。国家機密とは一体何だったのでしょうか?」
「兵器だ。アメリカを根源から壊滅させながら、足がつくこともない細菌兵器の一つということだ。伝染病のようにな。同志クレムリン、この機密を君に知らせた以上、君にもこの重大任務に加わってもらうぞ」
「はい。党と我が国のために全ての身を捧げる覚悟であります」
「立派だよ、それでこそ我が同志クレムリンだ」
「ありがとうございます。盟主ミーシャ。それにしても、機長は気の毒でしたね」
その口調には、むしろそれを面白がる風があったが。
「彼は我らの英雄だよ。もちろん我々のな」
二人は声をあげて笑った。
「ところで、あの暗号は一体、何だったんでしょうか?」
「あれは、暗号なんてたいしたもんじゃない。ただのアラビア語だよ」
「で、そのアラビア語で、なんと言っていたんでしょうか?」
「すばらしい空の旅を!だ」
二人は声をあげて笑っていた。
ニュースでは、機長の取り乱しを、劣悪な労働状況によるストレスと報じていた。
真相は、他に知るものはいない (完)
ニュースネタを元に、ショートショート書いてみました。お粗末。