2011年01月25日

木下さんは何者か?の考察~ベスト版③~(パソコン読者用)

テーマ:木下さん

※過去の木下さんの記事をごちゃ混ぜにして再編集


 先日、僕の家に姪っ子が遊びにきました。


 愛子という名の4歳の女の子で、「外に出たい!」と言って聞きません。僕の母親が忙しそうだったことから、僕が連れ立って、近所の公園に行くことにしました。


 公園に向かう道すがら、商店街のはずれにある自転車屋の前を通りがかりました。


 この店のおじさんとは知り合いです。あいさつがてら、立ち寄ることにしました。


 店に入ると、おじさんは自転車の修理で忙しい様子。邪魔をしてはいけないので、すぐに立ち去ろうとしたのですが、店の前を暴走族らしき2台のバイクが走り去ったのです。


 このおじさんは、暴走族に怒鳴りつけました。


 「うるさいねん!何時やと思ってんねん!」


 ですが、たいしてうるさくはありません。少しエンジンを吹かしただけなので、イチャモンもいいところ。そもそも「何時やと思ってんねん!」と言われても、昼間なのでそんなに迷惑ではないのです。


 このおじさんは、愛子にカッコイイところを見せたいのでしょう。それを証拠に、「おっちゃんは強いで!」とばかりに、叫び終わると、愛子のほうを得意げに見たのです。


 ところが、この声が暴走族の耳に届きました。


 道路の端にバイクを停めて、自転車屋のほうに向かってきます。見るからに怖そうな2人で、すごい剣幕で近づいてきたのです。


 それでも、怒鳴ったのは僕ではありません。「このおじさんがなんとかしてくれるやろう」と安心していたのですが、暴走族がきて「今、うるさいって言ったん誰や?」と訊いた瞬間、このおじさんが愛子のほうを見たんですよ!


 最低か、お前!子供のせいにすんなよ!そもそも子供がそんなドギツイこと言うわけないやろ!


 100歩譲って、僕を見るなら、まだわかりますよ。ただ、4歳やそこらの子に責任を押しつけようとします、普通!?


 「ごめんごめん、許して!悪気はないから!」


 結局、僕が2人に頭を下げました。2人とも許してくれたのですが、このおじさんは謝る僕を尻目に後ろに下がり、自転車の修理をしていました。僕がなんとかしてくれる、と思ったのか、他人ごとみたいな顔をしていたのです。


 もう何なんですか、このオッサン!最低としか言いようがないでしょ!?


 そのくせ暴走族がいなくなると、「愛ちゃん、大丈夫か?もう心配いらんからな!」と、おいしいところを全部持っていきやがったのです。


 このおじさんの名前は、木下さん。


 僕の近所に住む、「天然の天才」なのです。


 写メールはカメラ屋で現像するものだと勘違いしていたり、こないだなんて店の入り口に、『スケボーとかもなおせます!』という貼り紙をしたのです。


 誰がスケボーすんねん、今日日!で、「とか」ってなんやねん!ローラースケートはもっと需要ないぞ!


 とにかく、おかしいのです。「日本一頭がおかしい」と言っても過言ではない、奇人中の奇人なのです。


 そこで今回は、「木下さんは何者か?」の考察~ベスト版③~です。


 木下さんは、うちの母親の同級生で64歳。ボロボロの自転車屋を経営し、奥さんとの共働きで、僕の小学校の同級生の息子(サラリーマン・既婚)と娘(フリーター)がいます。


 このプロフィールを踏まえていただき、以下、木下さんにまつわるエピソードをご紹介します。信じがたいお話ばかりなのですが、すべて実話です。


検証エピソード①『出前』
 これは、つい先日のお話です。


 その日の昼すぎに、部屋で仕事をしていた僕は、母親に素麺を作ってもらおうと階段を下りました。


 ですが、僕の母親は近所の人と、玄関で話し込んでいます。仕方なく、自分で作ろうと台所に向かったところ、木下さんと愛子がいました。


 「よかったら、2人の分も作ろうか?」


 僕が訊いたところ、愛子は「毎日、素麺やからイヤやわ!」と言います。僕が「我慢しなさい!」と注意しても、首を縦に振りません。


 すると、愛子のわがままを見かねた木下さんが、「中華を出前しないか?」と提案したのです。


 なんでもこの近所に、新しい中華料理屋ができたそうです。天津飯が絶品らしく、偶然にも家の電話の横にその店のメニューが置いてあったことから、母親の了承を得て、出前を取ることになりました。


 注文は、僕が天津飯の大盛り、僕の母親が天津飯、愛子が唐揚げ、木下さんが味噌ラーメン、そして全員分の餃子4人前です。天津飯を勧めてきた本人が、味噌ラーメンを注文してる時点ですでに普通ではないのですが、空腹の僕は気にせず、電話することにしました。


 ただ、木下さんが「自分で電話をする」と言います。店主と仲よくなったらしく、「うまいこと言ってサービスしてもらう!」と意気揚々です。そこで家の住所を書いて渡し、木下さんに電話してもらうことにしたのですが、電話口でこう言いやがったのです。


 「えーと、天津飯と、天津飯と、大盛りと、唐揚げ味噌ラーメン」


 まずこれ普通、「天津飯2つで、1つは大盛り」って言いません?子供やないんですから、「天津飯と天津飯と」なんて言い方はしないでしょ?


 案の定、受話器の向こうが混乱しているのがわかりました。慌てた僕は、「おっちゃん、俺のは天津飯大盛りやで?」と伝えたところ、「たけちゃんの大盛りやで?」と、また意味のわからないことを言いやがったのです。


 お前、向こうはたけちゃんが誰かわからんやろ!そんなこと言われてどれを大盛りにしたらいいねん!


 「たけちゃんのラーメンは大盛りやで?」


 違う違う違う!ラーメンはお前のやし、ラーメンは大盛りじゃないねん!


 僕は、注文を紙にきちんと書いて渡しました。間違わないように、僕の家の住所とともにちゃんと書いて渡したのに、その紙を見ながら平気な顔でこんな間違いをするのです。


 次に、唐揚げ味噌ラーメンです。


 「唐揚げ味噌ラーメン」なんて言い方をしたら、「そんなもんはうちには置いてません!」と断られかねません。僕が「おっちゃん、唐揚げと味噌ラーメンやで?」と言い直して難は逃れたものの、木下さんなら「ここ、唐揚げ味噌ラーメンはないらしいわ!」と言いかねないんですね。


 しかも、僕が「おっちゃん、あと餃子4つな!」と伝えたところ、「アチョ、ヨーザ、ギョッツ!」と信じがたい噛み方をしやがったのです。


 口どうなってんねん、お前!何がどうなったらそんな噛み方すんの!?


 「じゃあ住所を言うで。兵庫県尼崎市~3丁目7の……」


 お前の家の住所やんけ、それ!で、兵庫県とかいらんねん!他府県から出前取るか、ボケ!


 「あと何分で着きそう?」


 まだ出てないねんけど!?出てもいないし作ってもいないし、どんな注文かも相手はまだ把握してないねんけど!?


 結局、慌てた僕が受話器を奪い、最初から言い直しました。ただ、届いた天津飯がまた、死ぬほどまずいんですよ!水みたいな薄いあんかけで、今まで食べた中で1番まずいのです!


 お前、口全般どうなってんねん!日本語といい味覚といい、口全般どうなってんねん!で、サービスはどうなったサービスは!?サービスどころか迷惑をもらったぞ俺らは!


 「このあんかけ、絶品やろ?」


 舌、ある!?ここまで口がおかしかったらもう舌の有無を疑うぞ、俺は!


 もう、あきれて声が出なかったですよ。


検証エピソード②『ちくわ』
 これは、僕が小学生のときのお話です。


 ある日、近所に、原健三郎という国会議員がやってきました。「ハラケン」の愛称で知られ、90歳をすぎて現役であったことからも、ご存知の方は多いはずです。


 ハラケンさんは、数年前に亡くなられました。ですが、当時はまだ70代。足腰もしっかりしており、同じ兵庫県の選挙区である僕の地域を、歩いて視察されたのです。


 ハラケンさんの周囲には、屈強なSPがまとわりついています。握手をしてもらいたくても、うかつに近づけません。僕の家の前にきたときもタイミングを逸してしまい、気がつくと、僕は父親に連れられて近所の商店街にきていました。


 ハラケンさんは、各店舗を視察しています。そして、木下さんのいる自転車屋の前を通り掛かった際、木下さんが「先生、うちの店をなんとかしてください!」と言って、猛スピードで駆け寄ったのです。


 不審者と勘違いしたSPが、木下さんを止めました。ただ、ハラケンさんはSPを遮り、木下さんの話を聞いてくださったのです。


 木下さんは、ここぞとばかりに陳情をしています。


 「うちの店が儲かるように、自転車のタイヤの値段を上げてください!」


 「儲かってない自転車屋は国が面倒みるようにしてください!」


 こんなふうにムチャクチャな陳情をし、しまいには「小遣いが少ないので嫁に文句を言ってください!」とお願いしたのです。


 知るかいや、そんなこと!そんなド民事、介入できるか!


 ハラケンさんは、「ハハハハハ!それは私に言われても!」と適当にあしらいました。すると言われた木下さんが、「このちくわをあげるのでお願いします!」と言って、ハラケンさんに3本入りのちくわを渡そうとしたのです。


 木下さんは、ちくわが大好きです。参観日に後ろでかじっていたという息子談もあるぐらいで、木下さんからしたら、「自分の大切なものをあげた=陳情を聞いてもらえる」というアホ特有の思考で、自分の宝物を渡したのでしょう。


 とはいえ、有権者からモノを献上されるのは禁止されています。断って当然なのですが、そこはユーモアあふれるハラケンさん。


 「帰りの新幹線で食べさせていただきます!」


 こう言って、木下さんのちくわを受け取りました。しかも近くにいた僕と僕の父親に近づき、「どうも!」と言って、自ら握手をしにきてくれたのです。


 僕は感激しました。僕の父親と2人で喜んでいたのですが、隣にいる木下さんの様子がおかしいです。はしゃぐ僕らを尻目に、立ち去ったハラケンさんを遠目に見ながら、顔を紅潮させています。そしてそれから数十秒後、事件は起こったのです。


 なんと木下さん、「先生、やっぱり、ちくわは1本だけにしてください!」と叫びながらハラケンさんに走り寄ったんですよ!


 勘弁してくれよ、おい!相手は国会議員やぞ!?天下の原健三郎やぞ!?


 「1本だけに!1本だけに!」


 1本だけにやあるか、お前!ちくわぐらい、子供の俺でも買ったるわ!


 その結果、先ほどの不審者が再びやってきたことに気づいたSPが、木下さんに猛烈なタックルを決めたんですよ!下はコンクリートなのに、アメフトなみのタックルを木下さんに浴びせたのです!


 「痛い!」


 痛いと違うわ、お前!俺らの心はもっと痛いねん!


 しかもこれ、地元のケーブルテレビのカメラが回ってるんですよ!特ダネとばかりにカメラマンが慌ててカメラを向けたものの、カメラの先にはオッサンの悶絶する姿があるのです!


 放送できるか、こんなもん!で、見てるお前の息子はトラウマなるわ!父親のこんな姿を見て明日から学校行けんようになるわ!


 このあと、木下さんは奥さんに怒られました。


 「あんた、いい加減にしいや!」


 こう怒鳴られながら、コンクリートに打ちつけた頭を、さらにガンガンにしばかれたのです……。


検証エピソード③『豚の角煮』
 2ヶ月ほど前、僕の近所に、立花さんという女性が引っ越してきました。大阪のレストランでシェフをしていたらし
く、頻繁に料理をおすそ分けしてくれます。


 料理は創作料理が多いです。カレーを詰めた春巻き、トマトの茶碗蒸し……。珍しいものばかりで、僕ら家族は毎回、楽しみなのです。


 先日のことです。


 その日のお昼に、立花さんが、チーズをまぶした豚の角煮を届けてくれました。僕は豚の角煮が大好きです。母親にお願いしてご飯を炊いてもらい、部屋で仕事をしながらお昼を待っていました。


 時刻は1時すぎ。仕事がひと段落した僕は、胸を躍らせて台所に行きました。僕の母親は外出しており、台所には木下さんが遊びにきていました。


 ただ、食べようと豚の角煮を見たところ、数が減っています。先ほど、卑しくもチーズ越しに数えたのですが、そのときは6切れあったのに、どう見ても4切れしかないのです。


 うちの母親は脂っこいものが苦手なので、豚の角煮など食べません。木下さんが食べた可能性が高く、木下さんを問い詰めることにしました。


 「おっちゃん、これ、食べた?」


 訊かれた木下さんは、「食べてない」と言います。


 「いや、食べたやろ?減ってるがな?」


 強目に訊いたところ、「食べてへんわ!俺はそんな卑しいことはせえへん!」と声を荒げたのですが、木下さんの唇が脂でテカテカなのです。


 木下さんの家は貧乏です。もの珍しい豚の角煮に興味が湧き、魔が差して盗み食いしたのでしょう。僕は我慢して、4切れでご飯を食べることにしました。


 ですが、何ごともなかったかのように、僕の隣でテレビを観ている木下さんを見ていると、段々と腹が立ってきました。


 「おっちゃん、豚の角煮が好きなん?」


 僕が再び問い詰めたところ、「嫌いや、あんなもん!」と否定します。「なんで嫌いなん?」と続けたところ、木下さんがこう答えたのです。


 「あれ、脂っこいやろ?俺、脂っこいの苦手やねん。だいたい、チーズが苦手やから」


 食ってるやんけ!チーズが入った豚の角煮なんてこれしかないわ!そもそもお前、チーズ好きやろ!マクドでダブルチーズバーガー頼んでるやろ!


 木下さんは豚の角煮を食べたことがなく、チーズが入っている料理だと勘違いしたのです。


 ですが、そのことを指摘してもまだ、「食べてない!」と言い張ります。腹が立った僕は、体を斜めに向けてスポーツ新聞を読み始めました。


 するとこのスポーツ新聞に、角煮のタレが付着していたのです。角煮を食べながら読んだためにこぼしたのでしょうが、これは決定的な証拠ですよ。


 「おっちゃん、新聞のこのタレ、何なん?」


 僕は、得意げに訊いてやりました。


 ですが、この期に及んで「これは血や!」と、ムチャクチャなことを言います。「どこが血やねん!どう見ても角煮のタレやろ!」とすごんでも、「違う!血や!」と子供みたいな言い訳をします。そして、「今、唇にデキモノができてるから、その血や!」と言って下唇を指で開いて見せてきたのですが、下の前歯におもくそ豚肉挟まってたんですよ!


 食ってるやんけ!食ってるやろ、それが証拠や!


 「食ってない、食ってない!」


 食ってるやろ、どう考えても!否定してるつもりやろうけど、お前は今、自分で証拠見せてん!「人類史上1番頭の悪い犯罪者」やねん、お前は!


 理詰めで追い詰めた結果、木下さんは観念しました。やっと自分の罪を認めたのですが、あまりの頭の悪さに、僕は笑いましたよ。あきれすぎて、もう笑うしかなかったですから。


検証エピソード④『チキショウ!』
 6年ほど前に、僕のおじいちゃんが病気で倒れました。


 僕ら家族は付きっきりで看病したものの、亡くなりました。90歳という大往生とはいえ、僕は泣きじゃくりました


 家に帰ってお葬式の手配をし、亡骸を引き取るために再度、病院に向かったときのことです。


 木下さんの自転車屋の前を、車で通りがかりました。車は僕の母親が運転し、後ろに僕が座っています。涙で腫れた僕の母親の顔を見つけた木下さんが、仕事の手を止めて、僕らの車に走ってきたのです。


 「おじいちゃん、どう?大丈夫?」


 亡くなったと薄々気づきながらも、木下さんは訊きました。僕の母親が「木下君、おじいちゃん、亡くなったわ!」と報告したところ、木下さんが急に泣き始めたのです。


 僕のおじいちゃんは、地域の民生委員をやっていました。貧しい木下さんの家をいろいろと世話してあげており、その恩もあってか、木下さんが引くぐらい泣き始めました。呼吸を荒らし、鼻水を垂らし、そばの人に「あいつ、何なん?」と言われそうなほど、泣きじゃくったのです。


 ただ、天に向かって「チキショー!」と叫ぼうとした際、号泣したために呼吸がおかしくなり、「チキ、チキ、チキ」と、その後のショーの言葉が出てきません。「チキ、チキ、チキ……」と7、8回はチキチキ言っていたのですが、

言葉が出てこないことに気づいた木下さんが、「チキ、チキ、チキ……、何かあったら言ってな!」と言葉をあきらめやがったのです。


 僕は笑ってしまいました。この段階では気持ちも落ち着いていたので、思わず顔を横に向けて肩を揺らしてしまったのです。


 「木下君、じゃあ、また!」


 おじいちゃんの亡骸を引き取りに行かなければならないため、僕の母親がこう言って、車を発進させました。


 すると、「何かあったら言ってよ!何かあったら言ってよ!」と叫びながら、木下さんが走って車についてきました。「何かあったら言ってよ!俺、何でもするからさ!」と、泣きながら追いかけてきたのです。


 僕は、笑ったことを後悔しました。


 本当にいい人なんですよ、木下さん。情に厚い、優しい人なのです。


 ところがです。


 木下さんが車の進行を妨げていたため、後ろの車が木下さんにクラクションを鳴らしたのですが、その車に向かって「やかましいわ!」と叫ぶはずのところを、「チキショー!」って叫んだんですよ!


 いやいや、意味わからん!クラクション鳴らした車に「チキショー!」って意味わからん!


 「チキチョーーー!!!」


 噛んでんねんけど!?手のつけようがないぐらい頭おかしい奴やねんけど!?


 そりゃね、クラクションを鳴らす人は、ある意味「畜生」ですよ。ただ、そんな深い解釈ができるわけもなく、言われたほうは何のこっちゃわからないんですね。


 しかも鼻水を垂らし、自転車の修理工具を手にしたまま叫んでいます。周囲の人は、「武器片手に謎の言葉を叫ぶ変質者」に見えているのです。


 勘弁してくれよ、おい!「何でもするからさ!」って、じゃあ死んでくれ!長い目で見たらそれが1番助かるわ!


 「チキチョー!」と聞こえたとき、気丈に振る舞う僕の母親も、微妙に笑ってましたからね。「知り合いと思われたくない」と思ったのか、急に車のスピードを速めましたから。


検証エピソード⑤『障害物競走』
 これは、3年前のお話です。


 僕の家の前に当時、ある夫婦が住んでいました。2人は共働きで、「子供(裕康君)の運動会を観に行ってやれない」という話を耳にしたのです。


 そこで、僕が裕康君の保護者として、運動会を観に行ってあげることにしました。


 僕は、裕康君の徒競走とダンスを見守りました。午前の部が終わり、2人でお弁当を食べていたところ、木下さんがやってきました。僕の母親に僕がここにいることを聞いたらしく、裕康君と顔見知りなことからも、3人で昼休みをすごしました。


 午後の最初のプログラムは、保護者参加の障害物競走です。僕もエントリーしており、木下さんも急遽、「出たい」と言い出したのです。


 そこで無理言って競技直前にエントリーしてもらい、僕と木下さんは、障害物競争に参加することになりました。


 この障害物競走には、1レース、7、8人が参加します。僕は2番目の組、木下さんは5番目の組です。1つ目は跳び箱、2つ目は炭酸一気飲み、3つ目がぐるぐるバットで、最後が飴食いです。


 僕は、「やるからには勝ちたい!」と気合いが入っていました。ですが、3つ目のぐるぐるバットまでは先頭で走り抜けたものの、最後の飴食いに苦戦して、最下位でゴールしたのです。


 「おっちゃん、俺のかたきを取ってくれ!」


 順番を待つ木下さんに、僕は声をかけました。木下さんも、「任しとけ!1位でゴールするから、その瞬間を写真に撮ってくれ!」と鼻息が荒いです。


 3組目、4組目が終わり、木下さんの組がやってきました。僕はギャラリーが見守るロープの外側に陣取り、木下さんの写真を撮るため、同じ進行方向に走ることにしました。


 「位置について。よーい、バン!」


 スタートの火蓋が切られました。


 ですが、やはり木下さんは木下さんですよ。「天才的な千両役者」ですよ。


 木下さんは、ジャンプ台を跳ぶタイミングを間違えて、跳び箱に顔面から突っ込んでいきました。後ろに戻って跳び直そうとするものの、顔面を殴打した恐怖心から、跳ぶ直前で何度も止まってしまうのです。


 「おっちゃん、その板はもういいから、普通に跳び箱をまたげ!」


 近くにいた僕は、声を張り上げました。


 するとジャンプ台を使わず、跳び箱にお尻をつけてクリアしました。炭酸一気飲みも、みんなが苦戦しているのを尻目に、ものすごいスピードで飲み切りました。気がつくと、先頭をうかがおうかというところまでポジションを上げていたのですが、3つ目のぐるぐるバットで、ぐるぐる回るのに合わせるかのように鼻血を出して周囲に撒き散らし始めたんですよ!


 勘弁してくれよ、おい!ドン引きやんけ、ほかの参加者!


 その結果、赤の絵の具で円を描いたような模様ができたんですよ!顔はおろか服まで真っ赤に染まり、観てる人たちが「なんやねん、あのオッサン!」と、ざわつき始めたのです!


 ただ、当の木下さんは、おかまいなしです。先に飴食いをしていた男性が「うおー!後ろからすごいのがきた!」と驚くのを尻目に、ケースに顔面を突っ込むやいなや、すさまじい白煙を撒き散らして飴を探し始めました。お遊び色など皆無、四角のケースにおもいっきり顔面をつけて、片っ端から顔面を移動させ始めたのです。


 そして、ものの10秒で飴を探し当ててゴール目がけて走り始めたのですが、ぐるぐるバットをしたことでここにきて方向感覚がおかしくなり、ロープの外のギャラリーに頭から突っ込んでいったんですよ!


 「ギャーーーーー!!!」


 こんなもん、大声の1つも出ますよ!なにしろこのオッサン、顔は真っ白で口周囲や衣服は血だらけなんですよ!「色白のゾンビが人を食った!」なみのありえない顔面なのです!


 ええ加減にせいよ、お前!せっかくの運動会が台なしやんけ!


 結局、木下さんは2位でゴールしました。


 ですが、僕は逃げましたからね。


 木下さんは、白い粉と血のせいで、視界が悪いです。


 「たけちゃん、どこ?たけちゃん、どこ?」


 こう言いながら僕を探していたものの、僕だけではなく、その場の全員がモーゼのように道を空けていましたから……。



 以上が、木下さんにまつわるエピソードです。


 ちなみにそんな木下さん。


 現在は64歳ですが、人生で1番遠出した場所は奈良です……。



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コメント

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3 ■木下さんに少しあこがれます。

彼なりに精一杯と思います

皆から笑われても

め一杯さが カッコイイです

2 ■Re:無題

>まこ。(ペタ帳、閉じております)さん
まこさん、何回もこの記事を読んでもらってありがとうございます。僕も書きながら、何回アップしたらいいねんこの記事って、変な感覚にとらわれましたよ。。。
奈良の奴も、またアップしますね。笑

1 ■無題

奈良・木下さん。といえば・・・あそこですね! 分かります、分かります('-'*)(,_,*)('-'*)(,_,*) ウンウン

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