奪われた月明かりと君の声

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僕がここに来てから、何日が経ったんだろう。
そう思い始めてからも、すでに数日が経過しているはず。
僕は、暗いトンネルの中を歩いているようで、何も見ることは出来なかった。
見上げても、真っ黒。
星さえも、月の光さえも目に入ってこない。
でも、掌に感じるのは、きっと君の温かい手なんだろう。

「君恵」

名前を呼んでみた。
愛しい、君の名前。
返事はなかった。
じゃぁ、今僕の手に感じているのは、一体なに?

「君恵、返事してよ。いつもみたいにさぁ」

君恵は返事をしない。
手を伸ばそうとしたけれど、うまく動かなかった。
暗闇の中で、どちらに手を伸ばせば良いのかも分からなかったし、何かに縛られているようでもあった。
僕は益々不安になって、手の中にある何かを、強く握った。

どろりとした。
生暖かくて、なんだか水っぽいそれは、一瞬どくりと鳴って、動かなくなった。

「瞬ちゃん」

君恵が、呼んでくれた気がした。





お題提供元:人魚(星を水葬)
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