神戸加納町「BAR志賀」と昼の顔(中毒性日記Blog版)

www.bar-shiga.comからの日記 & ここだけ画像公開中!


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好天の火曜日。でも風があるので日陰は心地良い。今年の夏は夜が涼しいのがいい。しかし突然のスコールのような雨。不安定な天候は続いている。

バタバタした店で午前1時過ぎ、奥のソファーに倒れ込む。気が付けば水曜朝方4時まで眠っていた。昼夜忙しいかと言えばそれほどでもないが、店の夏ハガキの制作、ラベル貼り、一筆、発送を終えたことでの安堵がある。これは僕の花火大会みたいなものだ。近頃季節感も夜と朝のケジメもない世の中で、風物詩として重要である。それにしても日記が書けない。しかし、デザイン提出をしている幾つかの案件はレスポンス待ちで、打合せは今週も数件で済む。ちょっとおかしくなりがちな体調も、今はすこぶる(死語)いい。健康診断の結果も、特に異常なし。中性脂肪とコレステロール数値がいつもより多かったがまぁこれから何とかできる。

そんな日中、不思議なことが起きた。

夕方、磯上で仕事を終え車に乗り込んだ。店に着いて、いつものように非常階段から2階に上がる。エレベーターフロアに出る鉄の扉を開けようとドアノブを握ると、「ヌルッ」と明らかな違和感に見舞われ、滑って上手く回せない。べっとりとまとわりつくオイリーな液体。数度のチャレンジで何とか開いて、まだ整理の着かない胸中のまま、店の扉の鍵を開け、ドアノブに手をかける。

「まただ!」

心の中で叫んだか、思わず声に出してしまったのか、とにかく僕の行く手を阻むかのように、どこに行ってもドアノブに何やら液体がまとわりついている。開店時の僕のルートを知っている者の犯行なのか?ちょっとしたブービートラップのような、嫌がらせなのか?好き嫌いのハッキリしている僕であり、そんな仕事のやり方だから、多少の敵がいてもおかしくない…と、あれこれ考えていた。

(落ち着け!)つぶやきながら僕は、その右手の液体をまず取り去ることを考えた。全てを解決する糸口はまず落ち着くことだった。入ってすぐ奥にあるトイレのドアを開ける。そこで僕は、更に追い討ちをかける「仕業」を知ることになる。

何と店内、トイレのノブにも液体が付いている!!

もう何が何だか解らない。水で洗うだけでその液体は簡単に取れたが、胸のざわめきは収まらない。ポケットに入れていた鍵の束もベトベトしている。右手の液体が付着したのだ、冷静にと言い聞かせながらこれも洗う。そして用を足す訳でもなく、便器に腰掛けて僕は、諸々を整理、推理し始めた。

ふと見るとカーゴパンツの右ももにある、鍵を入れたポケットから何やら染み出している。ポケットの中に手をやると、またもや洗ったはずの鍵がベト付いている。


中で、シアトルズベストのガムシロップポーションが破裂していた。



※今日のヒトゴトではないヒトコト&ヒトリゴト&ヒメゴト
【なぜそんなものがあったか? 店で夏場はアイスコーヒーを作るのだが、 そのシロップにと、セコくもって帰ったのが悪かったのね -_-;

※志賀氏的伝言板
8月7日で16周年! 8/8(月)~13(土)16周年ウィークです!!
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2002年 >>> サイト小説コーナー より再録です。


女は迷っていた。

神戸にある、薄暗い路地を入った看板のないこの店でかれこれ1時間程になる。グラスの足下には、さっきまでオリーブが刺してあったカクテルピンが綺麗に3本並んでいる。ハンフリー・ボガードの言った「最高のドライマティーニは、ベルモットを眺めながらジンをストレートで飲む…」程ではないにしろ、エクストラドライマティーニを注文したことを少し後悔していた。

女がここに来たのには理由がある。東京で3年付き合った男と別れてきた。傷心旅行というわけではないのだが、大都会のどこかにアイツがいるのかと思うと色々考える。そういえば男と付き合ってから、ゆっくり旅行などしていない。思い切って最終の新幹線に乗り、新神戸に降り立った。関西に住む友人の薦めで、一人で行けるバーと聞いてここに来ていた。

ずっと見ていたと思われるのも嫌だ。しかし、今を逃せばきっと後悔する。「私はいつもそうだった…」都会の男との喧嘩を思い出す。「おまえはいつもそうだ!なぜ思ったときに言わなかったんだ!!」記憶の奥にしまっていた男の声が頭の中で叫んでいる。そして女は今、言い出そうか迷っていた……。


男は気付いていた。

もう一時間は店にいる、目の前カウンターの柱と柱の間の女。一組、そして一組と客が帰っていくこの店で、二人きり。さっきから、こちらをチラチラ見ていることは分かっていた。この初めて来た女は、バーマンの長年の勘とでも言おうか、明らかに何かを訴えようとしている。突然電話をしてきた目の前で「ほろ酔い」のこの女を、知人の紹介でもあり無下には出来ない。無下にするには惜しいほどの容姿も兼ね備えていた。

女はしなやかな指を持ち、背が高い。細身だが、女性らしさ・色気も感じさせる。年の頃は30前後か。聞くと東京から来たと言う。しかしそれ以上は聞かなかった。正確には他にお客もいたものだから、聞けなかった。声は優しい、しかし力がない。何を思って一人でここに来たのか?猜疑心が旺盛なのも、男の欠点でもあった。それはいつも、女との別れを決定づけてきた要因の一つだ。昔の女を思い出しながら男は「バーテンは自分からは話すべきではない」と浮ついた心に言い聞かせていた。

「あのー…」女が薄くほのかに湿った、しかし上品な唇を開いた。

「おかわりでしょうか?」

男はいつもよりも平静を装い低い声で言う。

「いいえ、他に誰もいないので聞いても……言ってもいいかしら」

標準語で、しかも綺麗な日本語を話す。かすかに潤んだかに見える瞳には吸い込まれそうな力がある。期待に膨らむ胸の内を隠しながら男は「どうぞ」とだけ言い、女の続く言葉を絞り出しやすいように穏やかな表情を作った。それが男の常套手段であり、知的な女性へのリスペクトでもある。




「チャックが開いているんです。ズボンの……」


一瞬の沈黙の後、お互いが笑ったのはこれが初めてだった。



(2002年 サイト内 変態小説家コーナー「加納町人間交差点~地図にない店の物語」 より)


※今日のヒトコト
GW休日 4/30(日)5/6(土)7(日)のつもり
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僕が神戸の大学にやって来たのは、あの忌々しい震災から二年後の春だった。

六甲山系の麓に位置する、風光明媚な校舎も決め手の一つだった。生まれた田舎町とは雲泥の差の、洒落た異国を想わせる街並みにも惹かれた。ここなら僕も「神戸の人」となり、素敵な出逢いも待っていると思った。

両親には反対された。震災から間もない街だ。そして、家業を継ぐことにもなっていた。僕は、住み慣れたあの町が嫌だった。目に見える情報はパソコンから取り出せるが、手に取って見られるものは何ひとつ無い。そして、父の仕事が単調で、何に喜びを感じ、何を生き甲斐に感じていたのかが皆目理解できなかった。次第に都会に憧れて、僕はそこから逃げ出したくなっていた。町を出てゆく先輩達の姿が、理想郷を求めて彷徨う旅人のようで、いつか来る自分に重ねたりした。

海、山、川、それぞれが共存し、港のある貿易、異国・異文化を受け入れる「神の戸」と書く神戸の街。三都と称される京阪神を移動する交通手段は、新幹線・在来線、高速道など幾つかあったが、僕の田舎はそんな場所には無かった。交通機関を幾つも乗り継いで帰る道のりが億劫だったことも、帰省に足が遠のく理由だった。

大学卒業後は帰るなどと約束しながら、実家に戻ることを選ばずに、神戸に本社のある企業に勤めた。下宿していた四畳半から、海と明石海峡大橋の見えるアパートに移った。いつしか海沿いに住まい都会に通う自分が、ドラマや映画で観た風景に同化していると思い込んだ。家族というモノを近くに置かないこと、そのちょっとした孤独感を俯瞰から見ては納得するように努めていた。

          ◇

震災から十年、僕がこの街に来て八度目の秋。仕事にもやりがいを感じていたが、働くこと、その対価をもらうことの尊さ・難しさも解るようになった。

彼女ができた。もちろんそれまでに学生時代を含めてそれらしき人はいたが、どれも決め手がなかった。ソレに気付いたのは「両親に会わせたい」と思うようになったからだ。何だか照れ臭いが、初めてそう思った。

          ◇

そんな秋の午後、非通知の番号で携帯が鳴った。

元気か。

父だった。

近頃、お前がやっているブログとやらいうものを知ってから、
元気なのは分かってる。

便りがないのは…って言うだろ。

神戸に空港ができるそうじゃないか。
母さんと、神戸に行ってみようと思うんだが……

「来なくていいよ」

何年も会ってない息子の素っ気ない言葉に、まるで子供が駄々をこねて玩具を求めそれを強く制されたように、もう半ば諦めて父は黙っていた。

「僕が…僕の方からそっちに行く」
フゥッーと息を吐きながら僕は、その言葉だけは力強く絞り出す。

「会わせたい人がいるんだ」


          ◇


来年春、僕らは結婚する。土曜日、故郷の田舎町で式を挙げ、その翌日披露宴は神戸の街で。飛行機を利用すれば、あっという間に移動できる。

新しい空港が、町と街を、家族と僕を繋げてくれた。



※この物語はフィクションです 平成17年10月17日・神戸新聞掲載
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彼女とは、夏の終わりに程近い夜に出会った。

「アナタは、懐かしい香りがするわ」

辺鄙な場所にある地図にないこの店。幾らか時間の経った後、彼女は少し懐かしい木の香りのするカウンターとは違う、店に漂う香りを表してそう言った。男は不思議に思う。バーマンというものは、香水をしない。ドリンクに匂いが移ることを避けるためもあるが、「その香りは、○○がつけてるよね」……そういうことで非日常の空間を現実に引き戻すことはしたくなかった。

おそらく男のタイプだった。それを証拠に、男はいつもより饒舌だったし、そしていつもより酒を飲んだ。「この女をナントカしよう」そう思うならペースは落とす。飲んだ、いや呑んだということは、その後のことよりも「今」をナントカしようと思う行為だ。ほとんどの人が彼女を美人の部類に入れることを厭わない、痩身で品のある目の前の女性である。今、この時間を共有したかった。

「その香りはどこかで嗅いだことがある」

彼女はそう言うと、大きめのライムを浮かべた10オンスグラスを斜めに傾け、あたかもスクリーンに映る風景のように、グラスに見える気泡を眺めていた。その泡の一つ一つに異性との想い出を見ているのか、彼女は時に微かに笑い、時にグラスより向こうの世界を見射るような目をし、そして何かを思いだしたかのようにその目を更に大きくする。ただ綺麗なだけの女性は、一生を演じ続ける俳優のようなもので興味がない。カウンター越しに見る彼女は、表情豊かなオフステージにいる。

香りは、時代や人を映し出す。彼女の言う「懐かしい香り」が異性のものならば、男はジェラシーを感じずにはいられない。どうやら、男は瞬時に恋をしている。

「わかったわ……アナタのその香り」

時はもう翌日に差し掛かる頃、何杯かのカクテルに身を任せた彼女は、少し酔った足取りで席を立つ。出口の扉が開き、もう既に夏のそれではない心地よい風が、冷たいほどに頬を撫でる。振り返りながら彼女は、ジグソーパズルの最後の一欠片を手繰り寄せそこに収めた時の、子供のような笑顔になった。


「アナタ、ベビーパウダーつけてるでしょ」


恋の予感は、母性をくすぐっただけに終わる。

う~ん、Johnson&Johnson。ナンだ、この小説。
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