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両国予備校はなぜ倒産したか




両国予備校。

昔お世話になり、合格後すぐに倒産したというから非常に思い出深い学校です。
倒産したときは非常にびっくりしました。

先日、その予備校があった総武線両国駅に行きました(ご存知、両国駅は東京といっても限りなく千葉)。閉鎖の張り紙が扉にしてあったのを見て非常に寂しい思いをしたのを覚えています。

ふと思ったのが何故倒産したのか、ということ。

経営陣が予備校経営に集中せず、株や不動産に手を出していたという点は良く指摘されますが、上場して情報を公開しているわけでもありませんので、その実態はわかりません。(ただ両国予備校には校訓じみたものがあって、高畠金蔵校長の言葉に”株には絶対に手を出すな”、というのがありました。おそらく彼自身痛い思いをしたのだと推測されます)

そういった株などのファイナンス面でなく、ビジネス面で倒産理由を挙げようと思えばキリがありません。

■ターゲットが全方位に欲張りすぎ
彼らのターゲットは昔放送されていたコマーシャルの言葉を借りると「医歯薬理工系文系に強い!」です。この言葉は何もアピールしていないのと一緒だ、ということにお気づきになると思います。

■それぞれの層に効果的な受験指導が出来なかった
上記で集まった全方位の受講生に対し用意されていたのは、代わり映えのしないカリキュラム、テキスト、限られた講師陣。それで効果が出ればいいのですが、私の寮では国公立の医学部合格者は0でした。実際にテキストに関しては近年の受験対応が出来ていなかった。私はたまたま英語の超長文であったり英作文であったり、論文であったりが志望校の受験科目にあったのですがまったく対応されておらず、自分でやったのを覚えています。

■怪しい思想教育
予備校内部では寮長や先生をはじめとして、両国のカリキュラムだけをやっていれば、このテキストだけをやっていればどんな大学にも合格する!といって他の受験の模試であったり、市販の参考書であったりを使用するのを極端に嫌がりました。例えば寮の部屋に市販の教科書があると何でこんなものがあるんだ、と言われる始末です。信じられないかもしれませんが。
昔は両国カリキュラムだけで、両国テキストだけで合格したのかもしれませんが、多様化する大学毎の傾向、進化する競合予備校で着実に成長する他受験生に対応できなかったと思われます。

■合格実績が現在ベースで語ることが出来ない
上記のような体制、思想教育の為、ほとんどの受験生は大学にスベリます。私の寮は悲惨でした。センター試験から一気に寮の雰囲気は重苦しくなる一方。雰囲気は連鎖します。そのまま本試験(私大医学部、国立2次試験)に突入して不合格。
文系・理系についても東大早慶に合格する人は一人もおらず、かろうじて上智大学に合格する人が2名ほど。体験記はアップデートされずいつの時代に合格したかわからない受験生の言葉が常に販促パンフレットに掲載されたまま、という有様でした。

■ガチガチ管理の全寮制システム
雰囲気は連鎖します。上記のような体制下では悪い雰囲気しか連鎖しません。受験前も予備校のカリキュラムやテキストの杜撰さに不満の話が沸き起こっていました。
息抜きに外に出ようにしても、管理人の厳しい審査があります。授業終わって息抜きに行こうにしても授業が終わって何分以内に帰寮しないと行けないためそれも出来ません。また成績の高い人を妬み嫌がらせをする輩もいます。

■悪いクチコミ、悪い背中を見せ続けている上での悪循環
芳しくない進路状況に高校の担任の先生も、両国予備校を検討している者に制止をかける。
卒業した受講生(第1志望に入れず、滑り止めに入った人等を中心)が後輩などに悪い口コミを流す。

■効果的な販促は校長の著書のみという状況
効果的な販促は打てていなかったと思います。末期はCMもストップしたから金回りが悪かったのでしょうが、それが例年のように一定の新規生徒を募集できないという結果に終わったと思います。
ただ高畠校長の書籍は秀逸です。あれは結構効果あったと思います。私もそれに感化されて入りましたもの(笑)

■アドホックな儲け方が出来ない
彼らの儲けは年に一度の1~3月。それで募集できなかったら、全寮制のため途中入塾してくることは難しく、また一般受験生を対象にした夏期講座、冬季講座も開講することが出来ず、アドホックに儲けることが出来なかった。
つまり一定の時期を逃すと一気に売上が減少する。上記の状況もあって新規生徒は例年通りには取れず、また固定費はほぼ一緒なのできつかったと思います。
限られた講師陣(※教えた方の上手い人は何人もいました)、テキスト、カリキュラム、管理体制など時代にまったく適応出来ず、ビジネスとして悪いサイクルが回り続けていました。


いわば高速道路の反対方向に突っ走っている状態を止めることが出来たのは、生徒であったり、講師であったりもするのですが、当時の経営陣はその警鐘に気づかなかったのでしょう。難しいことだと思いますが顧客であったり、敵(大学受験、競合)を良く知って戦略を打って欲しかったなぁ、勿体無いなぁという思いは拭えません。