暴力団が除染講習会に潜り込み資格取得 儲かる除染作業参入

NEWS ポストセブン 7月31日(火)16時6分配信



 大飯原発が再稼働したものの、まだ多くの原発が停止したままだ。しかし、原子力ムラは一向に困らない。なぜなら、原発が停止しても、新たに「除染」利権が誕生したからだ。ジャーナリストの伊藤博敏氏が指摘する。

 * * *
 昨年9月、内閣府は日本原子力研究開発機構に「避難区域等における除染実証業務」を約119億円で丸投げした。同機構は、高速増殖炉もんじゅや青森県六ヶ所村における核融合の研究開発にあたる組織で、「原子力ムラ」の中核と言っていい。発注は、「除染作業に知識と経験がある」という理由からだが、結局、機構もゼネコンを中核とするJVに丸投げ。「除染実証業務」の3地区を受注したのは原子炉建屋などの実績順に、鹿島(24基)、大林(11基)、大成(10基)の3社JVだった。

 こうしたモデル事業での実績をもとに、ゼネコンは環境省発注の警戒区域内などの除染や、指定された104か所の自治体発注の除染も、ほぼ独占的に受注し、“談合”で割り振ることが多い。

 言うまでもないことだが、談合は犯罪である。地検特捜部などが長い歳月をかけて摘発し、ようやく談合組織を壊滅に追い込んだ経緯がある。それが、大震災を機に復活したのだ。実は検察も、「いつまでも非常時ではない!」と、 今年3月頃から摘発を視野に入れた内偵に入っていた。

 そうした捜査当局の意図を察知したかのように、復興庁と国土交通省は、被災地の復興工事でコンストラクション・マネジメント(CM)方式と呼ばれる新たな発注方式の導入を決め、7月から宮城県で始めることになった。

 これまで自治体が、公共工事を調査・設計、工事施工などに分けて発注していたものを、「コンストラクション・マネージャー(CMR)」という建設管理業者に丸投げ。そこが各業者に発注する。「官」がCMRに想定しているのはゼネコン。要はゼネコンへの丸投げであり、現在の「官製談合」の違法を、合法に変えるシステムだ。

 こうして東北では、莫大な除染・復興予算を、ゼネコン、サブコン、土建業者などが、分け合う体制が確立した。

 東北は、不況の続く日本の起爆剤。そのあふれる予算に期待し、蠢き始めた有象無象は少なくない。暴力団もしかり。暴力団系手配業者が原発に作業員を送り込んでいるのは周知の事実だったが、被災して事業を投げ出した土建業者の組合員資格を買い取った暴力団系業者が、談合でやすやすと工事を受注。また、彼らは満員盛況の「除染講習会」に潜り込み、資格を取って除染作業に入り込んでいる。

 憂慮した環境省は、今年3月、福島県警と合同で、除染やがれき処理から暴力団を排除する対策協議会を立ち上げた。彼らの確実な“侵食”を物語るのは、5月に福島第二原発が立地する楢葉町の渡辺征・商工会長が銃刀法違反で逮捕されたことだろう。

 渡辺被告は、商工会長ほか建設業協会会長、漁業協同組合組合長などを務める町の“顔役”だったが、除染・復興利権を手にするようになって、カネ回りが良くなった。1000万円台の車を購入、羽振りがよくなった渡辺被告に群がる海千山千が多くなり、そうした渡辺被告に拳銃を手渡した組織があり、同時に被告の「独占」を快く思わない勢力によって、警察に「刺された」ということのようだ。

※SAPIO2012年8月1・8日号

AD

法科大学院撤退のドミノ、合格率低迷、負の連鎖、就職難、政府見通し甘く(真相深層)
2012/06/09 日本経済新聞 朝刊



 明治学院大学が法科大学院の2013年度以降の学生募集を停止する。11年度の姫路独協大、13年度からの大宮法科大学院大に次ぐ統合・撤退。法曹界の充実という期待を担って04年にスタートした法科大学院に何が起きているのか。
入学わずか5人
 明治学院大法科大学院の12年度の入学者が確定した4月1日、京藤哲久研究科長は衝撃を受けた。入学者わずか5人。昨年の29人、2年前の48人からの激減で「もう授業は成り立たない」。撤退が事実上決まった。
 弁護士や裁判官などを目指す法科大学院。志願者が受ける適性試験の昨年の志願者数は7800人強と8年間で5分の1以下になった。日本弁護士連合会の中西一裕事務次長は「法科大学院の選抜・養成機能が低下しかねない」と懸念する。
 多くの法科大学院が入学者集めに四苦八苦しており、全74校の競争倍率も昨年度は2・88倍と04年度の4・45倍から落ち込んだ。「入学者1ケタのところが今年は20校に達したと聞いた」(有名私大の法科大学院教授)
 法科大学院は単体でうまみのある事業ではない。文部科学省の設置基準により最低12人以上の教員を義務付けられ、一定のコストがかかる。収入の中心は授業料で、入学者減少は大きな打撃だ。明治学院大では「黒字にするには60人は必要だった」(京藤研究科長)。単体で黒字の法科大学院は数えるほどというのが関係者の見立てだ。
 人気急落の理由は、はっきりしている。制度のスタート時に政府が掲げた「法科大学院修了者の7~8割が司法試験に合格」という目標が空手形となり、11年単年では23%、06年度修了者の累積合格率も49%にとどまる。
 政府の見通しに期待を抱いた大学は法科大学院設置に走り、入学希望者も殺到。その結果、合格率が低迷して志願者が激減、法科大学院の経営が悪化する負の連鎖に陥った。背景には入学者、大学、政府それぞれの誤算がある。
 入学者の誤算は「だれでも法科大学院に行けば弁護士になれる」と夢を抱いたことだ。法律家に向かない人も含め多数が集まった結果、「司法試験の合格率を下げてしまった」(前出の教授)。
 大学の誤算は、大学や法学部のブランド維持のため、法科大学院を必要と考えたことだ。教員は引き抜きで帳尻を合わせ、不十分な体制で多数が参入した。学生獲得のため、多額の奨学金を提供したが、司法試験合格率が期待を下回った結果、「法学部志望者まで減りつつある」(日弁連)。
 根底にあるのが政府の誤算だ。司法制度改革審議会は「規制緩和で社会の需要に応え、多様な法律家を育てる」とうたい、文部科学省は希望する大学すべての参入を許した。だが、法科大学院修了生を企業や役所が採用するだろうという見通しは甘く、実態は就職難となった。
 法科大学院への国費投入は10年度までに計585億円。司法試験合格者1人当たりの投入額は合格率上位5校で平均222万円。これに対し、下位5校では3693万円と開きがあり、効率を高める必要がある。
見直しは不可避
 文科省は今年度から司法試験合格率と入学時の競争倍率が低い法科大学院への補助金を減らす。補助金を奨学金に充てる法科大学院は多い。削減すればさらに学生が減り、いずれ経営は立ちゆかなくなる。「法科大学院の間引きが狙い」と見る向きは多い。
 米国のロースクールは1000人以上の学生を抱える大規模校が主流だ。韓国は法科大学院の設置を政府が絞り込み、8割超の司法試験合格率を達成した。日本でも統廃合を含む法科大学院の見直しは避けられない。(編集委員 渋谷高弘)
 ▼法科大学院 法曹(弁護士、裁判官、検察官)に必要な教育を行う専門職大学院。司法制度改革の一環として、社会人など多様な人材を法曹分野に送り込むことを目的とし、2004年4月に設立された。法学部出身者を対象とする2年課程、その他を対象とする3年課程があり、修了後5年以内に3回まで司法試験を受けられる。


東京の法律事務所、大手の進出地元は静観――企業の海外事業支援など。
2012/07/17 日本経済新聞 名古屋夕刊



顧客の獲得見極め
 数百人の弁護士を擁し、海外にも拠点を持つ東京の大手弁護士事務所が、相次いで名古屋に進出している。愛知県内には全国で3番目に多い約1500人の弁護士がいるが、こうした大規模な渉外事務所はなかった。顧客獲得で競合する可能性がある地元弁護士は「どれぐらい業務に影響があるのか……」と注視している。
 「中部は優良な企業が多い地域。海外進出を支援できる」。所属弁護士約450人、日本最大の総合法律事務所「西村あさひ法律事務所」(東京・港)の伊藤剛志弁護士は名古屋進出の理由をこう説明する。同事務所は8月、名古屋駅に直結するJRセントラルタワーズに名古屋事務所を開設する。
 同事務所は数年前から中国・北京やベトナム・ハノイなど海外へ進出してきたが、国内で東京以外に事務所を設置するのは名古屋が大阪と並んで初めて。数年前から検討してきたといい、3人の弁護士が常駐する。東京と連携し、多数の弁護士がかかわる大型M&A(合併・買収)案件や、独占禁止法関連の事案、国際取引に絡んだ税務紛争などに対応する想定だ。
 伊藤弁護士は「地元では必ずしもカバーできていない分野。名古屋の企業のニーズを聞きながら対応したい」と話す。9月にはブラジルの弁護士を招き、同国進出に関するセミナーを開催予定で、需要の掘り起こしを狙う。
 一足早く4月に名古屋・錦にオフィスを構えたのがTMI総合法律事務所(東京・港)。金融商品取引法や知的財産など専門性のある弁護士と連携しながら、海外進出を目指す企業を支援したい考え。同事務所の葉玉匡美弁護士は「例えば自動車メーカーが海外進出した際、初めて一緒に進出する中小の部品メーカーのリスク管理などアドバイスできる」と話す。
 中部地方の企業関係者の間では、弁護士の役割を「訴訟の際の代理人」とだけとらえる意識も強い。企業法務全般をカバーする渉外事務所の役割が十分理解されているとは言い難い。
 両事務所とも、赴任する弁護士は東京から愛知県弁護士会に登録を変更。地元側とのあつれきを懸念する声もあるが、「競合するのではなく、対応が難しかった法的サービスを提供しあえる関係になりたい」(葉玉弁護士)という。
 一方、“迎え撃つ”側の愛知県の弁護士事務所は、最大でも30人程度の規模。多重債務を抱えた人に代わって消費者金融と交渉したり、離婚の代理人となったりする個人向け業務や、中小企業の顧問としてトラブルの相談に乗る、といった役割が中心だ。
 大手の進出には今のところ「様子見」の弁護士が多く、あるベテランは「愛知の中小企業に大手事務所の高額な弁護士費用を払えるのか」と懐疑的な見方。別の弁護士は「影響は未知数。企業法務の分野のニーズが増えているわけではないが、変化があるか見極めたい」と話す。

親孝行したい87%――20~40代で「気持ち強まる」(女子ゴコロ旬トピックス)
2012/07/30 日経MJ(流通新聞)



20代は「母高父低」/結婚・出産を機に
 「親孝行をしよう」という気持ちが強まったことのある20~40代女性は87・2%と9割近くに達することが日経産業地域研究所の調査で分かった。きっかけは既婚者と独身で異なるが、複数回答の結果では2011年の東日本大震災が双方で上位に入った。親子の絆を改めて意識した人は少なくないようだ。
 調査は5月25~27日、調査会社のマクロミルを通じてインターネットで実施した。対象は首都圏在住の20~40代の女性300人。
 まずは両親とも健在な242人に、実家の父母どちらに最も親孝行をしているか尋ねた。全体では「両親とも同じくらい」が37・2%で最多。だが、年代別の結果をみると、20代では「実家の母親」が47・3%と5割近くに達し、「母高父低」が鮮明だ。回答者のうち既婚者は20代では22・0%。一方、30代と40代はともに75%を超える。そうした環境の違いも、親孝行意識に影響しているようだ。
 両親のどちらかでも健在な297人には、「親孝行をしよう」という気持ちが強まったきっかけを複数回答で尋ねた。全体では「自分の結婚」(34・0%)が最多で、「自分の出産」(27・3%)が続く。「強まったことはない」は12・8%で、差し引けば9割近くは意識の高まりを感じたことがあるようだ。
 きっかけを既婚者と独身で分けてみると、既婚者は「自分の結婚」(56・0%)、独身は「自分の就職」(31・8%)が最多。「東日本大震災」との回答も既婚者で21・4%、独身で17・1%あった。
 調査ではさらに、「最も強まったきっかけ」も1つ挙げてもらった。既婚者では「自分の出産」(23・2%)、独身では「自分の一人暮らし」(17・8%)が最多だった。
 これまで実家の親に贈ったことのあるもの(複数回答)のトップは、母親向けが「花・観葉植物」(56・2%)、父親向けは「洋服・ファッション小物」(39・0%)だった。「母の日」と「父の日」の贈り物費用をみると、何もしない人を除けば、母の日は「千~三千円未満」と「三千~五千円未満」が同率の22・4%で最多。父の日は「千~三千円未満」が19・7%で最も多い回答だった。
 今後の意向は「金額を問わず、こまめに何か贈る」という人が実家の母向けは50・3%、父向けは45・4%と半数前後に達した。贈答品はさらにカジュアル化しそうだ。
=詳細は「日経消費ウオッチャー」7月号
つぶやきから
【親への贈り物を巡る要望や悩み】
 「使える物をあげたい」(27歳、自由業)
 「新鮮な商品の展開を」(22歳、パート・アルバイト)
 「記念日に花とプレゼントを贈るが、両方をセットで贈るシステムがなくて不便」(35歳、パート・アルバイト)
 「持病があるので『糖尿病にいいスイーツや特産品』など病状に合わせた食品を紹介してくれるサイトがあったらいいのに」(48歳、会社員)

レコード回帰、アナログ感共鳴――ジャケットに愛着も(ブームの予感)
2012/07/30 日経MJ(流通新聞)

 音楽配信や電子書籍と、コンテンツをダウンロードして手に入れる時代。だからこそなのか、レコードのアナログ感に親近感が寄せられている。独特のライブ感を表現していたり、暖かみのある音に癒やされたり。デジタルな音にならされた耳には新鮮に聞こえ、中高年世代は郷愁をかき立てられる。大きなジャケットやレコードの重さが存在感となり、愛着を増している面もある。
 「今の時代にレコードだけでシングルを出すなんてかっこいいよ」
 6月29日午後10時、東京都港区にある老舗ロックバー「レッドシューズ」。名古屋市を拠点に活動する3人組ロックバンド「黒いチェリー」のライブを聴いた観客の1人、外狩寛人さん(24)は興奮気味だ。
 黒いチェリーは昨年末、第1弾シングル「kuroi―ep.」をCDではなく、EP盤レコードで発売した。ライブで演奏したオリジナル曲「長島スパーランド」などを収録し、ライブ会場で販売している。
 ライブを通じて黒いチェリーに興味を持った外狩さんは「自分の部屋にアナログレコードプレーヤーはない」という。にもかかわらず、そのレコードを1000円で買った。「実家にあったプレーヤーを取り寄せて早速聴きたい。激しい曲調がどのように聞こえるのか楽しみ」と笑う。
 レコード発売元のOys音楽出版(名古屋市)の上田修平店長は「多重録音せず、演奏をそのまま録音した。生演奏に近い音を再現しやすいのはレコード。ライブ感がある」と説明する。ドラム担当の福原隆宏さん(26)は「レコードで聴いてほしいので、CDや音楽配信では楽曲を提供しない」と言い切る。
 1年ほど前に「ユーチューブ」にライブの動画がアップロードされた時、「デジタルで聴いてほしくない」とすぐに削除を要請。知名度向上につながる可能性をつぶしてまでも、レコードにこだわった。
 日本レコード協会(東京・港)によると、2011年のアナログレコードの生産数量は21万枚で10年比でほぼ2倍に増えた。生産金額は同97%増の3億3600万円に。今年1~6月の数量も前年同期比51%増と増加傾向が続く。規模は小さいが、市場収縮が続くCDや音楽配信とは対照的だ。
 レコードが脚光を浴びるきっかけをつくったのは黒いチェリーのようなインディーズバンドだけではない。レディオヘッドやデヴィッド・ボウイといった海外の大物ミュージシャンがレコードで作品を発売する動きを強めたことも影響した。国内には、ザ・クロマニヨンズのように結成当初から、発売した作品すべてでCDとレコードを併売するミュージシャンもいる。
 音楽雑誌「レコード・コレクターズ」の佐藤有紀編集長は「レコードの音はCDの音より厚みやぬくもりがあるため、表現方法として重視するミュージシャンが増えているようだ。音楽配信とレコードの組み合わせが多い」と分析する。
 レコードに注目しているのはアーティストだけではない。CDやレコードの販売店を展開するディスクユニオン(東京・千代田)はEMIミュージック・ジャパン(同・港)と共同で、昨年秋から名門ジャズレーベル「ブルーノート」の名盤レコードの復刻企画に取り組む。第5弾まで、各回ごとに5タイトルを計5千枚、限定生産した。ジャケットや音質をオリジナルの初盤に限りなく近づけたといい、ほとんど完売した。
 この企画が起爆剤となり、12年1~6月のディスクユニオンの店舗への来店客数は前年同期比1割ほど増えたという。ディスクユニオンの塙耕記さんは「若いときにレコードを集めて、しばらく離れていたという団塊の世代の来店が目立つ」と話す。
 一方で「ザ・ビートルズ」やアニメ「けいおん!」などのデザインをあしらった同社独自企画のレコードバッグなどファッションを入り口として、一昔前は皆無だった20~30代の女性も来店するようになっており、年齢層の裾野は広がっている。
 レコード本体だけではなく、ジャケットの魅力も大きい。東京都新宿区に住む元会社役員の男性(56)は、レコードを飾れるよう自宅マンションを改装するつもりだという。約100枚所有するレコードの一部を並べられるよう入り口からリビングまでの壁に棚を備え付ける計画。「訪問客にジャケットを見てもらい、気に入ったら実際にプレーヤーにかけて聴いてもらいたい」。スピーカーとプレーヤーはすでに用意した。
 もろさも否定的に捉えるばかりではない。レコードのみをかけるジャズ喫茶「ジャズオリンパス!」(東京・千代田)を経営する小松誠さん(54)は「紙のジャケットが朽ちていくのも魅力の1つ」と話す。
 米アップルの音楽配信サービス「iTunes(アイチューンズ)ストア」の機能が近く拡充される見通しとなるなかで脚光を浴びるレコード。デジタル一辺倒の流れに対する抵抗感を暗示している。ディスクユニオンの塙さんは「音楽配信で音だけを手に入れるのを味気ないと感じている消費者は少なくない」とみる。ちょっと立ち止まって音楽の楽しみ方を考え直してもいいのかもしれない。(戸田健太郎)

開発物語――東北農業研究センター、イチゴ「なつあかり」(食材最前鮮)
2012/07/30 日経MJ(流通新聞)

品薄の夏秋向け、味も良く
 季節外れの夏イチゴはまずい――。こんな常識が覆ろうとしている。東北農業研究センター(盛岡市)は夏と秋でも収穫できるイチゴ「なつあかり」を開発。夏に収穫してもイチゴ特有の酸味と甘さを兼ね備えており、おいしく食べられる品種だ。海外産が主役だった夏のイチゴ市場が変わる可能性が出てきた。
 春から秋にかけて東北特有の冷たい風、やませが吹く盛岡市。カラ松の防風林が囲む広大な敷地内に、夏秋イチゴを栽培するハウスがある。7月下旬でも肌寒さを感じることがある。「この地ならではの涼しい気候がこの時期のイチゴ栽培に適しているんです」。同センター畑作園芸研究領域の由比進上席研究員は東北でなつあかりが生まれた背景を説明する。
 イチゴの生育の適温は20度ほどとされる。国内では低温を迎える冬から春にかけてが旬となる。だがイチゴはケーキなどの材料として定番で、夏や秋も需要は底堅い。6月から11月までは米国からの輸入に頼っているのが現状だ。
 「国内産が少ないため、季節外れのイチゴは高値で取引される」(由比研究員)。東京市場の卸値(2011年)を見ると入荷量が最も多い4月が1キロ750円だが、最も少ない9月は同1410円とほぼ倍だ。国内で質の高い夏秋用が生産できれば「農家にとって収入増につながり、栽培の利点が大きい」(同)。
 開発が始まったのは1990年代の前半。様々な品種を組み合わせた結果、サマーベリーと北の輝(かがやき)をかけあわせて誕生した。各地での栽培試験を経て07年に品種登録した。なつあかりという名前は「イチゴの少ない夏の時期にも希望の明かりになるように」との思いを込めた。
 なつあかりへの市場関係者からの評価は高い。これまでの夏秋イチゴは冬春イチゴより味が劣るというのが常識だった。だが、人気の定番品種と比べても、おいしいと評価する声が多い。味にほれ込んで栽培を始める農家もいるという。ライバルの輸入物は大きくて見た目がよいものの、味に対する評価はあまり高くなく、なつあかりが切り込む余地は大きい。
 弱点もある。例えば実の軟らかさ。食感が良くなるが、夏から秋は気温が高く収穫時や輸送時に傷みやすい。花が咲きにくい点も課題だ。花が咲かなければ収穫量は少なくなる。ただ、夜にも明かりをつけて日照時間を伸ばせば花の数が増えるなど、栽培が広がるとともに具体的な対応策も明らかになりつつある。
 青森県は夏秋イチゴを「高収入作物と位置付け、08年度に県の振興品目として定めた」(県農産園芸課)。補助金などでハウスをはじめとする施設の整備を支援し、04年に3ヘクタールだった栽培面積は11年に3倍の10ヘクタールまで増加。生産者は様々な夏秋用の品種に取り組んでいるが、なつあかりに力を入れる農家も着実に広がりつつある。
 今後さらに栽培面積が広がり産地から安定して供給できるようになれば、「味がいいだけに、お盆の贈答用として新しい需要が生まれる」(由比研究員)と期待する。
 かつては貴重だったクリスマス用のイチゴだが、最近では常識になりつつある。季節外れの暑い時期に、おいしいイチゴを手軽に味わえる日もそう遠くはなさそうだ。
(林哲矢)