2011年02月04日

大学のサークル選びは死ぬほど考えるべきではないか?の考察~2日目~(パソコン読者用)

テーマ:神林シリーズ

※2008年・4月30日の記事を再々編集


 ザザザザザ!ザザザザザザザ!


 降り注ぐ大雨が、容赦なく顔を殴りつけてきます。


 ゴロゴロゴロ!ゴロゴロゴローン!ザザザザザザザ!


 大雨が雷雨に変わりました。カミナリが鳴り響く中、僕はリュックを担げないのです。


 そこで今回は、「大学のサークル選びは死ぬほど考えるべきではないか?」の考察~2日目~です。


 僕は、いつまでたってもリュックを担げません。両太ももの上に乗せ、ベルトに片手を通すところまではできるものの、そこから持ち上げられないのです。


 がたいのいい猛者ばかりの中、僕は174センチ、60キロの細身。気合いごときでは持ち上がらないんですね。


 そんな僕に、上級生たちは野次を飛ばしてきます。


 「早く持ち上げろや!」


 「みんな待ってるから急げや!」


 焦りが焦りを産み、僕の頭の中は真っ白です。かっこ悪い自分に耐えられず、「実は僕、風邪引いてて手に力が入らないんです!」といった大ウソを言おうとまで考える自分もいます。


 そんな僕を見かねて、班のリーダーである桜木さんが、僕を助けようとしてくれました。


 ですが、上級生たちが「桜木、手伝うな!」と、邪魔をしてきます。この合宿は、すべてのことを自分でやらなければならないのです。


 あらゆる点で自分よりも劣っていると思っていた同期の奴でさえ、担げています。


 「なんであんな奴が担げんねん……」


 人間、追い詰められると、人としての器の小ささが露呈します。何の根拠もない、ちっぽけな自尊心が頭をもたげ、それが焦りに拍車をかけるのです。


 極度の焦燥の中でも、無事に担げた仲間の表情が目に入りました。


 彼らは、恐ろしく冷たい目をしています。


 人の不幸を見るのは楽しい、こいつがヘマをしてくれたおかげで、この先、自分がヘマをしても恥ずかしさが緩和される……。


 誰もが血の通わない表情をしています。浪人した友達の予備校を訪ねる大学生のごとく、勝ち組と負け組の縮図を見せられたような気がして、胸がむかむかしました。


 気がつけば、タイムアップ。


 20人中、担げなかったのは、僕を含めて3人だけでした。サポーターの女性に手伝ってもらってなんとか担げたものの、「お前、女の子に助けてもらって情けないの!」と言われて、屈辱でした。


 「じゃあ行くぞ、お前ら!」


 山川さんの号令で、僕らは出発することになりました。


 各班ごとにひとかたまりとなって、裏山を下ります。


 朝の5時なので、周囲は薄暗いです。ヘッドライトで地面を照らし、ぬかるみに気をつけながら進みます。途中で、「伊賀」「甲賀」と看板を分けて寝泊りする忍者のテントが目に入ったものの、空気が空気だけに、無意識のうちに笑いのツボがえぐり取られるのです。


 裏山を下りるだけでも、10分以上かかりました。距離的には50メートルもありません。砂を背負いながらの下りなので、足が進んでいかないのです。


 裏山を出て、校内に入りました。


 僕の班は、最後方を進んでいます。先頭に山川さん、隊の中間地点に沢口さんをはじめとする3、4年生、最後尾にサポーターの女性が陣取り、縦になって進んでいきます。


 早朝なので、ほとんど人はいません。歩くにつれて、僕は次第に冷静さを取り戻していったのですが、冷静になって初めて背中の重さを意識したところ、43キロという砂が、半端ではなく重いことに気がついたのです。「デブの幽霊がとり憑いている」といった感じで、少しでも油断しようものなら、背中から倒れてしまうのです。


 しかも、砂が雨を吸っていきます。デブが大飯をかっくらいながらとり憑いているかのごとく、背中で太っていくのがわかるのです。


 何気に周囲を確認したところ、誰もが悲壮な顔をしています。僕の隣を歩く神林さんなんて、今にも消え入りそうな顔をしているのです。


 大雨のため、神林さんは補聴器をはずしています。周囲の音が聞こえにくいことから、「この合宿は生き地獄だ……」とばかりに、視線がうつろなのです。


 服装は全員、上下ともにジャージです。その上にレインコートを着ているのですが、神林さんはレインコートもろともズボンが脱げかかっています。下のジャージのゴムがゆるゆるで、パンツが丸見えなのです。


 「神林さん、パンツがおもいっきり見えてますよ」


 「えっ?」


 「……パンツが見えてますよ」


 「えっ?」


 「パンツが見えてますよ!」


 「…………ハム?」


 お歳暮渡すか、今!こんな状況で「これからもお願いします!」とか言うか!


 「ハムがどうしたん?」


 ハムじゃないねん、だから!ひと言も言ってないわ、ハムとか!


 「それより話変わるけど、俺の下のジャージ、ゴムがゆるゆるやねん」


 話変わってないわ!さっきからその話一本や、俺!


 「ヒモでジャージを結びたいから、何かいらんヒモない?」


 「ないです」


 「もうヘビ以外やったらなんでもいいから?」


 何言ってんねん、お前!なんでヘビ出してくんねん!意味がわからん!


 結局、サポーターの女性が、テント設営で使う細いロープを渡してくれました。神林さんはそれをジャージに巻きつけたのです。


 15分ほど歩いて、大学の校門を出ました。


 「今から緑地公園に行くから!」


 山川さんが声を張り上げました。


 ここから緑地公園までは30分足らず。僕は最後尾付近を、神林さんと並んで歩き始めました。


 民家を抜けて、川沿いに出ました。


 「お前ら、声出していけ!」


 山川さんが、かけ声を要求してきました。


 このかけ声は、順番に誰かが「そーれ!」と叫び、周囲が「れー!れー!れー!」と続きます。声が小さいと、「もっと声を張れ!」と怒られて、大声を要求されるのです。


 音頭を取る際のスタミナの消費量は、半端ではありません。誰もが体力を温存するために、怒られない程度に声をセーブしているのですが、神林さんだけが、えげつない大声を出しています。「そーう、れいっ!れいっ、れいっ!」と叫び倒しているのです。


 静かにせいや、お前!日の丸背負ってんのか!


 「れいやー!れいやー、れいやー!」


 織田無道か!お前それ完全に織田無道の徐霊やんけ!


 「れい、れれい、れれい!れい、れれい、れれい!」


 織田無道やんけ!霊が手ごわいときの織田無道やんけ!


 大声で奇声を上げる神林さんは、気合いが入っているわけではありません。神林さんは補聴器がなくて、自分の声が聞き取りにくいのです。


 ウォークマンを聴きながらしゃべるときと同じで、自分の声の大きさを客観視できません。この人からしたら普通のつもりで、「もっと声を出せ!」と怒鳴っていたはずの山川さんが、「神林、うるさい!」と逆に怒りました。沢口さんに至っては、「神林、気持ち悪いねん!」と、めちゃくちゃひどいことを言っているのです。


 そうこうするうちに、緑地公園に到着しました。


 山川さんの指示で、10分だけ休憩を取ることが許されました。屋根のある小さな休憩所でリュックを下ろし、僕はその場に倒れ込みました。


 体はすでに疲労困憊。まだ1時間しかたっていないのに、肩は痛いわ、背中は痛いわで、デブの幽霊に散々な目に遭わされたのです。


 側にいるサポーターの女性が、チョコレートを渡してくれました。


 これは癒されます。雨も小雨になってきましたし、テンションが上がったついでに、班の仲間でポカリスエットを回し飲みすることにしたのですが、神林さんがガブ飲みしやがるんですよ!


 何考えてんねん、お前!このあとのことも考えて飲めよ!


 「プハー!うまい!」


 迷惑をかけるのがか!?人に迷惑をかけるんがうまいんか!?


 「神林さん、飲みすぎや!」


 怒った僕は、ため口で注意しました。河井、神林さん、僕の順で飲むのに、神林さんが飲み干すぐらいの勢いでガブ飲みしやがったので、もう先輩も後輩も関係ないんですね。


 結局、僕の段階で、ポリタンクのポカリスエットは半分以上も減っていました。


 災難は続きます。


 休憩が終わり、歩荷が再開されることになったのですが、休憩でリュックを下ろしたため、再び持ち上げなければなりません。下ろしたはいいものの、よく考えたら、また担がなければならないのです。


 案の定、担げません。ベンチの高さを利用してなんとか担いだものの、山川さんに、「物を使って持ち上げていいんは、今回だけやからな!次にそんなことしたら殺すからな!」と怒鳴られてしまったのです。


 最悪や……。次からどうしよう……。


 この精神状態で神林さんを見ると、今までにも増してイライラしてきました。


 「こいつは、なんでこんな顔してんねん!」


 「あー!こいつのレインコートの色が腹立つ!」


 「4浪もしてるくせに俺の前を歩きやがって!」


 このように、神林さんのやることなすことすべてに腹が立ってきたのです。


 僕は最後尾で、神林さんの後ろを歩いています。雨でバレないのをいいことに、背中にツバをかけてやりました。神林さんがぬかるみに足を取られてこけても、サポーターに報告せずに無視し、後頭部にツバを吐きかけてやったのです。


 山川さんを先頭に、公園の中を何度も周回しました。誰もが死にそうになりながらも歩みを進め、途中で、30メートル以上もある急坂を登ることを要求されたのです。


 勘弁してくれよ、おい!無理無理、こんな急坂!


 「声出していけ!まずはバスコや!」


 俺かいや!最悪やんけ、この状況で!


 「そーれ!れー!れー!れー!れー!れー!ハアハア……」


 「れい、れれい、れれい!れい、れれい、れれい!」


 後ろから変なんきたぞ、おい!指名されてもないのに勝手に叫んでるぞ!


 「れれれい、れれれい、れれれれーい!!!」


 それなんやねん、おい!それなんやねん、マジで!?


 「れい、れい、れいれれーい!れい、れい、れいれれーい!」


 がんやわ、もうこいつ!脳に腫瘍ができてるとしか思えん、こんな奴!


 「神林、気持ち悪いねん!お前は静かにしとけ!」


 神林さんが気持ち悪すぎて、沢口さんがキレました。


 30メートルの急坂は、思っていたよりも過酷です。「ちんたらと歩くな、ボケ!」と怒鳴られますし、遅すぎると、スタート地点に戻ってやり直しです。つらすぎて泣いている奴もいますし、同じ班の河井なんて、「ひいひい!」と、本当にひいひいと言っているのです。


 僕は死力を尽くしました。苦しくて嘔吐しそうになりながらも、なんとかこのミッションをクリアし、休憩になったのです。


 ですが、僕はリュックを背負ったままです。下ろすと担げないので背負わざるをえず、休めるものも休めません。ポカリスエットも、神林さんのせいで、たったふた口でなくなってしまったのです。


 腹立つわ、神林……。で、なんでいつも俺の隣に座んねん、こいつ……。


 「なあ、バスコ?」


 「……」


 「聞いてんの、バスコ?」


 「……なんっすか?」


 「えっ?」


 お前も聞いてんの!?そっくりそのままお前のセリフ返すわ、お前も聞いてんの!?


 「なんですか!?」


 「弁当屋の弁当で、どの弁当が1番好き?」


 今答えないとあかん、それ!?見てもらったらわかるとおり俺は死にかけてんねんけど、その質問に緊急性ある!?


 「なあ教えてや、どの弁当が1番好きなん?」


 「……チキン南蛮ですかね」


 「チキン南蛮はええよな!」


 「神林さんは何弁当が好きなんですか?」


 「俺は、たっちゃん弁当!」


 何入ってんねん、それ!たっちゃん弁当とか言われてもわからんやろ、こっちは!


 「たっちゃん、たっちゃん!」


 誰やねんそいつ、ほんで!もうたっちゃんを呼んでこい!たっちゃんを説教するわ、「こんな奴に弁当買われやがって!」って!それぐらいの奴やわ、お前は!


 このように、ちょっと会話するだけで疲れてくるのです。


 「休憩終わり!今から大学に帰るから!」


 山川さんの指示で、大学に戻ることになりました。


 帰りの僕は、フラフラもいいところでした。ゾンビなみにフラフラでしたし、「バスコが三輪車に引かれて死にました!」と言われかねないほど、ボロボロでしたから。


 30分ほど歩いて、大学に到着しました。


 朝の8時を過ぎていることから、ぽつぽつと学生もいます。


 「何なん、こいつら……」


 こう言うかのごとく、僕らに蔑む視線を浴びせてきます。学生の好奇の目が、なんとも言えずつらいのです。


 しばらくして、もといた裏山に到着しました。


 ようやく、歩荷初日が終了です。この段階で雨も止んでおり、デブの幽霊を成仏させた僕は、その場に倒れ込みました。


 ですがホッとしたのも束の間、トレーニングは、まだ続きます。


 ここからは「テント設営」と題して、2人1組になって、2分以内にテントを設営する技術が試されます。地面が雨で濡れていることから、杭を打つのに苦戦するのは目に見えているのです。


 僕はこの日に至るまで、河井と何度も練習してきました。リュックを担ぐのは練習しなかったものの、テント設営だけは練習し、2分以内で設営できていたのです。


 そこで「我々2人でやります!」とアピールするために、僕は河井の近くに移動したのですが、沢口さんの指示で、神林さんと組むことになったのです。


 勘弁してくれよ、おい!こんな奴とやるぐらいやったら俺、かしこそうな犬とやるわ!


 それでも、上官の命令には逆らえません。僕は渋々、神林さんとテント設営を始めたのですが、こいつがまた、めちゃくちゃなのです。


 杭(くい)を反対に打ちつけたかと思えば、シートに足をとられて転倒します。しまいには杭を叩く石が割れたことに焦って、手で杭を叩き始めたのです。


 鉄ですよ、この杭!?すさまじい固さの鉄なんですよ!?


 「痛い!」


 そりゃそうやろ!力道山でも痛がるわ、そんなもん!


 「神林さん、もっとシートを引っ張ってください!」


 「えっ?」


 「もっとシートを引っ張ってください!」


 「なんてなんて?もう一回言って?」


 こっちくんなよ、お前!2分しかないねんぞ!


 「天狗がなんて?」


 言ってへんわ、天狗とか!この状況でどうやったら天狗の話になんねん!


 このようにミスを連発し、なのに僕の作業が遅れたら、「バスコ、まだ?なあ、まだ?」と言ってきやがるのです。


 何なん、お前!マジで何なん!もう何なんとしか言いようがないわ!


 「バスコ、急いでくれよ!」


 なめてんのか、お前!で言うとくぞ、もしお前と2人で無人島に流れ着いても、2日目には殺してるからな、お前のこと!たとえ頼りになるものが何ひとつなくても、24時間もあれば「1人のほうがまし!」ってことに気づくからな!


 気がつくと、僕は完全にため口でしゃべっていました。「それと違うわ!」「お前が遅いんやろ!」と、お前呼ばわりしていたのです。


 僕は孤軍奮闘しました。そしてがんばった結果、6回目の挑戦でなんとか成功したのです。


 神林さんにため口を使ったせいで、僕は沢口さんに怒られました。


 ですが、沢口さんも完全に笑ってました。神林さんの要領の悪さに、声を震わせて檄を飛ばしていましたから。


 いずれにせよ、ようやくトレーニング終了です。


 時刻は9時になりました。


 ここからは事前に提出してあるそれぞれの授業表に鑑みて、授業のある人は授業に行きます。授業のない人は、休憩組、裏山の掃除組、ジョギング組に分かれます。


 何かをやらされるとはいえ、ようやくひと息つけます。僕の授業は昼からなものの、午前中も裏山を掃除するだけなのです。


 掃除ついでに、近くで合宿をしている忍者サークルを訪ねました。


 するとこいつらは、僕ら以上に頭のおかしいことをやってますよ。


 五右衛門風呂に入っている奴もいれば、鋭い視線で、木をナイフで削っている奴までいます。僕が近づいたときなんて、木に登っていた忍者が「敵襲!」と叫び、おもちゃの手裏剣をぶつけてきたのです。


 大丈夫か、お前ら!?ほんまに心配になってきてんけど!?


 「敵襲!集まれ、伊賀の衆!いや、甲賀の衆!」


 どっちでもええわ、伊賀でも甲賀でも!ていうか、せっかく受験戦争に勝ったのにこんなことしててどうすんねん!こんなことがしたくて英単語覚えまくったんと違うやろ!


 同学部の新入生がいたので話しかけたところ、当たり前のように、「拙者は」と言いました。完全に入り込んでおり、「2回生忍者が怖いんだよ!」と、妙な愚痴を始めたのです。


 なんやねん、2回生忍者って!何を当たり前のように意味わからんこと言ってくれとんねん!


 「拙者も早く伊賀に入りてえよ!」


 どういうことやねん!で、伊賀に何があんの、一体!?昨日からやたらと伊賀伊賀言ってるけど、どうすごいの伊賀は!?


 しばらくして、裏山の掃除が終わりました。


 沢口さんに連れ立たれてジョギングをし、お昼になりました。全員で昼ご飯を食べ、僕はテントの中で軽く休憩してから、授業に向かいました。


 この日は4、5時限連続だったので、助かりました。一度も出たことがない授業だったのに、連続で出て、ぐーぐー寝てやりましたから。


 5時限目が終わり、僕は裏山に戻りました。


 カレーの匂いがしたのでテンションが上がってきたのですが、全員が整列し、山川さんが点呼を取り始めたときに事件は起こったのです。


 なんと、神林さんがいないのです。先ほどまで裏山の掃除をしていたのに、集合時間の6時をすぎてもこないのです


 神林さん、いや神林は逃げたのです……。歩荷に恐れをなして、合宿を脱走しやがったのです……。


 46キロに太るであろう幽霊を想像して、卒倒しそうになる自分がいました。


 3日目に続く……。



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