2.24.5 12.6-10.9-12.3-12.6-12.1-12.1-12.7-12.6-12.2-11.4-11.4-11.6
ウオッカの返し馬を見た音声情報で「やっぱこの馬、天才だよ」と話したんですが、実際、ダービーを勝たれた瞬間は「すげー、ほんとに勝っちゃったよ!」という驚きと「牝馬に勝たれるダービーってどんなレースだよ!」という違和感と、なんかいろんなものがゴチャ混ぜになってました。確かに歴史的な勝利の瞬間ではあったんで「なんか今、凄いもの見たよな?」と頭はあまり冷静じゃなかったと思います(笑)。冷静になって考えてみましょう。
まずは時計ですが、先週のオークスが昨年よりも1秒近く速い決着で、今年は当然23秒台が出るだろうと思ったんですが、結果は2.24.5という平凡な時計。上がりだけが34.4秒という決着で、つまりはスローの上がり勝負になってしまいました。ペース的にもオークスの1000m通過が59.1に対し、ダービーの1000m通過は60.5。牝馬の方がペース厳しかったというのはもうあきれるしかありません。
本来ダービーというのは世代の頂点を決めるレースであり、当然メンバーが揃ってレースの圧も高く、直線は脚が上がる馬が続出するはずのレースなので、過去を振り返ってもレース上がりが35秒を切るというのは、能力ずば抜けていたディープインパクトの年しかありえなかったんです。それが今年バテたのはプラテアード一頭だけでほとんどの馬が直線の坂上まで余力があったというレースになってます。実際、今年の高速馬場で、逃げたアサクサキングスの2.25.0(上がり34.9秒)という平凡な内容のはずなんですが、4コーナーを回った瞬間に食いついているのは番手のサンツェッペリンだけ。結局のところメンバーが弱すぎて逃げ馬に対し全く「圧」が掛からなかった、いやスピードが無いから「圧」を掛けられもしない。これって皐月賞と同じようなレースです。そしてこのスローの瞬発力勝負に対して、十分間に合う位置+最速上がりで上がれたのが牝馬のウオッカでしかなかったということです。
レースに対し「圧」が掛からなかった大きな要因はヴィクトリーの出遅れとフサイチホウオーが掛かったことでしょう。前者は、逃げて皐月賞勝った馬が、出遅れれば何もできないのは当然だし、アサクサキングスにとっては予想外の楽逃げが打てた最大の要因になったとも言えます。しかし出遅れ必然という見方をすれば、そもそもが気性難。ダービーの大観衆の前でスタート切るんですから、皐月賞とは雰囲気が違います。出遅れたのは馬が精神的に弱かったということです。
後者は馬群の外で壁が作れずに掛かってしまい、結局3コーナー回るところまで終始ムキになって走ってました。そして掛かった一つの理由に好位を取ろうとして安勝がスタートして仕掛けたのが効いてるんですが、言ってしまうと、仕掛けただけで折り合いがつかないなんて、気性的に弱かったと言わざるを得ない。もう10年もダービーを見てきて思うことは、ダービーは馬の精神力が弱い馬はほんと駄目ということと、ダービー勝つ馬の返し馬はやっぱり凄い、ということですね。大観衆の前でもちゃんと落ち着いていて、しかも空を飛べるんですから、返し馬でウオッカ絶賛したのは、やっぱりそういうことの表れであったと思います。それが牝馬だというのだから、また参るんだけどね…。
ウオッカ自身もやや行きたがる癖はあり、馬群で壁を作れたのは大きかったんですが、あの返しを見ると外枠でも溜めは作れていただろう、と。そしてお得意のスローの上がり勝負で最速上がりでぶち抜ける。馬を見るとかなり「特異」な馬だと思いました。骨は太め、脚が長い、でもトモ幅が凄い訳じゃないし、腰がかなり甘くて馬としての完成度は相当低い。凄さを感じたのはこれだけ腰がフラフラなのにトモは流れないこと。筋肉は抜群に柔軟なのに、ちゃんと後肢が踏ん張って戻ってくるという収縮力があるんですね。13Rでも話してたんですが、抜群の柔軟さと収縮力という「良さ」と腰グダグダという完成度の「悪さ」のギリギリのところで天性の才能を発揮しているような馬という言い方、だから凄い。裏を返すと良くも悪くもフィジカルだけに頼って競馬いるので、自分の限界を超えてしまうようなペースで競馬をしてしまうと怖いと思った。つまりスタミナ要求された時。今回は遅い時計の上がり勝負で勝ちパターンだったけど、あと1秒以上決着が速かったたらどうだったか?。そんなのはやってみないと分かりませんけどね。ただダービーを勝つというのはどんな世代にせよ、最も強い馬だからこそ勝てるもの、です。ウオッカには凱旋門賞出走のプランもあるそうで、こういう化け物みたいな強さの馬だからこそ、期待したいと思います。そしてこういう馬が挑戦をするからこそ、競馬は楽しいし盛り上がるものでしょう。
フサイチホウオーはデビュー当時から直線内にササったり、気性難ではあったけど、いやほんと治らんもんですね。馬体自体は新馬戦から比較すると相当筋肉と柔軟さが増していましたし、元々トモ腰は完璧な馬でしたが、結局の所、メイショウサムソンやアドマイヤメインのような「凄み」を感じさせるところまで行かなかったということだと思います。昨年は両馬に4点台でしたっけ?。ダービー馬というのは結局「完成度の高い馬」ではなく「天才の馬」が優先されるべきなのかもしれません。それはダービー以前のどこかのレースで馬を見て「この馬がダービー馬だ」と気づくものであって、消極的選択ではないんだと。昨年のアドマイヤメインがそうでした。ウオッカをどこかで見てればそう思うかもしれない。中京で見たアドマイヤオーラにはそれは感じなかったとか。昨年まではダービーパドックを見れば才能の差というのが大きく出るので簡単だったんですが、もう時代が違う以上、ダービー以前の途中経過を見ることは、パドック派にとって思った以上に大きなことなのかもしれません。ちょっと来年は桜花賞や阪神JFなどに関東スタッフの誰かを派遣しないと駄目かも。。。私自身も皐月賞をちゃんと見ないと駄目かもしれない。。。こういう時、馬を同じ論理と視点で見れて、言葉を共有できる人間というのが役に立ちます。普段接している人間同士でもかなり難しいんですけどね。
アサクサキングスに関しては、確かにNHKマイルCよりデキは上がっているし、デビュー時より筋肉量もついてますよ、ええ。だけどスロー単騎逃げが適ったきさらぎ賞以外、重賞では全く自分の競馬が出来なかった馬が、ダービーという究極の舞台(しかもヴィクトリーという逃げ馬がいて)に限って逃げが適うということ自体が想像できない。そもそも皐月賞・NHKマイルCで重い印を打ち続けた人間が惨敗を気にせず「ダービーでこそ」とへこたれずに印を打つことさえ難しいのに、そこまで「弱いから一銭もいらない」と思っていた私がここで追いつけるはずがない。この馬に追いつくにはそこまでの全てのイメージを覆すだけの想像力が必要だったと思いますが、私にはできなかった、それだけのことだと思います。
サンツェッペリンに対しては京成杯の時より筋肉の柔軟さは確実に増してますし、地味な血統柄、使って強くなるタイプだと思います。ただ基本的に柔軟過ぎる大トビなので、上がり負けは必至だった。百日草特別の結果をひっくり返すような瞬発力を持っていなかった。もしくはあの低レベル皐月賞を勝ちきるだけの力も持っていなかった、そういう言い方になります。馬体がどれだけ充実しても、武器がなかった、あるいはペースが緩すぎた。
アドマイヤオーラも馬体は中京で見た時よりかなり幅もありましたし、充実していたんですが、やはり体の柔軟さには限界がる。得意のスローの瞬発力勝負でもウオッカ以上の上がりは使えないし、早めに動いたとしても2着がやっとでしょうね。いずれにしてもダービーは勝てる器ではなかった。
ヴィクトリーは確かにブライアンズタイム産駒らしく筋肉量はあるしトモもしっかり。周囲の話しだと皐月以上という柔軟さや張り具合だったと思います。ただ返し馬できないって…(苦笑)。ダービーという舞台で殺されたタイプだと思います。馬自体は将来あるいい馬だと思いますよ。
他はドリームジャーニーとか、ゴールデンダリアとか、ナムラマースとか、スローを後方で溜めた結果、上がり速いという馬たちで、そこにはあまり価値は発生しません。レースで勝ちに動かなかった馬が、いくら速い上がりを出したところでそれは後出しジャンケンと同じです。ようはスピードが無いとか、早めに動いて勝つ自信が無いとかで、着順がその馬の実力だという見方でいいと思います。
それにしてもユキさんや京介が事あるごとに「今年の牡馬は弱い」という話をしていたんですが、それを象徴するかのような結果になってしまったということですね。コラムで「時計的に考えると、皐月賞自体が昨年より明らかな低レベル、京都新聞杯も低レベル。青葉賞も今年の高速馬場を考えると低レベル。そしてHレベル牝馬のウオッカの参戦」という書き方もまんざらではなかった訳です。
何故こういうことになってしまったのか?なんですが、やっぱり今世代から「サンデー産駒の不在」が大きかったんじゃないか、と。昨年はダービーに8頭いたサンデー系産駒も、今年はたった4頭しか出てないんですよね。そしてサンデー亡き後、その代替としてもっとも良い牝馬をつけられるはずのダンスインザダークやアグネスタキオンといった馬たちが、クラシックに出てきて頭を取るくらいの牡馬を産出できていないんだと。だから全体としてのボーダーが下がってしまった感があるんだと思います。ちなみにオークスは9頭がサンデー系産駒で(しかもタキオン産駒のダイワスカーレットが回避して)、牝馬にかなり偏ったという世代であり、実際、NHKマイルCまで勝たれるなど、牝馬の方がレベル高かった訳で、これが来年は牡馬優勢に偏るかもしれませんが、いずれにせよ、今までなら数多く供給されていた高いレベルのサンデー産駒が、代替種牡馬では質・量ともに供出できなくなり、偏りを見せるようになったのではないか、というのが牡馬牝馬の逆転現象の推測要因です。