2011年02月26日

告白しない片思いに何か意味はあるか?の考察・前編(パソコン読者用)

テーマ:メンタル

※2008年・2月14日の記事を再々編集


 先日、部屋を大掃除しました。


 例年であれば、年末にします。昨年末は忙しくてできなかったため、時間に余裕のできたこの時期にすることにしたのです。


 僕の掃除は、大がかりなものです。徹底的に片づけることから、懐かしいものがたくさん出てきます。それらを見ながら毎年、「こんなときもあったな……」と、ノスタルジーに浸るのです。


 今回、タンスの奥に閉じ込められた段ボールの中から、1つのエプロンが出てきました。


 このエプロンは、僕が大学時代にアルバイトをしていた、スーパーマーケットのエプロンなのです。


 このエプロンには、たくさんの思い出が詰まっています。


 ただ、このエプロンは感慨に浸るためではなく、自分を戒める意味で保管してあります。「2度とこんなことをしてはいけない!」という、強い自戒の意味を込めて……。


 僕は過去に、一度だけ女性に告白したことがあります。自分で言うのもなんですが、女性のほうから告白されて交際したのがすべてで、自分から好きだと言ったのは、あとにも先にもこのときだけなのです。


 ですが、僕はシャイです。気が小さく、人に話しかけるのも苦手。女性に告白するなんぞ、死んだほうがましだ、と思うほどのことなのです。


 告白に至るまで、いろいろとありました。「告白しない片思い」という奴で、意味のない時間を悶々と過ごし、自分がイヤになって、体を壊してしまったのです。


 このエプロンを見た僕の脳裏に、1つの記憶が蘇ってきました。掃除をしていた手が止まり、いい意味でも悪い意味でもしんみりせずにはいられない、鮮烈な思い出が脳を駆け巡ったのです。


 そこで今回は、「告白しない片思いに何か意味はあるか?」の考察・前編です。


 これは僕が1人暮らしをしていた、大学4年生のときのお話です。


 当時、僕は家から10分足らずのところにある居酒屋で、アルバイトをしていました。


 僕は、大学の単位が不足しています。留年を見越して学費を稼ぐため、毎日のように働いていました。


 あるとき、店長にお願いされました。


 「悪いけど、労働基準法に違反するから、働くのを減らしてくれ」


 僕が働きすぎたらしく、週に4回以上、働けなくなったのです。


 そこでその年の夏ごろから、近所のスーパーマーケットで、居酒屋とかけ持ちで働くことにしました。


 スーパーの勤務時間は、夕方の5時から、店が閉店する11時までの6時間。業務はレジを打つだけの簡単なもので、お金を稼ぐにはもってこいの仕事でした。


 僕にとっては、お金を稼ぐためだけの仕事です。友達を作ったり、ましてや彼女を作ろうなんて気はさらさらなかったのですが、同じようにレジで働いていた女の子を好きになってしまったのです。


 このスーパーには縦にレジが4台あり、1人ずつ入って働きます。8時からはお客さんが少ないため、レジを2台にして2人ずつ30分の休憩をとり、全員の休憩が終わった9時から11時までは、2台のレジでペアになって働き

ます。誰とペアになるかは早い者勝ちで、僕の隣になることが多かった女の子と話をするうちに、気になりだしたのです。


 彼女の名前は、K子ちゃん。


 この近所に住む、隣町の女子高に通う3年生です。ショートカットがよく似合う、それはもう、かわいらしい女の子なのです。


 女子高生特有のあくの強さは一切なく、「バスコさん、バスコさん!」と、気さくに話しかけてくれます。なついてくるウサギのようで、放たれる愛嬌に、くらくらするほどなのです。


 「バスコさんの接客って、荒くないですか?」


 「そんなことないよ!」


 「荒いですよ!お客さんにはもうちょっと親切にしてくださいよ!」


 なんとない会話なものの、楽しいです。愛らしい女の子が冗談半分に悪態ついてきたと考えると、うれしくて仕方がありません。


 そしてその会話を、家に帰ってから何回も思い出します。自然と顔がニヤけ、胸の内側がポカポカとあたたかくなってくるのです。


 シフトの関係で、K子ちゃんとは、週に一度しか会えません。高校生で10時に帰るため、週にたった1時間しか話ができないのですが、回を重ねるごとに、僕は好きになっていきました。


 当時、僕に彼女はいません。


 大学や居酒屋にも親しい女の子はおらず、女性とは長い間、遠ざかっています。気さくに話しかけてくれるK子ちゃんが女神のように思え、K子ちゃんが隣でクシャミをしようものなら、口から出た唾液の破片を吸い込もうとするぐらいの勢いです。


 バイト中は、K子ちゃんと目が合う→目を逸らす→また見るのくり返しです。店内ですれ違ったときに見て、振り返って見て、店内を曲がるときに横目でもう一度見て……。このくり返しで、女神が愛おしくて仕方がないのです。

 恥ずかしながら、これでもかというぐらい、K子ちゃんとの恋愛の妄想をしました。


 週に3度は僕の部屋に遊びにきて朝帰りをする、真夜中にキスをするためだけに近くの公園で会う……。こんな恥ずかしいことを、当たり前のように考えていました。


 「結婚したい!」と思うぐらいに好きで、結婚してK子ちゃんが僕の名字になったとき、語呂が悪くないかを確認したりしました。妄想が膨らみすぎて、K子ちゃんのお父さんに結婚の申し込みに行くところを、勝手にシュミレー

ションしているほどだったのです。


 ただ、いつまでたっても、告白できません。


 ほかのバイトの人に聞いて、K子ちゃんに彼氏がいないことはわかっています。なのにシャイな僕は、勇気がなくて言えないのです。


 バイト先の人に言って、協力してもらう手もあります。S君という同じ大学の男友達ができたので、S君に力を借りて告白することも可能でしょう。


 ですが、本当のシャイは、男友達に言うこともできません。女性を好きでいる自分がどこか恥ずかしいため言えず、なにより、彼女のいないS君もK子ちゃんを好きな可能性があるため、邪魔されることを考えて言えないのです。


 とりわけ僕は、「相手も自分のことを好きだとわからないかぎり、自分からは告白しない」と決めている節があります。勇気がないのはもちろんのこと、告白するとしても、自分への愛情を確認できないことには言えないのです。


 僕は、K子ちゃんに会える木曜日に、レジでペアになれるようにタイミングを計りました。偶然を装い、真後ろのレジに入って話しかけるなど、僕を好きになったと確信できる証拠を得るために、孤軍奮闘しました。


 K子ちゃんを好きになってからというもの、歯磨きや洗顔といった日常の行為が、以前に比べて入念になりました


 「常に最高の自分を見せたい!」


 この思いに支配され、バイト中は、常に凛としています。


 バイトに遅刻して店に全速力で走ってきたときも、息が切れてクシャクシャになっている顔は、K子ちゃんには見せません。ブサイクな自分を見せたくないため、K子ちゃんの前を通るときだけは、妙に涼しい顔をしました。


 同時に、そんながんばる自分を誰も認めてくれないことに、どこか苛立ちを感じます。その結果、K子ちゃんに接してくる異性が全員、敵に見えてきたのです。

 K子ちゃんが自分以外の男の従業員と楽しそうに会話しているところを見ると、気持ちがモヤモヤします。その後、その従業員だけではなく、K子ちゃんにも、どこか冷たくしてしまう自分がいるのです。


 いろいろと、アピールもしました。


 盗み聞きで、K子ちゃんは男らしい人が好き、という情報を得たときには、「俺はオーストラリアに行ったとき、黒人を殴り倒したからな!」と、ウソをつきました。レジのカゴをたくさん担ぐ姿を見せたり、家が貧しいという情報を仕入れたときは、「デート代を出さない男なんて最低やな!俺は全額出すからな!」と、後ろのレジにいるK子ちゃんに聞こえるように言ったりと、子供みたいなことを真剣にしていたのです。


 しかし、いつまでたっても、僕のことを好きになったという確証を得られません。仲よく話こそするものの、男女としての距離が縮まった気がしないのです。


 「まあでも、もっと仲よくなれば、好きにもなってくれるやろう!」


 結局、負け犬特有のプラス思考で、自分を慰めることにしました。K子ちゃんにさりげなくアピールするのをくり返し、僕は働き続けました。


 ところが、事件は起こったのです。


 僕はS君と共謀して、スーパーのその日に処分される食料品を、レジを通さずに持って帰っていました。店長に、「捨てるんやったらくださいよ?」とお願いしても断られたため、店が閉まる11時前にS君がレジに入り、僕は個人的な買物を装って、レジを通さずに弁当や惣菜をくすねていたのです。


 ただ、あるとき、店長に見つかってしまったのです。


 店長が近くにいることに気づかず、S君が弁当をよけてバーコードを打ち始めたところ、買物客を装った僕と店長の目が合ってしまったのです。


 思わず目を逸らしたものの、時すでに遅し。店長は目を吊り上げており、翌日から、極端に冷たくなりました。転校生を無視する小学生のごとく、ほかのバイトには優しく接し、共犯であるS君にもなぜだか普通に接したものの、僕にだけ、あからさまに対応が違ったのです。


 これを見て、僕は、バレたと確信しました。


 「ほかの従業員にも知れ渡っているのではないか……」


 このような被害妄想が顔を出して、働きづらくなったのです。


 僕は居心地の悪さに耐えられず、12月末をもって、バイトをやめることにしました。


 大学試験が近づいて、勉強しなければならない時期です。タイミングよく居酒屋の店長が変わり、新しい店長がタイムカードを2つ用意してくれることになったので、スーパーで働く理由はなくなったのです。


 もちろん、K子ちゃんのことが好きなので、やめたくはありません。


 とはいえ、スーパーにいづらい、大学試験が近い、シフトの融通がきく居酒屋で、好きな時間に好きなだけ働ける、といったことを総合的に考えると、やめたほうが得策だ、と判断したのです。


 僕はバイトをやめるにあたり、1つの決意をしました。


 言わずもがな、K子ちゃんへの告白です。


 確証を得るとか悠長なことなど、もう言ってられません。バイトをやめてK子ちゃんと働けなくなっても、付き合っていれば、そんなことはどうでもいいのです。


 しかし、そこはシャイな僕です。バイト仲間にやめることを報告し、背水の陣で自分を追い詰めたものの、告白できません。


 「言うんだ!勇気を出して言うんだ!」


 仕事中もレジそっちのけで告白のことを考えていたのに、いざ本人を前にすると言えないのです。


 ノドまでは出かかるものの、そこから先が出てきません。いざ言おうとしても、そういう空気を出した自分を客観的に見て恥ずかしくなり、話を強引に変えてしまうのです。


 恋愛ベタは、相手とちょっとしたことがあるだけで、すぐに、自分のことが好きなのではないか、という結論に持っていこうとします。僕がまさにそうで、K子ちゃんと少し目が合っただけなのに、「俺のことをずっと見ていたのではないか……」といいように考えるなど、妙な悦に浸って自分を満足させます。そして、「向こうのほうからそのうちに告白してくるのでは?」という都合のいい理由をつけて、逃げるのです。


 告白できないままに、月日は流れました。気がつくと、バイト最終日になっていたのです。


 K子ちゃんは携帯電話を持っていません。連絡先を訊くことはできず、いづらくなったことからその後、プライベートでスーパーに来ることもできません。


 告白するチャンスは、もうこの日をおいてないのです。


 それもチャンスは一度きり。レジでK子ちゃんとペアになり、「今度、どこかに遊びに行かへん?」と誘うしかありません。お別れ会をしてくれる気の利いた奴もいないので、そのときこそが、シャイな僕にとってのラストチャンスなのです。


 本番前夜、僕は寝る間を惜しんで、告白の練習をしました。


 シャドウボクシングならぬ「シャドウ告白」で、ボクサーのシュッシュッなみに、「今度映画を観に行かへん?今度映画を観に行かへん?」と、壁に向かって練習しました。「こう言われたらこう切り返そう!」と、ディフェンス込みであらゆる事態を想定し、徹底的に予習をしました。


 真夜中にもかかわらず、近くの神社にお参りに行きました。


 「僕に勇気をください!」


 こう心の中でつぶやいて手を合わせ、5円玉を何枚入れたことか。1枚、2枚ではなく、コンビニでわざわざ両替えまでして、何十枚も投げ入れました。


 そして、ほとんど寝つけないままに時間だけが経過し、バイトの時間がやってきたのです。


 僕は予習したことを反芻して、スーパーに向かいました。


 「落ち着けよ!絶対になんとかなるから!」


 自分にこう言い聞かせて、スーパーに入りました。


 休憩室でエプロンをつける僕に、K子ちゃんがあいさつをしてきました。


 「バスコさん、おはようございます!」


 僕は、すでに緊張しています。「あっ、おはよう」と目も合わさないまま返し、逃げるようにレジに向かいました


 年末なので、店は混雑しています。


 とはいえ、「そのとき」が来ることを考えると、僕は仕事どころではありません。商品を袋に入れる手がずっと震え、特売品に気づかず、そのままの値段で売ってしまいます。ジュースを並べようとして倒したりと、心ここにあらずなのです。


 「バスコ、何かあったんか?」


 S君に心配される始末で、まったく仕事が手につきません。


 あかん、めちゃくちゃ緊張してきた……。生きてる心地がせえへん……。


 緊張がピークに達した僕は、気持ちを落ち着かせることにしました。適当な理由をつけてトイレに行き、タバコを吸いました。わずか数分の間に2本、3本と吸い、「大丈夫や!なんとかなるわ!」と自分に言い聞かせたのです。


 それでも幸か不幸か、時計の針は進みます。


 時刻は夜の8時。いよいよ休憩時間になったのです。僕は大きく深呼吸をしました。


 休憩の順番は、4人であみだくじをして決めます。自分の名前を紙に書き、8時~8時30分組(1番)と8時30分~9時組(2番)に分かれます。


 もしK子ちゃんと同じ休憩時間になると、その後、ペアになれません。同じ休憩時間の2人が2つのレジに別々に入るため隣には行けず、店が混雑しているため、仕事中に話しかけることもできないのです。


 もちろん、休憩時間を一緒に過ごせれば、何の問題もありません。


 ですが、K子ちゃんは家に食事をしに帰るのです。一緒に店を出て、その場で告白するという手もあるものの、忙しさによってレジの引き継ぎ時間にズレがあるため、確実ではないのです。


 そして、順番としては2番がほしいです。K子ちゃんと誰かが先にレジに入り、僕があとから来て、K子ちゃんの隣に行くのがベストなのです。


 これはもう、神に祈るしかありません。


 「頼むから、僕が2番でK子ちゃんは1番を引いてくれ!」


 昨晩にお参りに行ったことを信じ、僕は心で手を合わせながら、あみだくじに名前を書きました。


 ところが、神はいなかったのです。


 同じ休憩時間になるという最悪の事態こそ免れたものの、僕は1番を引き、K子ちゃんは2番を引いたのです。


 こうなるともう、僕が先にレジに入っているわけです。K子ちゃんが僕を選んで、隣に来てくれるしかありません


 とはいえ、僕はK子ちゃんが隣に来てくれるという、自信がありました。過去にこのような状況では、ほとんど僕の隣に来てくれていたからです。


 もう1人のレジの子も、僕がやめるにあたって入ってきた、仕事のできない男子高校生です。K子ちゃんが僕を好きでないにしても、こいつとの比較で僕の隣に来る可能性は高いのです。


 僕は、K子ちゃんが隣に来てくれることを信じて、休憩室でタバコを吸いました。予習してきたことを反芻し、早めにレジに入ってK子ちゃんの到着を待ったのですが、僕の隣にオバハンがやってきたんですよ!K子ちゃんが戻ってくる少し前に、「バスコ君、今日で最後やんな?」と、何食わぬ顔でやってきやがったのです!


 空気読めよ、お前!読みようがないけど読んでくれよ!


 最悪ですよ、こんなもん。綿密に告白のシュミレーションをしたのに、こんなオバハンに来られたらどうしようもないのです。


 なのにこのオバハンがまた、めちゃくちゃシャクレなのです。「幽霊にずっとアッパーくらってんのか?」というぐらいのシャクレで、休憩室でカップラーメンを食べたとき、容器に口をつけてスープを飲んだら、あごをヤケドしました。「熱い!」と叫んだ瞬間、パッとあごを見たらあごにネギが載っていたぐらいのアゴラーで、シャクレすぎて何を言ってるのかわからないのです。


 なにしろ一度、「タロット占いに興味ある?」と訊かれて、魔女っ子メグと聞き間違えた僕は、「いや、アニメはあまり観ないんですよ」と答えたのです。


 タロット占いと魔女っ子メグですよ?どんなしゃべり方するんですか、このオバハン!


 しかも、よくしゃべるんですよ。


 若い男の子が大好きらしく、「バルコクン、ヒチキトカスジナヒト?(通訳→バスコ君、ひじきとか好きな人?)」「オトウチャン、シホロ、ナニホチテンノ?(通訳→お父さん、仕事は何をしてるの?)」「ハムラガサキ、タラコッテピロ?→(通訳不能)」と話しかけてくるので、毎回、訊き返さなければならないのです。


 このオバサンの名前は、藪上さん。


 バツイチの50過ぎの人で、実は、スーパーのバイトを紹介してくれたのもこの薮上さんで、買物客で来ていた僕と親しかったのです。


 いずれにせよ、作戦失敗です。藪上さんに隣に来られたため、ラストチャンスを逃してしまったのです。


 僕が前のレジにいたことから、振り返ってK子ちゃんに強引に話しかけるという方法も、考えはしました。


 しかし、時間を追うごとに客足が増え、藪上さんとすら、話す暇がありません。レジをもう1台増やすことになり、K子ちゃんが1人でレジに入ることになったのです。


 結果は惨敗。10時になり、K子ちゃんは帰ることになったのです。


 レジを離れる際、K子ちゃんが僕のところに来ました。


 「バスコさん、今までありがとうございました!また、スーパーにお買物に来てくださいね!」


 僕に声をかけてくれたものの、僕の頭の中は真っ白です。


 「そ、そうやな……」


 こう返すのが精一杯で、告白できることなしに、彼女は去って行くのです。


 ですが、正直、ホッとしている自分がいました。


 「よかった、告白しなくて済んで……」


 このように、どこか安心しているところがあったのです。


 なにより、もしK子ちゃんが僕を好きなら、早めに休憩を切り上げてでも、僕のレジの隣に来たでしょうから。


 僕は今日が最後なのにそうしなかったということは、僕に興味がないということなのかな……。


 こんなふうに考えて泣きそうになり、同時に、ホッとしている自分がいました。藪上さんに「バスコ君、たけのこの里は、上のチョコレートと下のクッキーどっちが好き?(←通訳後)」と訊かれても無視してしまうほど、僕は混乱しました。


 そしてこのあと、僕はますます混乱します。


 荷物を取って戻ってきたK子ちゃんがレジの前を通りがかり、僕を見て、なんとも言えない表情を浮かべたのです。ちらちらと僕のほうを見ており、いかにも何か言いたそうな素振りを見せてきたのです。


 女性というのは、さりげなく、自分の気持ちを伝えようとするところがあります。「あなたのことが好きですよ!」とばかりに、合図を送ってくることがあるのです。僕のようなシャイな女性だと、言葉ではなく、視線で表現するところがあるんですね。


 もうどうしたらいいか、わからなくなりましたよ。


 僕のことが好きなのかな、それともただの勘違いなのかな……。


 こんなふうに考えて、半ばパニック状態に陥ったのです。


 ほどなくして、K子ちゃんは店を出ました。


 もちろん、追いかけて告白することは可能です。そうすればこんな疑心暗鬼にならなくて済むのですが、作戦が失敗に終わったことで熱い気持ちがリセットされ、ここにきて再び、シャイな自分が顔を出し始めたのです。


 追いかけるべきかな……。でも、仲間に見られるから恥ずかしいな……。告白したところで、断られるかもしれないしな……、いや、断られるわ!断られるに決まってるわ!


 結局、弱さに支配された僕は、ただただ、去り行くK子ちゃんの後ろ姿を見つめていました。バイトを終え、家に帰ってからも寝つけず、終始、悶々としていたのです。


 そして、ここから始まったのです。「告白しないだけの片思い」という、何の意味もない時間が……。告白できない自分の弱さに辟易し、何をするにつけても悪い影響を与えてしまう、負の悪循環が……。


 中編に続く……。


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