ばあちゃん。
テーマ:ブログいや、当たり前だけど。
別にばあちゃんが実は四人いて、
それはじいさんの後妻さん二人で、
毎年実家に帰ると激しい遺産争いが
繰り広げられては血を見る、なんてコトはない。
そんなバイオレンス一族の出身ではない、全く。
まぁそれはそれで面白そうだから
一年くらいなら体験してみてもいい気がするけど。
ただただ当たり前の、父方と母方のばあちゃん。
だけど、我が一族のちょっと変わってる点は、
祖父母・父母と、オレの距離が微妙に遠い点にある。
物理的に遠いのもあるし、精神的にやや距離を置いてる感がある。
まぁその辺は一族の恥をさらすコトになるので詳細は黙秘するけど。
だからばあちゃんに会うのは一年に一回あるかないか。
ひどいときは三年間で一度も会わなかったり。
でも、オレは物心ついたときからそういう環境で育ったから、
親戚づきあいってのはそんなもんだと思ってた。
小さい頃は一年に一回くらい会って、
その度にお小遣いをもらって、
オモチャを買ってもらって、可愛がってもらってた、と思う。
でも悲しいかな、オレはずっと敬語だったけど。
今になって振り返ってみると、
孫に敬語を使われるって相当ツラかったろうなぁ、ばあちゃん。
とにかく、オレにとって祖父母ってのはそんなもんだった。
ばあちゃんと会うコトはオレにとって、
カモがネギしょってやってきた、的な
ものスゴく特異なデキゴトだったし、それは非日常だった。
で、父方のばあちゃんが、去年の9月に死んだ。
父方のじいちゃんはオレが小学3年生のときに死んでたから、
最後に残った父方の血縁的ルーツがなくなったワケだ。
ただでさえ精神的な距離を感じている父方のばあちゃんとは、
家が遠いのもあって結局死ぬ前の三年くらいは
一切会うコトがなかった。
正直オレの日常に父方のばあちゃんは存在してなかったし、
オレの意識に父方のばあちゃんが上がってくるコトは絶無に近かった。
だからばあちゃん死亡の一報を聞いたトキ、
「ふ~ん。」としか思わなかった。
で、シゴトを早引きして取り敢えず数年振りの、
父方の実家に駆け付けたワケだ、押っ取り刀で。
数年振りの親戚一同との再会も、
もはやオレの中では事務的な作業のひとつでしかなく、
「元気にしてたか?」「はい」という無味乾燥なやりとりを
ただただ繰り返す、儀式以上に儀式的な親戚づきあい。
いざ通夜・葬式が始まると父も母も、
そして当然ながら親戚一同も、
雨季の東南アジアかアマゾンのスコールか。
残暑が厳しかったのもあって、
体中の穴という穴から水分を、ね。
オレは、それを冷めた目で遠くから眺めて、
と、そこまで空気が読めない男でもないよ。
そりゃもちろんオレの父を生み育てた人だから、
オレのルーツがそこにあるワケだから、
“悲しい”という気持ちは当然あったよ、ホントに。
だけどそれは、やっぱりどこかで冷めた感情だったのも事実で。
知識としての“人が死んで悲しい”という感情を
正確にトレースしているような、そんな感じ。
正直、そんな感情しか持てないジブンの方が悲しかった。
人が死ぬってコトは、それはもう重大事であって
脇目も振らず人目も憚らず泣きわめいても可笑しくない。
大の大人が、だよ?
だけどオレは、涙の一滴どころかにじみさえしない。
大人になってどこかに人間らしさを置き忘れてきたんじゃなかろうか。
父方のばあちゃんがいなくなった事実より、
ジブンに対する失望と不安の方が大きかった、気がする。
で、そんなジブンを嘆いていたら出棺の時刻。
妙に小さく見える棺桶を男四人で葬儀場から霊柩車へ運び、
チャーターしたマイクロバスで火葬場へ向かう手はずだった。
なぜか棺を運ぶ男衆に指名されたオレは、
(軽いなぁ、ばあちゃん)とか思いながら棺桶を霊柩車に入れる。
係の人が(バンッ)と霊柩車の後部ハッチを閉める。
それを見届けたオレは、車寄せの後ろに止めてある
マイクロバスへ足早と向かう。
(今日は妙に眩しい)
何の気なしにそう思って、オレはふっと空を見上げた。
青。
今まで見てきたどんな青空よりも、青。
今まで見てきたどんな空よりも、高い。
抜けるようなとはよくいったもので、
そのまま宇宙まで抜けるんじゃないかと思える見事な青空が、
車寄せと向かいのビルの隙間から見えた。
次の瞬間。
オレの両の眼から、しょっぱいぬるま湯が溢れ出た。
誰も住まなくなって打ち捨てられた家の、
数十年も固く閉じられた蛇口が水圧に負けて、
一気に錆びだらけの赤茶けた水を吐き出すように、
オレは泣いていた。
ばあちゃん、ホンマにゴメン。
ホンマにゴメン。
ほったらかしにして、ホンマにゴメン。
気ぃ使わせて、ホンマにゴメン。
最後まで優しくしてくれて、ホンマに有難う。
オレ、最後の最後まで、
ダメな孫やったなぁ。
オレ、ホンマにダメな孫やったなぁ。
でも、オレ、生きてるよ。
一生懸命生きてるよ。
頑張って生きてるよ。
だから、バイバイ。
九ヶ月遅れの、弔辞を送るわ、ばあちゃん。
バイバイ、ばあちゃん。






