「あたりまえ」をやり遂げる実力が、IT投資に収穫をもたらす | OVERNIGHT SUCCESS

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PAGE2004の基調講演は、従来は新技術開発などがテーマになることが多かったが、今年は「ITとパートナーシップで築くトータルサービス」というテーマにあわせて、IT時代のビジネスの仕組みを考えるセッションとなった。2000年以降に加速し始めたIT環境の普及は、新たなビジネスモデルを掲げた挑戦者が新たな市場の覇者として活躍しだすなど、はっきりした結果を提示するまでになった。モデレータにはアスキー・インプレスとパソコンの世界の前線で携わってこられたインプレス顧問田村明史氏、スピーカーには、アマゾン ジャパン ベンダーマネージメントディレクタ大西基文氏、ミスミ 執行役員 ビジュアルメディア事業部長大野龍隆氏、ヤッパ代表取締役社長伊藤正裕氏という、第一線で活躍する当事者たちがどのようなビジネスモデルを考えて、その実現に向けて努力してきたのかを語り合った。

まずamazonの大西基文氏は、amazonの強固なビジョンを示し、本当にそれに沿ってユニークな努力を重ねてきた軌跡を話した。そのビジョンとは、まず最初にamazon行けば欲しいものが発見できるというような「地球上で最も豊富なセレクション」を用意することと、「地球上で最もお客様を大切にする企業 」になるように、いつも客から逆算して考えなさいということを、人の採用から徹底して叩き込んで、組織全体が本当にそういう取り組みをしているという驚くべき経営姿勢である。

それにあわせたビジネスモデルとして、すべてのスタートは品揃えにあり、欲しいものが見つかるようにして、リピートや口コミで客が広がって、ボリューム効果で低価格の体制を作る、というサイクルを回してビジョンに近づいていく方法である。あたりまえのように聞こえるが、2000年11月に日本でもサービスを開始し、昨年で200万人の顧客を獲得し、また当初は書籍だけであった品目も、音楽、ゲームから、エレクトロニクスへ、昨年はDVD/ビデオ、ホーム&キッチンと8分野に広げ、3年ですごく成果を上げている。

たとえばサイト内でゴルフで検索すると、ゴルフに関する本もビデオもゲームもソフトも探す事ができ、自分の欲しいものが見つけられる。さらに中古でも、発売されなくなったものでも、第三者がamazonを自分の仕事のECのプラットフォームとして使うマーケットプレイスで売買される。品揃えを増やし、欲しいものが見つかる仕掛けとしてのマーケットプレイスはセレクションを増やすことになっている。和書は定価販売だが、洋書その他の商品は割引があって、コストが下がる分だけ低価格で提供できる。ハリーポッターなどは世界規模で仕入れるので、価格競争力が高い。ユーザーからはなるべく操作の単純なサイトに見えるようにしていて、登録者は1-Clickオーダーできるとか、予約注文、マイストアのようなパーソナライズしたお勧め機能、商品評価に客観性をもたせるレビュー情報を奨励する仕組みなど、利用者の利便性向上のための開発を積み重ねている。

この、セレクション、低価格、利便性の3点が基本戦略であり、これは世界中どこでも通用するものなので、実際ビジネスは世界中で伸びている。リピート客の多さは人気を物語り、特にお勧め機能は評価が高いが、これはよくある1to1とは違い、購買履歴だけからのデータマイニングで、すべて確率・統計論で処理しているという。新規顧客へのプロモーションとしては、出版社がamazonを使って自社の書店を持つとか、数多くのサイトにamazonへの入り口を貼り付けてもらい、ペイバックするamazonアソシエイトプログラム、それとamazonに出店できるマーケットプレイスなど協業の効果が大きいようだ。このようにビジネスの成長を企画することとIT投資をうまく組み合わせて発展している。

ミスミの大野龍隆氏は、同社がコア事業の精密機械部品・工具などの企画・販売のための調達代行の仕組みを使って、医療材料、業務用食材、DTP関連の企画販売に事業を年々広げてきた経緯を話した。コア事業は海外にも展開している。コアコンピタンスは、顧客のニーズを集めてサービスや商品の企画・開発を行うこと、注文の日にでも届けられるような効率の良い処理をするインフラ、ワールドワイドな協力メーカーのネットワークで廉価に仕入れられる仕組み、の3点という。これは経営コンセプトの「時間とたたかうミスミ」に現れているように、顧客の時間的な問題を、自社のビジネスにどれだけ取り込めるかにフォーカスして、常に革新的な事業を開発してきた。

amazonの話でも、インターネットによる購買の利便性は、最初は広く分散している市場の獲得かと考えられたが、実際は大都市に顧客は集中しており、店に行く時間がないような人が多いと言う。ミスミは上記のミッションが社内で鈍らないような組織運営の工夫として、常にフラットで大きくならないチームで成果が見えやすいようにしている。また、市場や環境の変化で、自分達がやってきたビジネスの価値がなくなる前に、次のビジネスを立ち上げるべく人や資源の再配置をしている。

その例として、デザイナが画像の調達をする方法が、CD-ROMのロイヤリティフリー画像から、カタログのWEB化に代わり、さらに今ではコンセプトで画像を探せる方法に換えてきた経緯を話し、このビジネスを「デザイナの制約条件の解放業」と呼んだ。デザインの本質や腕の見せ所でないところで時間(コスト)をかけていた画像調達が大変圧縮されるからだ。この新たな検索方法にも2年ほどの準備を費やしているが、このようにニーズを先読みしてより難度の高い問題解決に挑戦している。

ヤッパの伊藤正裕氏は、Web上の3D技術でシェアNo1になった秘訣をプレゼンを中心にいろいろ語ったが、どう考えてもご本人のプレゼンテクニックが最大の秘訣ではないかと思わせるほど、説得力のあるプレゼンに会場は見とれていた。ヤッパはこのプラグイン不要でブラウザだけで、立体画像をユーザがハンドリングできる技術をもって、3D市場を創り広げてきたし、今日国内の自動車業界への普及を果たしたのを土台に、世界的に展開しようとしている。

伊藤氏はヤッパをテクノロジプロバイダと言うが、従来のCAD/CAMのベンダーとは異なり、3Dコンテンツを安価に迅速に大量生産する技術もあり、そのサービスも行っていて、従来のCADのビジネスモデルを破壊しながら新たな市場を創造しているといえる。従来のCADがインターネットの時代にうまくいっていないのは供給側の発想のままだからで、安く、早く、使いやすく、「役立つ」という、マーケットニーズ合わせた技術が必要だといい、それが3D参入のきっかけでもあった。

具体的には、WEBで使えるといっても、インターネット上で車のマーケティングはそれほど重要ではなく、車のショウルームで営業マンが的確なセールス活動ができるように、営業マンの支援をする機能を3D画像と合わせてつけている。選択できるオプションが何であるかとか、工賃を含む見積もりなども、営業マンが間違えることはなくなる。こういったナレッジツール的な面を活かした応用が、電子取り扱い説明書で、音や動画もリンクして、バーチャルなインストラクタのようなものができあがる。ヤッパの3D技術は携帯電話やPDAや自動車のカーナビにも搭載可能であり、これから3Dがあらゆるところに展開されていくことがうかがえる。

最後にモデレータの田村明史氏はこれら3社がQCT(Quality,Cost,Time)を徹底してきたことを指摘し、伊藤氏はQはいくら高く設定してもよいこと、大野氏は現場が動く仕掛けの重要性を、大西氏は新たな価値も普及すると普通になるのでさらに貪欲になるニーズにも挑戦していくような社員への意識付けの必要性を話した。セッション全体を通しての印象として、ITにいくら投資しても、経営の「あたりまえ」を強引にやり遂げる実力がなければ、実りがないのだということを考えさせられた。