環境省は21日、新潟県佐渡市で放鳥されたトキのペアが、卵を温める「抱卵」行動を中断したと発表した。長時間巣を離れており、卵はふ化しないとみられる。今春のひな誕生が期待されていた最後のペアで、34年ぶりの「2世誕生」は絶望的となった。絶滅した動物を野生復帰させる難しさが浮き彫りになった。

 このペアはともに09年に放鳥された4歳の雄と2歳の雌で、27日以降にふ化の時期を迎えると予想されていた。しかし、20日午前7時50分ごろ、雄が離れ、同日午後以降は雄と雌がともに巣に戻らないままになっている。

 一方、環境省は21日、カラスに襲われ巣から離れたペアが別の場所に再び巣を作っているのを確認したと発表した。もう1組の営巣も確認されているが、いずれも産卵は観察されていない。

 佐渡では3月中旬以降、5組の営巣が確認。このうち4組の卵は親鳥が捨てたり、カラスに奪われたりして、いずれも繁殖に失敗した。環境省は「繁殖期が終わりに近づき、今期の繁殖の可能性はほとんどない」としている。

 トキは戦後、乱獲で激減し、03年に国産が絶滅した。中国から贈られたトキで人工繁殖を始め、08年から野生復帰を目指し放鳥が始まった。【磯野保、畠山哲郎】

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 卵がふ化しなかったのは、無精卵だったか有精卵だったとしても初期の段階で発育が止まったためとみられている。放鳥されたペアがいずれも2~4歳で、人間では10~20代に当たる。交尾に不慣れなどの理由で、無精卵である確率が高く、抱卵もまだうまくできないという。

 佐渡トキ保護センターで07~09年に産まれた卵288個のうち、有精卵は半数の146個。野生復帰に成功している中国では、人工飼育後に放鳥されたトキの方が野生で育ったトキよりひなが巣立ちつ成功率は低い。

 外敵の問題もある。今月10日に巣を襲ったカラスは2羽いて、1羽がトキの注意を引きつける間に、別の1羽が巣にある卵をつつくという巧妙な手口を使った。永田尚志新潟大准教授(鳥類生態学)も「外敵対策をトキに学んでもらうしかない」と話す。

 それでも、トキを一斉に飛び立たせ群れさえできなかった08年の初放鳥に比べると、今期は放鳥方法の改善などで4組が抱卵まで進んだ。2015年までに60羽の定着を目指す環境省にとって前進だ。山階鳥類研究所の尾崎清明副所長は「野生のトキが約30年間いなかった地域で、餌や営巣できる木があることを確認できた。この経験を生かすことが重要だ」と話す。【畠山哲郎、足立旬子】

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