<前回までのあらすじ>
…前記事『熊本奇行(39度2分) 第一夜』参照願いますwwm(_ _)mモウシワケゴザイマセヌ
ジングルベルも鳴り止んだ年の瀬のある日
季節にそぐわぬ温かな午後にそれは起きた。
千葉県某所を走る幹線道路…16号線沿いの支店閉鎖の為に
県内各支店のスタッフ数名が集まり、片付けを開始したのが概ね午前9時頃。
僅か30分の昼食休憩を挟み、突貫作業の末、15時過ぎにはきれいさっぱりと片付き、照明用の電球まで外された支店の中はさながら廃墟の如く。
営業当時の人気(ひとけ)や賑わいが嘘であったかの様に、暖かな陽気の中にあって薄暗く、異質な寒気すら漂っている。
『…店って、誰もいないのに人の気配がしますよね…』
車座の輪の中で、若手支店長のF島がぽつりと呟いた。
思い当たるふしでもあるのか、皆一様に、暫し押し黙るものの、数秒の後には女性スタッフ達から『最低』『そんなだから彼女にフラれる』云々の非難がF島に浴びせられる。
しかしF島はニコリともせず、真顔のまま言葉を続けた。
『最初は気配だけだったんですよ』
『でも、何時も同じ所に』
『何人も見ていて』
『黒い服に黒い髪の若い男で』
『白い顔は見えるのに目が…』
『おいF島君、いい加減にしろよ!』
私の一喝でF島は黙り、薄暗い建物の冷たい空気中に言葉の余韻が吸い込まれてゆく…
『ピリリリリッ』
静寂の中、F島のケイタイ電話のコール音が鳴る。
注視の中、ケイタイをパンツのポケットから取り出し、F島が画面を見つめる。
『(F島の支店の)K美ちゃんです』
一同、内心ホッとし、張り詰めていた空気が安堵に変わる。
K美はアルバイトながらベテランであり、会社からの信頼も厚い故に、本日もF島に代わり支店の留守を預かっている事実を、ここに集う誰もが周知していた。
『もしもし?…うんうん…』
業務連絡であろうK美とF島のやりとりを、皆、温かく見守っている。
『え?…そんな事、大丈夫だよ…気のせいだって…』
F島の表情と声が強張る。
『ちょっと待ってよ、こんな昼間にそんな…もしもし?』
再び緊張が走る。
『…もしもし?K美?…』
『ギャアァ---ッ!!』
恐怖…寧ろ絶望を感じさせる絶叫がF島のケイタイから響きわたる。
『イヤァ-ッ!見ないで!…こっちを見ないでっ!』
ケイタイのスピーカー越しに聞こえる絶望的な絶叫は、まるで映画のワンシーンでもあるかの如く何十秒もの間鳴り止まず、全員が一様に凍り付き、唯々ケイタイを見つめていた。
『イ、イャァ--ッ!!………』
悲鳴が止み、薄暗がりの中、沈黙と恐怖と冷気だけを残してケイタイの通話は途切れた。
数秒後、冷静さを取り戻した私達は手分けをして警察や警備会社、支店近くにいる社員やスタッフに緊急連絡を入れ『とにかく直ぐに、今すぐ支店に向かって欲しい』『K美の身が危険』の旨を伝え現場に向かわせる手筈をとり、その間にF島を含めた数名のスタッフが車で現地へと急ぐ。
数十分後、警察からのK美が無事であるとの連絡があり、次いでF島他数名からの報告の電話が入る。
F島達の後を追って支店へ向かう車の中、所謂ハンズフリーで聞いたK美の話を要約すると…
独り、支店で留守中に、『今、誰も絶対に来店しない』と(何故か)解ってしまい、急に不安になった。
心配になり窓から外を見ると、(江戸川沿いの)街道にも拘わらず車も走っておらず、人通りも無い。
昼間にも拘わらず、異様な寒気と背後に気配を感じて恐る恐る振り向くと、室内奥の裏口前辺りに黒い人影らしきがたたずんでいた。
(この段階で、K美はF島にケイタイ電話をかけた。)
ぼんやりとしていた黒い人影が段々とその輪郭を現し、黒い服に次いで黒い髪、やがて青白い顔がはっきりと見えた。
唯一つ、目だけを除いて…
(『目を…目を見たらいけない!』)
絶叫しパニックになりながらも、本能的に何かを察知したK美は黒い男から目を背ける。
次の瞬間、支店のBGMが鳴り止み、スピーカーから複数の男女の声で鳴咽らしき声が漏れる。
室内の至る所に黒い影が浮かび、やがてその輪郭をはっきりと現し…一様に、青白い顔をK美に向けてじわじわと近づいて来る。
絶叫と鳴咽の後、黒い影達に囲まれて床にへたりこむK美…
『…見て』
黒い影の声が聞こえる。
『…見て』
『見て』
『見て』
『見て』
『見て』
『見て』
『見て』
『見て!』
『見て!』
『見て!!』
黒い影達の青白い顔がK美に近付く。
『違うから!私じゃ無いからっ!!!』
K美が叫んだ瞬間、裏口の扉が開き、警備員が室内に入って来た。
その後、警察や近隣にいたスタッフ、車で向かっていたK島達も到着し、私の元へ次々と連絡が入ったのであった。
『まあ、本人が何でも無いと言うのですから』
事情聴取を終えた警官らが引き取り、スタッフ達も閉鎖片付け中の支店へ帰した後、現場には私とF島、K美の3人が残った。
『後は僕に任せて、Nさんは戻って下さい』
F島の言葉を受けて、私は裏口へと向かう。
先程まで泣きながら、ひたすら鳴咽していたK美が俯(うつむ)いるので『大丈夫?』と声をかけた。
『…』
小さな声がよく聞こえず、俯くK美に顔を近付ける…
『見て』
俯いていた顔を上げ、K美が青白い顔で微笑む。
目は見られなかった。
『ズズズッ…いったい何だったんですかね…』
『ズズッ…知らん…』
支店の片付けが完了し駅近のラーメン屋にて、あまり美味く無いラーメンを啜(すす)る。
『あまり美味く無い』とは言い得て妙であり、中国系看板娘の『雪(シャオ)嬢』の笑顔(とそれ以外の何か)に期待して、男達は皆、今日も不毛な足を運ぶのである。
雪嬢:『何時もアリガト。ラーメン美味しかたか?』
N:『うん、最高♪』
世の男達がいとも簡単に嘘つきに早変わりする瞬間である。
麺が伸びる程ゆっくりとした食事を終えた後、会計をし、釣銭とレシートを手渡そうとした時、雪嬢の動きが止まり、両目が大きく見開かれた。
N:『…ど、どうしたの?』
雪嬢:『…何でもナイヨ』
何やら不気味な感触を残しつつ、わたくしの預けておいたコートを雪嬢が運んで来る。
コートを着終えた私の背中…肩の辺りを、雪嬢がさりげ無く『サササッ』と払う。
N:『……何かついてる?』
雪嬢:『大丈夫、今払たヨ』
まるで当然のサービスであるかの如く、にっこりと微笑む雪嬢の顔を、無意識のうちにしげしげと覗き込む…
『そんなに見たらダメヨ』
照れ笑いも素敵な雪嬢…
いったい何が憑いて何を払タデゴザイマショウカww(T Tゞ
追伸…
謹(啓)賀新年
明けましておめでとうございます(^ ^ゞ
昨年はご訪問頂き、有難うございました(霊…元い、礼)。
人様のブログへペタコメ巡りのお邪魔ばかりでございますが
来年もぼちぼちと己のブログを更新して参りますので
本年も何卒、宜しくお願い申し上げます(^ ^ゞ
年越残業中N:謹言