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 政権交代以来、日本経済の再生を模索するアベノミクスの様々な政策の中で、日銀による金融政策、財政出動の効果は、現れていると思いますが、この2つに加えて、最も重要なのが、民間主導の成長戦略だと考えます。

 特に、成長戦略の中でも最も重要な具体化が、オープンイノベーションによる新産業創出だと思われます。そこで、今回は、IoT産業創出のための国際的ベンチャーキャピタル事業を行うべく、新たに、本日、設立しましたグローバルIoTテクノロジーベンチャーズ株式会社(以下、GITV社)について、その背景と活動方針について述べてみたいと思います。

1.オープンイノベーションによる新産業創出の必要性

 新産業を創出するのは、技術革新が起こっている分野におけるベンチャー企業の創業と、大企業の同分野における事業参入の相互作用が起こることにあります。ここで日米におけるGDPの成長の差を比較してみますと、1990年代前半から起こった技術革新はインターネットで、1994年から2014年までの20年間でのGDPの変化は、日本は、4.8兆ドルから4.6兆ドルと微減していますが、米国は、7.3兆ドルから17.4兆ドルへと2.4倍に増大しています。その要因は、20年間に起こったヤフー、グーグル、アマゾン等の新興企業が創り出した新経済の価値創造によるものです。実際に米国の20歳未満の新興企業上位10社と、日本企業の上位10社(20歳未満の企業はゼロ)の時価総額は、各々1.26兆ドルと1.068兆ドルとなっており、米国で新たに起こった新興企業上位10社総額が、日本の既存企業上位10社総額を上回っています。

2.日本のベンチャーキャピタルの課題

 ベンチャー企業による新産業創出にとって重要な役割を果たすのが、VC(ベンチャーキャピタル)でありますが、日本のベンチャーキャピタルには多くの課題があります。元来、ベンチャーキャピタルとは、設立直後ないし成長初期の企業への投資、またはそのような投資を行う企業で、本場の米国にはベンチャーキャピタルは600社以上あり、多くは金融機関の系列に属していない独立系の会社になります。そこで、日米の比較から、いくつかの課題をまとめてみます。

 第1に、日本では、VC投資額が、日米欧の中で、圧倒的に低いという課題があります。具体的には、米国が約2兆円、欧州が約5000億円、日本が約1000億円となっています。この結果、日本では、VC投資額のGDP比が、圧倒的に低く、 1位:イスラエル、2位:アメリカ、3位:スウェーデン、4位:スイス、17位:韓国、26位:日本となっています。

 第2に、日本のVCは、金融機関系が多く、ベンチャー企業関係者の参入が少な過ぎるという課題があります。日本とアメリカのVCの属性別構成比 日本:約60%が金融機関系に対して、米国:約80%以上が独立系となっていますが、このことは、日本のVCには、事業の中身を理解しているVCが圧倒的に不足しているという課題があると言えます。実際に、日本のVCで、最もパフォーマンスが高いのは、金融系ではなくベンチャー企業経営出身のキャピタリストであることからも分かります。

 第3に、投資規模が圧倒的に小さいという課題があります。実際に、図に示すように、米国・欧州・日本の1件当たり投資額を比較すると、米国では約10億円、欧州で約4.5億円、日本では約8000万円となっています(出典:経済産業省)。

3.日本経済の課題克服を目指すGITV社の活動方針

 以上に述べましたように、日本経済を牽引し、GDPの増大をもたらすオープンイノベーションを起こすには、技術革新の本質を正確にとらえ、日本経済全体に影響力を持ち、グローバルな連携を可能とするVCの存在が不可欠です。具体的には、事業経験の豊富なファンドマネジメントチームと1件当たりの投資規模を確保できることが重要です。今日、約20年前のインターネットが大きなイノベーションをもたらして以来、昨今の新たなトレンドである、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)は、これまでの情報通信産業を超えて、あらゆる産業にイノベーションを起こそうとしています。

 このような背景から、当社ブロードバンドタワーと以下のファンドマネージャーの共同出資によって本日、設立されたのが、ベンチャーキャピタルファンド運営会社(GP:ゼネラルパートナー)としてのGITV社なのです。GITV社は、有望な国内外のIoTベンチャー企業を発掘・育成すると共に、投資先ベンチャー企業と日本のIoT関連大企業との連携をもたらすことをミッションとし、以下のような特徴を備えた、全く新しいVCを目指しております。

(1)ベンチャー企業経験者を中心とするファンドマネジメントチーム

 事業会社系ベンチャーキャピタル経営の15年の経験を有し、共同出資者でもある安達俊久氏(前伊藤忠テクノロジーベンチャーズ社長、日本ベンチャーキャピタル協会元会長)をGITV社の代表取締役とし、ファンドマネージメントのメンバーは自らが技術経営者として起業と株式上場経験を有する経験者、シリコンバレーと強力なパイプを有する事業経験者を中心にファンドマネジメントチームを構成しています。具体的には、私自身も同マネジメントチームに入ると共に、木下剛氏(前シスコシステムズ合同会社CTOとしてシリコンバレービジネスに豊富な経験、インターネット協会副理事長)、荻野司氏(重要生活機器連携セキュリティ協議会〔CCDS〕代表理事、ユビテック社長として上場経験)、橋本康弘氏(医師、シリコンバレー在住、シリコンバレーテック代表、メディビック創業者として上場経験、日本ゲノム薬理学会副会長)を迎え、今後同マネジメントチームをさらに強化してまいります。

(2)業界中立な当社グループの特徴を活かしたファンド組成と投資先企業との連携と技術支援

 同ファンド組成には、日本経済の中枢を担う、IoT関連の大企業と金融機関を投資家(LP:リミテッドパートナー)として勧誘すると共に、LPとなるIoT関連大企業と投資先ベンチャー企業との事業連携を支援してまいります。

(3)当社グループによる投資先企業との連携と技術支援

 インターネット・データセンター、クラウドサービス(自社オリジナルサービスC9、アマゾンAWS、マイクロソフトAzure)、ストレージソリューション(EMCアイシロン、Scality)、人工知能(AIスクエア社)、ECプラットフォーム(BBF社)、決済ソリューション(Lyudia社)、IoTデータ交換サービス(EverySense社)を手がけている当社グループの総合力を活かして、投資先のIoTベンチャー企業との事業連携と技術支援を行ってまいります。

(4)IoT分野におけるグローバル視点のアドバイザリーボード

  国内外の世界的な有識者アドバイザリーボードとして、坂村健氏(IoT、東京大学大学院教授)、柏木孝夫氏(エネルギー工学、東京工業大学特命教授)、白井克彦氏(電気電子工学、早稲田大学前総長)、村井 純 氏(インターネット、慶應義塾大学教授)、黒川 清氏(医学、情報科学、政策研究大学院大学アカデミックフェロー)、アル・ピサーノ氏(機械工学工学、UCサンディエゴ教授)、ピーター・カウィー氏(国際関係、UCサンディエゴ教授、クアルコム社アドバイザー)、ウリケ・シェーデ氏(国際関係、UCサンディエゴ教授、日本テクノロジーイノベーションフォーラム責任者)を招聘し、様々な大学発ベンチャー企業の発掘、技術評価、投資先ベンチャー企業と大企業との連携方針等におけるアドバイスを受けてまいります。

平成28年2月24日

代表取締役会長兼社長CEO

藤原 洋

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