好きな人ができた。
どうしてこんなに好きなのか分からない。
相手は、きっと私のことなんて知りはしない。
なのにどうして、いつかは気付いてくれるだなんて、思ってしまうんだろう。
たくさんの人たちに囲まれたあの人を、自分のものにしたいだなんて、願ってしまうんだろう。
私は、手紙を書いた。
大好きなあの人に。
何でも良かった。
誰に何を言われようと、私は彼を好きになってしまったのだから。
ただ、私に気付いてくれれば良い。
そう思った。


私は勝手に自分で決めた待ち合わせ場所に、急いで向かった。
彼が来てくれるなんて希望、少しもなかったけれど、もし来てくれたときのために、わずかでも早く、着いておきたかった。


一時間待った。


二時間待った。


三時間待って、公園の時計を見上げたとき、その向こうに彼がいた。
彼は軽く手を上げると、申し訳なさそうに微笑んだ。
「遅くなってごめん」
私はただ嬉しくて、零れる涙を拭った。
「どうして、来てくれたの?」
「オレはずっと、『手の冷たい女の子』が好きだから」
やっと思い出してくれたのだ。
幼い頃、ふたりで交わした約束を。
昔、彼と初めて出会ったスケートリンクで、ふたりで決めた合言葉。
『もしどちらかが相手を見つけたら、そっと合言葉を呟こう』
彼は私の手を取った。
「はは、やっぱり今も冷たいんだな。氷のせいじゃなかったんだ」
笑った彼は、耳元で呟いた。
「ずっと忘れたことはなかったよ。初めて手を握った女の子のこと、オレもずっと探してた」
いつの間にか、有名になってしまった彼。
そして、普通の女の子に戻ってしまった私。
私たちはまた、出会った頃のように手を繋いだ。
氷の上ではなく、今度は、あたたかい土の上で。





お題配布元:中途半端な言葉

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