2017-03-10 22:57:22

エジプト ムバラク無罪確定に見る「アラブの春」終焉 トランプ政権との蜜月 キリスト教徒迫害

テーマ:中東情勢

(2016年12月11日、爆発が起きたカイロのコプト教総本山、聖マルコ大聖堂前で泣き叫ぶ女性【2016年12月11日 産経フォト】)

【ムバラク元大統領の無罪確定も、社会混乱なし】
韓国では、憲法裁判所が朴槿恵(パク・クネ)前大統領に対する罷免を決定したことを受けて朴氏は失職。

“失職で朴氏は、大統領が持つ不訴追特権を失う。朴氏の疑惑を捜査してきた特別検察官は、朴氏を崔被告と共謀した「容疑者」とみなし、捜査を検察に引き継いでおり、検察が今後、朴氏の逮捕や起訴に踏み切る可能性がある。”【3月10日 産経】

かつての権力者が、その犯罪責任を問われれ投獄されるという韓国政治の歴史が繰り返されそうです。悪しき政治風土です。

エジプトでも、かつての権力者ムバラク元大統領が2011年のエジプト革命で反政府デモ隊の殺害に関与した罪に問われていましたが(一審では終身刑)、3月2日、最終審判決で“無罪”が確定しました。

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<エジプト>「革命揺り戻し」・・・・ムバラク氏無罪****
エジプト破棄院(最高裁に相当)は2日、2011年のエジプト革命で反政府デモ隊の殺害に関与した罪に問われたホスニ・ムバラク元大統領(88)に無罪を言い渡した。国営メディアが報じた。

今回は最終審で、無罪判決が確定する。エジプトは13年のクーデター以降、軍を中心とする強権体制に回帰しており、軍出身のムバラク氏への無罪判決は「革命の揺り戻し」の象徴と受け止められている。
 
革命時には、治安部隊との衝突などでデモ参加者ら約850人が死亡した。検察側は、ムバラク氏が「デモ隊弾圧に使用された車両や武器を供与した」と主張したが、裁判所は訴えを退けた。
 
2日にカイロ郊外の警察学校で開かれた公判には、ムバラク氏も滞在先の軍病院からヘリコプターで移送されて出廷し、改めて無罪を訴えた。これまでも「国家と国民を守るために生涯をささげてきた。デモ隊の殺害を命じたことなど決してない」と主張していた。
 
革命後に民主的選挙を経て、イスラム組織ムスリム同胞団主体のモルシ政権が誕生したが、軍は13年7月に反政権デモに便乗し、クーデターで実権を奪った。

翌14年の大統領選ではクーデターを主導したシシ氏が当選。シシ政権は革命前と同様、同胞団など反政権派を弾圧し、強権的な統治を行っている。
 
経済や治安を改善できないシシ政権に対して、革命に参加した若者らの不満は徐々に高まっており、今回の無罪判決も、現政権への不満につながる可能性がある。
 
ムバラク氏は1981年から約30年間、独裁体制を敷いたが、11年に民主化要求運動「アラブの春」の圧力で大統領を辞任した。

デモ隊殺害事件では12年6月の1審で終身刑判決を受けたが、13年1月の上訴審で裁判のやり直しが決定。14年11月のやり直し裁判では起訴手続きに不備があったとして公訴棄却の判決が出て、検察側が上訴していた。【3月3日 毎日】
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ムバラク氏の処遇に関しては、これまではエジプト国内で大きな関心が払われていましたが、今回の無罪確定に関してはほとんど“騒ぎ”にはなっていないようです。

ムバラク氏の失脚は「アラブの春」の象徴でした。

ムバラク時代以上の強権支配ともいわれるシシ政権にあって、「アラブの春」が終わったというのは今更のことではありますが、ムバラク氏の無罪確定以上に、その決定が社会的に大きな騒動を引き起こすこともなく受け入れられるという現状が、「アラブの春」が完全に終わったことを物語ります。

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ムバラクの無罪確定でアラブの春は本当に終わった****
・・・・意外なのは、14年に無罪判決が下されたときはエジプト全土で怒りのデモが起きたのに、今回は驚くほど街が静かだったことだろう。
 
「エジプト人はこういうことに慣れてしまった」と、カーネギー国際平和財団の中東専門家ミシェルーダンは指摘する。「ムバラク時代の政府高官が相次いで無罪放免になったり、起訴が取り下げられたりするのは今や日常茶飯事だ」
 
今回の判決は、チュニジアに始まりエジプトで本格的に火が付いた「アラブの春」が、名実共に息絶えたことを印象付けた。「今回の判決は、(エジプトの若者たちが)11年に要求して勝ち取ったかに見えた変革が、完全に失われてしまった証拠だ」とダンは語る。【3月14日号 Newsweek】
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【シシ・トランプ蜜月】
シシ政権は、軍事クーデター・人権侵害を問題視するアメリカ・オバマ前大統領とは関係が悪化しましたが、人権問題などには関心がないトランプ大統領とは良好な関係が築けるようです。

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トランプ氏、エジプト大統領と会談 軍事支援の継続表明****
トランプ米大統領は23日、エジプトのシーシ大統領と電話会談した。

エジプト国営中東通信などによると、トランプ氏は経済危機などの課題に直面しているエジプトがテロとの戦いに力を注いでいることに感謝していると述べ、同国への軍事支援の継続と経済改革への支援を表明した。シーシ氏の訪米を心待ちにしているとも伝えた。
 
米国はエジプトに年13億ドル(約1480億円)の軍事支援を続けていたが、2013年に当時のムルシ大統領が打倒された後に軍・治安部隊とデモ隊の衝突で多数の死者が出たことで、軍事支援の一部を15年まで凍結していた。
 
シーシ氏は昨年9月、国連総会に出席するために訪米した際にトランプ氏と会談。11月の米大統領選で当選が決まると、各国首脳で最初にトランプ氏に電話で祝意を伝えた。【1月24日】
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トランプ政権は、シシ政権が徹底弾圧するイスラム組織ムスリム同胞団をテロ組織に指定するかについて検討を進めていることが関係筋の話で明らかになったとも報じられています。【1月27日 ロイターより】

また、メディア批判が問題視されるトランプ大統領ですが、シシ政権はトランプ支持を明らかにすることで、「共通の立場」をアピールしています。

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<エジプト>トランプ氏のメディア批判「称賛****
トランプ米大統領がイスラム過激派のテロを巡って「多くの場合、不誠実な報道機関は報じたがらない」などと発言したことを受けて、エジプト外務省のアブゼイド報道官は7日、「米政府の立場を称賛する」との声明を発表した。

エジプトで起きたテロを巡りエジプト政府の治安対策の不備が指摘されることへの不満を背景に「米欧メディアは不公平だ」と訴えた。

アブゼイド報道官は声明で「米国大統領がテロ報道について批判し、明らかに偏向に基づいて報じられなかったテロ事件のリストをホワイトハウスが公表したことを称賛する」と述べた。

また「一部の米欧メディアは、特定の国や犠牲者には同情するが、エジプトなどでテロが起きると『治安政策の失敗』などと非難する」と述べ、発生場所によってテロ事件の報じ方が異なっているとの見方を示した。(後略)【2月8日 毎日】
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【従来の宗教間のもめごととは異質なIS分派によるキリスト教徒迫害】
エジプトにおけるテロ頻発・治安悪化、物価上昇・不景気という問題は、1月25日ブログ“エジプト テロの頻発と物価上昇・経済混乱 シシ人気に陰りも”http://ameblo.jp/azianokaze/day-20170125.htmlで取り上げました。

状況は改善していませんが、最近問題となっているのはイスラム過激派(IS分派)によるキリスト教徒迫害です。
エジプトの国教はイスラム教ですが、人口約8500万人の10%弱はキリスト教の一派であるコプト教徒が占めています。

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<エジプト・シナイ半島>キリスト教徒迫害、IS分派テロ****
エジプト・シナイ半島北東部のアリーシュで、過激派組織「イスラム国」(IS)の分派がキリスト教徒への迫害を強めていることが、住民らの証言で分かった。

IS分派はキリスト教徒を無差別に狙うとの声明を出し、2月後半だけで少なくとも8件のテロ攻撃があった。国民の約1割を占めるキリスト教徒の間で動揺が広がり、数百人が国内の他都市に避難する事態に発展した。

「大統領や軍は何をしているのか」「避難がどれだけ続くのか」。アリーシュからの避難民が身を寄せるイスマイリアのユースホステルで2月28日、キリスト教の宗教指導者や避難民のリーダーらが険しい顔を突き合わせ、語り合っていた。(中略)

「過激派は殺したキリスト教徒の携帯電話を奪い、連絡先の情報を基に別のキリスト教徒を狙う。自宅に残ったお父さんが心配」。2月23日に母親らと避難してきた中学2年生、ラガート・サーミさん(14)が声を震わせた。避難民は教会や政府から衣食住の世話を受けているが、生活の先が見えず、「早く帰りたい」と嘆いた。
 
友人の高校2年の女子生徒(17)は「学校で銃弾が身をかすめたり、軍や警察が見ている前でも自動車が奪われたりした。兵士も警察官も怖くて過激派を止められない」と現状を説明した。
 
アリーシュ周辺では2013年7月の軍事クーデターで、イスラム組織ムスリム同胞団主体のモルシ政権が崩壊した後、クーデターに反発するイスラム過激派が軍や警察への攻撃を強化。過激派は14年11月にISに合流し、「ISシナイ州」「ISエジプト」と名乗るようになった。
 
IS分派は従来、主に軍や警察を攻撃対象にしていた。だが昨年12月に首都カイロでキリスト教会を狙った自爆テロがあり、女性や子供を含む29人以上が死亡。IS分派が犯行声明を出した。
 
アリーシュでも、住民によると今年1月以降、キリスト教徒(推定3000〜4000人)の住民を狙ったテロ事件が発生。市街地の市場で突然殺されたり、親子が自宅で殺害され家が燃やされたりした。

IS分派は郊外の山岳地を拠点にし、アリーシュの街に支配は及んでいないが、散発的に構成員と軍や治安部隊との銃撃戦が発生。キリスト教徒の女性や子供の多くが外出を控えているという。
 
さらに2月19日にはカイロの教会爆破の実行犯とされる男が登場するビデオ映像が公開され、ISは「十字軍(ISと敵対する米欧など)の一部であるキリスト教徒への攻撃はイスラム教徒の義務だ」と主張。

ビデオ公開後にさらにアリーシュでは3人が殺害され、街中には主要な標的とされるキリスト教徒40人の氏名を記したビラが掲示されるなどパニックが広がった。
 
シシ大統領が避難民を手厚く支援するよう指示し、軍や警察は住民に動揺しないよう呼びかけている。だが軍はアリーシュ周辺で3年半以上も掃討作戦を続けながら、IS分派を抑え込めていないこともあり、住民らの政府への不信感も高まっている。【3月4日 毎日】
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殺害方法も、射殺以外に、斬首とか生きたまま焼かれるなど残忍で【2月28日 共同より】、宗教的憎悪をむき出しにしています。

エジプトでは、多数派イスラム教徒と少数派キリスト教徒の争いはこれまでもありましたが、今回のIS分派による“単にキリスト教徒だからという理由で標的にされる”迫害は、これまでの衝突とは異質です。

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キリスト教徒への襲撃相次ぐ、町を捨てて避難 エジプト****
・・・・エジプトの農村部では、イスラム教徒住民とキリスト教徒住民の流血の争いがしばしば起きている。たいていはキリスト教徒側が村を追い出され、争いの中で起きた犯罪が罪に問われることはめったにない。

だがアリシュで起きた暴力事件はこれとは異質のものだ。

「宗派対立による暴力事件には普通、教会の建設とか(異なる宗教の信者間の)恋愛ざたといったきっかけがある。だが最近の事件では単にキリスト教徒だからという理由で標的にされている」と、人権団体の関係者は言う。

エジプト軍はシナイ半島北部における対テロ戦を優位に運んでいると主張している。2月には、過激派が逃げ場所にしていたシナイ半島中部の山を占領したという。

だが住民の中には、守ることはできないから逃げろと警察からアドバイスされたと語る人もいる。【3月9日 CNN】
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国際人権団体アムネスティは、これまで当局がイスラム教徒によるキリスト教徒迫害を黙認してきた姿勢を批判しています。

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北シナイ県のコプト教徒を襲撃から守れ****
シナイ半島の北シナイ県では、武装グループによる度重なる襲撃で数百人のコプト・キリスト教徒が家を失い、町を追われた。この1カ月間でも、7人が殺害された。当局は、避難民に居住場所、水、食料など生活に不可欠な物資やサービスを速やかに提供する必要がある。

過去3年間、武装グループによるキリスト教徒に対する拉致や殺害が増える一方だった。
にもかかわらず、当局は同教徒を保護する対策を取らなかった。

他の地域では、キリスト教徒であるという理由で暴力を受けても、当局は加害者を裁くのではなく、国主導の和解会議に解決を頼っている。そのために、時にはキリスト教徒の家族が自宅の立ち退きを強いられることもある。

何人も宗教上の理由で差別を受けてはならない。暴力や襲撃などはもってのほかである。(中略)

政府はまた、国中でキリスト教徒への襲撃の加害者が処罰されない状況に終止符を打ち、暴力の連鎖をさらにあおる慣習的な和解会議に頼るのをやめなければならない。【3月7日 アムネズティ国際事務局発表ニュース】
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キリスト教徒迫害が強く問題視され、政府・当局の対応が批判されるという意味では、“「一部の米欧メディアは、特定の国や犠牲者には同情するが、エジプトなどでテロが起きると『治安政策の失敗』などと非難する」と述べ、発生場所によってテロ事件の報じ方が異なっているとの見方を示した”というシシ政権の欧米メディア批判とも重なる部分があります。

中東やアフリカでの犠牲者にはほとんど関心が払われず、欧米でのテロやキリスト教徒が犠牲になると大騒ぎする・・・・という点では、シシ政権の批判は正論です。

しかし、シシ政権下でのキリスト教徒への不公平な対応を擁護するものでもありません。

上記のようなISによる宗教テロ以外にも、ムバラク政権崩壊で法と秩序が乱れてから、イスラム教徒がキリスト教徒に向ける敵意が増大している社会問題もあります。

下記は、上記記事でアムネスティが問題としている“当局は加害者を裁くのではなく、国主導の和解会議に解決を頼っている。そのために、時にはキリスト教徒の家族が自宅の立ち退きを強いられることもある”という問題です。

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キリスト教徒の迫害が始まった****
クリスチャン差別にイスラム政党がどう対応するかは真の民主化への試金石だ
エジプト第2の都市アレクサンドリアのある村で気がかりな事件が起きた。キリスト教の一派、コプト教徒の8家族が自宅を追われ、彼らの家や土地が売りに出されたのだ。コプト教徒は、国内人口の約1割を占める宗教少数派だ。
 
イスラム教徒が多数を占める世界の国々で今、少数派のキリスト教徒が暴力的な迫害を受ける事件が相次いでいる。エジプトもその1つだ。
 
アレキサンドリアの村ではここ数週間ほど、あるコプト教徒男性がイスラム教徒女性を誘惑し、恋愛関係になっているという噂が広まり、宗教間の緊張が高まっていた。先月末には、数百人のイスラム教徒住民が男性の自宅や彼が経営する店を襲い、放火する事件が起きた。
 
2月1日に地元で開かれた調停会議の結果、彼らの安全を保証できないという理由で、コプト教徒の8家族が自宅を退去させられた。人権団体はこれを「集団処罰」と呼んで非難している。
 
エジプトでは先頃、ムバラク政権崩壊後初となる人民議会が招集された。イスラム系政党が多数派を占めるその議会が、宗教絡みの暴力行為をどう解決するか――アレクサンドリアでの出来事が最初の試金石となる。(後略)【2月17日 Newsweek】
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シナイ半島でのIS分派のテロも抑えられず、社会全体に広がるキリスト教徒迫害も座視するだけでは、シシ政権が批判されるのもやむを得ないでしょう。

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