吹きガラス屋 加倉井秀昭のブログ

のんきなガラス屋のあんなことやらこんなことやら


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大きな悲劇の始まりなんていつも最初はちっぽけなのかもしれない。
なんてこと無い日常。
その中に時折まじる狂気に我々は気がつかないのかもしれない。
そう、始まりなんて覚えてもいない些細なこと.....



「せんせい、珈琲お土産にもらったやつ持ってきた。」

「ほう。 んまいの?」

「一杯8000円とか.....」

「(((( ;°Д°))))」

「う、うそだ.....」

「ほんと。」


この日ショップカード制作のためにカメラマンのおねーさんが撮影に来ていたのだった。
その名は ピカーナさきこ。(かめーですけどね)


ばかな....そんなばかな.....一杯8000円だと....?
どうやったらそんな値段になるというのだ?

まさか...俺が長野でハードでワイルドで呑気な生活を送っている間にインフレが進んだというのか?

デフレ脱却とか言ってたやつ、前へでろ。

まあいいや。

「で...その値段の意味はなんなんだ?」

「なんか猫が食べて出てきた豆で焙煎した珈琲なんだって....」

「ほう....ん?.....おお?」

「ねこ?」

「じゃこうねこだって.....」

「じゃこうねこってあのなんとなくエッチなやつか....」

「...........」

「食べてでてきただと?」

「...........」



Kopi Luwak

小さなガラスの瓶に入った焦げた豆の名前である。


この時代、大方の人類の知識は手に収まる薄っぺらなガラス面に写し出される。
人のやることはそのガラス面をなでるだけだ。
霊長類などと調子に乗った人類はもはや検索エンジンでしかない。
いや、人為的に仕掛けられた検索だとしたらただのエンターキーなのかもしれない。

そして私もポチッとするのだ。

コピ・ルアク
インドネシアのコーヒー農園ではロブスタ種のコーヒーノキが栽培されており、その熟した果実は、しばしば野生のマレージャコウネコに餌として狙われている。しかし、果肉は栄養源となるが、種子にあたるコーヒー豆は消化されずにそのまま排泄されるので、現地の農民はその糞を探して、中からコーヒー豆を取り出し、きれいに洗浄し、よく乾燥させた後、高温で焙煎する。

とWikipediaにある。


かわいい......
これ大事だなー

そしてこう続く......

独特の複雑な香味を持つと言われており、煎り過ぎて香りが飛ばないように、浅煎りで飲むのがよいとされる。一説によると、ジャコウネコ腸内の消化酵素の働きや腸内細菌による発酵によって、コーヒーに独特の香味が加わるという。




(  ゚ ▽ ゚ ;) !


て....てめぇ......
ど、どんなに可愛くてもなぁ...
こえちゃあいけねぇ河ぁこえてんぜ.......

なぁ........
なぜだ......?
なぜそれを洗っちまったんだ?

なぁ.........
なぜそれを焙煎しちまったんだよ.....

なぜそれをドリップして
「ああ! 美味しいじゃんこれー」 って素直に感じることができちゃったんだよ.....

おかしいよ....そんなの...おかしいよ......。




「せんせー、のんでみよーよ」

「あ、うん、の、のんでみよー.......」

瓶のふたをあける。

香りは.....ふう......
珈琲のそれであった。

豆をグラインダーに入れハンドルをまわす。
ここで至福の時が訪れるはずだった。
本来なら、かくらい的にはこの時点で珈琲の嗜好の80%を終える。

しかし香りは微量.....

なぜだ?
まさか....豆の表面を覆う香りの成分を大腸が吸収してしまったのか!

おのれエロ猫!

抜いた刄を懐にしまい、挽いた粉をケメックスに入れ、お湯をおとす。
なんてことはない、いつもの情景、いつもの珈琲。
しかし香りは少ない.....

カップに注ぐ.....

飲む。


衝撃

これわ....これわ.....


上品なのだ、どこまでも上品....
細かく繊細なピースを複雑に組み合わせて全体を最高のバランスに組み立ててあるようだ....

くそう...
おのれエロ猫、やるではないか.....

そう、この日俺は超えてはならない河をこえた。
それでもこの清々しさはなんだというのだ....
今宵はエロ猫の消化酵素と腸内細菌、それと人類の変態的行動のコラボレートに乾杯だ。

夜空に輝く月をみてふと思ったのだった。

じゃこうねこだけなのだろうか?

その他の動物にもこの奇跡が......いや、これ以上の奇跡が眠っているとしたら。
そしてそれが高値で売れるとしたら....
理想に燃えた、もしくは欲にまみれた人類はきっとこの分野に乗り出す。
そしてきっとその奇跡を起こすであろう動物達に悲劇をもたらすかもしれない。
タリーズやスターバックスのメニューに動物達の名前がならぶかもしれない。
そして珈琲の定義は覆され、「排泄にあらずんば珈琲にあらず」というものも出るかもしれない。

人間には知ってはならない、知ってはいけない領域というものが必ず存在する。
それはひとたび知っては戻れない場合が多いのだ。
原子力に並ぶ人類にとっての負の発見にならないことを祈るばかりだ。

そしてもうひとつ。

その能力が俺には無いという確証もまたないのだった。







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そのカメラは黒く、鎌首をもたげて七色の光を発していた。
俺に最後の審判を下すべく近ずいてくる。

「では行きますよ、余裕があったらモニターを見てください、全部見えますよ。」

見えた。

「ここですね....ここから先が苦しくなります.....」

「ふぁ、ふぁい.....」

「いきます.....」

「う、うゔぉおおろううぇえええい!」

「はい、ここで止めます、いいですか....落ち着いてください。」

「うぅげぇえおろろろおおお!」

おちつけ....ここで止めろ.....

嗚咽はとまらない。
看護婦さんが背中をぽんぽん叩く。

微かな記憶の断片....母親の記憶だろうか。
止まった。

素晴らしい鎮静効果だ。

楽にはならない、現状維持。
その向こうは地獄だ。

看護婦さんは背中をぽんぽんしてくれている....

「じゃあ進みますよー」

モニターを見た。
すごい.....これがおれのなか......

「お、おうげおろろろろ....」

カメラは進んでいった。

「食道は大丈夫ですね、綺麗なもんです。」

「うげぇおうぅぅぅろうろう^%&$#~=|?!”#$%%&¥」

綺麗だった、つるりとしている。

「ここから胃に入ります....よっと....」

「んがんゔえゔえゔえ”#$%&=¥*+?&%$」

きた。
初めましてだ、俺がお前の主人だ。

今まさにこの大聖堂の中心に居る。
ポリープが見える。

「この上の方が見逃しやすいのでね、少し膨らませますね。」

膨らませるだと?!

うお!膨らんだ!
皺が伸びた。

その時体に異変がおきる。

「うゔぇおろゔぇゔぇおろろろ!」(本当だ!俺のお腹の中が膨らむ!

そのとてつもなく不快な気持ちの中で画像を見た時、思ったのだった。

それは白くつるつるしているが、いく枚ものヒダになっていた。
グロテスクで美しいそれはどこかで見たことがある.....

あ!

「おおぅう%%$#おうゔおうぇ%えええ も、もつ! ゔぇえ%&#$えええい ほ、ほるもん! ゔえゔえ&え#”ええ&~=い」

そう、モツ。
あるいはホルモン。

グロテスクで美しいそれらを俺は知っていたのだった。

「もう少し下に行ってみます....よっと......」

めくるめく生命の神秘。
それらすべてに俺は出会っている.....
食材として。

「うん、綺麗なポリープですね、良性です。」

「では戻りますね。」

映像は、早回しのように戻っていく。
そして出る時に引っかかるのだ。

「ゔぇゔぇゔえ$%~¥ろろ”%?&*ろろ+$ろ#ろ!」

「はい、ご苦労様でした。 大丈夫でした?」

「あぅう....はい....思ったほどでは....」

「よかったですね、悪性のものはどこにもないですね。」

よかった。
その一言が....聞きたかったんだ....

長かった。
とてつもなく長い5日間。

これで....
これで.....
約束がはたせる....

「かくらいさん、一言いっておきますね。 僕ならもうバリウムは飲みません。
 また引っかかるに決まってますから。」

「来年からはいきなり胃カメラ......ですね?」

「そう理解していただいていいと思います。」

「ありがとうございました。」

「はい、お大事にしてください。」


終わった。

これからも生きねばならん。
でも生きることは当たり前ではない。
きっと長い人生も、短い人生も、

今日も生きた

ということなのかもしれない。

さて......
行こう。
約束の地へ....。



くるるるるるるるる、どふぉーん!
車を走らせた。

頑張った胃袋との約束を果たすためにモスバーガーを目指す。
厚切りベーコンサンドが待っている。

その途中の運転席でふと思ったのだった。

モツ煮定食とか.....
ホルモン焼き定食とか....
いいな。

思っただけだ。
食べてはいけないし、悟られてもいけない。

自分の胃を見て食欲を催したなんて...
消化しなくてはならない胃があまりに不憫ではないか。

そう、今日だけは何事もなかったかのように 厚切りベーコンサンド だ。



終わりな。

皆様ご心配おかけして申し訳ありませんでした。
フェイスブックではあまりに反響があったので急いで描ききりました。
描き終わるまでは 大丈夫ですよとコメント出来ずにおりました。
これを機に生命燃やしきるつもりで生きて行こうと思います。
暖かいコメントいただいた方々、ありがとうございました。

なお先生とのやりとりその他諸々はかくらいの印象で勝手に創作させていただいており、事実とは
違う場合もございます。
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すぅ.....

ガラス製の自動扉が両脇に開く。

あごを引き、胸を張り、道の真ん中を歩く。
目に見えない、いろいろなものものを掻き分けて進む。

その向こうに受付。

二人の女性、一人は男。
みんなマスクをしている。

チャンスだ。
二者択一。

どっちだ....

一歩半。

「こちらへどうぞー!」

「はい.....。」

男性に呼ばれたのだった。


この二日間、いろいろなものに追われながらもどこか気になっている。
写真を見れば見るほど悪いことを考える。
そんな生殺しの二日間。

それももう終わりだ。
とりあえず結果はでる。

胃カメラ。
その悪名は千里を超えて人々の耳に伝わっている。
最近はどんどん細くなっていて負担も少ないとは言うが、私の知ったことではなかった。
鼻からいれるのもあるという。

いいだろう。
逃げ場はないのだ。
なんでも入れたらいい。
もうこれ以上する覚悟は残っていなかった。


「それでは麻酔を塗りますね。口を開けてください」

んが

しゅっ!

「んんんがぁぁああ!」

し!しみる!凄い。

「そのうち効いてきますから、少し待ってくださいね。」

ベッドに横になりながら先生の話を聞く。

「えーと....初めてですか?」

「は、はい....」

「話は聞いてますか?」

「は、はい...」

モニターの横に目を移す。
なにかがぶら下がっている。
その黒く長くぶら下がったものこそカメラである。

決して細くはない、人差し指ぐらいはあるだろうか.....

あまかった。

「では最初に言っておきましょう......」

「はい.....」

「言われているほどではありません。」

信じない....だってそれだろ? 太いじゃんか......

「はぁ....」

「いろんな悪い話を聞いてると思いますが、それほどじゃありません...
 ふた通り.....ふた通りの方がいます。」

「はい.....」

「一つはやってる間苦しむ方.....
 もう一つは最初だけ苦しむ方です。」

「は....はい.......」(((゜д゜;)))

どっちにしても苦しむんだよね....大丈夫、わかってた.....わかってたよ.....

「どうしても最初の場所で うぇえ! ってなります。 これは生理機能なので仕方ないのです。」

「はい.....」

「ここで一度止めます。 そこで盛り上がってしまった気持ちを落ち着けてください。
 盛り上がったままだと終わるまで苦しまねばねりません。」

「すうっと落ちつけるんです.....いいですね...? 喉を広げて腹式呼吸にしてください....」

心か...心を試されているのか......
な...なんなんだこの試練は.....


「これがカメラです。」

こちらを向いたカメラは不気味に光っていたのだった....

そう、もうすぐやつは俺の中にはいる。



すまない、まだつづくようだ。

次号本当の最終回!
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