北朝鮮の核攻撃力進化で、アメリカ・トランプ政権の対応は? “最悪の状況”の可能性も | 碧空

北朝鮮の核攻撃力進化で、アメリカ・トランプ政権の対応は? “最悪の状況”の可能性も

(新型の中距離弾道ミサイル「北極星2型」【2月13日 Newsweek】この熱意と技術を民生に使えば・・・とは誰しも思うのですが)

【進化する北朝鮮の核攻撃力】
“トランプは先月、「北朝鮮がたった今、アメリカに到達可能な核兵器開発の最終段階にあると声明を出した。あり得ない!」とツイート。事実上、やれるものならやってみろと金を挑発したのだ。”【2月28日号 Newsweek日本版】

これに対する北朝鮮側の回答が、2月12日に実施されたミサイル発射実験でした。
この実験から、北朝鮮がまさにアメリカに到達可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)完成に近づいていることが窺われるそうです。

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着実に進化する金正恩の核攻撃力****
世界が「不感症」になっている間に、北朝鮮はICBM完成へと近づいている

今月12日朝、北朝鮮が今年初めて実施したミサイル発射実験では、何か打ち上げられたのか最初は誰も分からなかった。

それもそのはず、発射されたのは新型の中距離弾道ミサイル「北極星2型」。固体燃料を使う潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の北極星1型を、地上型に改良したタイプだ。
 
北朝鮮はまだ大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験にこぎ着けていない。それでも北極星2型がこのような形で披露されたことで、北朝鮮による核と弾道ミサイルの並行開発という脅威は一段と増した。

世界は北朝鮮の核やミサイル実験に「慣れ」つつある。しかし今回の成功には、重要な意味が隠されている。
 
ミサイルは北朝鮮北西部から発射され、東へ500キロ余り飛んで日本海に落下した。韓国軍によると、飛行高度は約550キロ。

昨年1度だけ成功したムスダンは地上からの高角発射方式が用いられ飛行距離は400キロだが、高度は1400キロに達した。北極星2型もムスダンと同じく高角方式で発射され、飛距離が縮められた。射程距離いっぱいに飛ばしたら、日本の排他的経済水域に到達した可能性がある。
 
北朝鮮の朝鮮中央通信は、発射実験によって地L発射システムと高推力の固体燃料エンジンの信頼性・安全性を証明できた、と胸を張った。

弾頭部分を含めた飛行中のミサイルの誘導・制御および分離も、固体燃料エンジンを使いながらうまくいったようだ。さらに「近隣国の安全に配慮して、高角発射方式で実施した」という。
 
昨年8月に行われた北極星1型の発射実験と同じように、今回も発射筒から射出され、一定の高度に達した時点で固体燃料に点火するコールドローンチ式が採用された。
 
「ミサイルの液体燃料から固体燃料への移行は、海軍艦船のエンジンが蒸気機関からより新型の内燃機関へと移行したのと似ている」と、ミドルベリー国際大学院東アジア不拡散プログラムのディレクターであるジェフリー・ルイスは指摘する。「固体燃料のほうが素早く発射できる。しかも支援車両が少なくて済むので、発射場所が見つかるリスクも減る。同じ射程距離で液体燃料を使うノドンより、地上型になった北極星1型のほうがずっと脅威だ」
 
公開映像に含まれていた輸送起立発射機も注目に値する。路上走行用の発射台を改良して、道路以外でも走行できるようにした移動式発射台が初めて使用されたのだ。
 
CIAの資料によると、北朝鮮国内の舗装道路は全長724キロにすぎず、2万4830キロの道路が末舗装。たとえ発射は舗装道路上でしかできないとしても、発射台にミサイルを載せてどこにでも運べるなら北朝鮮にとって有利だ。アメリカや韓国が先制攻撃を試みようとしても、発射台を見つけて破壊することが困難になる。
 
北朝鮮はこのところ米韓による武装解除型先制攻撃への恐怖心を募らせている。固体燃料への移行と相まって、未舗装路を走行できる移動式発射台の開発が示すのは、地上発射型でも核兵器のサバイバビリティー(残存性)向上を目指すという意図だ。
 
「今回の実験は、固体燃料型ICBMへの第一歩だ」と、ルイスは言う。折しも、トランプ米政権は北朝鮮政策の見直しを始めている。実戦配備可能なICBMが開発されないうちに先制攻撃することは現実的か否か、という問題も検討されるかもしれない。
 
北朝鮮は北極星1型と2型によって急速に核戦力の柔軟性を増してきた。今やいかなる先制攻撃を加えたとして
も北朝鮮を完全に武装解除はできず、彼らは韓国や太平洋地域の米軍基地に核弾頭を撃ち込むことができるのだ。
 
アメリカは最近、北朝鮮のICBM開発に怯えている。しかし、こちらのほうが脅威としてはずっと深刻だ。【2月28日号 Newsweek日本版】
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【北朝鮮への対応を硬化させるアメリカ】
その北朝鮮とアメリカの関係は、上記のミサイル発射実験及び翌日に実行された金正男氏殺害事件で急速に険悪なものになっています。

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米朝非公式協議が幻に・・・・米紙、正男氏事件影響か****
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は24日、米国の元政府高官と北朝鮮の高官による非公式協議をニューヨークで3月に開く方向で計画したが、米政府が北朝鮮側にビザ(査証)を発給せず、協議が流れたと報じた。
 
実現すれば、トランプ米政権発足後、初の米朝協議となり得たが、北朝鮮の関与が濃厚な 金正男 ( キムジョンナム )氏の殺害事件や今月12日の北朝鮮による弾道ミサイル発射などが影響した可能性があるという。(後略)【2月26日 読売】
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アメリカでは、北朝鮮をテロ支援国家に再指定するよう求める動きが強まっています。

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北朝鮮をテロ支援国家に再指定を 米の議会やメディア****
アメリカでは、北朝鮮のミサイル発射やキム・ジョンナム(金正男)氏が殺害された事件を受けて、北朝鮮をテロ支援国家に再指定するよう求める声が議会やメディアから出ていて、トランプ政権の対応が注目されています。

アメリカ政府は、1988年に北朝鮮をテロ支援国家に指定しましたが、2008年に当時のブッシュ政権が北朝鮮の核開発計画の検証方法をめぐって北朝鮮と合意したのを受けて、指定を解除しました。

しかし議会下院では先月、一部の議員が「北朝鮮が当時の合意を守っていない」などとして北朝鮮をテロ支援国家に再指定するよう求める法案を提出したほか、議会上院でも議員6人が、今月12日に北朝鮮が弾道ミサイルを発射したのを受けて再指定を検討するよう求める書簡をトランプ政権に送りました。

またアメリカの新聞「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、キム・ジョンナム氏がマレーシアで殺害された事件を受けて北朝鮮をテロ支援国家に再指定すべきだという社説を掲載するなど、アメリカでは再指定を求める声が強まっています。

北朝鮮にはすでにさまざまな制裁が各国から科されていますが、テロ支援国家に指定されれば、「国際的なテロ行為を支援している国家」と認定されて、さらなる制裁が科される可能性が高まり、国際社会から一層孤立することになります。

アメリカ国務省の当局者はNHKの取材に対して「マレーシアでの捜査の行方を注視している」と述べる一方、「トランプ政権はまだ政権移行の段階で、再指定についての具体的な指示はない」と話しています。

前のオバマ政権は、2010年に韓国の哨戒艦沈没事件が起きたときや、2014年にソニーの子会社がサイバー攻撃を受けた際にも北朝鮮をテロ支援国家に再指定することを検討したものの結局見送っており、トランプ政権の対応が注目されています。【2月26日 NHK】
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来月1日からは、予定を変更して大規模な米韓合同軍事演習が始まり、北朝鮮からの反発が予想されています。

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米韓、2年連続大規模演習 北朝鮮情勢にらむ THAAD想定も****
3月1日から始まる予定の米韓合同軍事演習に、米原子力空母カールビンソンが参加すると、米韓関係筋が明らかにした。北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威が高まったことを受けて、西暦の奇数年は柱の一つの上陸演習を小規模に抑える従来の取り決めを変更した。
 
複数の米韓関係筋によれば、両国は昨年春、韓国軍約29万人、米軍1・5万人が参加し、「史上最大規模」の演習を行った。北朝鮮がその後も核実験や弾道ミサイル発射を続けたため、昨年と同規模の演習を行う方針を決めたという。(中略)

今回は、米韓が年内配備を進める高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD〈サード〉)の使用を想定した演習も行う。THAAD配備には中国が強く反対している。(中略)

米韓は北朝鮮が弾道ミサイル発射を続けるとみており、米軍は最近、軍事挑発を抑止するため、最新鋭のものを含む戦略兵器を西太平洋に集め始めた。

米カリフォルニア州を母港とするカールビンソンが今月、米領グアムに到着。最近、戦略爆撃機B1Bがグアムに、F22ステルス戦闘機が沖縄県の米軍嘉手納基地に、それぞれローテーション配備された。F35Bステルス戦闘機も山口県の岩国基地に配備されている。
 
弾道ミサイルを探知するXバンドレーダーもハワイの米海軍基地を離れ、現在、西太平洋上に配備されているという。

米韓関係筋の一人は「これらの兵器はすべて朝鮮半島の有事に即応できる」と語った。戦略兵器の展開は中国をめぐる不安定な安全保障状況に備える狙いもありそうだ。
 
一方、北朝鮮は労働新聞(電子版)の24日付で「演習を中止しない限り、核戦力を中枢とする自衛的国防力を引き続き強化する」と強調した。【2月26日 朝日】
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【両指導者の性格から、“最悪の状況”の可能性も高まる】
直情的・攻撃的言動を繰り返すトランプ大統領が、“格下”の北朝鮮相手に穏やかな手法に留まるとは思えません。相手が引き下がるまで圧力を強めるような行動が予想されます。

北朝鮮も核・ミサイル開発に国運を懸けていますので、後へは引けない状況です。

トランプ、金正恩両氏の“性格”“行動パターン”を考えると、話はテロ支援国家再指定にとどまらず、“行きつくところまで行く”可能性も少なくないように思われます。

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米朝対決の勝利なきシナリオ****
互いに好戦的で負けず嫌いなトランプと金正恩 北朝鮮の核問題は最悪の状況になりかねない。(中略)

既に北朝鮮は今月12日、弾道ミサイルの発射実験を実施。金正恩国務奢貝長が、アメリカ本土まで到達可能な長距離ミサイルの発射実験を行うのも時間の問題とみられている。
 
そもそもこの実験は、トランプが金をあおった結果ともいえる。トランプは先月、「北朝鮮がたった今、アメリカに到達可能な核兵器開発の最終段階にあると声明を出した。あり得ない!」とツイート。事実上、やれるものならやってみろと金を挑発したのだ。
 
おそらく北朝鮮は、核兵器製造に必要な量のプルトニウムを91年に取得している。以来、アメリカなどの国が中心となって、経済制裁や外交協議など数多くの説得努力を重ねてきたが、北朝鮮は着々と核開発を進めてきた。
 
諸外国による説得の努力に中国が手を貸すこともあったが、北朝鮮を翻意させるほどの圧力をかけることはなかった。中国としては、北朝鮮が核武装することより、北朝鮮が崩壊することのほうがずっと恐ろしかったからだ。
 
トランプは、中国にもっと圧力をかけて北朝鮮を動かすと主張したが、感情的にまくし立てるだけで明確なプランは示していない。

このため北朝鮮の核問題では、2つの核保有国の未熟な(そして短気な)リーダーが、お互いムキになって「自分のほうが上」であることを示そうとするシナリオしか残されていない。そこに勝者はない。
 
そんな悲観的な状況で、アメリカにはどんな選択肢があるのか。「まだまし」から「最悪」まで、4つの選択肢を検討してみよう。

①北朝鮮と直接交渉する
多くの専門家は、アメリカが北朝鮮に直接関与して、開発計画を凍結するよう説得するべきだと主張する。例えばアメリカが、経済制裁と米韓合同軍事演習の両方を凍結すると約束すれば、北朝鮮も核とミサイル開発計画の凍結に応じるかもしれない、というのだ。

こうした取引は、アメリカの安全保障と、韓国との同盟関係を傷付けるだろう。韓国はかねてから、在韓米軍に戦術核を再配備させることを求めており、その要請を強める可能性が高い。あるいは、トランプが選挙戦中に口走ったように韓国白身が核武装するので、アメリカはそれを認めろと要求してくるかもしれない。
 
そうこうして北朝鮮から開発凍結の合意を取り付けたとしても、その後の査察で、北朝鮮が全ての核施設の公開に応じるとは思えない。つまり凍結合意が成立したとしても、その後の維持体制は北朝鮮のペースで進むことになる。しかもこれまで無数の合意を破ってきた北朝鮮を信じるのは、まっとうな選択肢とは思えない。

②北朝鮮が降参するか崩壊するまで圧力をかける
バラク・オバマ前大統領は8年間に複数回、あらゆる選択肢を検討した。だがそのたびに、最大限の圧力をかける選択肢は却下した。北朝鮮の資金、食料、天然資源へのアクセスを完全に阻止するというものだ。
 
確かに、現在の対北朝鮮制裁には、まだ強化できる余地がある。しかし海上封鎖はできても、中国の全面的な協力がなければ、陸上貿易を完全に封じることはできない。従って最大限の圧力をかけるという選択肢も、北朝鮮の核計画を阻止できないだろう。

➂北朝鮮を挑発してミサイルを発射させ、アメリカのミサイル防衛網で迎撃する
これは2大のリーダーが最も好きそうな選択肢だが、アメリカ側のリスクは大きい。

ロナルド・レーガン大統領が『スター・ウォーズ』(『スター・トレック』のライバルだ)にほれ込んで以来、アメリカは戦略防衛構想(SDI)に2500億ドルを投じてきたが、いまだに長距離ミサイルを確実に迎撃できる防衛網を構築できていない。
 
アラスカに基本的なミサイル防衛システムがあるが、その防御率は50%以下。いくらトランプでも、米国民を守れる確率がコイントス以下では、北朝鮮のミサイル発射を誘発するのがいい考えではないと分かるだろう。

④政権転覆
トランプの一部の顧問やネオコン(新保守主義者)の問では、これは唯一の選択肢と考えられている。
確かにイラク戦争は大失敗だったが、北朝鮮の場合ほかに選択肢はないし、今回はうまくやれるはず、というのだ。それにこの計画を知ったら、中国が自ら北朝鮮に乗り込んで始末を付けるだろう。中国は韓国やアメリカが北朝鮮を占領したり、朝鮮半島を再統一したりすることを絶対許さないはずだ・・・。

これら4つの選択肢は、どれも好ましくない。その危険性を考えれば、オバマが戦略的に耐える方針を取ったのは無理もない。その結果には誰も満足していないし、それを引き継いだトランプには同情する。だが、この問題に取り組むことは、大統領候袖に名乗りを上げ、実際に大統領に就任したことでトランプが引き受けた任務だ。(後略)【2月28日号 Newsweek日本版】
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“取引”は韓国(そして日本の)核武装論を刺激し、北朝鮮側の約束を信じることもできない。何より国民受けがよくありません。いつも批判しているオバマ政権によるイラン核問題合意みたいなものです。経済封鎖は中国が同意しない現状では有効ではない。政権転覆と言っても、具体的にどうするのか?

という話になると、“今の段階ならミサイルの打ち合いに持ち込んでも、そんなに被害は大きくなかろう・・・”ということにもなるのでは。素人考えですが。

“現在、韓国軍と在韓米軍が配備している迎撃ミサイル、パトリオット-2、3では「北極星2型」を迎撃することは(スピードの点で)不可能ということだ。そして、年内に配備が予定されているサードでも限界があるという指摘が出されている”【2月13日 Newsweek】という状況では、“危険な芽は早い段階で・・・アラスカに1,2発落ちるぐらいなら・・・”という話にも。

これで北朝鮮を叩き潰せれば、支持率急上昇でトランプ政権は当分安泰です。

もっとも、アメリカ本土は被害はなくても、日本にとっては話は別です。当然、そこに至るまでに日本はアメリカと協調して北朝鮮に圧力をかけているでしょうから、日本は攻撃可能な最前線になります。

北朝鮮にとっては国家の命運をかけた戦いとなりますから、使えるものはすべて使って攻撃に出るでしょう。米軍基地を抱える沖縄、中心都市の東京・大阪は格好の標的となるのでは。サバイバビリティー(残存性)が向上していますので、アメリカの攻撃にも耐えて反撃も可能かも。

“訪韓中のマティス米国防長官は3日午前、韓国の韓民求(ハン・ミング)国防相と会談した。マティス氏は、北朝鮮によるミサイル攻撃を念頭に「米国や同盟国に対する攻撃は必ず撃退する」と強調。「核兵器使用に対しても、効果的で圧倒的な対応を取る」と警告した。米軍の迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備も計画通りに推進する方針を確認した。”【2月3日 産経】とのことですが・・・。

現在のSM3とPAC3で、多数飛来するミサイルにどこまで対応できるか・・・

まあ、私は鹿児島の田舎に住んでいますので、ミサイルが飛んでくることはあまりないと思いますが、東京・大阪の方は今後のトランプ大統領の対応に気をつけたほうがよさそうです。
ただ、よく考えたら、私の住んでいるところには稼働中の原発がありました。これも標的としては狙い目かも。