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 大阪・ミナミの繁華街に白昼、爆音が響き渡った。客にバカラ賭博をさせたとして、大阪府警保安課などは11月10日、賭博開張図利容疑で、大阪市中央区のバカラ店「ハービス」を摘発した。一獲千金を狙う客が集まり、金が飛び交う違法カジノ店。頑強な扉に守られた賭場への突入に用いられたのは、アクション映画さながらの“秘策”だった。

 「爆破しかないな…」

 大阪のメーンストリート御堂筋と堺筋を東西に結ぶ八幡筋の雑居ビル4階。バカラ店「ハービス」の入り口周辺では、天井から切断された配線が垂れ下がり、壁がすすで真っ黒に。扉は吹き飛び、爆破の威力を十分に示していた。

 11月10日午後3時半。ネオンが灯り活気づく夜を前に、周囲の飲食店に開店準備のため店員らが集まり始めた頃だった。

 「警察や、開けなさい」

 ドンドンと、ハービスの重厚なドアを捜査員がたたきながら、店内に呼びかけた。看板はなく、ドアの周囲に「会員制」「18歳未満お断り」のプレートがあるだけ。数分間呼びかけても応答はない。

 「開けなければ爆破するぞ」

 今度は、頭上にある監視カメラに向けて、捜索令状を掲げながら何度も呼びかけた。それでも無反応だった。

 「爆破しかないな…」

 捜査員らは事前に準備してきた爆薬をドア周辺に仕掛けた。

 「仕掛けたぞ。ドアに近付くな」

 店内に再度、声を掛け、退避した捜査員がリモコンで遠隔操作した。

 「ドーン」。警告をしてから約5分後、地響きを伴う轟音(ごうおん)が響き渡った。「なんや、ガス爆発か!」。近くの店の店員らが驚いた様子で外に飛び出してきた。

 道路に面したビル4階の階段踊り場の覆いが爆風で割れて破片が路上に落下。舞い上がるほこりとともに白い煙が辺りを包み、その奥で厚さ4センチもある金属製の重い扉が口を開けた。

 捜査員らが店内に踏み込むと、2台のバカラ台の周辺で、店員と客の男女約10人が「まさか、ほんまにやりよるとは…」と呆然(ぼうぜん)とした様子で立ちすくんでいた。府警保安課などは、店長の金富三容疑者(38)=同市西区=と、22~38歳の男女従業員4人を賭博開張図利の疑いで逮捕。その場にいた客5人についても賭博容疑で逮捕した。

 同課によると、ハービスはビルの5階にも店を持っており、計6台のバカラ台と、現金約160万円などを押収。近くの飲食店経営者の男性は「うすうすバカラ店ではないかとは思っていた。日中から人の出入りが多かったが、看板も出さずに怪しげな雰囲気が漂っていた」と声をひそめた。

 「のめり込む恐怖」

 「週末にはにぎわっていた」と話すのは、昨年末にハービスを訪れたことがある30代の男性会社員。

 「ギャンブルどうですか」

 友人とミナミを歩いていた男性は客引きの男から誘われた。ビルの前で待ち受けていた別の客引きの男に4階まで案内された。頭上には監視カメラ。男とともに数秒待つと、ドアの鍵が解除された。

 店内は想像以上に明るく華やかな雰囲気だった。4つのバカラ台が並び、黒服を着たディーラーがカードを操る。その手元に、客は真剣なまなざしを注いでいた。

 バカラは、トランプを使ったカードゲーム。胴元側と客側のそれぞれに2~3枚のカードが配られ、その合計が9に近い方が勝者となり、客はどちらが勝つかを予想する。

 ハービスの掛け金は最低でも1口3千円。台によって掛け金は異なり、中には1口3万円の台もあったという。

 酒とたばこは無料だったが、男性は「酔うと雰囲気に飲まれてしまいそうだったから、酒にはなかなか手が出なかった」と語る。また、「ゲームに興じると時がたつのを忘れてしまうこともあり、そのままのめり込みそうで怖かった」とも。

 保安課によると、ハービスはバカラ店としては小規模だが、それでも1日の利益が約160万、1カ月で約4800万円に上るとみられる。

 男性は自分と同じような会社員らしき客も多く見かけたという。「違法カジノはそんなに遠い世界のものじゃない。自分も最初は怖いもの見たさの部分があったし、興味本位で来ている人も多いと思う」。

 練習重ねた爆破

 保安課はミナミの環境浄化目的で、平成17年4月からほぼ毎月、バカラ店を集中的に摘発。平成18年1月までに15店舗を一掃している。その後は、ネットカジノやパチスロ賭博店の取り締まりを強化していたが、昨年6月、約3年半ぶりにバカラ店を摘発した。

 バカラなどの違法カジノ店は、周囲のビルなどに営業ができる部屋を何カ所か確保し、定期的に場所を移す「箱替え」と呼ばれる方法で摘発を逃れてきた。

 同課は、今年10月から匿名の情報提供を基にハービスの内偵捜査を進めていた。

 かつてバカラ店の摘発時には、バールや電動ドリルでドアを壊してから侵入していた。だが、30分以上かかることもあり、ようやく店内に入ると、「抜け道」から逃げられ、もぬけの空という苦い経験があった。実際、ハービスに突入すると、客がチップと現金を換えるキャッシャーの内部には、外階段に通じる抜け道が作られていたという。

 「人的被害を出さず、効率的な突入方法を研究した結果が爆破だった」と同課幹部は明かす。爆破こそが、同課が満を持して実行した“秘策”だった。

 大阪府警が違法賭博事件の摘発時に爆薬を使ったのは、今回が初めてではない。昨年10月にも捜査4課が大阪市西成区のヤミ券売り場の摘発で鉄製扉を爆破して突入した経緯がある。このときは、胴元側が抵抗し店内に立てこもったため、数回の警告の後、捜査1課特殊班「MAAT」が扉を爆破した。

 今回の突入までの所要時間は、警告からわずか5分後だった。保安課は最小限の被害にとどめるため何度も練習を重ねたという。秘策は見事的中し、けが人が出たり、抜け道から逃げられたりすることもなく、同課は「過去の教訓を生かせた」としている。

 ハービス以外にもミナミにはバカラ店が約10店あるとみられる。同課は「バカラなど違法カジノ店の摘発はモグラたたきのような部分もあるが、暴力団に資金が流れている可能性が高く、今後も厳しく取り締まっていく」としている。