Sat, June 24, 2006

コラム「試合を決めたリケルメの魔法」

テーマ:コラム

W杯も予選リーグを全て終了し、折り返し地点を迎えていますね。

久々の更新となる今回はコラムの紹介となります。

今回のW杯の主役の1人であるリケルメについてのコラムです。

是非多くの人に読んでほしいと思います。


試合を決めたリケルメの魔法


今大会のアルゼンチンを、リケルメ抜きに語ることはできない。

この絶滅危惧種に属する古典的プレーメーカーは、広い視野と多彩なアイデアで、危険なパスを次々に送り出す。

その一方で運動量は少なく、守備も当てにはならない。

前監督のビエルサが、リケルメに見向きもしなかったのにはそんな理由がある。

だからこそ、現監督のペケルマンの決断は注目を集めた。

守備を免除する代わりに、攻撃のすべてをリケルメに託す。

それこそが、ペケルマンが採った戦術だと言ってもいい。

ある意味で、懐古主義的なこの戦術が、成功するか否か。

今大会の注目点のひとつである。

グループCの初戦、リケルメのリケルメたる所以は、早くも発揮された。

24分、左サイドのFKから、リケルメが鋭いボールをニアサイドに送ると、ボールはゴール前にこぼれ、これをクレスポが難なく押し込む。

コートジボワールの攻勢に、さしものアルゼンチンもタジタジになっていた時間帯での、それだけに貴重な先制点だった。

さらに、この試合最大の見せ場となる2点目は38分。

ドリブルで持ち上がったリケルメは、左に流れてきたM・ロドリゲスに一度パス。

そしてリターンパスを受けると、コンマ何秒というわずかな、それでいて決定的なタメを作り、右足でスルーパスを放った。

際どいタイミングで飛び出してきたサビオラは、ジャスト・オンサイド。

きれいにDFラインと入れ替わると、GKの鼻先でボールを突き、ゴールへと流し込んだ。

スルーパスとは、DFとDFの間、いわゆる“門”を通すパスのことだが、このパスを出したリケルメと、受けたサビオラの間に、相手選手は4人。

伝家の宝刀は、実にふたつの門をぶち抜いたのである。

前半を終えて、アルゼンチンが2対0でリード。

スコアほどに、実力にも、チャンスの数にも、差があったわけではない。

だが、限られたチャンスを決定機にまで仕上げるという点で、アルゼンチンが、いや、リケルメが一枚上手だった。

後半に入ると、アルゼンチンはこのまま試合を終わらせてしまえとばかり、自陣からゆっくりとショートパスを回し、時間を費やすことを優先した。

だが、ここにスキが生まれた。コートジボワールは高い位置からプレスを強め、怒涛の反撃に転じると、ついにワールドカップ初ゴールを奪う。

82分、右サイドを抜け出したB・コネのクロスは逆サイドへ流れたが、そのボールをディンダンが拾うと、そのままドリブルでゴールライン際まで持ち込み、グラウンダーで再びクロス。

これをドログバが左足できれいに合わせて2対1とした。

その後も猛攻を仕掛けるコートジボワール。

だが、必死の猛攻も、百戦錬磨の伝統国相手に、前半失った2点は大きすぎた。

アルゼンチンの出場14回、優勝2回に対し、コートジボワールは初出場。

歴史や伝統では到底及ばないが、志向するサッカーは、よりモダンなものであった。

マンツーマン・ディフェンスをベースに、攻撃ではリケルメに頼るクラシカルなサッカーを展開するアルゼンチンに対し、コートジボワールには、攻守両面にモダンな組織的戦術が採り入れられていた。

それでいて、ブラック・アフリカン特有の爆発的なスピードには、前回大会のセネガル以上のインパクトがあった。

しかし、その一方で、決定的に欠けていたものもある。

サイドからドリブルで仕掛けられる選手はいた。

決定力抜群のセンターフォワードもいた。

だが、これらの多彩な武器を最大限に生かし、しっかりと攻撃の道筋を整理してくれるパサーがいなかった。

勝敗の差は、伝統と新興の差でも、クラシカルとモダンの差でもない。

アルゼンチンにはリケルメがいた。

この試合に限っては、それこそが勝敗を分けた最大の要因である。


参考文献 Number   浅田真樹=文

 

守備に全く参加せず、攻撃の時も全力疾走をほぼ全く出さないそのプレースタイルは「1970年代の司令塔」と評されます。

時代錯誤な司令塔が大会のMVPになる可能性は決して低くありません。

そんな時が来た時世界は「時代は繰り返される」という言葉を発することになるでしょう。

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