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2016-09-23 21:11:33

グリーンランド  地球温暖化の「恩恵」で、将来的には独立も

テーマ:環境

グリーンランド

(【1月25日 AFP】 厚い氷床が融解し、文字どおりの“グリーンランド”になる日も・・・その時世界は・・・)

【世界最大の貯水槽 想定を上回るペースで進むグリーンランド氷床の融解】
地球温暖化が人類の生存・生活に及ぼす影響は様々なものがありますが、一番わかりやすいもののひとつが海面上昇とそれにともなう水没する国々・都市でしょう。

この世界を水浸しにしてしまう大量の水の供給源“貯水槽”となっているのがグリーンランドを厚く覆う氷です。

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沈みゆく国あれば、上昇する国あり****
グリーンランド住民の誰のせいでもないが、おそらくモルディヴ諸島は消滅するだろう。ツバル諸島も消滅するだろう。キリバスも、マーシャル諸島も、セーシェル諸島も、バハマ諸島も、カーテレット諸島も。

バングラデシュは少なくとも国土の5分の1を失うだろう。フィリピンのマニラ、エジプトのアレクサンドリア、ナイジェリアのラゴス、パキスタンのカラチ、インドのコルカタ、インドネシアのジャカルタ、セネガルのダカール、ブラジルのリオデジャネイロ、アメリカのマイアミ、ヴェトナムのホーチミンの大半も水没するだろう。

これらの土地を水浸しにするだけの水量が、世界最大の貯水槽であるグリーンランドの氷床(島の81パーセントを覆う内陸部の氷の塊)に貯えられている。

1996年以来、氷床が解ける割合は毎年7パーセントずつ増している。いつの日か完全に解けてしまったら、世界の海面は6メートル以上上昇する。(マッケンジー・ファンク著『地球を「売り物」にする人たち』74-77ページより抜粋)【3月23日 ダイヤモンド社書籍オンライン】
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具体的な数字については誰も正確なところは知りえませんので、様々な研究・報告があります。

“国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が発表した最新の報告書は、この(海面上昇)の数字を約12センチとしている。これはすべて、西南極氷床(West Antarctic Ice Sheet)と呼ばれる比較的狭い区域の融解によるものだ。また、水温上昇に伴う海水の膨張や、氷河やグリーンランドの氷床の融解などを含むあらゆる要因を考慮したとしても、今世紀末までに海面の総上昇値が1メートルを超える可能性は低いとも”【3月31日 AFP】

ただ、グリーンランドの氷床の融解がハイペースで進んでいることが多くの研究で報告されています。

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未来の海面上昇、100センチは不可避 NASA****
地球温暖化による海面上昇についての最新データが示しているのは、今後100~200年間で100センチ以上の上昇が起きるのは避けられないということ──。米航空宇宙局(NASA)の科学者チームが26日、このような発表を行った。(中略)

研究チームは特に、グリーンランド(Greenland)の氷床に注目している。この氷床からは過去10年間にわたって年間平均3030億トンの氷が流出した。また、南極氷床からも年間平均1180億トンの氷が失われている。

だが、氷床の崩壊はこれまで一度も確認されていないため、海面がいつ大幅に上昇するかという問題は大きな謎になっている。(後略)【2015年8月27日 AFP】
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グリーンランド氷床の融解速度、近年倍増 観測研究****
デンマーク領グリーンランドの氷床では、2003年~2010年の期間に、20世紀全体のペースの2倍の速さで質量が失われたとの研究結果が16日、発表された。氷床の融解は、陸地を浸食する海面上昇の重大な一因となる可能性があるとされている。(中略)

この研究論文にについて、ネイチャー誌の要約記事では「最近観測された、グリーンランド氷床の質量消失量の増加と、その結果として生じた海面上昇の加速は、小氷期以降で初の現象と思われると、論文の執筆者らは説明している」とあり、また「観察される質量消失と海面上昇の全体的傾向は、当分の間継続する可能性が高いことを、論文執筆者らは示唆している」とも記されている。【2015年12月17日 AFP】
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グリーンランドの気温が過去最高に、氷床の融解進む****
デンマーク領グリーンランドの気温が今夏、観測史上最高を記録した。デンマーク気象研究所(DMI)が13日、発表した。氷床の一部は例年よりもかなり早い時期に融解を始めており、北極圏の温暖化が続いていることを示す新たな証拠とDMIは述べている。(中略)
 
グリーンランド氷床の融解は海面上昇の大きな潜在的要因。2003~2010年の間だけで、20世紀全体のペースの2倍の速さで氷床の質量が失われている。【9月14日 AFP】
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グリーンランドの氷床融解、推定より7%速いペース 研究****
デンマーク領グリーンランドの氷床がこれまで考えられていたより約7%速いペースで解けていることが、科学者らが今週発表した研究論文で明らかになった。
 
米科学誌「サイエンス・アドバンシズ」に掲載の論文は、南極に次いで世界で2番目に大きいグリーンランドの氷床融解による、海面上昇への影響増に懸念を示した。(中略)

論文の主著者である米オハイオ州立大学のマイケル・ベビス教授(地球科学)は、7.6%の違いについて、「かなり小さな訂正」と述べる。その上で「グリーンランド全体の推定消失量が大きく変わるわけではない。だが、氷床内で消失が起きてきた場所、今現在消失が起きている場所についてのわれわれの理解により大幅な変更をもたらす」と続けた。(後略)【9月23日 AFP】
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当然ながら融解がハイペースで進むのはグリーンランドだけでなく、南極も同様です。
“温室効果ガスの排出が現在のペースで続くと、南極の氷の融解によって海水面が2100年までに1メートル上昇する可能性があるとする研究結果が(3月)30日、発表された。これは、海面上昇に関するこれまでの予測値の2倍に相当するという。”【3月31日 AFP】

「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の予測はかなり“控えめ”で、実際はもっとハイペースでより大きな変動が生じつつあるのでは・・・・という見方・懸念が少なくないようです。


【温暖化の「恩恵」で経済成長 将来的には本国から経済的にも自立し、独立も】
そうした温暖化で注目を集めているグリーンランドですが、通常目にする地図ではメルカトル図法の関係でおそろしく巨大な島になっていますが、実際は面積2,166千k㎡ということで、オーストラリアの3分の1以下です。
それでも日本の5.7倍ですから、巨大な島であることにはかわりありません。

この島はデンマーク領ですが、住んでいるのは混血も含めてイヌイット系の人々を中心に5~6万人程度のようです。

“全島の約80%以上は氷床と万年雪に覆われる。巨大なフィヨルドが多く、氷の厚さは3,000m以上に達する所もある。居住区は沿岸部に限られる”【ウィキペディア】と、これまでは大きいだけで経済的利用価値はあまりない島でしたが、温暖化で水没する国々・地域とは反対に、今後その利益を最大に享受しそうな島です。

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温暖化を逆手に経済発展めざせ、グリーンランド****
地球温暖化を食い止めようと世界が奮闘を続けるなか、グリーンランド(デンマーク領)では気温や海水温の上昇を新たな漁業や輸出拡大、農業技術の革新につなげようとの動きがある。

■多様化する漁業
北極海と北大西洋の間に位置するグリーンランドでは、輸出の大半を地元で「ピンク・ゴールド」と呼ばれるエビに頼ってきた。だが海水温の上昇に伴い、ほかの種類の魚もとれるようになったのだ。(中略)
 
いまやグリーンランド東部の漁師たちは、夏になれば地中海やメキシコ湾で産卵を終えて北上してきたサバやタイセイヨウクロマグロを水揚げする。
これは、(中略)高齢化を支える歳入増を求めているヌークの自治政府にとっては新たな輸出機会をもたらすものだ。
 
デンマーク技術大学のブライアン・マッケンジー海洋生態学教授は「今世紀も夏の気温上昇が続けば、グリーンランド東部沖では毎夏クロマグロが回遊するようになるだろう」と予測する。(中略)

■温暖化で農業が豊かに
その一方で、氷床の融解がもたらす利点もある。氷で削られてできる「岩粉」はミネラルが豊富で、肥沃な土地に恵まれない国々で農業に役立てることが可能だ。グリーンランドの人々にとっては厄介でしかない岩粉だが、アフリカや南米に輸出すれば岩粉の養分が不毛な土地を豊かな農地に変えてくれる。
 
さらに温暖化はグリーンランドの農業にも恩恵をもたらす。グリーンランド南部では夏季の気温が上がったことでジャガイモの生産量が増え、将来的には輸出を見込んだ生産規模の拡大がのぞめそうだ。(後略)【1月25日 AFP】
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漁業や農業も今後拡大が見込めますが、もっと手っ取り早い“経済的価値”は豊富な地下資源の開発が可能となりつつあることです。

現在は“1979年5月に自治政府が発足し高度な自治権を獲得した。2008年11月、グリーンランドで自治拡大を問う住民投票が行われた。開票の結果、賛成75.54%、反対23.57%で承認された。”【ウィキペディア】と、自治権を有する自治政府が統治していますが、経済的には本国デンマークからの補助金に依存しています。

しかし、地球温暖化の影響で氷が解け出しており、これまで厚い氷に覆われ採掘が困難であった地下資源の採掘のスピードが速まると期待されています。

その“取り分”については本国デンマークと協定があり、将来的な「独立」も視野に入っているようです。

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気候変動の「恩恵」に沸くグリーンランド****
・・・・陸地では氷河が後退して、亜鉛、金、ダイヤモンド、ウランの巨大な鉱床が現れつつあった。

彼らは採掘によって自らを解放するつもりだった。デンマークとの協定では、グリーンランドは最初の1500万ドルの取り分を除いた鉱物資源収入をデンマークと折半することになっている。

収入が増えるにつれ、現在6億5000万ドル交付されているデンマークからの補助金は削減される。最終的には5年から10年、あるいは15年から20年で、温暖化が進んで生産量が増えれば補助金はゼロになり、グリーンランドは晴れて独立を宣言する。【3月23日 ダイヤモンド社書籍オンライン】
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“グリーンランドの地下には中東地域に匹敵する量の原油が存在する”【ウィキペディア】とも。
それら以外にもいろいろ。

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世界大手のアルミニウム・メーカーのアルコアが建設し、島の豊富な川の水を使った水力発電で稼働させる、処理能力が年36万トンの世界最大のアルミニウム精錬所の計画が立てられた。

2隻の船が、デンマーク海峡を横断する高速インターネットケーブルの敷設を終えたばかりだ。これによって、グリーンランドからアイスランドまで、さらには北アメリカまでつながった。

また、安価な電力と高緯度という長所を利用して、サーバーファーム(グーグルやシスコやアマゾン向けのコンピューター・プロセッサーを収めた施設)を設置する計画もあった。「普通こういう施設には大規模な空調が必要です」とミニックは説明した。

解ける氷そのものを利用する計画まであった。水の輸出だ。「グリーンランドの氷床は推定170万立方キロメートルで、世界最大の貯水槽です」と、氷・水資源事務局のウェブサイトは豪語していた。投資家は「200万年の歴史の詰まったボトル!」を売ることができる、と。【同上】
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あれもこれも・・・今後急速にグリーンランドは様変わりしそうな勢いです。
環境保全の問題もあるでしょうが、この勢いは止まらないのでは。


【「パリ協定」からのアメリカの脱退を公約するトランプ候補】
グリーンランドほどドラスティックではないにしても、全世界の多くの地域で、これまで利用されてこなかった土地の利用価値が高まったり、あるいは逆に利用できなくなったりという変化が起きるでしょう。大変なことです。

世界中の英知を集めて対応していく必要がありますが、アメリカではトランプ候補が「パリ協定」からの脱退を公約しています。

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「パリ協定離脱すれば環境に深刻な影響」 科学界がトランプ氏非難****
温室効果ガスの削減に向けた新たな国際枠組み「パリ協定」からの米国の脱退を公約した米大統領選の共和党候補、ドナルド・トランプ氏を非難する書簡が公開され、これまでに世界各地の科学者400人近くが署名した。書簡は、同氏が当選すれば環境に深刻な影響を及ぼしかねないと警鐘を鳴らしている。
 
20日にウェブサイト「responsiblescientists.org」に投稿された公開書簡は「(パリ協定から離脱する)『パリグジット』が現実のものとなれば、人間が引き起こす気候変動という地球規模の問題に米国は留意しないという明確なメッセージを送ることになる」と指摘。

「この世界的な枠組みから脱退すれば、地球の気候にとっても米国の国際的な信頼にとっても、長期にわたって厳しい結果がもたらされるだろう」と警告している。
 
書簡には既に世界中の科学者375人の署名が集まっており、世界的に有名な英宇宙物理学者スティーブン・ホーキング氏や、ノーベル物理学賞の受賞者でもあるスティーブン・チュー前米エネルギー長官らも名を連ねている。
 
トランプ氏は、米科学誌サイエンスの出版人から気候変動について見解を問われた際、この分野では「調査すべきことがたくさんある」と述べるにとどめ、代わりに浄水計画や食料増産、マラリアなどの病気撲滅のために資金を拠出する可能性に言及した。
 
一方、民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官は「科学は非常に明白だ。気候変動は差し迫った脅威であり、われわれの時代に取り組むべき課題だ。その影響はすでに世界中の家庭で感じられている」と答えている。
 
2015年に仏パリで開催された国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第21回締約国会議(COP21)では、出席した約190か国の首脳らが気候変動は危機であり、解決する必要があるとの認識で一致している。【9月22日 AFP】
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困ったことに、トランプ候補勝利の可能性が次第に大きくなる流れにあります。
当初は“泡沫”と見られていましたが共和党候補者を手中に。どうせクリントン候補には勝てない・・・と言われていましたが、それも怪しくなっています。

エリート科学者が何を言おうが、そうしたエスタブリッシュメントに背を向けるトランプ候補支持者には全く響かないでしょう。

パリ協定からは離脱、「聡明で有能」と評価するプーチン大統領と協調し、東アジアは中国にまかせてアメリカ国内に専念する、世界各地の人権問題などおかまいなし・・・・アメリカ国民が選んだ大統領でアメリカがどうなろうが自業自得ですが、世界まで道連れにされるのは困った話です。

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2016-07-29 22:39:06

シベリア炭疽菌感染が示す温暖化による永久凍土融解の危険性 温暖化問題に否定的なトランプ氏

テーマ:環境


炭疽菌
(【7月29日 CNN】)

【75年前に死んだトナカイの凍結死骸が暑さで解けて・・・・】
TVのニュースで、なんの話題だったかは忘れましたが、ロシアの軍幹部の会議の様子が放映されており、出席者が「クールビズ」のような半そでの軍服姿だったのが印象に残りました。

ロシアも暑いのだろうか・・・・と、暑さでぼんやりした(別に、暑くなくても同じですが)頭で考えていたのですが、あの永久凍土のシベリアでも35℃を記録する異常な暑さが観測されているそうです。

凍土が暑さで溶けると、中からはいろんなものが出てきます。
なかには危険なものも。例えば「炭疽菌」とか。

****トナカイの死骸から炭疽菌感染か、13人入院 シベリア西部****
ロシアのシベリア西部で炭疽菌(たんそきん)の感染が広がり、ヤマロネネツ自治区の当局者によると、28日までに13人が入院した。ロシア農務省の専門家は、75年前に死んだトナカイの凍結死骸が暑さで解けて感染源になったと推定している。

同地ではこの1カ月あまりでトナカイ1200頭が死に、当局は当初、熱波が原因と見ていた。この1カ月の最高気温は35度と、同地としては異常な暑さを観測していた。

しかし詳しく調べた結果、トナカイの死因は炭疽菌だったことが確認された。

入院した患者が炭疽菌に感染しているかどうかはまだ確認されていない。しかし感染を想定して抗生剤を使った治療を受けているという。

専門家は、炭疽菌に感染したトナカイの凍結死骸が暑さのために解け、熱波で弱ったトナカイがそれを食べて、遊牧民にまで感染が広がったと推測する。

ロシアの専門家によると、同地で炭疽菌の感染が広がったのは1941年以来。1968年以降は感染事例は確認されていなかった。

米国立衛生研究所の専門家によると、炭疽菌には切り傷などから胞子が入り込む皮膚感染と、食肉に起因する胃腸感染があり、皮膚感染の場合はおよそ5~10%の確率で死亡する。胃腸感染の場合、死亡率はもっと高いという。

ヤマロネネツ自治区の人口約50万人のうち、1万5000人は遊牧民として生活する。当局はウラル北部のヤマル地区で、遊牧民世帯を集団で避難させた。

当局は9月まで隔離を続け、住民や家畜に現地で検査を受けさせたりワクチンを接種するなどの対応を進めるほか、近く動物の死骸の回収と焼却に乗り出す方針。【7月29日 CNN】
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炭疽菌は生物兵器や2001年のアメリカ炭疽菌事件が連想されます。
実際、旧ソ連のスヴェルドロフスクの生物兵器施設では、1979年の4-5月にかけ、人為的ミスによる炭疽菌の漏出事件が発生し、周辺住民96名が感染、うち66名が死亡するという「事故」が起きています。

当時は冷戦時代で、当然のように「事故」は隠蔽されていましたが、1992年、ロシア連邦のエリツィン大統領が軍の炭疽菌によるバイオハザード(生物学的危害)であったことを公的に認めています。【ウィキペディアより】

炭疽菌にはそういった負のイメージがつきまといますので、今回も・・・と思ってしまいますが、炭疽菌自体は世界中で分離される普遍的な自然環境の常在細菌ですので、特段の「裏」はないでしょう。

炭疽菌が生物兵器に利用されるのは、生育環境が悪化すると芽胞を形成し、芽胞は熱や化学物質などに対して非常に高い耐久性を持つという特性もあってのことでしょうが、今回も“75年前に死んだトナカイの凍結死骸が暑さで解けて感染源になった”とのことです。

【永久凍土から未知のウイルスが出現する危険性も】
シベリアの永久凍土からは、もっともっと古い「危険物」も出てきます。

****シベリアの永久凍土で発見された3万年前の巨大ウイルスを蘇生させる研究を開始(フランス****
少なくとも3万年前のものと思われる太古のウイルスが、シベリアの永久凍土の氷床コアから発見された。

そこでフランスのエクス=マルセイユ大学のジャン・ミシェル・クラブリー教授率いる研究チームはこの巨大ウイルスを蘇生させる計画を発表した。どんな危険性が潜んでいるのかを見極めるためだ。

古代のウイルスが発見されたのは、後期更新世の堆積物の30m下においてだ。モルウイルス・シベリカムと名付けられた本ウイルスは、2003年以降に発見された先史時代のウイルスとしては4種類目で、同チームによる発見はこれで2個目となる。直径0.6ミクロンのモルウイルス・シベリカムは巨大ウイルスの仲間入りを果たした。

研究者は研究チームはウイルスを蘇生させる際、動物や人間に病気を引き起こす可能性がないことを事前に検証する必要がある。
 
永久凍土が溶け始め危険なウイルスが広まる可能性
クラブリー教授によれば、シベリアは危機に晒されているという。1970年代以降、永久凍土は縮小を続け、厚みも失われてきた。気候変化からも、今後一層の縮小が予測される。

また、同地域はアクセスも容易になっており、天然資源需要から注目を集めるようにもなってきた。クラブリー教授は、深い部分の層が露出すれば、危険な新種ウイルスが広まる可能もあると懸念する。

「 大災害のレシピです。商業的な採掘が開始されれば、永久凍土の層が各地に運搬されます。鉱業などによって、そうした古い層に穴が開けられます。危険なのはそこです」

クラブリー教授は、30年前に根絶が宣言された天然痘ウイルスが復活することもありうると語る。そうしたウイルスが、モルウイルス・シベリカムと同じ方法で生き残っているのであれば、天然痘は根絶されたのではなく、表面から消えただけということになる。深く掘り進めることで、天然痘が現代に蘇る可能性を高めることになる。

研究チームは、安全な実験室条件の下で、宿主となる単細胞アメーバと同じ環境に置くことで、このウイルスの蘇生を試みる予定だという。

クラブリー教授率いる研究チームは2013年、今回と同じ場所でピソウイルス・シベリカムと呼ばれる別種の巨大ウイルスを発見し、シャーレ内で蘇生させることに成功している。

この時は、ピソウイルス・シベリカムのアメーバへの感染が確認されているが、人間や動物に対して感染力はなかった。【2015年09月16日  カラパイア 
http://karapaia.livedoor.biz/archives/52200794.html
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なお、上記巨大ウイルスに関しては、フランスの研究チームによる蘇生の結果、人や動物には感染しないが、特定の微生物には感染しその細胞内で増えることが確認されたそうです。

今後、温暖化の影響で永久凍土が溶けたり、北極周辺などで原油採掘が進んだりすると、未知のウイルスが出現する危険性が高まると科学者らは警告しています。

大好きな「パンデミック」映画にありそうなシチュエーションですが、十分に現実性もありそうです。
永久凍土の変化が急速に進んでいることは、日本の研究機関によっても報告されています。

****シベリアの永久凍土の乾燥化進む 急激な温暖化が一因****
海洋研究開発機構(JAMSTEC)などの共同研究グループが、シベリアの永久凍土の乾燥化が進み、その一因がこの地域の急激な温暖化によるものであることを明らかにした。

温暖化の影響が北極周辺に広く及んでいることを裏付ける研究成果で、論文はこのほど英科学誌に掲載された。

JAMSTEC地球表層物質環境研究分野と名古屋大学宇宙地球環境研究所などの共同研究グループは、米航空宇宙局(NASA)とドイツ航空宇宙センター(DLR)が2002年に打ち上げた「重力観測衛星」のデータな
どを使って02年4月から15年8月までの北極海沿岸のシベリアの永久凍土地帯の土壌、湿地や湖沼などに含まれる水の量(陸水貯留量)を分析した。(後略)【5月6日 Science Portal】
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【永久凍土の融解が進めば温暖化は加速】
永久凍土から出てくる「危険物」はウイルス・細菌だけではないことは、2015年8月25日ブログ“温暖化 アメリカ西部が「メガ干ばつ」へ ロシア・シベリアでは永久凍土融解でメタン放出”http://ameblo.jp/azianokaze/day-20150825.html でも扱ったことがあります。

先住民族ネネツ人の言葉で「世界の果て」を意味するロシア・西シベリアのヤマル地方の地平線まで広がるツンドラの平原に、突如月面のクレーターのような巨大な穴が出現し話題となりました。

穴は直径約37メートル、深さ約75メートルもあり、その後も同様の穴の報告が相次ぎ、(当時で)4個が確かめられています。

原因については、研究者の間では「永久凍土が溶け、メタンガスの圧力が地中で高まって爆発した」との説が有力です。

温暖化によるメタンガス放出は、更に温暖化を加速させるという「厄介者」であることは周知のところです。

****メタンの温室効果、CO2の25倍 温暖化進む恐れ****
永久凍土はシベリアだけでなく、カナダやアラスカなど、北半球の大陸表面の24%に存在する。

温暖化による極地の気温上昇は、世界平均の2倍の速さで進むとされる。国連環境計画(UNEP)が2012年にまとめた報告書によると、今から2100年までに全地球の気温が3度上がれば北極では6度上昇し、地表付近の永久凍土の30~85%が失われる可能性がある。

特に心配されているのが、温室効果ガスの大量放出だ。全世界の永久凍土にあるメタンや二酸化炭素(CO2)の炭素量は、現在の大気に含まれる量の2倍。メタンの温室効果はCO2の25倍ある。どれほどの影響がでるのか、専門家でもまだ見通せていない。

名古屋大学地球水循環研究センターの檜山哲哉教授は「永久凍土の融解が進めば温暖化は加速し、大地や植物だけでなく人間社会にも大きな影響を及ぼす。100年後、1千年後を見通すための研究が必要だ」と話す。【2015年7月19日 朝日】
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今回の「75年前に死んだトナカイの凍結死骸からの炭疽菌感染拡大」の問題は、上記のような永久凍土に潜む天然痘や“未知のウイルス”、あるいはメタンガスが出現するといった危険性が絵空事ではないことを示しています。

【トランプ氏の不可解な確信】
アメリカ共和党大統領候補のトランプ氏はかねてより温暖化問題については否定的で、「パリ協定」不参加を表明しています。

****<トランプ氏>パリ協定「不参加」・・・「時代遅れな規制」****
米大統領選に向けた共和党候補指名争いで、実業家のドナルド・トランプ氏(69)は26日、遊説先で記者会見し、大統領に当選すれば温室効果ガス削減の新たな国際枠組み「パリ協定」への参加を取り消すと表明した。ロイター通信が伝えた。
 
ノースダコタ州で会見したトランプ氏は、パリ協定について「労働者に不利益で国益に反し、時代遅れで不必要な規制は完全に破壊されるべきだ」と、持論を展開した。パリ協定は4月に175カ国・地域が署名。オバマ政権は早期に批准手続きを終える意向だ。
 
パリ協定には「批准国は協定の発効後3年間は脱退を通告することができず、通告しても1年間は脱退できない」との条項が盛り込まれている。

このため、トランプ氏が大統領に就任したとしても、発効していれば任期中は事実上協定から抜けられない。ただし、国連気候変動枠組み条約自体から脱退すれば、4年を待たずにパリ協定からも抜け出ることは可能だ。(後略)【5月27日 毎日】
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最大の温暖化効果ガス排出国であるアメリカと中国の積極姿勢への転換で、ようやく動き始めた世界の温暖化対策ですが、「トランプ大統領」になれば、これもついえてしまうようです。

国際社会との協調に関心がなく、「国益が一番」という姿勢はトランプ氏の安全保障問題への対応などにも共通する傾向ですが(「トランプ氏」というより、「トランプ氏を支持するアメリカ世論の」と言うべきでしょうが)、こうした「自国の国益が一番」という傾向は、アメリカ・トランプ氏に限った話でもなく、欧州などでも広く顕在化している方向性です。

それにしても、長期の時間軸での検証が必要で、現時点における「絶対的証拠」もない「人間の産業活動に伴う温暖化効果ガスによる気候変動」について、「本当だろうか?」と疑念を呈することは十分にありえる話ですが、「そんなもの関係ない!」と逆の確信を抱く根拠はどこから出てくるのでしょうか?

内向き傾向を強めるアメリカ世論には受けるのでしょうが。

【地下帯水層枯渇で選択を迫られるアメリカ農業】
「人間の産業活動の地球環境に与える影響」に関して、温暖化よりももっと短期に「答え」が出そうな問題があります。アメリカ農業を支えてきた地下帯水層の枯渇です。

****北米最大の地下帯水層が枯渇****
乾燥した米国中部で近代的な生活が送れるのは、膨大な量の地下水を含んだ地層「オガララ帯水層」があるおかげだ。

そのオガララの水を調査するため、私たちはここカンザス州へやって来た。井戸に下ろした巻き尺の先端は、深さ60メートルでようやく水面に達した。1年前に測ったときより30センチも低い。このペースで水が減れば、井戸が枯れるのも時間の問題だ。「この状態で灌漑に使えば、ひと夏もちません」。米カンザス地質調査所で水資源データの管理責任者を務めるブライアン・ウィルソンは言った。

農業地帯を支える水
オガララ帯水層をめぐるウィルソンの調査に同行し、8000キロを旅した。私たちが車で走ったのは、サウスダコタ州からテキサス州にかけて広がる、米国有数の高い生産性を誇る農業地帯の一角だ。一帯の年間生産額は少なくとも200億ドル(約2兆円)に達し、米国内の小麦、トウモロコシ、肉牛の5分の1近くがここで育てられている。

そうした農家は今、難しい選択を迫られている。水を節約して地下水の枯渇を遅らせるか、目前に迫った終焉に向かってこのまま突っ走るのか。

なかには現実を直視したがらない農家もある。今の調子で水をくみ続け、帯水層が干上がってしまったら、世界の食料市場は大打撃を受けるだろう。

国連の試算によれば、21世紀半ばまでに世界の人口は90億人を超えるため、あと数十年で食料生産を6割増やす必要があるという。そんな世界情勢を尻目に、水はゆっくりと枯れつつある。

世界各地で枯れる地下水
オガララ帯水層は北米最大の地下水資源だが、同様の問題は世界中で起きている。アジア、アフリカ、中東の大規模な帯水層は、どこも急速に水量が減少しているのだ。オガララの南部を含め、そうした帯水層は地下水の回復スピードが極めて遅く、一度水を使い果たしたら、元に戻るまで何千年もかかる。(中略)

「影響は甚大です」と警鐘を鳴らすのは、米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所の水文学者ジェイ・ファミグリエッティだ。彼の研究チームは、人工衛星による観測データを使って世界37カ所の巨大帯水層の変化を記録している。「食料生産を維持するには、まず地下水の維持が必要なのに、それができていません。オガララの水を使い切ることが、米国、ひいては世界の食料生産にとって賢い選択なのか、真剣に考えなくてはなりません」【ナショナル ジオグラフィック2016年8月号特集「地下水が枯れる日」より】
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「オガララ帯水層」枯渇で危機が表面化すれば、アメリカの温暖化問題への取り組みにも変化があるのかも。

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2016-04-06 23:05:22

豊かなアメリカの水道水鉛汚染 貧しいバングラデシュの井戸水ヒ素汚染

テーマ:環境

バングラデシュ ヒ素汚染
【4月6日 AFP】

【米全土の600万人が鉛汚染水を摂取 更には「シェール革命」の影響も】
アメリカ・ミシガン州フリント市における水道水の鉛汚染については、1月17日ブログ「アメリカ・ミシガン州 水道水汚染で非常事態宣言」
http://ameblo.jp/azianokaze/day-20160117.html でもとりあげました。

フリント市はデトロイト近郊にありますが、自動車産業の衰退に伴う苦しい財政事情から、デトロイトから水を購入するのを止め、フリント川の水を利用するようにしたところ、この水質が腐食性で水道管を溶かし、水道水に鉛が混入する事態となったものです。

鉛汚染の発生だけでなく、州政府が危機的な水質汚染の進行を「隠ぺい」してきたことにも住民の怒りが向けられています。

フリント市の件では、オバマ大統領が緊急事態を宣言し、州兵や現地警察、ボランティアなどを動員して、水道水が飲めない約30,000世帯(99,000人)の住民へのボトル水配布が行われる事態ともなりました。

この事件を契機に全米で調査を行ったところ“約600万人の米国人が連邦当局が示した許容値よりも高い濃度の鉛に汚染された水を飲んでいる”との報道もなされています。

****米全土の600万人、鉛汚染水を摂取 米紙報道****
米紙USAトゥデー(USA Today)は17日、約600万人の米国人が連邦当局が示した許容値よりも高い濃度の鉛に汚染された水を飲んでいる、と報じた。

米中西部ミシガン州フリントの水道設備に古い水道管から鉛がしみ出したことによる大規模な汚染問題が国民の注目を集める中、同紙が全米を対象に調査を実施。

全国の水道設備約2000か所から許容値よりも高い濃度の鉛が検出された。汚染された水は数百の託児施設や学校に供給されていたという。

鉛の毒はとりわけ子どもたちにとって有害とされ、神経系に影響を与えたり、不可逆的な学習遅延や問題行動を引き起こしたりする可能性がある。

同紙によると、米国の全50州で許容値よりも高い鉛濃度が検出された。東部メーン州の小学校で採取された水のサンプルからは、米環境保護局(EPA)が定める規制値である15ppmより約42倍高い鉛濃度が、ペンシルバニア州の保育園では許容値より14倍高い鉛濃度が検出されたという。【3月18日 AFP】
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また、米疾病予防管理センター(CDC)は、全米で「1~5歳の乳幼児55万人以上が鉛中毒の可能性がある」と推計しているとも。【選択 3月号より】

アメリカの水道水汚染は鉛だけにはとどまらないようです。
かねてより懸念されていた、シェールガス、オイル採掘による水質汚染も問題視されています。

****米国「水道水汚染」の壮絶****
大統領選の主要争点に
しかも、フリント市の衝撃を契機に、「シェール掘削が水道水汚染につながっている」との告発も、再び勢いを増している。

近年米国で急速に普及したシェール掘削は、地中の岩体に高圧の水を注入する「水圧破砕法(フラッキング)」が使われる。この際に、水道水の水源である地下水に、汚染水やメタンガスが流れ込む被害は、過去数年、全米でたびたび報告されてきた。水道水が黄色や茶色に濁るほか、蛇口にライターの火を近づけると炎が上がるといった、驚きの現象がある。

これまでは、米環境保護庁(EPA)が「問題なし」との見解を示してきた。また、掘削業者が、水道水に異常がある地域の住民に、高額の賠償金を申し出て、告発を食い止めるといった慣行もあり、シェール掘削に待ったがかかることはなかった。

ところが最近は、オバマ政権内で環境保護派の声が強まり、昨年のEPA報告では「(被害)件数は比較的少ない」と強調しながらも、フラッキングによる生活水汚染の例があることを認め、従来の見解を軌道修正した。オバマ大統領も「規制強化」を示唆している。

昨年末には、カリフォルニア州南部でガス田から多量のメタンガスが漏れて、周辺一体を異臭が覆った。ガス自体は有毒ではないが、激しい臭いに体調不良を訴える人が続出して数千世帯が避難。同州では「ミニ・チェルノブイリ」と呼ばれる事態になった。

この直後にフリント市の汚染が発覚とあって、カリフォルニア、ミシガン、フロリダ各州で民主党を中心に、「フラッキング規制も見直すべき」という動きが目立っている。サンダース候補ははっきり、「フラッキング禁止」を公約した。

「シェール掘削は今や米国の主要産業なので、さすがに『禁止』を唱えるのはサンダースだけですが、中道のクリントンも、フラッキングで使う化学物質には『厳しくやる』と明言して、環境政策で左に寄ってきた。規制反対の共和党とは主要争点になるでしょう」と、前出の科学記者は言う。

一方、ドナルド・トランプ候補ら共和党の各候補は水道水汚染問題では、おおむね沈黙。
化学関連業界はロビー活動だけで年間六千万ドルを使う、共和党の大スポンサーだからだ。

だが、ワシントンポスト紙のブロガーが「今度ばかりは訳が違うから、共和党も対策を準備したほうがよい」と示唆するなど、もはや避けては通れない。水道水で中毒なんて、「何も考えていないではすまされない話」(同紙)であることは間違いない。【選択 3月号】
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話が横道にそれてしまうので今回は簡単に触れるだけにしますが、水道水汚染同様に「シェール革命」の副作用として懸念されていた地震誘発の方も、現実の問題として表面化しています。

****米オクラホマ州で人為的な地震が増加****
米オクラホマ州で人為的な地震が増加
2016年3月28日、米地質調査所(USGS)は、米国中部および東部の最新の地震危険度予測マップを発表した。注目したいのは、今回初めて人為的な要因による誘発地震の予測が含められたことだろう。

予測では、今後1年間に、オクラホマ、カンザス、コロラド、ニューメキシコ、テキサス、アーカンソーの各州で暮らす700万人が誘発地震のリスクにさらされるという。(中略)

オクラホマ州のある地域では、こうした地下から出た水の廃水量が5~10倍に膨れ上がると、マグニチュード3.0以上の地震も急増。1970~2009年までの間でも100件以下だった地震発生数が、2014年の1年で600件近くに、2015年には907件にまで跳ね上がった。

ほとんどの廃水は、「アーバックル地層」と呼ばれる岩の層へ注入される。すると、さらに奥深くにある地震を引き起こす基盤岩の層に水圧が伝わる。注入される水の量が増えるほど、ただでさえストレスがかかっている断層の間隙水圧がますます上昇し、通常はしっかりと固く接着している断層面が滑りやすくなって、地震が発生するのだ。

オクラホマ州プラーグでは2011年に、廃水の注入が原因と考えられるマグニチュード5.6の地震が発生した。同州の記録では、過去最大規模の地震で、煙突が倒れるなどの被害が出た。
この地震で受けた被害の賠償を求めて、事業者を相手どった民事訴訟も起きている。

USGSの研究者によれば、オクラホマ州には有史以前にマグニチュード7規模の地震を引き起こした断層がある。このため、「廃水の注入や小規模の誘発地震が、より大きな地震を誘発してもおかしくない」とUSGSの研究者は指摘する。(後略)【3月31日 NATIONAL GEOGRAPHIC】
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もっとも、昨今の原油価格低迷によってシェールオイル採掘が休止される状態になっているため、被害の方も小康状態になっているようです。

【バングラデシュ 国際支援で細菌汚染の地表水から清潔な井戸水に代えた結果の大規模ヒ素汚染】
話を水質汚染に戻して、今度はバングラデシュの井戸水のヒ素汚染の話。
こちらは“毎年、推定で4万3000人が死亡している”と、アメリカより格段に大規模・深刻です。

****2000万人がヒ素汚染水を飲用、バングラデシュ HRW****
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は6日、20年前に飲み水から有害なヒ素が検出されたバングラデシュで、現在もなお貧困層の2000万人がヒ素に汚染された水を飲用しているとの報告書を発表した。

HRWの報告書によると、バングラデシュ当局は、毎年、推定で4万3000人が死亡しているとされるヒ素汚染に対して基本的な対策を取ることができていないという。

汚染水の問題は1970年代にまでさかのぼる。土壌が自然由来のヒ素に重度に汚染されていることを知らずに、バングラデシュ政府は各村に清潔な水を供給するために、浅い掘り抜き井戸を掘削したのだ。

HRWの調査員、リチャード・ピアシャウス氏はAFPの取材に対し「バングラデシュ当局は、貧困な地方部に暮らす大勢の人々の飲み水からヒ素を除去するための、基本的で明白な対策を取っていない」と述べ、「この大惨事がまん延し続けているのは、お粗末な行政のせいだ」と語った。

世界保健機関(WHO)はバングラデシュのヒ素汚染問題について「歴史上最大の住民集団中毒」と名指しした。

慢性ヒ素中毒は肝臓がんや腎臓がん、膀胱がん、皮膚がん、心臓疾患などと関連性がある。しかしながら、HRWによるとバングラデシュの被害者の多くは、医療を受けられない状況にあったという。【4月6日 AFP】
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このバングラデシュのヒ素問題は、以前から指摘されているところで、しかも皮肉なことに、ユニセフなど国際支援団体と協力して,細菌だらけの地表水(川や池の水)に代えて清潔な水を国中の村に供給するという大がかりな政府プロジェクトの「成功」の結果として生まれた問題です。

****飲料水をヒ素汚染から守れ バングラデシュでの試み****
1970年代から1980年代にかけて,バングラデシュ政府は,ユニセフが先頭に立つ国際支援団体と協力して,清潔な水を国中の村に供給するという大がかりなプロジェクトに着手した。

当時,細菌だらけの地表水(川や池の水)を飲んで下痢を起こし,死亡する子どもがあとを絶たなかった。

解決策として考えられたのが「管井戸」だった。地表水を使う普通の井戸とは異なり,地下の比較的浅いところにある帯水層までボーリングで細長い穴を掘り,シンプルで頑丈な手押しポンプで水を汲み上げるという方法だ。

1990年代初めまでには,バングラデシュの人口の95%が“安全な水”を手に入れられるようになった。その供給源のほとんどすべてが1000万本を超える管井戸だ。ほかの点では貧窮している国としては珍しい成功例といえた。

だが,悲しいかな,水中ヒ素濃度を調べようとする人はいなかった。

今日,バングラデシュの管井戸の約30%から,井戸水1リットル当たり50μg以上のヒ素が検出される。さらに5~10%の井戸にはこの量の6倍以上のヒ素が含まれていることがわかっている。

バングラデシュ政府はヒ素含有量が1リットル当たり50μgを超える水を危険と指定している。ということは,人口のほぼ1/4にあたる,少なくとも3500万人の人が,命にかかわる濃度のヒ素を含む水を飲んでいるということになる
〔ここでは同国政府の定める1リットル当たり50μgを「基準値」とする。世界保健機関(WHO)の上限値や日本の水質基準値は10μgだが,残念ながら値が小さすぎて現地調査では検出できない〕。

これはバングラデシュだけの問題ではない。インド,ネパール,ベトナム,中国,アルゼンチン,メキシコ,チリ,台湾,モンゴル,そして米国や日本などさまざまな国で,飲料水にヒ素の混入した地域が見られる。

全世界で5000万人もの人々に,やがて深刻な被害がおよぶ可能性がある。飲料水のヒ素汚染は,チェルノブイリの原発事故を上回る史上最悪の大規模な中毒事件といえる。【日経サイエンス  2004年11月号】
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このヒ素はもとをたどればヒマラヤ山脈から流れ出したものですが、ヒ素に汚染されていても無味無臭なため発見が遅れたようです。

汚染されていることがわかっていても、生きるためには飲むしかない・・・という過酷な現実も。

****生きるためには砒素を含む水を飲むしかない‥‥****
・・・・人口が極端に多くて貧しい国では、生きるためには水を確保するのが先決で、国土全地域の砒素対策まで手が回らないのが実情であろう。

砒素により発病するのは数年後だが、水を飲まないと直ちに死んでしまう。

有効な対策をとるにしても、余りにも汚染範囲が広いので、浄化装置の建設や他場所から代替水を求める資金や技術もない。しかも工場廃水などの人為汚染ではなく、自然界による広範囲の汚染であるため、汚染は底なしの様相である。

ユニセフは、こうした状況に対応すべく、バングラデシュ政府公衆衛生工学局と共に、簡単な仕組みで容易に使用できる溜池の砂濾過器を開発し、汚染の深刻な地帯に優先して設置を行っている。

雨水や川の水を溜めた池の水は、衛生的には兎も角、砒素は含まないので、これを濾過して飲用とするためである。しかし、池の水を全量濾過しても乾季には水が不足し、砒素を含む井戸水を飲むしか方法がない。(後略)【江草拓氏 「私のどこでも散策記録」
http://www.bbweb-arena.com/users/et/bangladesh/bangladesh_076.htm
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政府の対応が遅れていると言えばそれまでですが、政府も国際機関も何もしてこなかった訳でもありません。
ただ、対策が現実に追いついていないのが実情です。

****バングラデシュの砒素汚染****
・・・・2003年には、バングラデシュ砒素汚染緩和水供給プロジェクト(BAMWSP)主導のもと、政府機関、国際機関、NGOなどの協力により、全国470郡のうちの砒素汚染のある271郡にある495万本の全井戸のスクリーニング調査を実施しました。

バングラデシュ基準値(0.05mg/l)を超える井戸は全体の29%で250万本の井戸が汚染されており、危険な水を飲んでいる人口は3,500万人と推計されました。

これらの井戸は”危険”を知らせるバロメーターとして赤色のペンキで塗られました。BAMWSPは、汚染率が80%以上の村(8,540村落)を緊急に対処すべき村落として同定し、砒素対策はそれらの村落で優先的に実施されていきました。

その後、バングラデシュ政府による給水プログラムや国際機関やNGOの水対策により、深井戸やコミュニティ砒素除去施設など10万基以上の代替水源が設置され、450万世帯に安全な水が届けられましたが、依然として2,000万人以上が安全な水を必要としています。

バングラデシュでは、砒素汚染対策に関連する分野でたくさんの課題が山積しています。
地下水には砒素以外にも、地域によってはマンガン、ウラン、塩分の汚染も各地で見られます。これらを含んだ対策が要求されています。

様々な機関によって代替水源の建設が行われていますが、それらの包括的なデータ管理とモニタリング体制の確立も必要です。

砒素中毒患者については、現在、バングラデシュ保健・家族福祉省がつくった枠組によって砒素中毒患者に登録されている人は38,000人います。

しかし、砒素中毒に関する知識を持つ医療関係者が不足しているため、地域によっては未発見の患者が存在したり、病院に行っても適切な治療を受けることができなかったりと、医療体制の整備にはたくさんの課題があります。

肥沃なデルタ地帯を最大限に活用した灌漑農業では、大量の地下水を汲み上げており、砒素を含む地下水による土壌汚染や農作物への影響、食物連鎖の影響などの研究も急がれています。

バングラデシュでは、近年爆発的に増えている都市人口に対応する都市給水や、農業用水の大量の汲み上げによる地下水位低下の問題も全国的に起こっています。これまで地下水に依存してきた水利用の長期的な水資源管理体制が求められています。

このように、まったなしの砒素汚染地域への安全な水供給とともに、長期的な水資源利用・管理体制、医療・農業分野も含めた総合的な対策が求められています。【アジア砒素ネットワーク 
http://www.asia-arsenic.jp/top/?page_id=304
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2015-12-16 23:12:57

中国  深刻な大気汚染で「きれいな空気」に商品価値 中国よりもひどいインドの汚染

テーマ:環境

中国 大気汚染
(〔PHOTO〕gettyimages 【12月15日 現代ビジネス “中国「大気汚染」の本当の話~募る苛立ち、肺がん死亡率も急上昇”】

【屋内でも 国外にも】
中国の“PM2.5”濃度に代表される大気汚染の深刻さ、市民生活への影響が連日報じられています。

****北京 大気汚染「赤色警報」 市民生活に影響****
中国の北京は、大気汚染に関する警報の中で最も深刻な「赤色警報」が初めて出されたことを受け、8日から小中学校などが休校になるなど、市民生活に影響が広がっています。

北京市政府は7日夜、重度の大気汚染が72時間を超えて続くことが予想されるとして、大気汚染に関連した4段階の警報のうち、最も深刻な「赤色警報」を初めて出しました。

北京市内は8日も、各地で大気汚染物質PM2.5の濃度が1立方メートル当たり200マイクログラムを超えています。

「赤色警報」が出されたことを受け、北京市政府は市内の小中学校や幼稚園に対して休校とするよう指示を出し、児童・生徒合わせて406人が通う日本人学校も休校となりました。日本人学校が大気汚染を理由に休校となったのは、今回が初めてだということです。

また、北京市内では8日朝から、ナンバープレートの末尾の数字が偶数か奇数かによって市内での走行を制限し、車の数を半分程度まで減らす措置も始まっています。

マスクを着用して通勤していた27歳の会社員の女性は、「北京の住環境や大気汚染は本当にひどい状況だと思う。健康を守るための有効な手段は限られているので内心不安を抱えている」と話していました。

北京市政府は10日まで、車の走行の制限や、大気汚染物質を排出する工場の操業停止などの措置を続けることにしていて、市民生活に影響が広がっています。【12月8日 NHK】
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汚染は屋外だけでなく、屋内にも及んでいます。

****北京の大気汚染濃度、屋内でも「汚染」レベル・・・清華大が発表****
先日、深刻なレベルの大気汚染が発生して最高レベルの「赤色」警報が初めて発令された北京市。外出を控えた市民も多かったようだが、屋内でもPM2.5の吸入量が多くなることが清華大学の研究で明らかになった。中国中央ラジオ局が13日報じた。

記事は、同大学の電子工学部、建築環境検測センターなどが共同で2014年11月から今年1月に実施した調査研究の結果を紹介。407人の参加者による11万時間分の室内データを収集した結果、同市の屋外における平均PM2.5濃度が1立方メートルあたり91.5マイクログラムだったのに対して屋内の平均も同82.6マイクログラムの「軽度汚染レベル」に達していることが判明したと伝えた。(後略)【12月16日 Searchina】
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更に、海を越えて、日本を含む周辺国へも影響が及んでいます。

****中国の大気汚染、海を越えて台湾へ 「北側の窓開けるな」、「非常に汚い」など当局が注意喚起****
台湾では15日午後、大気中のPM2.5の濃度が高まった。中国大陸の上海付近から汚染された大気が海を越えて到達したため。中華民国行政院(台湾政府)環境保護署空気保護処は外出をできるだけ控えたり、北側の窓を閉めるように注意を促した。

16日になっても大気の世ぼれた状態は続いている。汚染がひどいのは台湾北部から西部沿海地区で、基隆では同日午前8時(日本時間同日午前9時)現在のPM2.5の濃度が空気1立方メートル当たり72マイクログラムだ。

台湾の環境保護署はPM2.5による大気汚染を10段階に色分けして表示している。「汚染が最もひどい」とされる空気1立方メートル当たり10マイクログラム以上は「紫色」の表示であるため、「紫爆」という言い方も定着した。【12月16日 Searchina】
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【当局「『浄化された空気』を販売することはできない」】
こうした状況で、「きれいな空気」に対価を要求することの是非が問題になったとも。

****きれいな空気には商品価値  大気汚染の中国で飲食店が客に料金請求、当局「認められない****
新華社系のネットメディア「新華網」によると、浙江省張家港市で、飲食店が客に「空費浄化費」を請求していたことが分かった。当局は同請求は認められないとして、7日以内に取りやめるよう命じた。

張家港市物価局価格通報センターに市民からの通報があり、調べたという。店側は空気清浄器を設置したとして、1テーブル当たり1元(約18.5円)の空気浄化費を請求していた。

同市物価局の関係者は「空気は人類が生存するために必要な自然資源だ。消費者が飲食店に来て食事をする際に、呼吸をせねばならないのは必然だ。飲食店は良好な飲食環境を提供する義務がある。消費者が『浄化された空気』を注文していない以上、『浄化された空気』を販売することはできない」と説明。

物価局は同飲食店に対して、7日以内に改善するよう指示。再び同じ問題を出した場合には、改めて厳しく処罰すると通告したとおいう。

物価局関係者によると、同問題を調べた際に、飲食店側の価格政策に対する理解が乏しく「サービスを提供したのだから、費用を請求してもよいだろう」程度の認識しかなかったと判明したという。【12月15日 Searchina】
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当局の「空気は人類が生存するために必要な自然資源だ。消費者が飲食店に来て食事をする際に、呼吸をせねばならないのは必然だ。飲食店は良好な飲食環境を提供する義務がある。・・・」は一応もっともです。
(メンツにかけて「空気販売」を阻止したい当局の立場が感じられ、面白いところですが)

ただ、それを言うなら「政府・当局は良好な大気環境を提供する義務がある」とも言えるでしょう。

「空費浄化費」について言えば、東南アジアの国々で「冷房」が効いたお店は一般に高い料金設定をしていますので、「きれいな空気」を提供するコストが上乗せされた価格になることは自然なことでしょう。
問題は、本来は「人類が生存するために必要な自然資源」である「きれいな空気」が商品価値を持つような環境になってしまったことです。

【大気汚染の原因となっている石炭依存構造】
工場や自動車に加え、冬場の大気汚染を加速させているのが、旧式石炭ボイラーで運営されている「暖気」と呼ばれる集中暖房システムだとも指摘されています。

****PM2.5の元凶に「集中暖房」 社会主義の理念で早期に完備、旧式ボイラー祟る=中国メディア****
中国北部の都市部では「暖気(ノワンチー)」と呼ばれる集中暖房システムが導入されている。しかし旧式の石炭ボイラーを用いた暖房システムは大気汚染の大きな原因になり、現在はガス燃焼ボイラーなどへの転換が進められている。

世界で初めて、全国の都市部における集中暖房を導入したのはソ連だった。1930年代には本格着手。ボイラーで熱水を作りパイプを通じて各部屋に置かれた熱交換器に通し、冷えた水を再びボイラーに戻す方法だ。(中略)

現在の中国では「暖気」の運営組織も企業化されているが、地元紙の瀋陽晩報によると、検査した市内108社の熱供給企業のうち14社に排気放出について違反行為があったという。

市側としては、「排出基準を満たさない旧態然としたケースがあれば処罰し、資料の改竄などがあれば、さらに厳しく法的責任を追究する」考えだ。

一方、北京市ではすでに、「暖気」用施設の更新が進んでいる。市中心の6つの区については、すべてガス火力ボイラーにしたという。郊外の新興地区でも施設の更新は進められている。

そのため、同市における二酸化硫黄の累計濃度は「供暖」が実施される中国北部では最も低く、「供暖」による大気汚染がない南部都市並みの水準という。【11月11日 Searchina】
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産業構造においても、「暖気」のような市民生活においても、中国は石炭に大きく依存しており、このことが大気の汚染、多量の温室効果ガス排出につながっています。

*****「地球滅亡級」汚染でも変われない国****
・・・・石炭は、主要なエネルギー源の中で最も環境を汚す。中国の「エアポカリプス」(大気を示す“エア”と、世界の意終末を意味する“アポカリプス”を組み合わせた新語)も、強大な政治的影響力を擁する巨大な石炭産業と密接な関係にある。

この40年間の中国の目覚ましい経済発展は、豊富で安価なエネルギーに大きく依存してきた。今日もエネルギー消
費の66%は、石炭が占めている。

しかも中国政府は今年、20年までに少なくとも155基の石炭火力発電所を新設することを承認している。・・・・【12月22日号 Newsweek日本版】
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先のCOP21では、アメリカとともにCO2排出削減にむけて積極姿勢を示した中国ですが、こうした石炭依存体質をどこまで改革する気があるのかは疑問もあります。

“アメリカ政府はCOP21を前に、公の場では中国の排出削減目標を称賛し始めた。しかし、内心では強い疑念を拭えずにいる。”【同上】

【対策は進めてきた中国政府、しかし抵抗勢力も強固】
もっとも、中国が手をこまねいているとか、無策だとかいう訳でもありません。

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・・・だが実際には、中国はこれまでに相当量の排出削減を実現してきた。 

中国には数多くの水力発電用のダム(全国で約4万7000ヵ所)がある。原子力発電にも積極的で、建設中もしくは建設の認可が下りたものだけで29基もある。20年までに原発による発電能力は現在の2倍以上になる見込みだ。

自動車からの二酸化炭素(CO2)排出についても、欧米の自動車燃費基準で定められた減少分の10倍を超える削減を実現した。

「中国がどれほど積極的に(エネルギー源の)多様化を進めてきたか、世界は理解できていないと思う」とルフトは言う。「そうした政策がなかったら、状況がどれほど深刻になっていたかという点もだ」【同上】
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しかし、石炭、石油、電気といったエネルギー部門は巨大な既得権益を有する国有企業の牙城であり、特定の政治勢力を支える基盤ともなっています。

習近平主席は、こうした勢力に対し、石油産業を基盤とする周永康・前共産党中央政治局常務委員の逮捕に見られるように、汚職撲滅の粛清運動の側面から切り込んでいます。

電力を牛耳る李鵬元首相ら李一族とつながる石炭業界に対しても、汚職摘発で揺さぶりをかけながら、環境保護対策を迫っています。

今後の環境対策がどこまで進むかは、エネルギー部門を支配する抵抗勢力との権力闘争的な側面もあって、不透明でもあります。

ただ、共産党政権は日本が考える以上に、国民の不満には敏感なところがありますので、政権基盤を維持するために、それなりの対応は今後行っていくのではないでしょうか。

【世界で最も大気汚染がひどい20都市のうち、13都市をインドが】
ところで、日本では、隣国、それも“厄介な隣国”ということで中国が常に話題になりますが、客観的に世界を見渡せば中国以上に大気汚染がひどい都市はたくさんあります。

しかも、中国ほどの対策も取られていない・・・というのが実情です。

WHOが昨年、世界の約1600の都市を対象に大気汚染を調査した結果、最も汚染がひどかったのがインドのニューデリーでした。
また、世界で最も大気汚染がひどい20都市のうち、13都市をインドが占めています。

****大気汚染は北京よりニューデリーの方がひどい 中国メディア、上から目線で「勝利宣言****
・・・・中国メディアの環球網は8日、「ニューデリーの大気汚染は北京に追いつき追い越した。しかも緊急対策措置はない」と題する記事を掲載した。内容はまるで、大気汚染についての対インド“勝利宣言”だ。

記事は冒頭部分で、世界の多くのメディアが7日になり、北京の大気汚染を大きく取り上げたとした上で「しかし、その他の新興国の大都市の大気汚染も同様に深刻だ。インドの首都、ニューデリーも“遅れを取ってはいられない”」と、皮肉めかして紹介した。

さらに、北京では住民が、大気の質についての意識を高め、政府も対策措置を取っているが、「ニューデリーはやっと、問題の深刻さに意識を向けはじめた」と、自国の優越さを強調。

さらに、「インドは呼吸器疾患について信頼できる統計もなく、インドの医者がはっきりと確認できるのは、自分が担当する患者数の増加程度であり、患者の症状が以前より深刻になっていることぐらいだ」と、インドの状況の劣悪さを強調した。

さらに、中国では大気の質が一定以上劣化すると学校の授業停止、工場の操業停止、政府部門の車両の運転禁止などの措置がとられるが「インドにはまだ、緊急対応措置がない」と指摘。汚染防止の法律も重視されないか、有効に執行されていないと論じた。

文章はニューデリーの大気汚染について、過去1週間の間に空気1立方メートル中のPM2.5の量が何度も300マイクログラムを超えたと紹介した。

なお、北京市内にある米国の駐中国大使館によると、北京市内の空気1立方メートル中のPM2.5の量は、8日午前5時から約2時間にわたって300マイクログラムを超えた。最大で365マイクログラムだったという。写真は8日の北京市内の様子。通りを歩く人の多くはマスクを着用した。【12月9日 Searchina】
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中国ら揶揄されているインドも、ようやく来年から自家用車の通行制限に乗り出すようです。

****インド、車の通行制限を実施へ 高濃度PM2・5対策****
微小粒子状物質PM2・5などによる大気汚染が深刻で、昨年発表された世界保健機関(WHO)の調査で「世界最悪」となったインドの首都ニューデリーでも、来年1月1日から自家用車の通行制限が行われることになった。ナンバーが偶数か奇数かで1日ごとに通行できる。行政当局が8日までに決めた。

ニューデリーでは秋から冬にかけて大気汚染が特に悪化し、視界が遮られて空港で飛行機の発着が遅れることも珍しくない。

環境当局の測定では9日午前7時10分(日本時間午前10時40分)現在、市内の複数の地点でPM2・5濃度が1立方メートルあたり300マイクログラムを超えた。日本の基準値の8倍以上だ。在インド日本大使館は在住邦人に、空気清浄機やマスクを使うことなどを呼びかけている。

汚染の大きな原因は、約850万台といわれる自動車の排ガスだ。整備が行き届かず黒煙を出して走る古い車も珍しくない。

ただ、通行制限の発表に地元メディアからは「公共交通機関が乏しいから自家用車を使っているのに」といった批判も相次いでいる。【12月9日 朝日】
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もちろん中国はインドを見て喜んでいる場合ではありません。
自国民の健康のためにも、また世界の温暖化対策に資するうえでも、「大国」を自任するのであればその責務を果たしていく必要があります。

タバコの煙を周囲に吐き散らしている私も、大きなことは言えませんが。
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2015-12-15 22:12:15

温暖化対策  すべての国・地域が削減に参加する初めての枠組み「パリ協定」で合意

テーマ:環境

パリ協定 米中
(COP21開幕時に握手を交わす米中両首脳(2015年 ロイター/Kevin Lamarque)【12月25日 Newsweek】)

【今世紀後半に温室効果ガス排出の「実質ゼロ」を目指す】
パリで開かれていた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)は12日夜、2020年以降の地球温暖化対策の新たな枠組み「パリ協定」を採択しました。

日本国内ではあまり温暖化の問題が議論されることはなく、国際的にも温暖化問題での日本の存在感が薄れるなかで、史上初めて、温室効果ガスの排出削減の取り組みに途上国も含む全ての国・地域が参加する枠組みが誕生することになりました。

温暖化対策の国際的な枠組みがまとまるのは、先進国だけに削減を義務付けた京都議定書以来18年ぶりです。

****<COP21>全ての国が温暖化対策に取り組む初ルール成立****
・・・・パリ協定は、世界全体の排出量をできるだけ早く頭打ちにし、今世紀後半に温室効果ガス排出の「実質ゼロ」を目指すことを初めて盛り込んだ。条約に加盟する全196カ国・地域が自主的に削減目標を作成し、国連に提出、対策をとり、5年ごとに見直すことを義務付けている。目標達成の義務化は見送られた。(中略)

交渉では、先進国と途上国の対立が続いたが、最大の焦点だった途上国への資金支援は、先進国が拠出する具体的な目標額を協定には盛り込まず、法的拘束力のない別の文書に「年1000億ドル(約12兆3000億円)を下限として新しい数値目標を25年までに設定する」と明記することで決着した。

一方、「産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑える」という目標に加え、温暖化の被害を受けやすい島しょ国などに配慮して「1.5度未満」も努力目標に掲げた。

京都議定書で削減義務を負わなかった世界最大の排出国、中国も新枠組みの下、共通のルールで削減対策に取り組む。解振華・中国気候変動特別代表は「中国は国内の状況や能力に応じて、国際的な責任を果たしていく」と述べ、20年以降早期に温室効果ガス排出量を減少に転じさせるため努力する考えを示した。

協定は、批准国が55カ国以上に達し、それらの国の排出量が世界全体の55%以上を占めることを条件に発効する。

日本は、国会の承認を経て批准することになる。丸川珠代環境相は採択後、記者団に「高く評価できる。(パリ協定の仕組みを)日本の目標を引き上げるためにも活用しなければならない」と話した。

 ◇パリ協定骨子
 ・産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑える。1.5度未満になるよう努力する
 ・できるだけ早く世界の温室効果ガス排出量を頭打ちにし、今世紀後半に実質ゼロにする
 ・2023年から5年ごとに世界全体の削減状況を検証する
 ・全ての国に削減目標の作成と提出、5年ごとの見直しを義務付ける
 ・温暖化被害軽減のための世界全体の目標を設定する
 ・先進国に途上国支援の資金拠出を義務付けるが、他の国も自発的に拠出することを勧める
 ・先進国は現在の約束よりも多い額を途上国に拠出する(目標額は盛り込まず)(後略)【12月14日 毎日】
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【「shallと「should」の違い】
肝心の削減目標の達成が義務化されていないことから、実効性に疑問もありますが、透明性のある報告や検証、5年ごとの目標の見直しなどが義務付けられており、“世界が見ているなかで5年ごとに点検する。さぼることは難しいだろう。”【12月15日 朝日】ということで、国際的評価を重視する日本などにとっては無視できないものになるでしょう。

目標達成を義務化しないことにこだわったのは、温暖化問題を国際的にリードするポジションにつきたいアメリカの意向があります。

アメリカ・オバマ大統領は、温暖化対策に懐疑的な野党・共和党議員が多数を占める議会上院の同意が必要とならないように合意の法的拘束力をできるだけ少なくするよう腐心、議会を通さず大統領権限で協定を締結する道を探りました。

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閣僚らで埋まった会議場が、4年間の交渉で練り上げてきた協定の採択を待っていたとき、議長のファビウス仏外相と米国のケリー国務長官が最後の仕上げに入っていた。

「この表現が変わらなければ、オバマ大統領と米国はこの協定を支持することはできない」。ケリー氏は協定の最終合意案の条文の修正を迫っていた。

2007年に中国に抜かれるまで最大排出国だった米国は、1997年採択の京都議定書に加わろうとした政府が、議会上院に批准を阻まれた歴史がある。

最終案では、先進国が温室効果ガスを総量で削減することを「shall(しなければならない)」と義務づける表現になっていた。これを「should(すべきだ)」と義務を負わない単語への切り替えを求めた。途上国は反発したが、当初案では「should」になっていたとして「単純なミス」(ファビウス氏)だと修正を認めた。

たった1語の違いだが、削減義務など新たな負担が加われば、野党・共和党が多数を占める議会上院の同意が必要になる。新枠組みから再び米国が離脱へ向かう道が、ぎりぎりで回避された。【12月15日 朝日】
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ただ、オバマ大統領の目論見どおりに進むかは不透明です。
“ただ、早くも共和党から反発があがっている。上院トップのマコネル院内総務は声明で「シャンパンを開ける前に達成不可能な協定であることを思い出すべきだ」と批判。オバマ氏が締結に踏み切った場合、関連予算を認めないなど妨害も辞さない構えをみせる。”【12月15日 朝日】

【アメリカ・中国が交渉を主導】
今回合意には、アメリカとともに中国も積極的に関与する姿勢を示しました。

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交渉を主導したのは米中の2大排出国だった。

中国・外務省の交渉官は取材に「あらゆる国が発展したい。政府がそれを望むのを止めることはできない」と話し、協定が発展の足かせになることを強くけん制。

米国も、連邦議会上下両院で温暖化対策に消極的な野党・共和党が多数を占め、議会に諮らず批准できる緩い内容を探った。各国は「米中が入らなければ協定が成り立たない」(国連関係者)と配慮することになった。【12月14日 毎日】
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中国が温暖化対策に前向き姿勢を示したのは、中国国内における石炭を多量使用する現在の産業構造の転換が迫られていることや、PM2.5に象徴される環境問題が深刻化していることなどの国内事情と温暖化対策のベクトルの向きが一致したことがありますが、従来の、欧米に対抗する途上国リーダーとして影響力拡大だけに腐心していた対応から、一応“責任ある大国”としての姿勢に転換したものとして評価できるでしょう。

****オバマ大統領が習主席に謝意、COP21「パリ協定」採択への貢献評価****
対中関係もオバマ流のつかず離れずの手法で

オバマ米大統領は13日夜に中国の習近平国家主席と電話会談し、第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)での「パリ協定」採択で中国が重要な役割を果たしたことに謝意を表明した。米ホワイトハウスが14日、声明を発表した。

両首脳は米中の交渉担当チームを緊密に連携させたことが歴史的な合意につながったとの認識を示した、としている。

その上で「オバマ大統領は気候変動問題への対応で、米中が引き続き協力していくことの重要性を強調した」とした。【12月15日 Newsweek】
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もちろん、米中は南シナ海の問題では対立を続けていますし、今日も、台湾へのフリゲート艦売却をめぐる問題での中国のアメリカ批判なども報じられています。
経済をめぐる綱引きもありますし、サイバー攻撃に関する問題もあります。

そうした問題が多い中では、温暖化対策は米中が歩調を揃えられる数少ない問題でもあって、緊張関係が過熱しなように、ことさらに温暖化問題での協力関係をアピールしている・・・という感もあります。

【議長国フランス・議長ファビウス外相の手腕も】
今回合意が成立した背景として、議長国フランス・ファビウス外相の役割が高く評価されています。
“政治的”駆け引きには定評のあるフランス外交の面目躍如といったところでしょうか。

****議長国の仏、さえた手腕 水面下の会合、論点共有 COP21****
「パリ協定」を採択した国連気候変動会議(COP21)では、激しい外交が展開された。米国の後ろ盾を得た議長国フランスの巧みな舞台回しが功を奏し、先進国と途上国との対立の溝が埋まった。日本は合意に向けた最終局面でも存在感を示せなかった。

「ローラン、すごい仕事をやったな。君のリーダーシップにみんな感謝している」。パリ協定の採択を受けケリー米国務長官は、議長を務めたファビウス仏外相の手腕をたたえた。

フランスにとって世界の関心が集まるCOP21は、欧州連合(EU)の大国としての力量を内外に示す勝負の場だった。非公式の閣僚級会合を重ね、論点をまとめた会合メモを共有した。実務者でつくる作業部会とは別に、政治合意の機運を高めるためでもあった。

COP21の本番では、首脳が最終局面でぶつかったCOP15の反省から、首脳級会合を初日に設定。パリ同時多発テロでフランスへ連帯感が高まっていたことも手伝い、150カ国の首脳級が顔をそろえ交渉を前進させる推進力となった。

また、閣僚級の分科会のとりまとめ役を、交渉を阻む立場を取ってきたボリビアなどに担わせ、全員参加の雰囲気を醸成した。ある閣僚は「フランスは忍耐強く各国の主張を聞きつつ、議長国として譲れない線もはっきり示した」と話す。

そして、12日昼の最終局面でオランド仏大統領がファビウス外相と並んで登壇し、「最後の決断の時が来た」と鼓舞。どの国にもパリ協定の最終文書案を提示しないまま、合意へとなだれ込む機運を盛り上げた。【12月15日 朝日】
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【「先進国」対「途上国」の対立を超えて】
また、今回の会議では、従来の「先進国」対「途上国」の対立を超えて、深刻な被害が目前に迫る太平洋の島国のアピールも目立ちました。

****「1.5度」記載⇔「補償」弱める****
12日、パリ協定の採択を控えた会議場に欧州連合(EU)や米国、マーシャル諸島などの閣僚らが腕を組んで姿を現すと、会場から拍手がわき起こった。有志国からなる「野心連合」のメンバーたち。採択への流れを作った「主役」だ。

協定をより積極的な内容にしようと、マーシャル諸島のデブルム外相が発起人となって集まった。加盟国は100カ国以上に増えたという。

デブルム氏によると、結成の動きは約2年前。海面上昇の被害に直面する島国は、排出が急増する中国やインドにも、先進国と同等の取り組みを求めたいのが本音だ。ただ、交渉では同じ途上国グループに属し、自説を通しにくかった。

そこで従来の対立構図を崩そうと、まずEUに接近した。気温上昇を1.5度未満に抑える目標設定などで連携を確認。さらに、強硬な姿勢を続けるインドなどに圧力をかけたい米国が、交渉が煮詰まった9日に電撃的に参加を表明した。

1.5度目標の記載をのむ代わりに、一部の島国が強く求めた温暖化被害の救済策で米議会が嫌う「責任」「補償」の表現を弱めるよう折り合いを付け、合意への流れを確実にした。

デブルム氏は、朝日新聞の取材に「小国で影響力がなくても、声を届けたいと思った。国民の命を守るために野心的な枠組みが必要だ」と話した。【12月15日 朝日】
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【存在感が薄い日本】
こうした動きに日本はついていけなかったようです。

“日本は、COP21交渉の最終局面でも蚊帳の外だった。島国やEUが主導した野心連合に米国が参加を決定。日本の交渉官は「そんな話は知らない。誘われてもいない」と寝耳に水の様子。日本が連合に加わったのは、協定採択の直前だった。”【12月15日 朝日】

日本の場合は、目標達成のためには原発再稼働を前提としており、先行きは不透明です。
そうした国内事情から、国際的にイシアティブを撮れるような状況にもありません。

****日本、実効性に課題 目標は原発再稼働前提****
日本は、2030年度の温室効果ガス排出量を「13年度比26%減」とする削減目標を掲げ、「50年には80%減らす」という長期目標も閣議決定している。

パリ協定採択を受け、政府は温暖化対策の実行計画づくりを本格化させる。来年5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に間に合わせたい考えだが実効性のあるものができるか課題も多い。

「26%」の削減目標は、総電力量の2割超を原発でまかなう電源構成が前提だ。だが、法律で原則40年とされる運転期間の延長をかなりの数の原発で実現できないと難しく、再稼働すら不透明な現状ではハードルはかなり高い。

政府は、再生可能エネルギーと省エネの推進も掲げ、「エネルギー・環境イノベーション戦略」を来春にまとめる方針だ。

一方、目標の達成は企業や電力会社の自主性に委ねている。二酸化炭素の排出量の多い石炭火力計画が持ち上がり、環境相が「是認できない」と注文をつけ続ける事態となっている。

世界では、企業に二酸化炭素の排出上限を定め過不足分を売買させる排出量取引の導入や、炭素税を強化する動きがある。日本政府はこれまで「企業の負担になる」と消極的な姿勢だ。【12月15日 朝日】
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世界的に見ると、温暖化対策はエネルギー関連投資を拡大させるものとしてとらえられています。

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・・・1997年のCOP3で採択された京都議定書は、世界が科学の声を聞き入れ、温暖化を招いた先進国が率先し、欲望を抑える「痛みを分かち合う」制度と受け止められていた。経済活動で増える排出量を抑えるのが、政府の役割と考えられていた。

今回のパリ協定は、違う文脈でとらえられている。米ホワイトハウスは、ただちに「合意は、ここ数年のエネルギー関連の投資を相当拡大することになるだろう」との声明を発表。欧米の経済界からは歓迎のツイートが相次いだ。

風力発電は18年前の50倍に、太陽光発電は原発の設備容量の半分までに成長した。爆発的な普及に伴ってコストは急激に下がり、途上国でも火力発電を下回るようになってきた。

低炭素経済への移行は、温暖化対策に後ろ向きとみられた新興国でも進む。中国は世界一の自然エネルギー大国であり、インドも22年までに風力を6千万キロワット、太陽光を1億キロワットにする計画を掲げる。

多くの国で経済成長と二酸化炭素(CO2)排出は連動しなくなり始めた。昨年、世界経済は3%成長したのに、CO2排出量は横ばいだった。今年の排出量は下がると見られている。【12月15日 朝日】
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不安定な自然エネルギーに頼りすぎることの危険性やコスト問題はいつも言われる話ではありますが、「できない理由」を並べるよりは、「どうしたら可能になるか」という方向での議論を進めるべきでしょう。

【採択はスタートラインに過ぎない】
なお、今回合意が本当に生かされるかは今後の各国の努力次第です。

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・・・・一方、深刻な被害が目前に迫る太平洋の島国や、最貧国からは批判の声も出ている。最貧国の環境NGOのメンバーは「削減に向けた義務が担保されていない。悪い合意で、悲しい日だ」と痛烈に批判した。

今世紀後半に世界全体の排出量を「実質ゼロ」にするという踏み込んだ目標が盛り込まれた意味は大きいが、全ての国が深刻な温暖化の影響を防ぐ自覚を持って具体的に行動しなければ、協定は「骨抜き」となってしまうだろう。

採択はスタートラインに過ぎず、全てはこれからの各国の取り組みにかかっている。【12月15日 朝日】
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2015-11-02 22:36:20

インドネシアの「恒例」森林火災 日本の年間排出量を超えるCO2 地球温暖化を加速させる「火薬庫」

テーマ:環境

インドネシア森林火災
(泥炭地の火災で、地面に放水して消火する警察官ら=インドネシア・カリマンタン島南部パランカラヤ郊外で2015年10月上旬、平野光芳撮影 【10月31日 毎日】)

【呼吸器異常で死者19人 患者は50万人 「人道に対する罪」】
インドネシアのカリマンタン島、スマトラ島の数千か所で起きている広範な森林火災による煙害は、呼吸器系の異常などによる死者19人を出しながらも、今も終息の目途はたっていません。

****インドネシアの煙霧被害、死者19人に増加****
広範囲にわたる山火事により、深刻な煙霧被害に見舞われているインドネシアで、煙による死者が19人に達したことが明らかになった。同国のコフィファ・インダル・パラワンサ社会相が28日、発表した。

また政府は、大規模な避難に備え、カリマンタン島(ボルネオ島、Borneo)に軍用艦を派遣した。

同国ではここ2か月近くの間、焼き畑によって引き起こされた山火事が、カリマンタン島やスマトラ島など数千か所で発生し、東南アジアの広い範囲が煙霧に覆われる事態となった。また、学校では休校措置が取られた他、航空便が欠航し、複数の国際イベントが中止となるなどの影響が出ている。

19人の犠牲者は全員、スマトラ島とカリマンタン島の住民だった。今年7月に一連の山火事が発生して以来、同国では推定50万人が呼吸器系の異常を起こしたとみられる。

一連の山火事は、素早く安価に土地を開墾しようとした農民が故意に火をつけたことが原因とされている。【10月28日 AFP】
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通常の森林火災は木々が燃え尽きれば収まりますが、インドネシアの場合、森林火災が起きている地域は泥炭地で、この泥炭に火がつく形でいつまでもくすぶり続けますので、消火も手の施しようがないのが実態です。

その被害はインドネシアだけでなく、隣国マレーシアやシンガポールにも及び、外交問題ともなります。

****マレーシア、インドネシアからの煙霧で休校****
マレーシア当局は15日、隣国インドネシアの山火事と焼き畑に起因する煙霧で首都クアラルンプールが覆われたことから、同市と近接する州の学校の休校を命じた。【9月15日 AFP】
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【原因は農園拡大のための「野焼き」】
この広範な森林火災は、パーム油増産のための「野焼き」によって引き起こされているとされ、今年に限った話ではなく、近年は「恒例」ともなっています。
“2013年10月21日ブログ「インドネシアの森林火災で、シンガポールでは健康被害  森林火災の背景にある泥炭地開発」(
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130621 )”

****インドネシアの煙害は「人道に対する罪」レベル****
インドネシアで野焼きによる森林火災が「人道に対する罪」に相当する被害をもたらしている。英ガーディアン紙によれば、呼吸器疾患等による死者は10人、患者は50万人に達した。

森林火災は、パーム油増産のための「野焼き」によって引き起こされたもの。場所はスマトラ島南部、カリマンタン島中南部、パプア(ニューギニア島の西半分)に集中しており、火災により引き起こされた「煙害(ヘイズ)」はに4300万人に達していると、インドネシア気象・気候・地球物理庁のヌグロホ報道官は先週末に語った。

「凄まじい規模の人道に対する罪だ」と、ヌグロホ報道官は言う。「しかし今は、犯人探しをしている場合ではなく、一刻も早い問題解決に集中しなければならない」

東南アジアでは例年、乾季になるとある程度のスモッグ(煙霧)は発生していた。農園などで、手っ取り早くパーム油や紙・パルプ生産のための耕作地を増やすべく焼畑農法を行うためだ。

グローバルな需要が引き金
火災は通常、農園などに範囲を限定されているのだが、そこから燃え広がっているのが現状だ。今年9月以降、煙害は周辺国にも拡大し、隣国のシンガポールでもマレーシアでも大気汚染指数が悪化。学校が休校になり、航空便がキャンセルになるなどの被害が広がっている。

シンガポールのストレーツ・タイムズ紙は、スマトラ島で起こる火災の半数以上はパルプ生産に起因すると報じている。残る半数が、パーム油生産に関連する火災だとみられる。

世界自然保護基金(WWF)によると、パーム油は国際的に取り引きされる植物油の65%を占める。
パーム油は、マーガリン、パン、朝食シリアル、カップラーメンといった食品、シャンプー、リップスティック、ろうそく、洗剤といった日用品、さらには一部の薬にも使われている。

被害を被っているのは人間だけではない。熱帯雨林に生息するオランウータンが危機に瀕しており、インディペンデント紙によると、世界のオランウータンの3分の1が生存を危ぶまれている。

アメリカの世界資源研究所は今年9月以降、インドネシアの火災による1日あたりの汚染物質排出量は、同国の20倍の経済規模を持つアメリカの1日あたり排出量を上回ると推測している。

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は9月、森林火災の責任を負うべき企業には断固とした処置を取ると言明。今週は初訪米を途中で切り上げて煙害対策のために帰国することを決めている。報道によれば、緊急事態宣言が発令される可能性もある。

12月にパリで開催される国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)を目前に、インドネシアの煙害対策には国際的な圧力がかかっている。東南アジアが青空を取り戻すのは、果たしていつになるか。【10月28日 Newsweek】
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2013年の煙害では、シンガポールの環境・水資源相がインドネシア政府に「緊急かつ決定的な対応」を要求したのに対し、インドネシアのアグン・ラクソノ調整相(公共福祉担当)は「シンガポールの振る舞いは子供じみている。がたがた大騒ぎすべきではない」と苦言を呈し、山火事による煙害は「インドネシアが意図したものではなく、自然がもたらしたものだ」と弁解した【2013年6月20日 AFP】とのことで、それに比べれば、今回はジョコ・ウィドド大統領が初訪米を切り上げて帰国したというのは、インドネシア側の認識も少しは改まったのかも。

ただ、ジョコ大統領が帰国しても、先述のように泥炭地の火災の消火は困難です。

【日本の年間排出量を超えるCO2放出】
気候変動・温暖化との関連で言えば、このインドネシア恒例の森林火災は、膨大な二酸化炭素を大気中に放出することにもなっており、地球規模の問題を惹起していると言えます。今年は例年にも増して厳しい状況にあるようです。

****<インドネシア>森林火災猛威、二酸化炭素16億トン放出****
インドネシア・カリマンタン島などで近年にない大規模な森林火災が起き、四国を上回る面積が燃えている。

各地の火災による温室効果ガスを米航空宇宙局(NASA)の人工衛星画像などから推計する「全球火災排出データベース」(GFED)によると、今年は10月30日までに日本の年間排出量を超える約16億3600万トン(二酸化炭素=CO2=換算)が放出された。

乱開発で大地が乾燥したうえ、今年は干ばつで燃えやすい。長年、二酸化炭素を吸収・蓄積してきた森林という「天然の貯蔵庫」が、地球温暖化を加速させる「火薬庫」と化している。

 ◇日本の年間排出量超す
インドネシア政府は7月以降、約2万平方キロが焼けたと発表。GFEDによると延べ12万カ所で火災が起きた。落ち葉や倒木が分解されずに地下十数メートルまで堆積(たいせき)してできた泥炭質の土が主に燃えている。

基本的に10月末に始まった雨期の降水による鎮火を待つしかない。火勢は衰えつつあるが、南米ペルー沖の海面水温が高くなる「エルニーニョ現象」の影響とみられる干ばつがひどく、例年通り消えるかは不明だ。

政府は現場に軍や警察などから2万人以上を投入。しかし、カリマンタン島南部パランカラヤの災害対策本部幹部は「水が不足しているうえ、ポンプで送水できる距離も300メートルが限界だ。煙がひどく奥地は被害確認すらできていない」。大地から湧き上がる煙とCO2を前に、人々はなすすべを失っている。【10月31日 毎日】
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森林火災を起こさくとも、泥炭地の開発は泥炭地を乾燥させ、地中の二酸化炭素を放出させます。
更に、森林火災によって・・・。

インドネシア政府も全く対応してこなかった訳ではなく、前回2013年10月21日ブログでも取り上げたように、泥炭地回復には乗り出しています。

しかし一方で、“世界の健康志向を背景としたパームオイルへの世界的需要拡大とバイオ燃料ブームによる利益のため、パームオイルプランテーションの大規模拡張計画も打ち出している。開発最優先の姿勢は変わらず、安上がりな拡張のために起きるであろう火入れを取り締まる有効な手立てを一向に打ち出す気配はない。”【2007年2月 FoE Japan】とのことです。

温暖化対策で各国が対応に苦慮しているなかにあって、この森林火災のためインドネシアは二酸化炭素の一大供給国となっています。

ジョコ大統領の断固たる姿勢が求められています。
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2015-10-22 23:53:50

温暖化対策 COP21に向けて噴出する議論 京都議定書に代る新たな枠組み合意は可能か?

テーマ:環境


海面上昇
(米航空宇宙局(NASA)の科学者チームの発表によれば、今後100~200年間で100センチ以上の海面上昇が起きるのは避けられないとのこと。また、グリーンランドた南極の氷床が急速に崩壊すると、100~200年間で最大3メートルの海面上昇が起こり得る・・・とも 【8月27日 AFP】 氷床は気温上昇でジワジワ解けるのではなく、あるとき巨大な塊が崩落するとのこで、その時海面も一気に上昇するのでしょう。)


【米中の削減目標提示で、合意に向けて“弾み”も】


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地球温暖化対策を巡っては先進国だけに温室効果ガスの削減を義務づけた「京都議定書」に代わり、すべての国が参加する2020年以降の新たな枠組みについて、来月30日からパリで開かれる国連の会議、COP21での合意を目指しています。

この会議を前に190余りの国が実務者レベルで交渉を行う最後の作業部会が日本時間の19日、ドイツのボンで始まりました。【10月20日 NHK】
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これまで温暖化に対する自国の対策については、途上国が削減義務を負わないことから京都議定書から離脱したアメリカ、先進国に削減義務を負わせることで自国の経済成長への影響を避けてきた中国、この両国が昨年11月に削減目標を公表、温暖化対策は9月25日の米中首脳会談でも両国が合意できた数少ない成果ともなっています。

レガシーづくり励むアメリカ・オバマ政権は、巨大ハリケーンや今も続く西部の大干ばつなど、度重なる自然災害によって気候変動問題へ真剣に取り組む必要を感じ始めているようにも見えます。
中国は、この問題でイニシアティブを取ることで、国際的な影響力をたかめようという思惑もあるようです。

*****<米中首脳会談>習氏、温暖化対策は前向き****
中国の習近平国家主席は25日、米中首脳会談に合わせ、途上国への資金支援など新たな地球温暖化対策を表明した。

世界最大の温室効果ガス排出国で、対策に後ろ向きだった中国の方針転換をオバマ米大統領は歓迎。
11月末からパリで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)での新たな温暖化対策の国際枠組み合意に向け、弾みがつきそうだ。

中国は、温暖化対策を進める途上国に対し200億元(約3800億円)の支援を表明した。これまで「温暖化の責任は先進国にある」などを理由に「途上国」として振る舞っていた中国が支援する側に回ることは、温暖化対策の責任をある程度認めたと言える。

COP21では2020年以降に途上国も含めたすべての国が参加する新枠組み合意を目指している。しかし、交渉は難航しており、先進国から途上国への資金支援が合意のカギを握っている。

また、中国はこれまで地方レベルで試験的に実施していた温室効果ガス排出量取引制度を17年に中国全土に拡大する方針を表明した。昨年11月に示した「30年ごろをピークに二酸化炭素(CO2)排出を減少させる」という目標達成に向けた初めての具体策だ。主要産業を対象に排出量の上限を定め、達成できない場合は、別の企業などが削減した分を購入して目標達成する仕組み。

米中は昨年11月にそろって削減目標を表明。米国は、国内の火力発電所から排出されるCO2を大幅に削減する規制案をまとめ、中国にも対策を働きかけてきた。

温暖化対策の新枠組み合意を政権のレガシー(遺産)と位置づけるオバマ大統領と、国際的な影響力を拡大したい習氏の思惑が一致しており、COP21で合意を主導する狙いがあるとの見方もある。

一方、日本は、削減目標の国連への提出が7月にずれ込み、国の地球温暖化対策計画の策定も遅れている。

中国の環境政策に詳しい明日香寿川(あすか・じゅせん)・東北大教授(環境政策学)は「評価できる内容だ。途上国への資金支援は途上国と先進国の対立解消に役立つ。排出量取引導入は日本の先を行っている」と話す。【9月26日 毎日】
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各国の目標提出期限とされていた10月1日、世界第3位の排出国ながら、これまで削減目標を国際的に公約してこなかったインドが、温室効果ガスの排出量について、2030年に国内総生産(GDP)当たり05年比で33~35%削減する目標を国連に提出したことで、各国の目標が出そろいました。

*****主要国の温室効果ガス削減目標*****
 中国 2030年にGDP当たり05年比60~65%減(遅くとも30年を排出のピークとする)
 米国 25年に05年比26~28%減
 欧州連合 30年に1990年比40%以上減
 インド 30年にGDP当たり05年比33~35%減
 ロシア 30年に90年比25~30%減
 日本 30年に13年比26%減
 韓国 30年に対策を取らなかった場合に比べ37%減
 カナダ 30年に05年比30%減
 ブラジル 30年に05年比43%減
 メキシコ 30年に対策を取らなかった場合に比べ25%減
 インドネシア 30年に対策を取らなかった場合に比べ29%減
 豪州 30年に05年比26~28%減
 南アフリカ 遅くとも25年を排出のピークとする【10月2日 毎日】
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【ぶり返す「先進国」「途上国」の問題】
米中の合意で“新たな温暖化対策の国際枠組み合意に向け、弾みがつきそうだ”とのことではありますが、実際ふたを開けてみると、従来からの先進国対途上国の対立もあらわになって、簡単ではなさそうです。

****温暖化対策作業部会 合意草案に反発相次ぐ****
・・・・議長が作成した合意文書の草案について、発展途上国グループの代表の南アフリカが「途上国の利益を損なうもので著しくバランスを欠いている」として修正を求める意見を表明しました。

政府関係者などによりますと、このあとの会合でも途上国からは草案について、自然災害による被害の補償や被害対策などで先進国による資金支援が明確でないことや、排出削減を進めるべき先進国の責任が途上国と明確に区別されていないことなどについて反発が相次いだということです。

これを受けて議長が2日目までに途上国側の意見を盛り込んで、新たに草案を作り直すことになり、合意に向けた交渉は今後も難航が予想されます。(後略)【10月20日 NHK】
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議長が作成した合意文書の当初草案では、「先進国」「途上国」との記述はなく、全ての国が「それぞれ国情にあわせて」対策を進めるとしていました。
これに先進国の責任を問う途上国が反発し、合意案に「先進国」「途上国」の表現が復活しました。

****温暖化責任、問う声再び 対策議論、国連作業部会 「先進」「途上」の二分表現復活****
新たな温暖化対策の国際枠組みを議論する国連の作業部会で、各国の対策に「差」を設ける議論が焦点になっている。

次期枠組みには全ての国が参加し、温室効果ガス削減や経済力が弱い国への支援に取り組むが、いまの温暖化を招いた先進国や、現在の排出量が多い新興国の責任を問う声が高まっている。
議論の行方によっては、日本を含む先進国により多くの負担が求められる可能性もある。
 
「これはバランスを欠く。条約の原則を書き換えるものだ」。19日にドイツ・ボンで始まった作業部会の冒頭、途上国を代表して南アフリカが切り出した。

批判したのは、共同議長がまとめた次期枠組みの骨格となる合意案。「先進国」「途上国」との記述はなく、全ての国が「それぞれ国情にあわせて」対策を進めるとしている。反発を受け、合意案に先進国、途上国の表現が復活した。

京都議定書では「共通だが差異ある責任」という原則に基づき、先進国のみに削減を義務づけ、途上国を支援する枠組みにした。

しかし、いまや世界の排出量の6割を途上国が占める。中国やインドなどの新興国は排出量が急増し、経済力もつけてきた。日本や米国は「差異ある責任」は認めつつも、「旧来型の二分論はのめない」と主張。新興国は削減だけでなく、資金支援でも応分の負担をするよう求める。

途上国も一枚岩ではなくなってきている。温暖化の被害を受けやすい南太平洋の島国は、新興国に対しても削減を求める。

中南米諸国は「途上国も応分の負担を」と、自らも削減や資金支援を打ち出し、合意をまとめようとしている。中国は、独自に約3800億円の支援を表明して途上国の支持を得ようとしている。(後略)【10月22日 朝日】
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南太平洋の島国は、“気候変動による海面上昇などで直接的な影響を受ける途上国の間で焦燥感が高まっている。これらの国々は先進国に加え途上国も積極的な温室効果ガス排出量削減に取り組むべきだと声高に主張。気候変動の原因を作ってきた先進国の責任追及を重視する従来の途上国の立場とは一線を画している。”【10月21日 産経】との立場です。

中南米諸国については、“氷河消失による洪水や水不足などに直面する南米のペルーやチリ、コロンビアなども「全ての国が法的拘束力を受け入れるべきだ」との声をあげる。”【同上】とのこと。

アメリカ、中国、インドに関しては
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ただし途上国と位置づけられてきた中国は6月末に国連に提出した文書で「パリでの合意は法的拘束力を持つことになる」としながらも、先進国と途上国の責任に差をつけるよう強調。インドも先進国を追及する姿勢を崩していない。

また米国ではオバマ大統領が気候変動問題に積極的だが、排出量削減は経済活動の足かせになると懸念する共和党主導の議会が障害になることは確実だ。コーカー上院外交委員長は「法的拘束力がある合意は条約とみなされ、上院での批准が必要になる」として、オバマ政権を牽制している。【同上】
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東日本大震災後に原発が停止し、今後の原発利用を含めたエネルギー政策に関する国民的合意が明確でない日本は目標作成に苦慮し、従来「05年度比」としてきた基準年を「13年度比」に置き換えることで見かけ上の削減率を上積みする対応も。

ただ、“京都議定書の基準年の90年比にすると、日本の目標は約18%減にとどまり、温暖化の被害を受けやすい島しょ国などから上積みを求める声が出そうだ。”【4月30日 毎日】との指摘もあります。

従来から繰り返されている「先進国」「途上国」の議論について言えば、現在の危機を招いた先進国が大きな責任を負っており、もし全ての国が参加する対策が途上国の成長を妨げるというのであれば、厳しい規制によって先進国の豊かさを犠牲にしてでも、結果的にゆるい規制の途上国に所得・富を移転してでも、地球全体の利益を考える・・・というのが正論でしょう。

もちろん、「自分の収入が減るとき、職が失われるとき、そんなことが言えるのか?」という話にもなりますし、現実問題として先進国の経済が停滞・後退すれば、一番しわ寄せが行くのが途上国でもあります。

ただ個人的には、目先の自分の利益を追求することに終始した議論というのも、つまらない話のように思えます。バランスの問題でしょうが。
欧州の先進国に押し寄せる難民の問題も似たような話でしょう。

【「2度目標」では不十分との指摘も】
COP21など現在の温暖化対策は、「地球の温暖化を産業革命前と比べて2度以下に抑える」ということを基本に構築されており、その対策がまとまらず、すったもんだしています。

しかし、そもそも「2度目標」が達成できても安全は保証されない、これまでの予想よりずっと危険な事態が起こる・・・という話もあるようです。

*****温暖化がもたらす想定外の未来*****
・・・そして今、気候変動研究の第一人者であるジェームズ・ハンセンが、「2度目標」に大きな疑問を投げ掛けた。

温室効果ガスの排出量を現在の目標よりも速いペースで削減しなければ、今世紀末までに海面上昇は数メートルに達する恐れがある。そうなれば現在の子供たちが生きている問に、東京、上海、香港、ニューヨーク、ロンドンなどの沿岸都市は人が住めなくなる。政治家やメディアは、2度目標を安全なガードレールのように考えているが、2度の温暖化でも非常に危険だ・・・・。(中略)

ハンセンは88年、米上院の公聴会で地球温暖化の危険性について証言。誰よりも早く気候変動の脅威を「予言」
した人物と考えられており、今回の論文にも大きな注目が集まっている。(後略)【8月25日号 Newsweek日本版】
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ハンセン氏らは、地球上の氷床が解けて、予想よりもずっと早いペースで海面が上昇していると主張しています。
まあ、そうなのかもしれませんし、違うかもしれません。

ただ、今の「2度目標」を前提にした対策もままならないのに、それでもダメだと言われても・・・困ります。
被害が現実のものとならない限り、こうした問題には本腰がはいらないのが現実です。
そして、その時にはすでに手遅れのことも多々あるのでしょう。
私はかまいませんが、若い人たちは大変です。
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2015-08-25 23:45:50

温暖化  アメリカ西部が「メガ干ばつ」へ ロシア・シベリアでは永久凍土誘拐でメタン放出

テーマ:環境


台風15号
(台風15号で、家の前の街路樹が根元から・・・・)

【久々に怖かった台風15号】
台風15号が今朝未明の3時~4時頃、私の住んでいる鹿児島県薩摩川内市をかすめる最悪コースで過ぎていきました。

うなりをあげる強風のなかで家が揺れて軋む・・・家の前の大きな広告塔が割れて電気関係がショートしたのか、窓の外の暗闇に一瞬閃光が走る・・・停電の暗闇の中で久しぶりに台風の怖さに身を固くして、ただ通り過ぎるのを待つだけでした。(飼っている猫は、さほど気にしていない様子でしたが)

幸い速度が速く、また、台風通過後の吹き返しがほとんどなく、強風が吹き荒れた時間はそれほど長くはありませんでした。(子供の頃経験した台風はなぜかいつも夜中にやってきて、しかも鹿児島付近では速度が遅く、一晩中吹き荒れることがよくありました。)

外が明るくなった頃、窓から通りをうかがうと、なんと、家の前の街路樹が根元から横倒しに倒れています。直径25cmほどある結構大きな街路樹です。

やはり広告塔は割れて、中の配線がむき出しになっていました。
外に出てみると、隣の空き家は窓が割れて風が建物内を吹き抜けたらしく、おもてのシャッターがグシャグシャに壊れていました。

沖縄県石垣島では、この地点では観測史上最高となる最大瞬間風速71メートルを記録したそうですが、あとで確認したところ、薩摩川内市では45メートルを記録したそうです。

感覚的には、もっと強かったのでは・・・という感もありますが、石垣島のように乗用車が吹き飛ぶようなことにはなっていませんので、そんなものかもしれません。

ただ、朝になっても電気が止まり、給水のためのポンプが止まって水も出ません。ということは、トイレも使えません。冷蔵庫の中のものもやがて解け出します。電動シャッターを動かせないので、建物内に取り込んだ唯一の足であるバイクも出せません。

何より、TVもパソコンも使えないので、情報が全く入らないことが困りました。
台風がどこを通り、どこに行ったのか・・・それすらわかりません。情報は、水や食料と同じくらい重要です。

電気も水も使えない状況で、いつ復旧するかもわかりませんので、携帯電話で身内と連絡をとり、今後のことなどを相談。
幸い、電気の復旧が7時半頃と早く、ようやく「やれやれ・・・」といったところでした。

【今年上半期は過去最高の平均気温】
そんな「自然の猛威」を改めて実感した日だったので、今日は温暖化、気候変動の話。

温暖化とはいっても、当然ながら異常寒波もあれば冷夏もある訳ですが、そういうなかでも今年は気温が高いようです。

****世界の上半期の平均気温 過去最高に****
国連の世界気象機関やアメリカ海洋大気庁によりますと、ことし1月から6月までの上半期の世界の平均気温は、調査を開始した1880年以降で最も高くなったということです。

ことし上半期の世界の平均気温は20世紀の平均よりも0.85度高く、これまでで最も高かった2010年よりも0.09度上回りました。

月別にみると、3月、5月、6月がこれまでの月間の平均気温の最高を更新し、1月と2月がそれぞれ2番目、4月が4番目の高さだったということです。

また、地域別に見てもユーラシアやアフリカなど多くの陸地で平均気温を上回っています。

一方、暑さ以外にも異常気象とみられる現象が世界各地で確認されています。

インドでは5月下旬から気温が急に上昇し40度を超える地域が相次ぎ、2000人以上が死亡しました。
その一方で、スカンディナビア半島では多くの地域でことし6月の平均気温が例年を下回り、ノルウェーでは1900年に統計を取り始めて以降、18番目に寒い月になったということです。

また、アメリカのカリフォルニア州では、3年前の2012年から雨や雪が少ない状態が続き、ことしも水源となる山間部の積雪が平年を大きく下回ったことなどから、ことし4月には初めて州全体に25%の節水が義務づけられました。

さらにタイでも去年1月からほとんどの地域で降水量が平年を下回っていて干ばつの影響で農作物にも被害が出ています。【8月10日 NHK】
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イランでは“体感温度74度”を記録したとか。
水源でもある氷河の融解も早まっているようです。

****世界各地を熱波襲う イランで体感温度74度、インド2300人死亡、アルプスの氷河ピンチ****
日本で猛暑日が続く中、世界各地も記録的な熱波に見舞われている。イランでは体感温度74度という「天文学的」(米紙ワシントン・ポスト)な暑さを記録したほか、欧米では山火事が相次いだり氷河の解けるペースが速まったりしている。

イラン南西部のペルシャ湾に面したバンダルマズハーでは7月31日に気温が46度となり、湿度などを加味した体感温度は74度に達した。同紙によると体感温度に関する公式記録はないが、2003年7月にサウジアラビアで観測された81度に次ぐ数値とみられる。

AP通信などによると、イラクの首都バグダッドでは7月30日、気温が52度に達した。政府は酷暑の予想を受け、同日から4日間を公休日とすることを急遽(きゅうきょ)決定。03年のイラク戦争以降、同国では発電設備の破壊などで電力不足が深刻化し、クーラーや扇風機が満足に使えない状態だ。

ただ4日には南部アマラで、暑さと電力不足に不満を募らせた市民らが街頭でアバディ政権を批判するなど反政権デモが頻発。イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」の支配地域奪還を目指す政権にとり頭の痛い問題となっている。

一方、インドでは1年で最も気温が高くなる4~6月、熱波による死者数が記録のある1990年以降最悪となり、インド政府は5日、2037が熱中症などのため死亡したと発表した。パキスタンでは6月、南部シンド州を熱波が襲い、州当局によると1200人以上が死亡する過去最悪の事態となった。

欧米でも熱波の影響は深刻だ。米ニューヨークでは7月29日、同日の気温としては過去3位タイとなる35.6度を記録。オーストリアでは気象当局が「過去248年の観測史上で最も暑い7月」と認定した。

スペインでも7月上旬、気温が記録的な水準に上昇。国内各地では山林火災が発生し、焼失面積は少なくとも計1万5千ヘクタールとも報じられている。

欧州の専門家は最近の調査の結果、世界各地で近年、氷河が解けるペースが加速していると指摘。アルプス地方では「氷河が数キロも後退している」とし、特に深刻な現象とも警告した。【8月5日 産経】
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【「北米大陸西部の自然界と人類は、現代史上の経験をはるかに超えた乾燥状態に見舞われるだろう」】
【8月10日 NHK】にもある、アメリカ・カリフォルニアの水不足については、5月18日ブログ「アメリカ・カリフォルニア 深刻化する水不足 もし来年も雨が降らなかったら・・・・」(http://ameblo.jp/azianokaze/day-20150518.html
)でも取り上げました。

また、西部ワシントン州で発生した一連の森林火災が同州史上最大規模にまで拡大しているほか、西部各地で山火事が広がっています。

****山火事消火に軍も出動 干ばつ続く米西部で多発****
干ばつの続く米西部各地で大規模な山火事が発生し、軍が200人出動する事態となっている。

全米省庁合同火災センター(NIFC)によると、18日現在でカリフォルニアやオレゴン州など7州、95カ所で山火事が発生し、約44万7千ヘクタールを延焼中だ。

CNNによると、これまでに2万5千人の消防士が消火にあたっているが、猛威を振るう火事を抑え切れず、軍も出動。山火事の消火への軍の出動は、2006年以来という。

当局によると、カリフォルニア州では、1月から8月までで、4382件の山火事が発生した。昨年の同時期に比べて、1335件以上多い。

アイダホ州では、50件の家が焼けたほか、27頭の馬が焼け死んだ。オレゴン州では26件の家が焼け、約300人が避難している。【8月21日 朝日】
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ただ、カリフォルニアなど西部各地の乾燥は今年にとどまるものではなく、これから始まる「メガ干ばつ」を示すものだとか。

****アメリカに迫り来る未曽有の「メガ干ばつ」****
今世紀後半に米南西部と大平原地域を、過去1000年で最悪の干ばつが襲うとの衝撃の研究が

この数年、カリフォルニア州を含む米西部は記録的な干ばつに襲われ、水不足と農作物の不作に悩まされている。

NASA(米航空宇宙局)は「州内の水源に残された水はあと1年分」と警告。同州産のオレンジやアーモンドの価格は既に高騰し、州政府は4月、州内全域を対象に25%の節水を義務付ける初の行政命令を出した。

しかし新たな研究によると、真の危機が訪れるのはこれからだ。米西部には、より「乾燥した未来」がやって来る。

今年2月、NASAとコーネル大学、コロンビア大学の研究チームが発表した論文によれば、米南西部と大平原地域には過去1000年で最悪の干ばっが迫っているという。そうした「メガ干ばつ」はおそらく今世紀後半に起こり、10~数十年続く可能性もあるとのことだ。

「われわれの研究によれば、北米大陸西部の自然界と人類は、現代史上の経験をはるかに超えた乾燥状態に見舞われるだろう。それに適応するのは、極めて困難かもしれない」と、研究チームは論文で記している。

そうなれば、人々の暮らしが今以上に過酷になることは避けられない。まず、水不足で食料生産が打撃を被るだろう。そして最も手ごわい問題は、飲み水の確保。既に米西部では、飲み水不足に陥っている地域がある。

「再生不可能な資源である地下水の枯渇が幅広い地域で進んでいる。これまでは地下水を活用することにより、自然に繰り返される干ばつの影響を和らげられていた」と、研究チームは指摘している。
「この地域の主要な貯水池であるミード湖とパウエル湖の合計に匹敵する量の地下水が枯渇したケースもある」

研究チームは、将来の温室効果ガス排出量に関する複数のシナリオに基づき17通りの気候変動モデルを検討した。それによると、将来の温室効果ガス排出量が「緩やか」にとどまると仮定しても、中世の温暖期(1100~1300年頃)の「最も乾燥した時代をも上回る」乾燥期が訪れる見通しだという。(後略)【8月25日号 Newsweek日本版】
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アメリカ北西部の環境が悪化しても、逆にこれまで農業に適さなかった土地が使えるようになるといった話も出てくるのでは・・・というのは、あまりに楽観的過ぎるでしょうか。

いずれにしても、世界規模での人口・産業の再配置は必要となるでしょう。そのとき日本がどうなっているのかは知りませんが。

【ツンドラに巨大クレーター】
“これまで農業に適さなかった土地”と言う意味では、ロシアのシベリアなどもそうした地域でしょう。
ただ、シベリアの永久凍土でも困った事態となっているようです。

****シベリアに謎のクレーター出現 メタン放出、恐れる学者****
それはまるで、地球の表面にぱっくりと開いた口のように見えた。

先住民族ネネツ人の言葉で「世界の果て」を意味するロシア・西シベリアのヤマル地方。8日、高度100メートルを飛ぶヘリコプターから見下ろすと、地平線まで広がるツンドラの平原に、月面のクレーターのような巨大な穴が現れた。ロシアメディア以外では最初の現地取材だ。

輸送用ヘリの操縦士が2014年6月、初めて見つけた。最寄りの拠点となる街から約400キロ離れ、トナカイ遊牧民がわずかに行き交う北極圏にある。

地元政府の緊急要請でロシアの科学者が調査を始めた。穴は直径約37メートル、深さ約75メートルあった。その後、同様の穴の報告が相次ぎ、4個が確かめられている。

では、穴はどのようにして生まれたのか。隕石(いんせき)の衝突、不発弾の爆発、宇宙人の襲来――。出来た瞬間を見た者はおらず、さまざまな臆測がされた。

真冬には気温が零下40度まで下がる厳寒の地。地中には永久凍土が数百メートルの厚さで広がっている。メタンが多く含まれ、近くには世界有数の天然ガス田もある。

研究者の間では「永久凍土が溶け、メタンガスの圧力が地中で高まって爆発した」との説が有力だ。

ロシア科学アカデミー石油ガス調査研究所のワシリー・ボゴヤブレンスキー教授は「ここのところの異常に高い気温の影響を受けた可能性がある」と話す。

将来地球温暖化が進み、凍土全体から、温室効果の高いメタンの大量放出が始まれば、さらに温暖化を加速させかね
ない。【7月19日 朝日】
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メタンはCO2以上に厄介です。

****メタンの温室効果、CO2の25倍 温暖化進む恐れ****
永久凍土はシベリアだけでなく、カナダやアラスカなど、北半球の大陸表面の24%に存在する。

温暖化による極地の気温上昇は、世界平均の2倍の速さで進むとされる。国連環境計画(UNEP)が2012年にまとめた報告書によると、今から2100年までに全地球の気温が3度上がれば北極では6度上昇し、地表付近の永久凍土の30~85%が失われる可能性がある。

特に心配されているのが、温室効果ガスの大量放出だ。全世界の永久凍土にあるメタンや二酸化炭素(CO2)の炭素量は、現在の大気に含まれる量の2倍。メタンの温室効果はCO2の25倍ある。どれほどの影響がでるのか、専門家でもまだ見通せていない。

名古屋大学地球水循環研究センターの檜山哲哉教授は「永久凍土の融解が進めば温暖化は加速し、大地や植物だけでなく人間社会にも大きな影響を及ぼす。100年後、1千年後を見通すための研究が必要だ」と話す。【7月19日 朝日】
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【温暖化のバロメーター 氷河融解】
ついでに、温暖化の影響を敏感に反映する氷河融解の話も。

****氷河融解縮小、観測史上最低水準に 研究****
世界の氷河は、過去120年の観測史上、最低の水準にまで縮小しているとの研究報告が3日、発表された。氷河融解のペースについては、21世紀の最初の10年間での加速が確認されたという。

学術誌「Journal of Glaciology(氷河学)」に掲載された論文によると、氷河の厚みは現在、平均で年間50~150センチのペースで減少しているという。

論文主執筆者で、スイスにある研究機関「世界氷河モニタリングサービス」のミヒャエル・ゼンプ所長は「これは、20世紀における氷河の厚みの平均減少速度の2~3倍に相当する」と語る。

世界10億人以上の、特にアジアや南米で暮らす人々は、飲料水の半分以上を雪や氷河氷の季節融解によって得ていることが、これまでの研究で明らかになっている。

世界の氷河の現在の融解速度は、科学的観測の対象となった過去120年間、あるいはおそらくもっと長い期間において、前例のないレベルに達しているとゼンプ所長は指摘した。

さらに、消失ペースが加速されていることにより、たとえ地球温暖化による世界気温の上昇が続かなかったとしても、多くの地域では氷河の縮小が止まらない動向が発生している。

今回の論文では取り上げられていないが、過去5年間の予備分析データは、氷河質量の急速な減少が現在も続いていることを示唆している。

氷河氷の消失量について、1998年に観測された20世紀の最高記録は「2003年、2006年、2011年、2013年と続けて更新され、また2014年にも更新される可能性が高い」とゼンプ所長は話している。【8月4日 AFP】
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老い先短い私にとっては「どんな世界になるのだろう・・・」という怖いもの見たさ的な話ですが、若い人たちにとっては深刻な話です。

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2014-11-25 22:09:51

温暖化対策  アメリカ・中国が“前向きな”温室効果ガス削減目標提示

テーマ:環境


APEC blue
(APEC終了後、再びスモッグに霞む北京市街 ただ、“APECブルー”は、当たり前のことではありますが、規制を行えば青空が戻ることも改めて人々及び中国政府に認識させました。 「会議中だけでなく、普段から何とかしろよ!」という不満も強まるでしょう。 “flickr”より By 居居之路 https://www.flickr.com/photos/83817210@N02/15850344402/in/photolist-pMjHfL-pLJShb-p6KJjx-q9Dab3-pJw1V1-q4eE8Z-pMJuqt-pQNYPK-pdnCoB-pMV6zp-q4tCfM-p8zGmc-q5jw2X-q5jxzX-p8zGVZ-q6bWw5-pdnCnp-pJQi8W-q7LKFs )

【新たな温暖化対策の国際枠組み合意に道筋も】
先のAPECを舞台にした各国間、特にアメリカと中国の駆け引きについては多くが報じられていますが、そうしたパワーゲーム的なものには、個人的には辟易する感もあります。それが日本を含む国際社会の現実ではありますが・・・。

そのなかでもやや明るいものとしては、温室効果ガス削減に向けて、これまで動きが鈍かった二大排出国でもある両国が前向きな削減目標を明示したことがあります。
もちろん、これも両国の思惑が背後にあるものでることにはかわりありませんが。

****<温室ガス削減>米中の新目標、国際枠組みに道筋****
温室効果ガスの2大排出国の米中がそろって前向きな削減目標を示したことで、来年末に期限が迫る新たな温暖化対策の国際枠組み合意に道筋が見えてきた。

オバマ米大統領は「2025年までに05年比26~28%削減」を打ち出した。「20年までに同17%削減」を掲げてきたが、米ホワイトハウスは声明で「20~25年は削減ペースを倍にする」と明言。

シェールガス量産化で二酸化炭素(CO2)排出量の多い石炭から天然ガスへの転換が進んでいることが積極策の背景にある。温暖化交渉に詳しい高村ゆかり名古屋大教授は「かなり野心的だ」と評価する。

中国の習近平国家主席は、CO2排出量を「遅くとも30年ごろをピークに減少させる」と約束し、総量削減の時期に初めて踏み込んだ。

従来は国内総生産(GDP)当たりの排出削減目標しか示さず、実際の総排出量は右肩上がりだった。産業革命以降の気温上昇を2度未満に抑える国際目標達成には、中国が早期に総量削減に転じることが不可欠で、近年は途上国の間からも批判が出ていた。

9月の国連気候変動サミットで、米中は20年以降の削減目標を「来年3月までに提出する」としていた。
歩調を合わせて前倒しした背景には、12月の国連気候変動枠組み条約第20回締約国会議(COP20)に向けた戦略がある。日本政府の交渉担当者は「目標の姿を早々と示すことで、交渉の主導権を握る意思は明らかだ」と指摘した。

中国では「産業構造の変革はあらゆる利害の調整が伴い、至難を極める」(公衆環境研究センターの馬軍代表)のが現実だが、米中で温暖化対策で協力する姿勢を見せられれば、世界に対するアピールになるという計算ものぞく。オバマ政権にとっては、削減に消極的な共和党の説得にも中国との連携は有効だ。

一方、欧州連合(EU)は警戒を隠さない。EUは10月に先陣を切り「30年までに1990年比40%以上削減」の目標を決めた。ヘデゴー気候変動担当欧州委員は12日、短文投稿サイト「ツイッター」で「(中国の排出ピークが)30年ごろは遅すぎる。2度目標は達成できるのか」と疑念を示した。【11月12日 毎日】
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【アメリカ国内では批判も】
アメリカ国内、特にオバマ大統領との対決姿勢が強まっている野党・共和党は、今回目標設定について、アメリカにとっては負担が重く、中国には甘いものだと批判しています。

****米中温室効果ガス削減合意に反発 共和党、大統領と新たな火種****
 ■「非現実的計画 後任に押しつける」
米中首脳が会談で合意した温室効果ガス排出量の削減目標に対し、米国内では12日、共和党が強く反発し、オバマ政権との新たな対立要因として浮上した。

12日に北京での首脳会談で合意されたのは、(1)米国は温室効果ガス排出量を、2025年までに05年比で26~28%削減(2)中国は30年ごろをめどに排出量を減少させ、非化石燃料の比率を20%にする-という内容。

これに対し、共和党のマコネル上院院内総務は「合意に動転した。非現実的な計画であり、それを後任の大統領に押し付けることになる。公共料金は上がり、雇用は大幅に減るだろう」と非難した。

オバマ大統領はこれまで、議会での審議を回避し、大統領権限を行使する形で二酸化炭素(CO2)排出規制などを打ち出している。

これを踏まえ、マコネル氏は「排出規制はすでに米国内で混乱を引き起こしているにもかかわらず、中国には(30年までの)16年の間、何も求めないのか」と憤りを見せた。

ベイナー下院議長も「(今回の合意は)手頃で信頼性が高いエネルギーを撲滅しようという、大統領の運動だ」と批判した。

共和党は産業界の意向を背に、オバマ政権の気候変動対策に強く反対してきた。それだけに合意は火に油を注いでおり、先の中間選挙で大勝し、来年1月からの新議会で上下両院を握る共和党は、「新議会での優先議題だ」(ベイナー氏)と色をなしている。【11月14日 産経】
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共和党議員に加え、産炭州出身の民主党議員も合意に反対の立場で、アメリカの新目標の今後は、国内政治動向にも左右されそうです。

【米中ともに“石炭離れ”が背景に】
アメリカ・中国がここにきて足並みをそろえて前向きに見える目標設定を行った背景には、両国で進む“石炭離れ”があると指摘されています。

“この両国の声明の背後には米中の同じ動きがある。石炭離れだ。中国は、発電の80%を石炭で賄っている。米国はシェール革命のおかげで、石炭から天然ガスへの燃料転換が進み、石炭火力の比率は減少したが、それでも40%を石炭火力に依存している。化石燃料のなかで、CO2を最も排出する石炭の消費量を削減したいというのが、オバマ大統領と習主席共通の思いだ。”【11月19日 WEDGE】

アメリカ国内には、上記共和党の批判に代表されるような、石炭業や産業界からの石炭消費削減への反対もありますが、オバマ政権としては、石炭より近年増産が進むシェールガス、オイルを推進するほうが、アメリカ経済にメリットをもたらすとの判断があります。

すでに“今年の6月には既存の火力発電所からの規制値を環境保護庁は発表した。大気浄化法に基づき既設の発電所からのCO2の排出を削減する案だ。05年との比較で30年に火力発電所からの排出量を30%削減することが全米の目標とされ、州毎に目標値が割り振られた。”とのことで、新目標値の“25年に26%から28%削減”は、“30年に30%の火力発電所を対象とした削減目標”と大きな違いはないとも言えます。

“05年が基準年に選定されたのには理由がある。過去最大の排出量の年なのだ。それから、排出量は減少を続け12年時点で既に15.8%減少しているのだ。30%の目標値の半分以上達成済みであり、それほど達成は難しくない可能性はあるが、石炭産業には大きな影響がありそうだ。”【同上】ということで、オバマ大統領としては、新目標も射程距離にあるとの判断のようです。

中国の石炭離れの背景には、“APECブルー”として再び話題にもなった深刻な大気汚染があります。
中国は世界一の石炭生産国であり、消費国ですが、その石炭消費が深刻な環境汚染を惹起していることは周知のところです。

“今年3月の全国人民代表大会では、李克強首相が開会の演説で「貧国と環境汚染に対し宣戦布告を行う」と述べ、スモッグを「非効率で盲目的な開発に対する自然の警告」と称した”【同上】ということで、石炭消費を抑制するために、発電部門における原子力、水力、風力、太陽光などの導入を中国政府は進めています。

この結果、すでに国内石炭生産及び需要は減少に転じています。
また、中国政府は、大気汚染改善のために石炭輸入量と品位も制限する意向を示しています。

従って、「遅くとも30年ごろをピークに減少させる」という新目標は、今の流れでいけばおのずと達成されるものでもあるようです。

*****需要減で石炭生産量も削減し始めた****
・・・・もともと大気汚染対策で石炭使用量の削減を始めたと言える中国だが、石炭の消費量が抑制されれば、CO2の排出量も抑制される。(中略)

中国のCO2排出量の約8割は石炭の燃焼によるものだ。大気汚染対策のための石炭使用量抑制が、そのまま温室効果ガス排出抑制に大きく結びつく。

世界のCO2排出量のうち43%が石炭の燃焼からのものだ。中国の石炭の排出量比率の高さは世界の中でもずば抜けている。

それゆえに石炭対策が温室効果ガス排出減に容易に結びつく。30年までに排出量のピークを迎えるという中国の目標は、石炭離れが始まった中国では当たり前のことを言っているだけのように取れる。【同上】
******************

そんな事情もあって、中国政府は目標達成に自信を示しています。

****中国 気候変動対策に決意と自信****
中国政府が発表した、二酸化炭素の排出量を2030年ごろまでに減少に転じさせるという目標について、政府の高官は「気候変動対策に当たる決意と自信を示している」と述べ、排出量が世界最大の国として国際社会への責任を果たす姿勢を強調しました。(中略)

また解副主任は、今月開催されたAPEC=アジア太平洋経済協力会議の期間中、車の規制などの特別措置によって北京では、大気汚染が一時的に改善したことにも触れ、「北京で青空を常態化させることも不可能ではない」と述べ、化石燃料への依存を減らすなど気候変動対策を進めることが大気汚染の改善にもつながるという考えを示しました。【11月25日 NHK】
******************

【「緑の気候基金」】
原発を含めたエネルギー政策が不透明な日本は、温室効果ガス削減目標を打ち出すことができずにいます。

20日、日本を含む国々が、発展途上国の温暖化対策を支援するために93億ドル(日本は15億ドル)を拠出することを表明しています。

****発展途上国の温暖化対策支援 93億ドル拠出へ****
来月ペルーで温暖化対策を話し合う国連の会議、COP20が開かれるのを前に、日本を含む20余りの国が、発展途上国の温暖化対策を支援する「緑の気候基金」に最大で93億ドルを拠出すると表明しました。

「緑の気候基金」は、途上国の温室効果ガスの削減策や温暖化による被害を軽減する対策を支援するために設けられ、来年後半に実際に運用が始まる見通しで、20日、ドイツのベルリンで、各国に基金への拠出を募る会合が開かれました。

会合のあとの記者会見で、緑の気候基金のシェイクフルーフー事務局長は、21か国から最大で93億ドル(日本円でおよそ1兆900億円)の拠出が表明されたことを明らかにしました。

このうち、アメリカが30億ドル、日本が15億ドルを拠出すると表明したほか、パナマやモンゴルなどの一部の途上国も拠出に応じたということです。

温暖化対策を巡っては、来月ペルーで開かれるCOP20で新たな枠組みについての交渉が行われますが、先進国と途上国の間では今後の削減目標や資金援助の額などで対立が続き交渉は難航しています。

今回、先進国が中心となって巨額の資金援助を表明したことについて、シェイクフルーフー事務局長は、「COP20を控えたわれわれに新たな期待や熱意を抱かせる前向きな結果だ」と述べ、難航する交渉の進展に期待を示しました。【11月21日 NHK】
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京都議定書でも、クリーン開発メカニズム (CDM 先進国が開発途上国に技術・資金等の支援を行い温室効果ガス排出量を削減、または吸収量を増幅する事業を実施した結果、削減できた排出量の一定量を先進国の温室効果ガス排出量の削減分の一部に充当することができる制度)が認められていますが、国内での削減が難しいレベルにもある日本としては、途上国支援を通じた実績を重ねていくことが、これまで以上に重要になるのではないでしょうか。

もっとも“国内での削減が難しいレベルにもある”とは言っても、最近話題の水素を使った燃料電池自動車(FCV)のようなイノベーションがあれば事情は一変します。

画期的なイノベーションはともかくとしても、“米中環境協力により、エネルギー・環境技術の協力がさらに進む可能性がある。日本の技術を利用し途上国で温室効果ガス削減に協力するというのが、日本の方針の一つだが、うかうかしていると日本の技術が陳腐化するということを忘れてはいけない。デフレの時代に欧米が日本に差をつけた技術もある”【11月19日 WEDGE】ということで、常に技術革新を助成・誘導していく社会・経済システムが必要です。

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2014-11-04 21:48:53

地球温暖化  IPCCは目標達成の「道筋はある」とは言うものの・・・

テーマ:環境

IPCC報告書
【11月03日 毎日】

【目標達成に許容される排出量のすでに3分の2を排出してしまった。それでも「道筋はある」】
2日に公表された地球温暖化に関するIPCCの報告を各紙が報じています。

****IPCC報告書:温暖化、30年で許容上限 迅速対応迫る****
国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は2日、地球温暖化を巡る最新の研究成果をまとめた第5次統合報告書を公表した。

今のペースで温室効果ガス排出が続けば、今世紀末には人々の健康や生態系に「深刻で広範囲にわたる後戻りできない影響が出る恐れ」が高まり、被害を軽減する適応策にも限界が生じると予測。(中略)

有効な対策を取らない場合、今世紀末の世界の平均気温は2・6~4・8度上昇。海面は最大82センチ上がる。

2度以上の上昇で穀物生産に悪影響が表れ、4度以上で食糧安全保障に大きなリスクが生じるとした。

さらに、アジアで暑熱による死亡率が非常に高まるなど、「温暖化の規模や速度が大きいほど、人が適応できる限界を超える可能性が増す」と警告した。【11月3日 毎日】
*******************

4度上昇した場合、例えば、アフリカでは作物生産や人々の生計が被害を受ける恐れが、小さな島国では低い土地や沿岸部で洪水や浸水のリスクが、アジアでは熱暑による死亡率が、海岸ではサンゴの白化・死滅が、北米では河川や沿岸部の洪水被害が、それぞれ非常に高まると分析されています。

総じて言えば「恵まれない境遇の人々や地域がより大きなリスクを抱える」と警告されています。【11月3日 毎日より】

今世紀末までの気温上昇を2度未満に抑えるという国際目標の達成には、産業革命以降の世界全体の二酸化炭素(CO2)の累積排出量を、約3兆トンに抑える必要があるとのことですが、すでに約2兆トンを排出しており、現在のペースで排出が続けば、あと30年で限界を超えると指摘されています。

「もう後がない」とも言えますし、「まだ何とかなる」とポジティブに見ることもできます。

これまでできなかった排出抑制が、今後急に改善するだろうか?・・・というのはもっともな疑問ではありますが、そう言ってしまっては身も蓋もありませんので、ここは敢えてポジティブに考えて、「難しいけど、まだ道筋はある」というのがIPCCの姿勢のようです。

****気温上昇2度未満に抑える「道筋ある」 IPCC報告書****
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球温暖化に関する第5次評価報告書の仕上げとなる統合報告書をコペンハーゲンで開かれた総会で承認し、2日公表した。

温室効果ガスの排出をこのまま続けると世界的な影響が深刻化するが、それを避けるために国際社会が目指す気温上昇を19世紀末の工業化前と比べて2度未満に抑える目標について、「道筋はある」と明記した。

国連で進められている温暖化対策の交渉は年末から本格化するが、対策に早急に乗り出すか否か、国際社会に決断を迫る内容となった。(中略)

IPCCは特定の政策を決める機関ではないが、国際社会が掲げる2度目標を中心に長期的な対策を分析。「2度未満に抑制するための可能性が高い道筋は複数ある。そのためには今後数十年で大幅な排出削減が求められる」と踏み込んだ。

具体的には、目標達成のために、世界全体の温室効果ガス排出量を2050年に半分ほど、今世紀末にほぼゼロにする道筋を描いた。

このほか、現状以上の追加的な削減策が取られないと、食料不足など深刻で取り返しのつかない世界的な影響をもたらすリスクが「高い」~「非常に高い」状態になると警告した。

人間がこれまで出してきた累積の二酸化炭素排出量と気温の上昇量はほぼ比例するというのが第5次評価報告書の新しい見解。

2度未満に抑えようとすれば累積量は約2兆9千億トン。すでに3分の2を排出してしまったという数字も初めて明記された。

現在の排出量が続くと20年ほどで温暖化の深刻な状況を避けられる可能性は閉ざされてしまう。

主な削減技術としては、バイオ燃料や、二酸化炭素を地中に閉じ込めるCCS(二酸化炭素回収貯留)、原子力、風力・太陽光利用を挙げた。

こうした削減策をとると経済成長が鈍くなるなどのデメリットをもたらすが、対策が遅れると問題はさらに大きくなることも指摘した。【11月3日 朝日】
*******************

【「実現不可能な目標を追い続けるふりをすることで、各国政府は気候変動への大規模な適応策に乗り出す必要から目をそらすことができる」】
“目標達成のために、世界全体の温室効果ガス排出量を2050年に半分ほど、今世紀末にほぼゼロにする道筋を描いた”・・・・昨今の気候変動に関する会議での各国の交渉・議論を見ていると、気が遠くなるような目標にも思えてしまいます。

EUのように気候変動問題への対応を国際影響力を高める上で戦略的に位置づけている国々は別として、新興国や途上国が今後の経済成長を犠牲にして温暖化に取り組むとはなかなか・・・・。

****目標「気温上昇2度以下」は無意味****
・・・・摂氏2度という目標値が最初に注目を集めたのは1990年代初めのこと。

当時、複数の国際的な科学委員会が、人 類や他の生物が過去1万2000年にわたって適応してきた比較的安定した気候条件を維持し、気候変動による干ばつ や熱波、海面上昇がもたらす深刻な被害を一部阻止する方法として、摂氏2度という上限値を提案した。

その後、2009年にデンマークのコペンハーゲンで開催された「国連気候変動枠組条約第15回締約国会議 (COP15)」においてまとめられた「コペンハーゲン合意」でも、気候システムへの“危険な”人為的影響を避け る水準として、地球の平均気温の上昇を2度以下に抑えることが盛り込まれた。

「採用された摂氏2度という数値には、科学的な根拠がほとんどなかった」と、Nature誌に寄せた記事の中でビク ター氏は述べている。

「それでも、その数字は1つのわかりやすい焦点を示し、それまでの議論でもなじみがあっ た。(中略)当時、摂氏2度というのは大胆でありながら、おそらくは実現可能な目標に思えた」。

多くの国や活動団体にとって、この目標は「ほとんど信仰に近いもの」になったと、イギリスのティンダル気 候変動研究センターに所属するアンドリュー・ジョーダン氏は近年発表した論文の中で述べて いる。

「この目標に疑問を投げかけることは、(中略)気候変動の問題に団結して取り組む理由そのものに異議 を唱えるのに等しい」。

不可能で誤解を招く目標
しかし、ビクター氏のような批判派は、この目標が事実上達成不可能になった今、この数値が呼び起そうとし ている取り組み自体の妥当性が揺らいでいると主張する。

予測モデルの中には、摂氏2度以下の目標は依然として 達成可能だとするものもあるが、それらのモデルは、例えばすぐさま世界が足並みをそろえて努力する、または 新たな技術が急速に広く採用されるといった“大胆な想定”に基づいている。

「また、この実現不可能な目標を追い続けるふりをすることで、各国政府は気候変動への大規模な適応策に乗り出す必要から目をそらすことができる」とビクター氏らは解説記事の中で述べている。(中略)

ビクター氏もオッペンハイマー氏も、摂氏2度という目標が容易に達成可能でなくなりつつあるという点では見 解を同じくしている。「目標を達成できない可能性は高い」とオッペンハイマー氏は述べる。

「それでもなおこ の数値は、われわれが留まるべき、また立ち戻るべきレベルについての科学的見解を示している。この目標を逃 したからといって、地球が爆発したり、気候政策が終わりになるわけではない。ただわれわれが達成し損ねた事 実を明確に示すというだけだ」。【10月2日 NATIONAL GEOGRAPHIC】
*******************

単純明快な目標を掲げるというのは運動論としては有意義なことではありますが、いかんせん事実上達成不可能になりつつある感は否めません。

近々に、現実を踏まえた仕切り直しも必要になるのではないでしょうか。

【CO2が商品となる日もそう遠くない?】
CO2削減技術としては、コストを要するものよりは、利益に誘導されるものの方が普及しやすいと言えます。
その意味で、CO2を回収して新たな商品を生み出す技術の開発が期待されます。

****CO2回収貯留、収益化のきざし****

二酸化炭素(CO2)の排出量を削減し、地球温暖化を食い止めようという取り組みはなかなか進まない。だが、企業がCO2から利益を得ることができるとしたらどうだろう?

CO2が商品となる日はそう遠くなさそうだ。米国だけでも多くの企業が、排出されたCO2を漂白剤、ベーキングパウダー、自動車のシート、オムツ、燃料などの日用品の製造に必要な化学物質に変換させられないかと試みている。

これらの企業は環境保護に貢献しているだけではない。こうした試みは商業化されつつあり、企業は堂々と利益を追求している。ジェット燃料だけでも2010年の市場規模は2000億米ドルに達しており、将来性のあるビジネスとして注目されている。

「世界は炭素回収の方向に向かっている。これがビジネスになるとわかれば、ますます積極的に取り組む企業が増えるだろう」と、テキサス州オースチンの企業、スカイオニック(Skyonic)社のスポークスマン、ステイシー・マクダイアミッド(Stacy MacDiarmid)氏は語った。

同社は、発電所等、CO2排出量の多い産業拠点の近くにプラントを設置し、排出されるCO2を回収する。回収したCO2に塩や水を加え、電気を使って高純度の炭酸水素ナトリウム(重曹)、塩酸や漂白剤を生産する。同社は今月末にも最初の商業的CO2回収プラントを建設する予定で、この事業から5000万ドルの年間収益を見込んでいるという。

マサチューセッツ州ベッドフォードに拠点を置くジュール(Joule)社も注目すべき企業だ。遺伝子操作した藍藻を触媒にCO2と日光、水を化学反応させ、自動車用燃料を作る。

このテクノロジーではCO2という廃棄物から直接、燃料を作ることができるため、化石燃料を使用する必要がない。

ジュール社が開発する燃料は燃焼エンジン内で使用でき、理論上は電気自動車を利用しなくても、環境に負荷をかけずに自動車を走らせることができる。うまく行けば、この燃料は1バレル50ドル(1リットル当たり約32セント=約34円)ほどで販売される見通しだ。

大気中のCO2の有効利用はビジネスとしても、また環境保護の観点でも大きな効果が期待出来る。現在、温暖化対策の切り札とされているCO2の回収貯留(CCS)技術から大きなステップを踏み出すことになる。

CCSとは、廃棄物からCO2を分離し、加圧により液体化して地中の適した地層に埋め、長期間貯留する技術だ。この方法を使えば、大気中からCO2を取り除くことはできるが、かかるコストが非常に大きいため、商業的なインセンティヴがない。

燃料やケミカルの分野は市場規模が大きいため、CO2を有効利用すれば、利益が生まれるだけでなく、大気中のCO2量を大幅に削減することができる可能性がある。

プラスチック容器や塗料、マットレスのクッション材、紙おむつの基本材料であるポリマー分野でもCO2の利用が可能だ。

マサチューセッツ州ウォルトハムのノボマー(Novomer)社がこれに目を付けた。現在、ポリマー業界では採掘量全体の7~8%の石油やガスを使用しており、環境に大きな負荷をかけている。

ノボマー社の技術で、化石燃料の使用量が半分に削減されるという。独自の触媒を使い、CO2または一酸化炭素中の炭素分子を一般的な化学原料と反応させる。CO2はプロピレンや酸化プロピレンなどの石油由来の原料の50%を代替する。同社は、ガス会社からCO2を買い取ることで、生産コストを現在の20分の1に削減できる見込みだという。

自動車、靴、家具、テキスタイル用の熱溶融性接着剤、住宅・ビル用硬質フォーム断熱材、そして金属、プラスチック、木材の加工・保護用コーティング材などを製造販売している。【10月10日 NATIONAL GEOGRAPHIC】
*********************

企業がCO2から利益を得ることができるようになれば、局面は大きく変わります。
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