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気が付いたらそこは電車の中だった
いつも乗るような電車と特に変わったものはなく、ただ一つ通路の幅が狭いくらいだった
8人掛けの座席が向かい合わせに並んでいるけど、その席の両方のつり革を掴み1人ずつ立っていたなら、その間を通れるのは1人がやっとかもしれない
古い電車というより、もう壊れてしまいそうなくらいの雰囲気で車内を照らす蛍光灯は半分以上がついていない
外が真っ暗だったせいもあり、もうすぐ球切れしそうな点滅を繰り返す薄暗い灯りが妙に不気味だった
隣にはおばあさんが座っていた
正確に言うと終電によく居る酔っぱらいみたいな感じで体を反らす様な形をし、電車が混んでるにも関わらず向かい席の人まで届くくらい足を伸ばし、静かに眠っていた
頭は白髪で年は多分90~100歳くらいのかなりのおばあさん
服装はとても綺麗なのに、よくみると髪はボサボサでその綺麗な洋服には小さな虫がいっぱい付いていた
気分が悪くなり、ほんの少し軽く立ち上がりまた同じ位置に座るくらいの距離をとった
いつの間にか眠ってしまった様で、左腕に違和感があり目が覚めた
先ほどまで眠っていたおばあさんは背中を丸め普通に座っていた
そこで初めておばあさんの顔を見たら日本人ではなかった
しばらく電車に揺られていると、左腕に何かが当たった
おばあさんのひじだった
それは偶然当たってしまったのではなく、誰が見ても故意にやってる様にしか思えなかった
何度も当てられるひじに何も言うことが出来ず次にやられたら何かしようと思い、おばあさんのひじを軽く振り払った
その瞬間おばあさん、いや老婆の顔が一気に鬼の血相に変わり憎しみに溢れた様な目でこちらを睨んできた
目を合わせてはいけない、たちまちそんな衝動に駆られ下を向いた
悪い事なんて何一つしていない
この電車といい、意味の分からない老婆といい、気味が悪い
次の駅で降りよう、そう思った時ある事に気付いた
1時間以上この電車に乗っているはずなのに一度も駅に止まっていない
おかしい
気付いた時にはもう遅かった
もう二度と誰にも会えない
恋人にも会えない
そう思うと紙とペンを握りひたすら今まで伝えたかったことを書いた
まだやりたいことがいっぱいあった
やり残したことも、あの時うまく伝えられなかった気持ちも、あの時言った言葉を本当は今でも後悔してるということも全部
心のどこかで、まだ帰れると思った
だけど気付いたらペンを握りひたすら書き続けていた
頭ではわかっていても体が違うことをする脳が反応してしまう
いつまでも書き終わることが出来ず、気がおかしくなりかけた時、老婆がペンを奪い辞めなさいと言った
初めて耳にした老婆の声はこの世の人のものだと思えなかった
周りの乗客は哀れんだ目で老婆を見ている
その視線が老婆にではなく、自分自身へのものだと気付きもしなかった
もとに戻ったら、まず恋人に会おう
あたたかいベッドで眠ろう
川沿いを散歩して日向ぼっこをしよう
そう思うと一気に緊張の糸が解けた様に楽な気持ちになれた
最初から存在していなかった
やり残したことも
伝えたかった言葉も全部
もう遅いと手遅れだと間に合わないのだと全てを悟った時、涙が溢れた
2012/03/23 15:45 お昼寝の夢


