ばるとろまいの薬コラム

大学病院にてDI担当の薬剤師をしております。
新薬についての考察を書かせていただいています。
より良い記事にするために先生方のコメントをお待ちしております。


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一般名はアトバコンであり、ニューモシスチス肺炎の治療薬である。

現在の薬剤ではニューモシスチス肺炎に適応がある薬剤はST合剤であるバクタ、ペンタミジンであるベナンバックスとがある。

ニューモシスチス肺炎は治療というよりは免疫低下者に対して予防的に投与される事がほとんどである。

ST合剤がファーストチョイスとして使用され、ST合剤にてアレルギーが出た例だと、ベナンバックス(吸入など)に切り替えというのが現在の流れである。

今回のサムチレール内用液はこれらに加えて新たな薬剤が加わった事になる。

適応はニューモシスチス肺炎、ニューモシスチス肺炎の発症抑制である。

サムチレールはバクタの使用が困難な場合に使用しなければならない。
なぜなら、効果の面でバクタと比較した時にバクタの方が効果が高かった結果を得た。

そのため、バクタより先んじて使う事はできない。
あくまで、バクタのセカンドである。

用法において注意点がある。

用法は<ニューモシスチス肺炎の治療>と<ニューモシスチス肺炎の発症抑制>と二つある。

ニューモシスチス肺炎の治療は
通常、成人には1回5mL(アトバコンとして750mg)を1日2回21日間、食後に経口投与する。
とあり、1日2回投与であるが、

ニューモシスチス肺炎の発症抑制で使用する場合は
通常、成人には1回10mL(アトバコンとして1500mg)を1日1回、食後に経口投与する。
とあり、1日1回投与である。
しかし、1日の投与量は1500㎎と同じである。


サムチレールの半減期は60時間程度であるので、1日1回で十分である。
1日2回の投与方法はサムチレール開発の歴史的な流れからであり、薬物動態学的な用法は1日1回である。

治療の用法と予防の用法で異なるのはこういう理由であるようだ。

とはいえ、このサムチレール内用液。
かなり鮮やかな絵の具のような黄色をしている。

おおよそ口に入れるのを躊躇うくらいの発色のよい黄色である。

出来る事なら、封を切ったら見ないで飲むことをお薦めする。

さらに飲んだら、すぐに口を空けて他の人に見せないようにする事が必要になる。

薬価は1包あたり1679円とだいぶお高い。
バクタでもベナンバックスでもダメという方に処方される薬剤であると考える。
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一般名はダプトマイシンであり、久々に新しい作用機序を持つ抗生剤の登場である。

キュビシン注の特徴の一つはまず、その新しい作用機序だ。
ダプトマイシンは細菌の細胞膜に結合し、細胞内からK(カリウム)を排出させる。
そして、細菌を死に至らしめる。言わばカリウムを排出させ、細菌をしぼませて殺してしまうというイメージだ。
従って溶菌を伴わない。
溶菌をしないので、サイトカインなどが排出されないため比較的抗生剤で多いアレルギーという副作用が抑えられる可能性を持つ。

キュビシンの特徴としてもう一つ忘れてはならないのが、殺菌の速さである。
同じ抗MRSA薬のバンコマイシンと比較すると、菌量を1000分の1に減少させるのにバンコマイシンでは8時間ほどかかるところをキュビシンだと15-30分ほどで達成する。
(Eissenstein BI,Expert Opin Investig Drug.2004;13(9):1159-1169)
殺菌が早いという事は効果判定も早くできるという事であり、治療期間を非常に短くできる薬剤である。

DI情報について述べよう。

適応は現在のところMRSAである。あくまでグラム陽性球菌が対象という事である。
適応のところで注意したい事としては肺炎には効果がない!という事を強調したい。
このキュビシンは肺サーファクタントに結合して不活性化されるために肺炎治療に対しては効果が無い薬剤なのである。重傷な感染症治療において無効な抗生剤を使う事は患者を危機的状況に追い込む事があり、これは事実上の禁忌と言えよう。
非常に大事なところであるので覚えておきたい。

用法用量としては、4~6㎎/kgを1日1回 30分かけて静注する。
濃度依存的に効果を発揮するために1回量を多くする投与方法が効果的である。
また、1日2回投与した場合には海外において血清CKが上昇した報告があり、1日2回以上の投与は禁止されている。
希釈液に関してはブドウ糖を含むものには配合不可であるので、生食や乳酸リンゲル液などで溶解する事が必要である。
ダプトマイシンは分子量が1620.67の非常に大きな物質であるので、バンコマイシン同様腸管からは吸収しない。したがって、バンコマイシン経口用のように腸管感染症用に今後経口剤が出る可能性があるが、その時も全身移行しない事を理解しておくべきである。
また、分子量が大きいためかキュビシンは非常に泡立ちやすい。そのため、溶解後のバイアルは激しく振とうせずに、希釈液を入れた後はバイアルをゆっくり回しながら、粉末をしっかり湿らせ、10分間静置し溶解するという方法を取る。

腎排泄薬であるために、腎機能に応じての投与量が設定されているが、Ccrが30mL/min
以下というかなり悪い状態でないと影響がでないようであり、Ccrが30mL/min以下の時には2日に1回の投与となる。
また、投与中に腎機能が悪化してもそれほど血中濃度には影響が無いようで、基本的にはTDMが必要のない薬である。

副作用はそれほど重大なものは無いが、特徴的なのは可逆性の骨格筋障害である。
これは抗生剤には珍しい副作用であり、恐らくは作用機序のカリウム排出が関わっているものと推察される。
ただし、この副作用も1日1回投与では稀のようで、1日2回以上の投与で起こり得るようだ。

新しい構造を持つ薬剤であるので、従来の抗生剤とは交叉耐性、交叉アレルギーなどは持たない。

新しい抗生剤が登場する事は喜ばしい事であるが、耐性菌の出現を防ぐためにもとっておきとして使用していきたいものである。
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勉強会の前20分ほど前に到着したので勉強会で配布されたパンフレットを読んだ。
そこには呼吸器感染症におけるキノロン系薬のUP TO DATEと書かれていた。
面白そうなので読んでみる事にした。
基本的には第一三共のパンフであるので、クラビット、グレースビットについての使い分けという視点で読んでほしい。

キノロン、グレースビットの使い方を上気道感染症と下気道感染症とで分けて論じられていた。
上気道炎の特徴として基本的にはウイルス感染が多い事が挙げれる。
したがって、抗菌薬の適応ではない事が多いのだが、膿性痰や白苔が検出されると細菌性を疑うという。

肺移行性を考えるとマクロライド系、テトラサイクリン系が選ばれるが、呼吸器感染症の原因菌のマクロライド系の急速な耐性化を考えると基本的にはテトラサイクリン系が選択される事が多い。
さらに扁桃周囲膿瘍があると、嫌気性菌の感染が疑われるため、嫌気性菌への抗菌活性のよいシタフロキサシン(商;グレースビット)が選択される。

下気道感染の特徴としては基本的には細菌感染が多く、抗菌薬の適応となるケースが多い。
感染原因菌としてはインフルエンザ菌が最も多く、次いで肺炎球菌、モラクセラ。黄色ブドウ球菌となる。
原因菌がわかるではエンピリック治療とし、原因菌がわかればターゲット治療とする。
原因菌のインフルエンザ菌、肺炎球菌に対して効果が高いのはレスピラトリーキノロンである。
マイコプラズマ、クラミドフィラ(非定型菌)には組織移行性の良いマクロライド系が用いられるが、クラビットがマイコプラズマ、クラミドフィラの適応も取得した事もあり、この領域もクラビットが持って行きそうである。
黄色ブドウ球菌(もちろんメチシリン感性)はβラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン薬が選択される。内服ならビクシリンS配合錠、注射ならユナシンS、タゾシンである。
近年、フルオロキノロン耐性肺炎球菌が発現している。これは高齢者になればなるほど発現頻度が高くなる。このフルオロキノロン耐性肺炎球菌に効くのがグレースビットである。

クラビットがファースト、そして、高齢者や基礎疾患治療をやっているリスク患者にはフルオロキノロン耐性肺炎球菌を加味したグレースビットの投与というのが現在のスタンダードであるように思う。
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クラビットは我々医療従事者には非常になじみのある抗生剤である。
風邪を引いた時などに出される事もある。(本当はこんなにスペクトルが大きいものをいきなり出すのはよくない事なのだが)
そのクラビットから静注用の注射薬が出た
現在、クラビットの仲間のニューキノロン系抗菌薬では注射剤はシプロキサン注とパシル注がある。

このニューキノロン系の抗生剤であるが、その中でも特に肺炎などの呼吸器感染症によく効くものをレスピラトリーキノロンと特別に呼称する。基本的には呼吸器感染症原因菌に対して高い抗菌活性を持ち、肺組織への移行性が高いものであるが、くわしくは日本呼吸器学会での「呼吸器感染症に関するガイドライン」にて細かく定義されている。

現在日本にて市販されている中ではジェニナック錠、アベロックス錠、スパラ錠、オゼックス錠、であり、クラビット錠は1日1回500㎎の用法になってからレスピラトリーキノロンの仲間入りをした。このようにレスピラトリーキノロンはいままでは内服しかなかったのだ。

今までのシプロキサン注やパシル注は肺炎起因菌として重要なマイコプラズマやクラミジアについての適応がとれていないため、レスピラトリーキノロンにはなれなかった。

クラビットはマイコプラズマ、クラミジアについては適応があるためレスピラトリーキノロンへと襲名。(1日1回500㎎になってからどこまで適応が増えたのか不明)
レスピラトリーキノロンでは初めての注射薬となる。

クラビットはほとんど未変化体で尿中に排泄されるため女性の膀胱炎を始めとした尿道、腸管感染症に用いる。
ほぼ腎排泄型の薬剤であるのでCcrごとに投与方法が異なる。(添付文章参照)
1日1回投与でいいところもシプロ、パシルと比べてよいところである。(薬価の面でも1日2B使わなくていい)クラビットに限らずニューキノロン系の薬剤はヒスタミン遊離作用があるので、
急速な静注はしてはいけない。60分かけて点滴しなくてはいけない。しかし、それでもニューキノロン系の薬剤は点滴時にかゆみや紅斑が出現するようだ。

抗菌薬の世界は厳しい、スペクトラムが広くなんの菌でもやっつけてしまうものは本来リーサルウェポンとして残しておかなくてはならない。(シューティングゲームのボムみたいなものだ)
しかし、この最終兵器は便利なので、こぞって使われる。その抗生剤の独壇場となるのだ。そうすると他の抗生剤は売れないので廃盤となっていく。しかし、やられている菌もいつも同じ手でやられているわけではない。学習して耐性化するのだ。そんな時独断場で使っていたから薬がない(汗)ってことにもなりかねない。(これは大げさな例であるが)

さながら抗生剤の世界は売れたら一時期は山のようにTVにひっぱりだこで、飽きられたらすぐぽいっといった具合の昨今の芸能界のようである。


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