2017-02-12 23:18:35

シリア  激しさを増す「IS後」を睨んだ各勢力による勢力圏確保競争

テーマ:中東情勢

シリア アルバブ

(【2月12日 AFP】)

【半年以内にラッカ・モスル攻略?】
シリア内情勢については、アサド政権・反体制派それぞれの後ろ盾であるロシア、イラン及びトルコ主導というアメリカ抜きの枠組みで、政府軍と反体制派の停戦合意が一応成立した状態にあって、昨年4月から中断している国連の仲介による和平協議も今月20日からスイスのジュネーブで再開されることが発表されています。
(2月1日ブログ“シリア 和平協議再開へ 進む反体制派の再編 ロシア協調のトランプ大統領の関与で進展も期待?”http://ameblo.jp/azianokaze/day-20170201.html

停戦はISなどは対象になっていませんので、対ISの戦闘は依然として続いています。
米軍幹部はIS拠点ラッカ攻略について、「半年以内に奪還する」との見通しを示しています。

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ラッカ、モスルを半年以内に奪還 IS掃討で米司令官が見通し****
米国主導の有志連合によるイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)掃討作戦を率いる米軍のタウンゼンド中将は8日、ISが首都と位置付けるシリア北部ラッカとイラク北部の拠点モスルをいずれも半年以内に奪還する見通しであると述べた。AP通信が伝えた。米軍司令官がラッカ奪還の時期に言及したのは初めて。
 
タウンゼンド氏はイラクの首都バグダッド郊外で「6カ月以内に(ラッカ、モスルの奪還作戦は)いずれも完結するだろう」と述べた。
 
ラッカに関し、有志連合司令部のドリアン報道官は8日、電話記者会見で「数週間以内でほぼ完全に孤立させられる」との見通しを示した。ラッカを包囲した上で奪還に進む。
 
ただ、米軍の支援を受けて作戦を行ってきた少数民族クルド人勢力と米国の同盟国であるトルコは敵対。トランプ米政権はクルド人勢力の扱いに結論を出していないとされ、政権の判断が作戦の進展に影響する可能性もある。

ポンペオ中央情報局(CIA)長官が9日、トルコを訪問。クルド人勢力に関しても協議する見通しだ。(後略)【産経】
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【IS拠点アルバブ攻略での混乱】
ISの終わりも近い・・・ということになると、各勢力はIS崩壊後の勢力圏確保に関心が高まります。

アレッポ北部・ユーフラテス川西岸・トルコ国境南部のIS支配地域は、米軍のラッカ攻略の主力部隊でもあるクルド人勢力YPDにとっては、その東西に位置する支配地域をつなぐ回廊部にあたり、ここを制圧できればクルド人支配地域をつなげることができ、今後の「独立国家」建設にはずみがつきます。

これに強く反発するのがトルコ。
YPDはトルコ国内でテロ活動を行うクルド系武装勢力PKKの兄弟組織であり、そうしたクルド系勢力がトルコ国境沿いに勢力を拡大することは何としても阻止する構えです。

加えて、“(トルコは)シリア内戦による大量の難民を国内に引き受けて社会不安など深刻な問題を多々抱えているが,IS 排除後には国境近隣のIS 旧支配域に,スンニ派アラブ系主体のこれら難民を再定住させ,新たに発生するシリア国内避難民とも併せて,クルドの飛び地連結のための回廊開削を阻止する「人間の盾」を創り上げる構想も持っていた。”【池田 明史氏 “「ユーフラテスの盾」作戦の舞台裏”】ということで、クルド人勢力YPDの回廊確保戦略と完全にぶつかっています。

このためトルコは昨年8月から国境を越えてシリアに侵攻。支援する反体制派とともにISを攻撃する「ユーフラテスの盾」作戦を展開していますが、その狙いは上述のように、対ISというよりは、反体制派支配地域を拡大することでクルド人勢力の支配地域を分断することにあります。

そのトルコが奪還作戦を行ってきたのがIS拠点のアルバブ(Al-Bab)です。

トルコ軍・反体制派はアルバブに対し昨年段階から激しい攻撃を続けてきましたが、“ISが住民を盾として使用したり、暗渠の灌漑水路を連絡路、隠れ家として利用したために、進展が遅れた”【2月12日 「中東の窓」】等で難航していました。

それが、ようやく“中心部に侵攻し、市の半分以上を制圧し、市の完全制圧も時間の問題”(アラビア語メディア報道)【同上】という段階に至ったという状況です。

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トルコ軍とシリア反体制派、IS拠点アルバブに進攻****
在英の非政府組織(NGO)「シリア人権監視団」によると、トルコ軍は11日、同盟関係にあるシリア反体制派と共に、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の拠点であるシリア北部アルバブ(Al-Bab)に進攻した。
 
トルコ半国営のアナトリア通信は軍関係者の発言を引用し、ISとの戦闘でトルコ兵1人が死亡、1人が負傷したと伝えた。トルコ軍とシリア反体制派はアルバブの西側から攻勢をかけ、ISとの激しい戦闘の末に西の郊外全域を制圧した。

監視団は、この戦闘と並行してトルコ軍による砲撃や空爆が行われ、住民に少なくとも6人の死者が出たとしている。
 
アルバブはアレッポ県で最後に残されたISの拠点で、シリア政府軍も攻撃目標としている。トルコ主導の部隊は北と東、西から進攻し、シリア政府軍は南側から攻撃を行っている。
 
トルコ軍は昨年8月、シリア国内でISとクルド人武装勢力の双方を標的にした前例のない軍事作戦に乗り出した。最初は急速に進展したものの、12月からアルバブをめぐる戦闘が泥沼化している。

トルコのドアン(Dogan)通信によると、作戦開始以来トルコ兵の死者は66人に上っており、その大半はISの攻撃で死亡した。【2月12日 AFP】
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先述のようにトルコはクルド人勢力の分断を狙っていますが、この地域での軍事行動にはもう一人重要なプレイヤーがいます。当然ながらシリア政府軍です。

アサド政権はアレッポ東部奪還した勢いでアレッポから北上し、上記記事にもあるように、アルバブに対しても南側から攻撃を行っています。

この政府軍の攻撃はトルコ等とは別の“独自作戦”です。
ということは、トルコ軍・反体制派とシリア政府軍及び支援するロシアがぶつかる・・・という事態もありえます。

実際に反体制派と政府軍の衝突が起きています。
しかも、それとは別に、ロシア軍機がトルコ軍兵士を“誤爆”するという事件も。

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シリア情勢(al bab 等****
・昨9日午後、al bab の西で、自由シリア軍とトルコ軍対政府軍・民兵の衝突が起きましたが、軍事筋によると、政府軍等がal bab の西のal zindeen に進行してきたときに衝突が起きたが、政府軍等が自由シリア軍を砲撃した由
(この衝突での双方の死傷者の有無等については不明)

これに対して自由シリア軍は9日、中央病院とか青年住宅地とかを占拠し、重要な成果を上げたので、10日以降はさらにISに対する攻撃を拡大する予定であったが、情勢が変わったので、作戦を再検討している由。

・他方、トルコ軍は、ロシア空軍が9日朝al babのIS拠点を空爆しているときに、「誤って」トルコ軍を爆撃し、兵士3名が死亡し、11名が負傷したと発表した。

ロシア通信も、ロシア空軍機が誤ってトルコ軍を空爆し、兵士3名が死亡したと報じるとともに、ロシア大統領府によれば、プーチン大統領がエルドアンに対して、電話で遺憾の意を表明したとほうじている

(上記2の事件は無関係のようで、記事の題はロシアとトルコは両軍間の調整をさらに密接にすることにしたとほうじている・・・ただし、その内容とかチャネルとかは不明。ただ、このブログの読書でも一部に人気のある陰謀説をとれば、ロシアが間違ったと言い訳しながら、実際は意図的にトルコ軍を空爆して、政府軍の前進を止めないように警告したという説明になりそうである。

(中略)確かに偶然にしては、少しできすぎいてはいると思うが、狭い地域での戦闘では過誤が起こるというのが単純な説明であろうか?)【2月10日 「中東の窓」】
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ロシア機によるトルコ兵士空爆は“故意に”という訳ではないでしょうが(おそらく)、同一目標を先を争う形で攻撃していますので、相当に混乱した状況にはあるようです。

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ロシア機のトルコ兵士空爆(al bab)****
ロシア機がal bab でトルコ兵を空爆し、兵士3名が死亡した事件に関しては、ちょうどその頃政府軍もal bab に迫っていて、どうもその辺に関連があるのではないかと思っていましたが、al qods al arabi net は、ロシアのスプートニク通信を引用して、やはりそうであったと報じています。

もちろん、これはロシアの通信ですから、果たして自由シリア軍が政府軍を攻撃したのかその逆ではないのか?、またロシア機がトルコ軍に対して警告の意味で意図的に攻撃したのではないのか等、その辺の可能性は何とも言えませんが、とりあえず報道のまま。
いずれにしても、危惧されていたロシア機のトルコ兵士攻撃が生じたわけです。

ロシアのスプートニク通信は、ロシア機の攻撃でトルコ兵が死傷した事件について、政府軍が自由シリア軍の占拠しているal bab の近郊のal ghauz 村に近づいたところ、自由シリア軍から攻撃を受け、犠牲者を出したので、ロシア機等に対して支援を要請した。

これに応えるロシア機が現場に到着する前にトルコ兵がこの村に入っていたものである。

また政府軍は、彼らを攻撃した戦闘員はISであると思い込んでいた可能性もある。

いずれにせよ、このようなかごに基づく事件を防ぐために、ロシアとトルコは、今後はISを攻撃する部隊には航空機誘導兵をつけることにした。(中略)

al bab の完全制圧は時間の問題とのことですが、自由シリア軍が政府軍の先を越して同市を制圧したということになるのか、双方がal bab を巡ってにらみ合うことになる可能性もありそうで、ロシアの出方も注目されます。【2月11日 「中東の窓」】
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【今後も続く“早い者勝ち”の競争 イラン、アメリカ、クルド人勢力も参加しての大混戦模様】
アルバブを制圧した後の目標はラッカの近辺のal tabaqaという地点になるようです。

トルコ・反体制派と政府軍・ロシアの“早い者勝ち”の勢力圏拡大競争は今後も続きます。“どちらが先にそこを占拠するかで、今後の情勢が大きく変わるとして、今後はラッカ攻略を目指したトルコ軍と政府軍の競争になる”とal qods al arabi net は報じています。【2月11日 「中東の窓」より】

反体制派司令官は、政府軍のアルバブへの進撃が早かったことについて、「ISが我々(反体制派)と政府軍とを戦わせるために、政府軍の地域から兵士を撤収させたためである」と語ったそうです。【同上】

なお、「トルコ・反体制派」組と「政府軍・ロシア」組だけでなく、シーア派「イラン・ヒズボラ」組も参加しての混戦になるようです。

一方、「アメリカ・YPD」組は、トルコの圧力でコンビを解消するのか、あるいは、トルコを加えてトルコ・YPDの呉越同舟でラッカ後略に向かうのか?

更には、トルコが以前から主張している避難民らが居住するための「安全地帯」を設置する構想にトランプ大統領は賛同を示していますが、「安全地帯」維持の軍事的支援が必要になりますので、そもそもアメリカ国内が了承するのか?

主権を侵害されるアサド政権は「安全地帯」構想に反対しています。また、クルド人勢力YPDが「安全地帯」地域から追い出されるとすると新たな火種にもなります。

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al bab の戦いからal tabaqaの戦いへ(シリア****
・・・またイランもトルコとロシアの了解には不満足で、アスタナ会議で政治的な地位を要求したほか、戦場でもアレッポの東で,ヒズボッラーや民兵を使って自分たち地歩を求めている。

さらに米国がトルコのラッカ攻略参加を歓迎するとしているが、新政権の真意はまだ不明である。

トルコはさらに南下してal tabaqa攻略を狙うであろう。

こうして、al tabaqaはトルコと自由シリア軍隊、政府軍とヒズボッラーの先頭争いの場となり、先にそこを占拠したほうが、ISとの戦いで有利になるであろう」(al qods al arabi net報道)【同上】
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