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~IoTとAIビジネス元年での当社のイノベーション事業展開について~

 

 国際情勢に大きな変化が見られた2016年が終わろうとしています。そこで、当社の企業活動を通じて、一年を振り返り、来たるべき2017年を展望する上での糧としたいと思います。当社は、インターネットデータセンター(iDC)事業の草分けとして2000年に創業し、続いて、インターネット・エクスチェンジ(IX)支援事業、クラウド事業、ストレージソリューション事業、Eコマースプラットフォーム、太陽光発電事業を着々と立ち上げてきました。これらの事業が当社グループの経営基盤を支えています。
 しかしながら、今、新たな変化の時代を迎え、さらなる成長のためには、急速な技術革新への対応が求められています。そこで、今回は、この新たなる非連続的なイノベーションのための当社のイノベーション事業展開について述べてみたいと思います。

 

1.問題意識の出発点
 学術研究としてのインターネットから、その商用化とその産業化に関わってきた一人として、私自身の問題意識は、ただ一点です。すなわち、インターネットの商用化が始まった1994年から約20年が経過した今日に関し、私は、企業活動を通じて、直接交流のある米国など10カ国と日本とを比較してみたところ、GDPが減少しているのは、日本だけだという愕然とする事実です(図1参照)。計画経済から市場経済への移行によって、急成長をしている中国は別格としても、米国、ドイツ、英国、フランスなどは、約2~3倍に成長しているのです。

 

図1.1994年から2014年における主要国のGDPの変化

 

 そこで、私は、この問題意識を『日本はなぜ負けるのか? ~インターネットが創り出す21世紀の経済力学~』(2016年6月インプレスR&D刊)と題して、著しました。そこで、いくつかの問題点を指摘させて頂きました。第1は、日本では、インターネットが技術革新をもたらし産業構造の転換を実現したのは、情報通信産業だけで、他の産業分野は、旧態依然とした構造のままにあるという点です。すなわち、各産業分野における岩盤規制問題です。第2は、新しい産業を創るベンチャー企業への投資総額がGDP比率で26位であり、1社あたりの平均投資額が8000万円で米国(10億円)の12分の1、EU(4.5億円)の6分の1でしかないことです(図2参照)。

 

図2.日米欧のベンチャー企業への投資額

 

第3は、研究開発について、大企業の自前主義によって、オープンイノベーションが進まないことです。オープンイノベーション先進国のイスラエルでは、最先端を走るテクニオン(国立イスラエル工科大学)発ベンチャー企業は、1600社以上にのぼり、70社以上がNASDAQに上場しているのです(図3参照)。

 

図3.テクニオン発ベンチャー企業のNASDAQ上場企業

 

 いずれにしても、日本の多くの経済学者もデフレ経済は、人口減によるものだと諦めていますが、事実はそうではなく、社会全体が、「インターネットという技術革新に伴う産業構造の変化」に対応できていないところにその本質があると思われます。

 

2.IoT/Big Data/AIという技術革新と動画配信時代の到来
 1994年のインターネットの商用化以来の技術革新による産業構造の変化が、今、訪れようとしています。それがIoTです。IoTは、Internet of Things(モノのインターネット)という意味であり、その本質は、情報発信源の変化として第3世代に当たります(図4参照)。

 

図4.インターネットにおける情報発信源の進化

 

第3世代のIoTは、第1世代のポータル(サービス事業者が中央から情報発信)、第2世代のSNS(利用者が情報発信)に代わって、ヒトではなく、モノが情報発信します。
 このIoT時代には、モノが情報発信するために、世界の人口を遙かに超えるインターネット接続が必要となります。また、リアルタイムにモノから発信される大量のデータが発生するために、Big Data処理が重要となってきます。また、大量に発生するBig Dataに対しては、AI(Artificial Intelligence)の機械学習(Machine Learning)、特に繰り返し演算を行うことで特徴量の抽出精度が向上する深層学習(Deep Learning)によるデータ処理が有効であることが近年わかってきました。
 従って、IoT/Big Data/AIという技術革新によって、今世界が大きく変わろうとしているのです。この歴史的な変化を日本が捉えられるかどうかが極めて重要な局面を迎えているということです。そして、当社にも大きなビジネスチャンスが来たと考えています。
 また、一方では、インターネットは、テレビ放送、映画館、パッケージメディアだけではなく、むしろ、インターネットによる動画配信時代がゆっくりと到来しています。私も創業来番組審議委員をさせて頂いているスカパー(スカパーJSAT株式会社)の7倍の放映権料でJリーグの独占的放映権を獲得したのは、インターネット動画配信の英国のパフォームグループでした。

 

3.IoT/Big Data/AI分野における技術革新と動画配信時代に向けての当社の具体策
 以上に述べたように、IoT/Big Data/AIという技術革新に対応すると共に、日本における様々な問題を解決するために、2016年は、当社としても新たな展開を行った年となりました。
 昨年末設立した当社子会社の株式会社エーアイスクエアは、得意な音声分析とテキスト分析を活かしたRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)センターを開設し、AI応用型コールセンターに関する有料サービスを開始することができました。また、大阪大学発のバイオベンチャーであるインタープロテイン社とは、AI応用の創薬に関する共同研究開発契約を締結致しました。
 今年2月には、グローバルIoTテクノロジーベンチャーズ株式会社(以下GiTV)を設立しました。その後、同社は、イスラエルのテクニオン大学発ベンチャー企業の日本における第一投資優先権を獲得し、シリコンバレー・ベンチャーキャピタルのウェストリーグループとの提携、米国カルフォルニア大学サンディエゴ校との連携を深めることができました。また、セキュリティ分野に強いLAC株式会社も共同事業パートナーとしてGITVへ資本参加して頂きました。今後、同社は、IoT/Big Data/AI分野における世界のベンチャー企業を発掘し、その成果を当社の本体事業のイノベーションに活用していく予定です。
 また、私が、理事長を務める一般財団法人インターネット協会での『中欧交流委員会』の活動を通じて、今年は、ドイツ、オーストリア、およびハンガリーを訪問し、3カ国の政府機関とベンチャー企業を訪問し、国際的友好関係を結ぶことができました。来年以降は、イスラエルや米国に加えて、この中欧地域のベンチャー企業とも、当社は、GiTV社との連携し、資本業務提携を視野に入れた共同事業展開を検討していく所存であります。
 さらに、私が、構成員を務めてきた総務省の「電波政策2020懇談会」の基本方針に則り、スマートフォンを超えたIoTインフラとしての5G(第5世代モバイル通信システム)と次世代ITS(高度道路交通システム)の実現に向けた産学官連携プロジェクトへの参画のチャンスを狙う準備ができたと考えております。

 

 最後に、本格化する「インターネット動画配信」時代を迎えて、当社は、試験的に番組制作と無料配信を行ってきた経験を活かし、初の有料ネット動画制作事業をスタートすることができました。来年以降は、ネット動画の有料制作と有料配信のチャンスを狙って行きたいと考えております。
 このように、2016年は、IoT/Big Data/AI分野における技術革新と動画配信時代に向けての次なる成長を準備する年であったと思います。来たるべき2017年も、当社および当社グループへの変わらぬご支援を引き続きお願い申し上げます。

 

平成28年12月21日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋

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