2013年04月04日(木)

九死に一生Ⅴ

テーマ:過去の想い出

          「お待たせしました」


私は愕然とした。



貴方ですか?・・・まさか・・・貴方が・・・



そう、その執刀医こそ私たちにパパがくも膜下出血で一刻の


猶予も無い事を一番最初に慌てて・・・急いで・・・早口で・・・


説明してくれた女医だった。



愕然としたと言うのは、どう見ても30代前半。


若い=経験が浅い 経験の浅い医師に、こんな重篤なパパを助けられるの?


正直そう思った。


今から思うと人を疑うなんて本当に嫌な人間だと自分でも思った。



人間はいざっていう時、その人の本性がでるんだよ。



良くパパが言ってた事、真に私の事だと思った。







女医は私たちに説明を終えるや否や肩まで伸びた髪を


なびかせ、前を開けたままの白衣をひるがえして


パパの元へと走っていった。




そして7時間30分後、さながらキューティーハニーのように手術着のまま私たちの前に現れた。


額の半分くらいまで、掛かった手術帽は長時間の格闘を物語るかのように汗でびっしょりと濡れていた。


パパの出血が飛び散った女医の足元はその格闘の壮絶さを教えてくれた。



女医はそれらを拭う事もなく、そのままの姿で私たちのもとに来てくれた。


手術前に私たちに説明にした時の早口とは、想像もつかないほどゆっくりと低い声で話し始めた。



そしてパパの状態より先にくも膜下出血の説明とそれにかかった場合の死亡率から話し始めた。


くも膜下出血とはどういうものか・・・一通り説明の後、その状態により5つのグレードに分けられ,


数字が大きいほど生命に関わる危険度は高くなる事。


グレード1・・・グレード2・・・グレード3・・・グレード4・・・グレード5・・・



くも膜下出血グレード5の場合、救急車が来るまでに


50%の方が亡くなり、救急車の中で更にその50%の


方が亡くなり、手術中に更にその半分の方が亡くなり、


手術をした後も24時間以内に・・・その半分の方が亡くなり、


48時間以内に更にその半分・・・そして二週間以内に・・・


4週間以内に・・・更に・・・更に・・・。






落雷を受けたような衝撃が体を突き抜けた。





要はこの時点でパパが生きてる事、それ事態不思議な事で、


これから先どうなっても当然の事だと言いたいのだろうと理解した。



それでも私は聞かずにはいられなかった。


女医が否定してくれる事を期待してどうか首を振ってくれと願いを込めて・・・



パパが生きられる確率はゼロ%なんでしょうか?




医師はしばらく考え、ゆっくりと首を振った。(良かった!)



ゼロではありません。しかしながら生命を取り留めても、重い意識障害は残るでしょう。



体の機能は良くて車いす生活です。それ以上の事を望む事は(ご家族の)皆様も辛くなるでしょうし、Kさんにとっても負担になります。



今日の手術も治療と言うよりも処置と思って下さい。


先ほども申し上げたように、これから24時間、48時間、1週間、2週間と容態が急変するいくつも迎えます。




最後の方は女医の説明も遠くに聞こえ、耳に入らなかった。


茫然としながら部屋を出ると、虹さん夫妻も茫然と立ちすくんでいた。



私は女医から説明を受けたありのままを伝え、一緒にパパに会ってもらおうとパパの家族にお願いをした。



ずっと家族と同じ思いでパパを案じて一睡もせず待っていた姿を忘れる訳はない。


当然家族は快諾してくれた。



5人づつ4回に分けて、パパのいるICUに入った。


パパは決戦を終え疲れ果てたように眠っていた。



生命を取り留めても脳のダメージがかなりひどく重い意識障害は残るでしょう。


良くて車いすです。それ以上の事は望まないで下さい。



女医の言葉がよみがえる。耳から離れない。


ここにいるパパは私が知ってる昨日までのパパではないのか・・・。



パパがパパでなくなる・・・


パパが私の事をわからなくなる・・・


昨日まであんなに元気だったのに・・・


病気どころか風邪ひとつひいた事ないのに・・・



器用に釣り糸を通して得意げな顔で大好きな釣りを楽しむパパ・・・


カラオケで 人目もはばからずラブソングを唄うパパ・・・


大好きなアメリカンドッグを頬張る時の満足した顔のパパ・・・



仲間の事が大好きで大事で自慢だと言ってたパパ・・・


私の事は人前ではいつもかっこつけて威張ってた

パパ・・・


倒れる前の年、初めて新幹線に乗ったと大はしゃぎしたパパ・・・


不器用で喧嘩早っくって、それでいて人一倍優しくて・・・


いっつも人の為に熱くなり、励まし上手で・・・


パパに激励されれば誰でも有頂天になるほど勇気がでる・・・


どんな時もパパは魔法の言葉で元気を配る・・・奇跡の人・・・



会いたい・・・昨日までのパパに会いたい・・・


聞きたい・・・昨日までのパパの声が聞きたい・・・


語りたい・・・昨日までのパパと話したい・・・




返して!私とパパの日常・・・返して!!


平凡でありきたりのくだらない日常・・・


それでも充分幸せだったの



お金がなかった20代前半・・・お風呂もない古い木造のアパート・・・


「神田川」を地でいっていたような生活だったね。



本当にお金に困った時、二人の視線が小銭入れのブタの貯金箱。



どちらからともなく「割ろう!」と目で合図・・・


「2千円くらいあるかな?」


「3千円はあるよ!」


せいので割ったらなんとそこには1万円札が・・・



たった1枚の1万円札に天からの贈り物だ!と二人で手に手を取り合って喜んだよね。



その1万円札握りしめて買ったおかずがコロッケとメンチカツ・・・。



先の事考えたら、ぜいたくなんて出来なかった。



半分づつ分け合って食べたコロッケとメンチカツの美味しかったこと!



忘れないよ!


そして唯一の贅沢がバイクの二人乗りで「♪小さな石鹸~カタカタ鳴らし~♪」って



大きな声で唄いながら行った横丁の風呂屋・・・楽しかったね。



お互い、実家に帰れば何不自由ない生活が出来たけど、意地があったよね。



そして私が病気になって・・・パパが私を一生護る!と約束してくれたんだよね。





そして私は決めました。




たった1枚の1万円札に大喜びするパパ・・・



コロッケとメンチカツの夕飯を美味しそうに食べるパパ・・・



私を一生懸命看病してくれて子供のように泣きじゃくるパパ・・・




そんなパパに一生ついて行こうと決めました!





こうして私たちは平成元年7月に完全に一緒に暮らす事になりました



ママを絶対!幸せにする!もうお金に困らせないようにする!


そして家もプレゼントしよう!

ママだけじゃなく、ママを大事にしてくれる人にも

美味しい物をお腹いっぱい食べさせてあげられるくらい稼げるようになる!



いえいえ、私がパパを幸せにします!

パパに美味しい物をたくさんご馳走できるようにする!

そして、パパだけじゃなくパパを大切にしてくれる人にも

美味しい物をご馳走できるように私も頑張る!!



ママはいいんだよ。ママは働かなくていいの。


いいえ私も頑張ります!



この当時は贅沢な外食も、家を持つ事も夢のまた夢だった。



しかしお互いがお互いを幸せにする。



そこには一切の依存もなく、ただ・・・ただ・・・



信頼と尊敬のみだった。





そしてその夢を実現すべくがむしゃらに働いた30代・・・



自分たちの贅沢を後回しにして、いつもまわりの友や家族に感謝を伝える事を最優先にしてきた40代・・・


気が付いたら全ての夢を実現出来るようになった矢先の事だった。







悔しかった!残念で仕方なかった。

 

これからだったのに・・・これからゆっくりしようと思ったのに・・・





悔しくて・・・悔しくて・・・



悲しくて・・・悲しくて・・・



苦しくて・・・苦しくて・・・





息が出来ないほど辛かった。



虹さん夫妻にお礼を言い病院を出た時は外は既に白くなっていた。


しかし憎らしいほど、まだどしゃぶりの雨が降っている。


家に電話をかけると電話の向こうで毛深い息子がまだ大泣きしている。


全てをわかっているかのように声をからして鳴いている。

 

その声にまた涙が溢れ出て止まらない。


私は鉛のように重くなった体を妹に引きずられるようにして家路に向かった。




続く。


今回もママがすべて書きました。






















































































そしたらなんと!1万円札が・・・!!嬉しかったね!


たった1枚の1万円札にあんなに手に手を取り合って喜んだ事、今でも忘れない。


その1万円札握りしめて買ったおかずが近所の肉屋さんで売ってる揚げたての


コロッケとメンチ・・・先の事考えたら贅沢できなかったよね。


二人で半分づつ分け合って食べたコロッケとメンチ・・・最高に美味しかったね。












AD
いいね!した人  |  コメント(4)  |  リブログ(0)
最近の画像つき記事
 もっと見る >>

AD

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス

      ランキング

      • 総合
      • 新登場
      • 急上昇
      • トレンド

      ブログをはじめる

      たくさんの芸能人・有名人が
      書いているAmebaブログを
      無料で簡単にはじめることができます。

      公式トップブロガーへ応募

      多くの方にご紹介したいブログを
      執筆する方を「公式トップブロガー」
      として認定しております。

      芸能人・有名人ブログを開設

      Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
      ご希望される著名人の方/事務所様を
      随時募集しております。