【法廷ライブ 秋葉原17人殺傷 第10回】(1)

 《東京・秋葉原の無差別殺傷事件で殺人罪などに問われた元派遣社員、加藤智大(ともひろ)被告(27)の第10回公判が25日午前10時、東京地裁(村山浩昭裁判長)で始まった》

 《今回の公判では、別の被害者を救護中に加藤被告に刺され、重傷を負った警察官らに対する証人尋問が行われる》

 《前回の公判では、凶器のダガーナイフと警棒の激しい打ち合いの末、加藤被告を取り押さえた警察官が出廷。加藤被告に次々刺された被害者が「みんな、ひざから崩れるように倒れた」「私の胸に向かって突き刺してきた」と緊迫した様子を証言した》

 《降って沸いた惨事の中、必死に被害者を救護していた最中に襲われ、自ら重傷を負った警察官は、法廷で何を語るのだろうか》

 《法廷は、前回同様、東京地裁最大の104号法廷だ。午前から夕方にかけ、警察官のほか、別の被害者1人と目撃者3人の証人尋問が行われる予定だ》

 裁判長「それでは被告が入廷します」

 《午前9時58分、加藤被告が向かって左側の扉から法廷に入った。黒いスーツに白いワイシャツ姿。いつもと変わらない。一度立ち止まり、被害者や遺族が座る傍聴席に頭を下げ、裁判官席に向かっても一礼した。青白い顔から感情は読み取れない。弁護人席の前の長いすに座った》

 裁判長「それでは開廷します」

 《村山裁判長が午前中に2人の証人尋問を行うことを告げた》

 《起訴状によると、加藤被告は平成20年6月8日、秋葉原の交差点にトラックで突っ込み、3人をはねて殺害。さらにダガーナイフで4人を刺殺したほか、10人にけがを負わせたなどとされている》

 裁判長「それでは、甲号証の取り調べを行いたいと思います」

 《裁判長が、検察官によって当時、秋葉原を管轄する万世橋署交通課に勤務し、加藤被告に刺され、重傷を負った○○警部補の供述調書が読み上げられることを説明する》

 検察官「私は、万世橋署交通課に勤務し、長男が独立したため、妻と長女の3人で暮らしていました」

 《20年6月8日当日、○○警部補は、秋葉原の歩行者天国の交通整理と取り締まり勤務中に車に人がはねられる音で交差点に駆けつけ、人を救護中に男に背中を刺されたという》

 検察官「一時は心肺停止状態になり、あやうく命を落としそうになりました。奇跡的に一命を取り留めましたが、(重傷を負い)脳が低酸素状態になった影響で、記憶が抜け落ち、思いだせないことが多くあります」

 《検察官は○○警部補が事件で受けた影響の大きさを淡々と読み上げていく》

 《○○警部補は昭和48年に警視庁警察官を拝命し、18年から万世橋署に勤務。20年4月から交通課交通執行第1係統括係長を務めていた》

 《“オタクの聖地”と称される秋葉原。歩行者天国では、アニメのコスチュームに身を包んだ若者や女装した男性、音楽バンドが独特の「パフォーマンス」を繰り広げることが多くなり、歩行者の妨げになった場合に取り締まるのが○○警部補の任務だった》

 《日曜日に当たる事件当日の6月8日もいつものように家を出て電車に乗って署に向かった》

 検察官「4月からずっとやっていた仕事でいつもと同じことをするだけと思いました。危ない目に遭うかもしれないと思ったことはただの一度もありませんでした」

 《当日は女性巡査と取り締まりに当たった。○○警部補は制服姿だった》

 《○○警部補が当時着用していた制服について説明していた検察官は、その後の○○警部補の供述調書を大幅に読み飛ばした。弁護側が「不同意」とした部分のためだ》

 検察官「記憶があるのはストレッチャーで運ばれるところでした。道路の血だまりが目に入りました。サッカーボールぐらいの真っ赤な血だまり…」

 「自分からこんなに大量の血が出たんなら『ああ、終わりだな』と思いました。このまま死んでしまうんだなと。病院に着いたのも思いだせません」

 《その後、○○警部補が気づいたときにはICU(集中治療室)の中で、鼻や口には何本ものチューブがつながれていたという》

 検察官「妻と筆談しようとしましたが、字が書けませんでした。これでは、仕事もできないなと思い、涙が出ました。『何でおれがこんな目に遭うんだ。何でおれが…』と悔しかった。そして意識を失いました」

 《○○警部補は7月31日にようやく一般病棟に移されたという》

 検察官「チューブを外してもらい、久しぶりに自声を出した。他人の声みたいでしたが、話せるようになってうれしかった。そのとき、おなかの傷に気づいて『何の傷かと』妻に尋ねました」

 《妻から手術の跡だと聞かされる。傷は左の肺に達しており、手術中に心配停止状態に陥ったという。左肺の半分を切除して一命を取り留める。偶然、その日、肺の外科手術を予定していた医師がおり、緊急手術が可能だったことも聞かされた》

 検察官「刃物が数センチずれていたら心臓に達して即死だった。幸運が重なった結果で、本当に運がよかったんだなと思いました」

 《供述調書は事件から約2カ月後の8月15日に作成されたものだという》

 検察官「脳が低酸素状態になった影響で四肢のまひが残りました。将来どうなるか心配です。今は入院中ですが、人ごみに出たときを想像すると、男が走ってきて刺すのではないかと怖くてたまりません。ずっと付き添ってくれた妻と長女には、申し訳なく、そして、ありがたく思います」

 《供述調書は、○○警部補の加藤被告への思いの部分に差し掛かる》

 検察官「加藤被告には、なぜ警察官の制服を着た人間を襲ったのか。警察官と知った上で、これ幸いに刺したのか聴きたい。私は警察官として人を救護していただけ。その見ず知らずの私を後ろから刺した。悔しくてたまりません」

 「7人もの尊い命が奪われました。何の関係もない、罪もない人たちでした。私は幸運に恵まれたことしか違いがありません」

 「警察官として更生が重要と考えてきましたが、警察官の前に一人の人間として加藤被告がにくい。加藤被告は亡くなった方、残された方のことを考えたことがあるのかといいたい」

 《加藤被告は、現場に駆け付けた別の巡査部長に最終的に拳銃(けんじゅう)を突き付けられ、ようやくナイフを手放し、逮捕されたとされる》

 検察官「加藤被告は死ぬのが怖かったからでしょう。死ぬのが怖い人間がどうしてこんなにたくさんの命を奪ったのか。加藤被告は厳罰に処していただきたい。厳罰とは死刑しかありません。でないと亡くなった方が浮かばれません」

 《検察官による○○警部補の供述調書の読み上げが終わった。次に○○警部補本人が法廷に姿を見せた。スーツ姿で白髪が混じる。しっかりした歩き方で証言台に着いた》

 《宣誓の後、男性検察官が質問を始める》

 検察官「平成20年6月8日、秋葉原の交差点で刃物で刺される被害に遭っていますね」

 証人「そうです」

 《はっきりした口調で答える。加藤被告は視線を少し落としたまま、身じろぎもしない》

 =(2)へ続く

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