吹きガラス屋 加倉井秀昭のブログ

のんきなガラス屋のあんなことやらこんなことやら


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小さなチューブが運ばれてきた。

ラベルは剥がれかかっていた。

かすれたラベルには リンデロンVG の文字が見える。

 

にやり.....

やつが笑った気がした。

 

「なんだ?いまさらか?」

 

「..............」

 

「まぁいい...この古くて汚れたチューブから俺を解放しろ。」

 

「やれるか?」

 

「さぁな、期は完全にむこうのペースだ、まぁとりあえず殺せるだけぶっ殺してやるよ。」

 

「仲間もか?」

 

「そうだな、手加減はしてる場合じゃねぇだろう? 諦めろ....」

 

「なるべく.....副作用は避けたい.....」

 

「はは! この期におよんでそれを言うか!」

 

「そうだな....好きにしろ....責任は、俺にある。」

 

「了解。」

 

 

「ひとつ聞きたい.....」

 

「ん?」

 

「おまえは火傷の外傷にも効くのか?」

 

「いまさらか! うーん...難しいこときくんじゃねぇよ.....雑菌どもをやればいいんだろ?」

 

「あ、うん、そう.....だな.......」

 

「俺はそれをやる。」

 

「わかった....」

 

 

指に取ったその白いクリーム。

それがリンデロンの本当の姿。

 

ふと、あることが頭をかすめた。

 

このリンデロンは一体いつ頃処方されたものだったか...

もう既に私のメモリーからは削除されていた。

 

つた漆にかぶれたのって......

チューブのラベルははげかかっている。

 

 

「さぁて...やっと出れたってわけだ、調子に乗った雑菌どもを皆殺しだ。 暴れてやるぜ。 あんたの指ももう安心していいぞ」

 

「...........」

 

「わかってるって、安心しろよ、俺も昔とは違う。 これでも丸くなったんだ。」

 

「..........」

 

「ほんとだって....あんなとこに長い事いてみろってんだ」

 

「ながいの....?」

 

「ながかったろ?」

 

「.............」

 

「でるぞ」

 

「ああ」

 

患部にクリームを塗った。

 

「しつこいようだが副作用は.....」

 

奴が振り向いた。

そして呆れたような顔でこう言った....

 

大丈夫だってんだ、使用期限はとうに過ぎてるんだ

 

奴が嗤った。

 

明日病院にいこうと思ったのだった。

 

 

おわり。

 

 

 

 

 

 

 

 

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指が騒がしい。

なんとなく騒がしい気がするのだ。

気のせいかもしれない。

 

それでも確実に指がぽんぽんになってきた。

かさぶたの周りはほんのり赤く、日に日にその範囲は広がってきている。

 

そう、彼らは戦っている。

 

いける....この日の為にお前達を鍛えてきたのだ。

20世紀で最も偉大な発見といわれる爆弾野郎リンデロンを押さえ込んでまでここまできたのだ。

時間はかかるかもしれない、しかしお前らは負けない。

 

しかし左手人差し指第二関節上部。

なにをするにも曲がる場所。

かさぶたによってこの関節は完全に自由を失ったのだった。

 

ぱき.....

 

無理に曲げてしまうとかさぶたは割れ血が流れる.....

まことに厄介だ。

 

程なくしてガラス制作の作業にも支障が出てきた。

 

痛むのだ....

ずきずきと.....

 

しかし私に出来る事はない。

彼らを信じる事以外に....

 

「なぁ...俺の出番じゃねぇか?」

 

「..................」

 

「早くしないと指無くなっちゃうんじゃない?」

 

「...................」

 

チューブに入ったリンデロンがうるさい.....

 

 

そんな時だった。

その指をしこたまぶつけた。

 

息の止まるほどの激痛。

声はのどの奥で爆発して消えた....

左手の手首がうっ血するほどに渾身の力で握りしめた。

その両手をうつむきながら天に掲げた様は祈りのようであったか....

 

そして当然のごとくかさぶたは大きくめくれあがる....

出てきたのは血ではなかった。

薄く白く濁ったその液体は一つの真実を告げる。

 

我が殲滅部隊は負けたのだ。

外部より侵入した雑菌どもが仲間を増やしていた。

かさぶたの下はやつらが制圧したということだ。

 

「なぁんとなくね...わかっちゃぁいたんだがな......」

 

放っておくと奴らは数を増やし全身にむけて侵攻を開始するであろう。

そうなればSNSでむけられた最悪のシナリオは現実味を帯びてくる。

 

意を決してかさぶたを剥ぎ、患部をしぼりあげる。

中から吹き出した白濁したものは赤い血に変わってきた。

ひとまずOKだ。

 

「おい.....」

 

「はい」

 

「やつを出せ....」

 

「え!しかし.....」

 

「だせ....」

 

 

激痛の中、私は呪いの言葉を絞り出した。

そう、吹きガラス職人として、私はまだ指を失うわけにはいかない。

 

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傷口は乾いてきた。

ビーフジャーキーのようである。

 

いいぞ、乾燥は最大の治療であると思っている。

なんとなくだ。

でもそれでいいとも思うのだ。

 

小さな傷ならたまに消毒もしないで放っておくこともある。

予想通り化膿したりするわけだが......

傷の周りが赤くなって炎症起こすのですぐわかる。

そうなったら焼いたカッターで切開して消毒薬を塗る。

 

身体において免疫力や抵抗力、実働部隊の白血球などそれぞれのチームは絶えず臨戦態勢にいなくてはならない。

本当に必要な時に戦えるのは彼らだ。

 

私の見解では薬は只の援護射撃か、サポート程度だ。

外部の傭兵が本丸を護るなんて馬鹿げてる。

 

いろいろなリスクはあるかもしれない。

それでも今まで信じてきたし、これからも彼らを信じる。

うちのチームで駄目なものは駄目なのだ。

それでいい。

 

その傷口はあまりに肉だった。

出血が無い分余計に食材ちっくだったのだ。

 

 

SNSに載せたところ、いろいろな意見が......

 

一番恐ろしいところではやはり感染症を心配する声が......

指切断、腕切断などの文字も......

 

「う....うわぁぁああ.........」

((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

さすがに怖くなってきた.....

 

病院にいけ、抗生剤をぶち込めと四方八方からつぶてが飛んでくる.....

 

しかし...しかしだ.....

吹きがらすやが火傷ごときで病院にいけるかよ....

 

「まてよ....そういえばあったな....」

 

以前、つる漆にかぶれて顔面半分と二の腕が凄い事になった時があった。

その時に医者がくれたのが抗生物質の入ったステロイド剤....

 

その名はリンデロン。

 

抗生物質......

20世紀で最も偉大な発見といわれるそいつ。

 

まわりの意見に従うのか?

なにかが引っかかる.....

つかえるのか?こいつは果たして効くのか?

こうなったのも医学の英知とやらに頼ったからではないか...

(自分のことはひとまず棚の上に置いておくとして.....)

 

これは薬に限らないが、よく効く薬というものは強いのだ。

強い薬は副作用も強い。

 

今の時代、あのスーパーマンが人類の敵とされ、アベンジャーズでさえ破壊しすぎて国連の支配を受けそうになるのだ。

 

んな都合のいいものなんかありはしないのだ。

 

リンデロン

 

「なんだ?俺にようがあるんだろう?」

 

「ああ、ちょっとした怪我でね....」

 

「いいぜ、使えよ。」

 

「考えてるんだ......」

 

「なにを? 俺がみんなぶっ殺してやるぜ。 話は早いだろう?」

 

「まぁ待て....」

 

「ふん...」

 

なにかがひっかかる。

 

「白血球集合! 体内における免疫部隊、左手人差し指第二間接外傷部、外部からの侵入に備えろ! もしこれを突破された場合、いかなる抵抗手段も許可する! 簡単に言えばこうだ! 外部より侵入する、もしくはしたものは殲滅せよ!」

 

「了解!」

 

「けっ!奴らにやらせんのか? 二度手間だな.....」 

 

「黙れ、おまえは味方も殺すだろう? それは許可できん」

 

「そうかい、好きにしな....」

 

 

その次の日、左手人差し指は腫れていた。

傷のまわりはうっすらと赤くなってきている。

 

そう、始まったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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