燃料電池

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燃料電池([[直接メタノール形燃料電池]])]]
'''燃料電池'''(ねんりょうでんち、 英:fuel cell)は、[[電気化学]]反応によって[[電力]]を取り出す装置([[電池]])のひとつである。

== 概要 ==
燃料電池は、[[乾電池]]などの[[一次電池]]や[[鉛蓄電池]]などの[[二次電池]]とは異なり、[[水素]]などの[[燃料]]と[[酸素]]などの[[酸化剤]]を供給し続けることで継続的に電力を取り出すことができる[[電池#化学電池|化学電池]]である。

[[熱機関]]を用いる通常の発電システムと異なり、[[化学エネルギー]]から[[電気エネルギー]]への変換途上で[[熱エネルギー]]や[[運動エネルギー]]という形態を経ないため、熱機関特有の[[カルノーサイクル#理論熱効率|カルノー効率]]に依存しないことから発電効率が高い。また、システム規模の大小にあまり影響されず、騒音や振動も少ない。そのため、[[ノートパソコン]]、[[携帯電話]]などの携帯機器から、[[自動車]]、[[鉄道]]、民生用・産業用[[コジェネレーション]]発電所、[[軍事]]兵器まで多様な用途・規模をカバーするエネルギー源として期待されている。

燃料電池はその方式ごとに水素をはじめ幾種類か燃料が検討されているが、主として水の[[電気分解]]の逆反応である 2H<sub>2</sub> + O<sub>2</sub> &rarr; 2H<sub>2</sub>O によって電力を取り出す場合が多い。反応時に熱を伴うだけでなく、発電効率の高いものほど高温を必要とする傾向があり、1,000℃近くの環境を必要とする方式もある。水素を燃料に使用する燃料電池で水素以外のものが含まれる燃料を使用する場合には、改質器と呼ばれる装置によって燃料から水素だけを取り出す、改質と呼ばれる処理をあらかじめ行なう必要がある。21世紀現在、研究開発が進められており、それらは電気化学反応と[[電解質]]の種類によって幾つかの方式に分けられる。

== 方式 ==
[[File:Fuel cell (V-I characteristic chart) J.PNG|thumb|250px|right|'''主要な燃料電池のV-I特性''']]
使用する電解質の種類によって主に4種類の燃料電池の方式が研究されている。アルカリ電解質形燃料電池(AFC)は、従来方式であり今後の利用は限定的だと考えられている。バイオ燃料電池は、他方式と全く異なっており不明な点が多い。

=== 固体高分子形燃料電池 (PEFC) ===
{{main|固体高分子形燃料電池}}
固体高分子形燃料電池(PEFC, Polymer Electrolyte Fuel Cell)は、PEMFC(Proton Exchange Membrane Fuel Cell)とも呼ばれる。触媒に高価な白金を使用して、イオン交換膜によって水素を燃料に、30-40%程の比較的低い発電効率で発電する。起動が早く、運転温度も80-100℃と低い。

実用化が最も進んでいるが、発電効率が低いため、小型用途での発電使用が想定されている。[[触媒]]として使用される[[白金]]の使用量を減らすことと、電解質として使用されるフッ素系[[イオン交換樹脂]]の耐久性の向上とコストが今後普及の課題である。

室温動作と小型軽量化が可能であるため、携帯機器、[[燃料電池自動車]]などへの応用が期待されている。

=== りん酸形燃料電池 (PAFC) ===
<!--JIS C8801では、ひらがなであるのでカタカナから修正-->
りん酸形燃料電池(PAFC, Phosphoric Acid Fuel Cell)は、電解質として[[リン酸]](H<sub>3</sub>PO<sub>4</sub>)水溶液をセパレーターに含浸させて用いる。動作温度は200℃程度で、発電効率は、約40%LHV。固体高分子形燃料電池と同様に白金を触媒としているため、燃料中に一酸化炭素が存在すると触媒の白金が劣化する。従って、[[天然ガス]]などを燃料とする場合は、予め水蒸気改質・一酸化炭素変成反応<!--PAFCは、選択酸化反応を必要としないので削除-->により一酸化炭素濃度が1%程度の水素をつくり、電池本体に供給する必要がある。

工場、ビルなどの需要設備に設置するオンサイト型コジェネレーションシステムとして100/200kW級パッケージの市場投入がなされ、既に商用機にて4万時間以上の運転寿命(スタック・改質器無交換)を達成している。<ref>りん酸形燃料電池の代表メーカーは、UTC Power([[ユナイテッド・テクノロジーズ]]子会社)や[[富士電機システムズ]]など。富士電機システムズ製の100kWPAFCは、2008年に燃料電池としては初めて日本での消防用非常電源の認定を受けた。</ref>
<!--代表メーカーは[[東芝燃料電池システム]]や[[富士電機システムズ]]など。-->
<!--東芝は、現在家庭用PEFCに特化しておりPAFCは生産していない。現在は元の合弁先であるUTC Powerが生産。-->

=== 溶融炭酸塩形燃料電池 (MCFC) ===
溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC, Molten Carbonate Fuel Cell)は、水素イオン(H<sup>+</sup>)の代わりに炭酸イオン(CO<sub>3</sub><sup>2-</sup>)を用い、溶融した炭酸塩([[炭酸リチウム]]、[[炭酸カリウム]]など)を電解質として、セパレーターに含浸させて用いる。そのため、水素に限らず[[天然ガス]]や[[石炭]]ガスを燃料とすることが可能である。動作温度は600℃-700℃程度。常温では固体の炭酸塩も動作温度近傍では溶融するため、電解質として用いることができる。PAFCに競合する選択肢として、250kW級パッケージが市場に投入されつつある。発電効率は約45%LHV。白金触媒を用いないためPEFCやPAFCと異なり一酸化炭素による被毒の心配がなく、排熱の利用にも有利である。内部改質方式とされるが、プレリフォーミング用の改質器をシステム内に設置するのが一般的のようである。[[火力発電所]]の代替などの用途が期待されている。<ref>溶融炭酸塩形燃料電池の代表メーカーは、Fuel Cell Energy<!--Merubeniは10%以下の持分、川崎は記載なし-->や[[石川島播磨重工業]]などである。</ref>

なお、通常の燃焼反応では、空気中の窒素の存在により排ガス中の二酸化炭素濃度は約20%が上限であり、更に二酸化炭素濃度を高めるには空気の代わりに酸素を用いなければならない。しかし、MCFCは炭酸イオンが電池反応に介在し、空気極側の二酸化炭素と酸素が選択的に燃料極側に移動・蓄積するため燃料極側排ガスの二酸化炭素濃度は80%程度にも達する。この性質を利用し、MCFCで二酸化炭素の回収を行うことが試みられている。日本国内では経産省補助事業として[[中国電力]]・[[中部電力]]が共同実施している<ref group="出典">[http://www.chuden.co.jp/corpo/publicity/press2002/0918_1.html 溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)商用型1号機導入 ~廃棄物ガス化装置との組合せ研究を実施~] 2002年9月18日 中部電力</ref>。

=== 固体酸化物形燃料電池 (SOFC) ===
固体酸化物形燃料電池(SOFC, Solid Oxide Fuel Cell)は、固体電解質形燃料電池とも呼ばれ、動作温度はMCFC以上の800-1,000℃を必要とするので高耐熱性の材料が必要となる。また、起動・停止時間も長い。電解質として酸化物イオンの透過性が高い安定化[[ジルコニア]]や[[ランタン]]、[[ガリウム]]の[[ペロブスカイト構造|ペロブスカイト酸化物]]などのイオン伝導性[[セラミックス]]を用いており、空気極で生成した酸化物イオン(O<sup>2-</sup>)が電解質を透過し、燃料極で水素と反応することにより電気エネルギーを発生させている。そのため、水素だけではなく[[天然ガス]]や[[石炭]]ガスなども燃料として用いることが可能である。活性化電圧降下が少ないので発電効率は高く、すでに56.1%LHVを達成している例もある。家庭用・業務用の1kW-10kW級としても開発されている<ref>PEFCの発電効率の最高値は公称37.5%LHVとされる。</ref>。内部改質方式であり、改質器は不要で触媒も特に必要ない。電極材としては[[導電性セラミックス]]を用いる。火力発電所の代替などの用途が期待されている。<ref>固体酸化物形燃料電池の代表メーカーは、ジーメンス・ウェスチングハウスや[[三菱重工業]]、[[日本特殊陶業]]、[[TOTO (企業)|TOTO]]、[[三菱マテリアル]]([[関西電力]])、[[京セラ]]などである。</ref><ref>2005年11月から3ヶ月間、[[大阪ガス]]と京セラは、都市ガスを使って集合住宅でのSOFCによる1kW発電装置の実証実験を行なった。これは660Wの給湯出力も得られ、1日の平均発電効率で44.1%(LHV)という成績だった。2007年度からは、[[経済産業省]]等の元で[[新エネルギー財団]]が、4メーカーからの29台の装置によって都市ガス、LPG、灯油によるSOFCの実証実験を行い、平均の発電効率は35%(LHV)という成績だった。2008年度には36台に増やされ実証実験は継続される。[[三菱マテリアル]]と[[関西電力]]は、都市ガスを燃料にSOFCによる出力10kW級のコジェネレーション発電装置を実験運用しており、発電効率は50%を達成している。[[新エネルギー・産業技術総合開発機構|NEDO]]は、4つの企業グループに委託して、SOFCによる出力10kW級から200kW級の発電装置を実験している。内1つは[[三菱重工業]]の都市ガスを燃料とするSOFC発電とマイクロガスタービン発電を組み合わせた複合発電であり、SOFCから生じる未反応の水素と一酸化炭素よりなる副生ガスもマイクロガスタービンで燃焼させることで無駄を排除した。<small>(出典:燃料電池の基礎マスター)</small></ref>
<!--; ナトリウム-硫黄電池(NaS電池)<ref>NaS電池・レドックスフロー電池は、一般的な分類としては二次電池・蓄電池であるが、再生型燃料電池として扱われる場合もある。{{要出典}}</ref> -->
<!--: 工場、ビルなどの需要設備に設置する負荷平準化を目的とした燃料電池。正極に[[硫黄]]・電解質にナトリウムイオン伝導体である[[β-アルミナ]]・負極に[[ナトリウム]]を使用し、300℃程度で運転される。単価の安い夜間電力で充電し、昼間放電することにより電気料金の削減が期待される。(代表メーカー:[[日本ガイシ]])-->

=== アルカリ電解質形燃料電池 (AFC) ===
アルカリ電解質形燃料電池(AFC, Alkaline Fuel Cell)は、[[水酸化物イオン]]をイオン伝導体とし、[[アルカリ]]電解液を電極間のセパレータに含侵させてセルを構成している。[[固体高分子形燃料電池|PEFC]]と同様、高分子膜を用いるタイプも報告されている。最も構造が簡単であり、アルカリ雰囲気での使用であることから、[[ニッケル]]酸化物等の安価な電極触媒を利用することができること、常温にて液体電解質を用いることからセル構成も単純にできるため、信頼性が高く、現在宇宙用途などに実用化されている唯一の燃料電池である。一方、改質した炭化水素系燃料から水素を取り出す場合、炭化水素が混入しているとアルカリ性電解液が[[炭酸塩]]を生じて劣化する。同様に空気を酸化剤として用いると電解液が[[二酸化炭素]]を吸収して劣化するため、純度の高い酸素を酸化剤として用いる必要がある。水素の純度を高める為には[[パラジウム]]の膜を透過させる事により純度を高める。電解質が水溶液である為、作動温度域が電解液の凍結、蒸発しない温度に制限される。また、温度により、イオンの移動度(拡散係数)が変わる為、発電力に影響するので、温度条件が厳しい。ニッケル系触媒は[[一酸化炭素]]等の炭化水素や酸素、水蒸気等により活性が下がるので水素燃料の純度は重要である。[[水蒸気改質|改質]]水素の使用は望ましくない。

21世紀現在の燃料電池の研究開発上ではほとんど目を向けられることはないが、年少向けの教材から、[[アポロ計画]]や[[スペースシャトル]]まで広く「実用化」されている。[[アポロ13号]]における事故はこの燃料電池に供給する液体酸素供給系統の不具合に起因したものであり、燃料電池そのものの問題ではない。

[[ダイハツ工業]]と[[産業技術総合研究所]]が水加[[ヒドラジン]](N<sub>2</sub>H<sub>4</sub>・H<sub>2</sub>O)を燃料として0.50W/cm2の出力密度を達成した<ref>[http://www.daihatsu.co.jp/wn/070914-1f.htm CO2排出ゼロ、省資源、低コストが可能な貴金属を全く使わない燃料電池の基礎技術を新開発] (ダイハツ広報発表 2007年9月14日)</ref>。この場合、燃料電池への炭化水素の混入はなく、排出物は水と[[窒素]]のみとなる。

=== 直接形燃料電池 (DFC) ===
直接形燃料電池(DFC, Direct Fuel Cell)は、改質器を介さずに燃料を直接セルスタックに供給し、液体燃料である[[メタノール]]、[[ジメチルエーテル]]、[[ヒドラジン]]を使用するものが開発されている<ref>DFCの燃料には、ボロハイドライトも考えられている。</ref>。いずれも炭素を含む燃料であるため、反応によって二酸化炭素が生じて排出される。燃料供給ポンプや放熱ファンを使うかどうかで、パッシブ型とアクティブ型に分かれる。燃料極の白金に一酸化炭素が吸着してしまうために反応速度が遅く、燃料のクロスオーバーがあるなど発電効率は低いが小型軽量のものが作れ、例えば、直接形メタノール燃料電池(DMFC)では、数十mW-10W程度の小規模小電力発電に適している。これらは、小型携帯電子機器の電源としての用途が考えられている。米国では2008年には出力1Wのものが販売されていた。

=== バイオ燃料電池 ===
[[食物]]からエネルギーを取りだす生体システムを応用した燃料電池である<ref>バイオ燃料電池を、一般にバイオガス燃料電池と呼ばれる下水消化ガスやメタン[[発酵]]ガスを利用した燃料電池と混同しないように注意が必要である。</ref>。[[酵素]]の働きにより糖分を分解し、電気エネルギーを取りだす。環境の変化に対しても安定して働く強力な酵素が不可欠であり、研究開発では、酵素の[[寿命]]を伸ばすことなどが課題となっている。[[血液]]中の糖分を利用する体内埋め込み型[[心臓ペースメーカー|ペースメーカー]]や、ノートパソコンや携帯機器の電源などへの応用が期待される。また類似の研究には、[[光合成]]による[[植物]]の生体システムを応用した「太陽光バイオ燃料電池」もある。

== 4方式の比較 ==
21世紀初頭現在、研究開発が進められている主要な4つの方式について比較を示す。
:{| class="wikitable"
|+ colspan="5" style="text-align:center;background:#ffffff;" | <b>'''4方式の比較'''</b>
|-
| style="text-align:center;background:#ffffff" colspan="2" |
| style="text-align:center;background:#c0f0f0;width:21%;" | '''PEFC'''<br>固体高分子形

| style="text-align:center;background:#c0f0f0;width:21%;" | '''PAFC'''<br>りん酸形

| style="text-align:center;background:#c0f0f0;width:21%;" | '''MOFC'''<br>溶融炭酸塩形

| style="text-align:center;background:#c0f0f0;width:21%;" | '''SOFC'''<br>固体酸化物形
|-
| style="text-align:center;background:#d0f0f0;" rowspan="3" | 電<br>解<br>質
| style="text-align:center;background:#d0f0f0;" | 電解質材料
| align="center"| イオン交換膜
| align="center"| りん酸
| align="center"| 炭酸リチウム、炭酸ナトリウム
| align="center"| 安定化ジルコニア
|-
| style="text-align:center;background:#d0f0f0;" | 移動イオン
| align="center"| H<sup>+</sup>
| align="center"| H<sup>+</sup>
| align="center"| CO<sub>3</sub><sup>2-</sup>
| align="center"| O<sup>2-</sup>
|-
| style="text-align:center;background:#d0f0f0;" | 使用形態
| align="center"| 膜
| align="center"| マトリックスに含浸
| align="center"| マトリックスに含浸、又はペースト
| align="center"| 薄膜、薄板
|-
| style="text-align:center;background:#d0f0f0;" rowspan="3" | 反<br>応
| style="text-align:center;background:#d0f0f0;" | 触媒
| align="center"| 白金系
| align="center"| 白金系
| align="center"| 不要
| align="center"| 不要
|-
| style="text-align:center;background:#d0f0f0;" | 燃料極
| align="center"| H<sup>2</sup>→2H<sup>+</sup>+2e<sup>-</sup>
| align="center"| H<sup>2</sup>→2H<sup>+</sup>+2e<sup>-</sup>
| align="center"| H<sub>2</sub>+CO<sub>3</sub><sup>2-</sup>→H<sub>2</sub>O+CO<sub>2</sub>+2e<sup>-</sup>
| align="center"| H<sub>2</sub>+O<sup>2</sup>→H<sub>2</sub>O+2e<sup>-</sup>
|-
| style="text-align:center;background:#d0f0f0;" | 空気極
| align="center"| <math>\tfrac{1}{2}</math>0<sub>2</sub>+2H<sup>+</sup>+2e<sup>-</sup>→H<sub>2</sup>O
| align="center"| <math>\tfrac{1}{2}</math>0<sub>2</sub>+2H<sup>+</sup>+2e<sup>-</sup>→H<sub>2</sup>O
| align="center"| <math>\tfrac{1}{2}</math>0<sub>2</sub>+CO<sub>2</sub>+2e<sup>-</sup>→CO<sub>3</sub><sup>2-</sup>
| align="center"| <math>\tfrac{1}{2}</math>0<sub>2</sub>+2e<sup>-</sup>→O<sup>2-</sup>
|-
| style="text-align:center;background:#d0f0f0;" colspan="2" | 運転温度(℃)
| align="center"| 80-100
| align="center"| 190-200
| align="center"| 600-700
| align="center"| 800-1,000
|-
| style="text-align:center;background:#d0f0f0;" colspan="2" | 燃料
| align="center"| 水素
| align="center"| 水素
| align="center"| 水素、一酸化炭素
| align="center"| 水素、一酸化炭素
|-
| style="text-align:center;background:#d0f0f0;" colspan="2" | 発電効率(%)
| align="center"| 30-40
| align="center"| 40-45
| align="center"| 50-65
| align="center"| 50-70
|-
| style="text-align:center;background:#d0f0f0;" colspan="2" | 想定発電出力
| align="center"| 数W-数十kW
| align="center"| 100-数百kW
| align="center"| -数百MW
| align="center"| 数kW-数十MW
|-
| style="text-align:center;background:#d0f0f0;" colspan="2" | 想定用途
| align="center"| 家庭電源、携帯端末、自動車
| align="center"| 定置発電
| align="center"| 定置発電
| align="center"| 家庭電源、定置発電
|-
| style="text-align:center;background:#d0f0f0;" colspan="2" | 開発状況
| align="center"| 長期実証試験中で一部は商品として実用化
| align="center"| 製品として多数の実績があるが、新規参入は少ない
| align="center"| 日本以外での実績があり、拡大中
| align="center"| 実証試験中
|}<ref group="出典" name ="燃料電池の基礎マスター">田辺茂著 『燃料電池の基礎マスター』 電気書院 2009年1月31日第1版第1刷発行 ISBN 9784485610077</ref>

== 歴史 ==
[[Image:Grove's Gaseous Voltaic Battery.png|thumb|right|250px|グローブの気体[[ボルタ電池]](1842)<br/>燃料電池の原型として知られる]]
[[Image:TOYOTA FCHV 01.jpg|thumb|right|250px|燃料電池自動車[[トヨタ・FCHV]]]]
[[Image:HondaFCX.JPG|thumb|right|250px|ホンダ・FCX]]
[[Image:TOYOTA FCHV Bus.jpg|thumb|right|250px|トヨタ・日野・FCHVバス<br/>[[2005年日本国際博覧会|愛知万博]]シャトル[[バス (車両)|バス]]]]
<!-- "fuel cell effectの発見"と"fuel cellの発明"は区別した方がよいのでは?-->
燃料電池の原型は[[1842年]]に[[イギリス]]の[[ウィリアム・グローブ]]によって作製された。この燃料電池は、[[電極]]に[[白金]]を、電解質に[[希硫酸]]を用いて、[[水素]]と[[酸素]]から電力を取り出し、この電力を用いて水の[[電気分解]]をすることができた。

その後、燃料電池は、熱機関により動かされる[[発電機]]の登場によって発電システムとしてはしばらく忘れられたが、1955年、米ゼネラル・エレクトリック社(GE社)に勤務していた化学者であるW. Thomas Grubbは[[スルホ基]]で修飾された[[スチレン]]による[[イオン交換膜]]を電解質として用いた改良型燃料電池を開発した。3年後、GE社の別の化学者であるLeonard Niedrachは、触媒である白金の使用量を減らすことに成功し、Grubb-Niedrach 燃料電池として知られる事となった。GE社はこの技術の開発と利用を、当時進行中だった[[アメリカ航空宇宙局]]のジェミニ宇宙計画に働きかけて採用され、これが燃料電池の最初の実用となった。[[1965年]]に[[アメリカ合衆国]]の有人宇宙飛行計画である[[ジェミニ計画|ジェミニ]]5号で炭化水素系[[樹脂]]を使用した固体高分子形燃料電池が採用され、再び燃料電池が注目されるようになった。1959年、[[フランシス・トーマス・ベーコン]]は5kWの定置式燃料電池の開発に成功した。1959年、Harry Ihrigが率いるチームによって15kW出力の燃料電池トラクターが米国ウイスコンシン州のアリスシャルマーズ社の米国横断フェアーで公開された。このシステムは[[水酸化カリウム]]を電解質として使用して、圧縮水素と酸素を反応させていた。1959年、ベーコンと協力者は5kWの装置で溶接機の電源として使用できることを示した。1960年代、[[プラット&ホイットニー]]社は米国の宇宙計画に於いて宇宙船の電力と水を供給する為にベーコンの米国での特許の使用許諾を得た。[[アポロ計画]]から[[スペースシャトル]]に至るまで燃料電池は電源、飲料水源として使用された。その際は材料の信頼性による検討の結果、アルカリ電解質形燃料電池が採用された。

民生用燃料電池として、住宅用の[[コジェネレーション]]システムや発電施設向けに研究開発が続けられた。日本においては、[[経済産業省|通商産業省]]の省エネルギー政策「[[ムーンライト計画]]」に基づき、リン酸形、溶融炭酸塩形燃料電池、固体電解質形燃料電池の開発が始められた。1991年には、[[東京電力]]五井火力発電所で、出力1万1000kWのリン酸形燃料電池の実証運転が行われた。

[[1987年]]、[[カナダ]]の[[バラード パワーシステム]]社が[[フッ素]]系樹脂(Nafion)を電解質膜に用いた固体高分子形燃料電池を開発した。この電解質膜の耐久性に優れていたことから、燃料電池が再び注目されるようになり、研究開発が盛んになった。

米国防総省と国防総省高等研究事業局([[国防高等研究計画局|DARPA]])のローレンス・H・デュボワは、様々な液体炭化水素(メタノール、エタノールなど)で動く燃料電池に着目して、[[南カリフォルニア大学]](USC)のローカー炭化水素研究所に所属していた[[酸]]の専門家スルヤ・プラカッシュと、[[ノーベル賞]]受賞者の[[ジョージ・オラー|ジョージ・A・オラー]]に声をかけた。USCは[[ジェット推進研究所]]、[[カリフォルニア工科大学]]の協力の下、液体炭化水素が直接酸化するシステムを発明し、のちに[[ダイレクトメタノール燃料電池]](DMFC)と名付けられた。

[[1994年]]、ダイムラーベンツ(当時)が燃料電池自動車の試作車を発表した。また、[[トヨタ自動車|トヨタ]]は、[[1997年]]の[[東京モーターショー]]に燃料電池自動車の試作車を発表し、2005年までに量産化することを宣言した。

2001年には[[ソニー]]、[[日立製作所]]、[[日本電気]]が相次いで携帯機器向けの燃料電池の開発を発表している。

[[2002年]]12月には、[[トヨタ・FCHV]]および[[ホンダ・FCX]]の燃料電池自動車の市販第一号が日本政府に納入され、[[小泉純一郎]]首相が試乗を行った。これらは[[首相官邸]]と[[経済産業省]]で使用され、24時間のフルメンテナンス体制付きのリース契約となった。2003年には[[東京都交通局]]にトヨタ・[[日野自動車]]製FCHVが納入、2004年末まで[[お台場]]周辺で運行された。2005年には[[2005年日本国際博覧会|愛知万博]]で日野製[[トヨタ・FCHV#FCHV-BUS|FCHV-BUS]]が納入された。また、2004年には[[日産自動車|日産]]も横浜市などへ納入した。2006年からは愛知万博で使用された水素ステーションが移設された中部国際空港でも運行されている。これらの公共バスは、一般人が乗る事が出来る燃料電池車であるといえる。

主に1980-1990年代に、燃料電池の開発段階に応じて、リン酸形燃料電池を第1世代型燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池を第2世代型燃料電池、固体酸化物形(固体電解質形)燃料電池を第3世代型燃料電池と呼んでいた時期もあるが、固体高分子形燃料電池が開発の主役となってから、21世紀現在、この呼び方が用いられることはほとんどない。

燃料電池の実用化には[[消防法]]や[[毒物劇物取扱法]]、[[電気事業法]]や[[建築基準法]]などの法的規制緩和が必要であるとされ、電気設備技術基準などの見直しが行われた。2002年10月には米国運輸省が燃料電池の飛行機内持ち込みを許可するなど、燃料電池普及に向けた規制緩和の方針をいち早く打ち出している。また、安全基準や性能評価について国際的な基準制定の動きもある。

== 標準化・課題 ==
1998年に、[[国際電気標準会議]](IEC)内の105番目の専門委員会であるTC105が発足し、燃料電池に関する電気分野での標準化が話し合われ、すでに8つの規格が規定されている。また、電気分野以外での標準化は[[国際標準化機構]](ISO)で行なわれている<ref group="出典" name = "燃料電池の基礎マスター"/>。

燃料電池を普及させるための最も大きな課題は、コストである。購入時の初期コストと使用期間にかかるランニング・コストが共に高いため、普及を妨げている。また耐久性も求められる。発電効率の向上と電解質の長寿命化やインフラ整備が求められる。こういったいくつかの課題が解決出来ない限り、広く普及するにはまだ時間がかかると予想される。<ref>[http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20060720/106579/ 燃料電池車の時代は当分来ない] 日経ビジネスオンライン 2006年7月20日</ref><ref group="出典" name = "燃料電池の基礎マスター"/>

欧州の[[キャンピングカー]]において、[[メタノール]]を使用したものや、[[液化石油ガス]] (LPG) を使用するものが、今後数年の間に採用される<ref>[http://www.efoy.de/index.php?option=com_content&task=view&id=905&Itemid=177 EFOY Fuel Cell now available ex works on all Dethleffs motor homes] SFC Smart Fuel Cell, July 16, 2007</ref>。

りん酸形燃料電池では、UTC Power製の400kWPAFCは、ニューヨークのWTC跡地に建設中の[[フリーダム・タワー]]に12台設置される予定である。

== 用語 ==
燃料電池の説明では、いくつか特有の用語を使用する。一般的な用語もあるが、燃料電池だけの独自の意味を持つものもある。
;セル
:積層などしない単体の燃料電池のことを「単位セル」と呼び、短く「単セル」と呼んだりさらに短く「セル」と呼ぶことが多い。
;スタック
:単板形状の単位セルでは、それらを積層したもの。円筒横縞型や円筒縦縞型の単位セルでは上下に重ねたり数珠繋ぎにしたもの。いずれも直列接続される。「セルスタック」とも呼ばれる。
;燃料極
:陽極([[アノード]])のことであるが、電子を失う側の電極を意味するアノードを電圧の極性を意味するものと混乱しないように、水素などの燃料を供給する側を意味する「燃料極」と呼んでいる。電気化学の分野では、電気工学での「電極端子の電圧の極性に基づく陽極や陰極といった名称」とずれがあるため、混乱を避けるために供給ガスを電極の名前に選ぶのが一般的になっている。
;空気極
:陰極([[カソード]])のことであるが、電子を得る側の電極を意味するカソードを電圧の極性を意味するものと混乱しないように、酸素を含む空気を供給する側を意味する「空気極」と呼んでいる。
;セパレータ
:セルの主要な構成要素であり、一方の面に水素、逆の面に酸素をはさんでこれらを分離する(Separate)のでセパレータと呼ばれる。出来るだけ低い電気抵抗で両面間に電流を流す必要から薄い方が良いが、水素や酸素、冷却水の流路の溝を備えるために厚みのあるものが多い。グラファイトや耐食性を持つ金属で作られることが多い<ref group="出典" name ="燃料電池の基礎マスター"/>。

== 脚注・出典 ==
{{reflist}}
<div class="references-small"><references group="出典" /></div>

== 参考文献 ==
* 竹原善一郎監修『燃料電池技術とその応用』 テクノシステム刊、2000年
* 「今そこに燃料電池」『日経エレクトロニクス』 2001年 10/22号 p117-p145
* 「燃料電池、携帯機器に載る」『日経エレクトロニクス』 2002年 6/3号 p59-p68
* 「売るに売れない燃料電池」『日経エレクトロニクス』 2003年 1/20号 p49-p55
* 「燃料電池2004」『日経エレクトロニクス・D&M日経メカニカル・日経エコロジー合同別冊』、2004年
* 『燃料電池2005』 日経BP社刊、2005年
* 「特集 普及前夜の燃料電池」『日経エコロジー』 2008年6号 

== 関連項目 ==
* [[ハイブリッドカー]]
* [[電気自動車]]
* [[コジェネレーション]]

== 外部リンク ==
* {{PDFlink|[http://www.jreast.co.jp/press/2006_1/20060404.pdf JR東日本 NEトレイン]}}
* [http://www.kunisan.jp/gomi/sofc.html SOFC(固体酸化物形燃料電池)の基礎知識]

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