2017-02-04 23:19:52

インドネシア  宗教的“不寛容”拡大に対し、ジョコ大統領が“巻き返し”

テーマ:アジア

アホック

(宗教冒とく罪で起訴され公判に出廷したジャカルタ特別州知事【2016年12月20日「suke-kunのブログ」 http://ameblo.jp/sunsukeohzora/entry-12230253611.html】)

【トランプ大統領令への反発・抗議、アジアのイスラム社会でも】
アメリカ・トランプ大統領のイスラム教徒が多く暮らす中東やアフリカの7か国の人の入国を一時的に禁止するよう命じた大統領令は、イスラム教を標的としたものではないとの弁明はあるものの、現実問題としては世界各地のイスラム社会を刺激することにもなっています。

インドネシア、マレーシアというアジアのイスラム教徒が多い国でも抗議の動きが出ています。

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米入国禁止令 インドネシアで学生ら30人が抗議活動****
・・・・インドネシアで、人権擁護活動を行っている弁護士が呼びかけ、4日、首都ジャカルタのアメリカ大使館前で、学生や市民グループのメンバーらおよそ30人が抗議活動を行いました。

集まった人たちは「禁止令にノーを」などと書かれた紙を掲げながら大統領令の撤廃を求めてシュプレヒコールをあげ、トランプ大統領の顔が描かれたポスターを燃やしていました。

参加した女性は、「トランプ大統領がやっていることはイスラム教徒への憎悪を正当化し、テロを助長するだけです。大統領令は撤廃するべきです」と話していました。

インドネシアは、2億人を超える世界で最も多くのイスラム教徒が暮らす国で、今回の大統領令をうけてルトノ外相が、先月30日、声明を出し、「特定の宗教を過激主義やテロと結びつけるのは間違っている」と非難しています。【2月4日 NHK】
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イスラム教徒が人口のおよそ6割を占めるマレーシアでは3日、野党の国会議員や支持者などおよそ200人が首都クアラルンプールのアメリカ大使館前で抗議デモを行っています。

現段階ではいずれもごく小規模な動きですが、インドネシア・マレーシアともに、近年イスラム過激派・原理主義やイスラムを重んじる宗教的不寛容の拡大が懸念される状況にあるだけに、今回大統領令が“憎悪”を煽る形で、そうした流れを刺激しかねないことが危惧されます。


【“アホック裁判”に見られるインドネシアで拡大する宗教的不寛容】
一方、インドネシア国内では、イスラム過激派・原理主や宗教的不寛容の拡大に対する警戒感も強まっています。
インドネシアでは、ISによる首都ジャカルタでの爆弾テロから1年が経過しました。

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<インドネシア>テロ根絶訴え街頭ア義ピール 爆弾事件1年****
インドネシアの首都ジャカルタ中心部で約30人が死傷した過激派組織「イスラム国」(IS)による爆弾テロ事件から14日で1年を迎え、現場の路上で事件の被害者らがテロ根絶を訴える街頭アピールを行った。
 
過去のテロ事件の被害者らで作る民間団体が主催し、現場で献花。テロ防止策の徹底や、医療費の公的負担を含む被害者支援の充実を求めた。
 
当時、交通整理をしていて被害にあった警察官のデニー・マヒウさん(49)は腕や足に深くえぐれた傷痕が残る。「痛みが続き、睡眠薬を飲まないといまだに眠れない」という。
 
最初に爆発が起きたコーヒー店で被害に遭った広告会社員、ドゥイ・ロムドニさん(34)は骨折などで3カ月入院し、復職できたのは昨年10月だ。「体の傷は治っても、心の傷はなかなか治らない。政府に心のケアへの支援もしてほしい」と訴えた。【1月14日 毎日】
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最近インドネシアの“宗教的不寛容”で問題となっているのが、昨年12月23日ブログ“インドネシア 拡大する宗教的不寛容 活発化するテロ活動 「反イスラム」発言裁判で混乱の懸念も”
http://ameblo.jp/azianokaze/day-20161223.htmlでも取り上げた、ジャカルタ特別州知事バスキ・チャハヤ・プルナマ氏(通称アホック)が「反イスラム」発言をしたとされる問題です。

イスラムを国教としている訳はありませんが、イスラム教徒が国民の約88%という圧倒的多数を占めるインドネシア社会にあって、少数派の華人キリスト教徒のアホックが知事再選に向けた取り組みのなかで、「……あなた方が本心では私を選べないということも十分ありうる。そうでしょう?(コーランの)食卓章51節の文言を使って騙されたり、色々とそういう風に。それはあなた方の権利です。……」【1月18日 中村昇平氏 SYNODOS】と発言したことが、コーランを侮辱したとして大規模な抗議運動が展開され、裁判沙汰になっています。

コーランの“食卓章51節”は、キリスト教徒を仲間にしてはならないとするもののようですが、アホックはそういうコーランの言葉を不適切な形で利用して人々を扇動しようとする者がいる・・・ということを発言したのですが、コーラン自体とイスラム教徒を侮辱したとされています。

行政的には評価が高いアホックですが、抵抗勢力に対する歯に衣着せぬ発言等で「対話の意思がない」、「口が悪い」といった負のイメージもあって、そうした反発も抗議運動が拡大した背景にあるようです。

抗議行動を主導しているのは、イスラム原理主義的な強硬派イスラム団体として知られる「イスラム擁護戦線(FPI)」です。

また、アホックがジョコ大統領の盟友であることもあって、単なる宗教問題ではなく、背後ではアホックの再選だけでなく、ジョコ大統領の現政権を揺さぶろうとする政治的思惑ともつながっているとも。

抗議行動の拡大に危機感を持ったジョコ大統領が、予定されていた大規模デモを“取り込む”形で、平和的な集団礼拝に変質させて事態の鎮静化を図った・・・という話は前回ブログで取り上げたところです。

それはそれで危機管理としては“うまくやった”と言えますが、一方で、本来“世俗主義”を掲げてきたインドネシア政治にあって、大統領がイスラムの前面に立つという意味で、宗教と政治の接近という危うい側面もあることも指摘したところです。

アホック氏の裁判については、“2月15日の投票日前に判決が予想されるが、アホックが有罪ならジャカルタ市民、与党が怒るし、無罪ならイスラム急進派、野党勢力が騒動を起こすのは確実とみられるなど、判決結果に関係なくジャカルタには波乱が待ち構えている。”【12月22日 大塚智彦氏 Newsweek】ということで、波乱含みの情勢です。


【ジョコ大統領によるイスラム至上主義への“巻き返し”】
こうした情勢にあって、ジョコ大統領は“巻き返し”とも言える、イスラム原理主義・至上主義に対し厳しい対応で臨んでいるようです。

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イスラム人口が世界最大の国で始まったイスラム至上主義バッシング****
<イスラム急進組織FPIと言えば、ジャカルタでは泣く子も黙る存在。白装束で目抜き通りを埋め尽くしても「宗教冒涜」と指弾されるのが怖くて誰も何も言えない──だが、「多様性と統一」を国家のアイデンティティーとして誇るインドネシアでいつまでも勝手は許されない。アメリカに誕生した反イスラムのトランプ政権へのアピールもかねて、「イスラムの横暴」に対する巻き返しが始まった>

2月1日昼前、インドネシアの首都ジャカルタの目抜き通りスディルマンをデモ行進する白装束の一群が、周囲の深刻な交通渋滞を一層悪化させ、苛立つ運転手、バス乗客らの怨嗟の視線を浴びていた。

だが運転手、乗客、沿道のビジネスマン、通行人の誰一人としてデモ隊に対して不満や文句を言うことはない。それは今のインドネシアが直面する「宗教と寛容」という深刻な問題を反映しており、イスラム教やイスラム教徒に対して少しでも批判的な言動をすれば、それが元大統領であれ州知事であれ、誤解であれ言いがかりであれ、容赦なく「宗教冒涜」の名のもとに指弾されるからだ。

それはまるで「言葉狩り」のようで、もはやインドネシアが誇った「言論の自由」も「民主主義」も、物陰からそっと様子を垣間見る状況に陥っている。

イスラム急進派による露骨な政治介入
2月15日に投票が予定されるジャカルタ特別州知事選に立候補している現職のバスキ・チャハヤ・プルナマ(通称アホック)知事が2016年9月にプロウスリブ県の住民を前に行った演説の一部が「イスラム教を侮辱している」として訴えられ、現在アホック知事を被告とする「宗教冒涜罪」の裁判が進行中だ。

この問題を取り上げ、アホック知事の即時逮捕を訴えて大規模デモを組織、一部が暴徒化するなど大きな社会問題を起こしているのがイスラム教急進組織「イスラム擁護戦線(FPI)」である。

FPIは1月10日に開かれた与党「闘争民主党(PDIP)」の結党44周年記念集会で党首のメガワティ・スカルノプトリ元大統領が行った演説にも「イスラム教を冒涜している」と噛みつき、警察に訴える構えを見せている。

メガワティ党首は「反多様性のグループは閉鎖的な理想主義を抱えてインドネシアの多様性の中の統一を脅かしている」と述べたのだが、これがFPI つまりイスラム教団体に対する侮辱で、ひいてはイスラム教への冒涜に当たる、というのだ。

イスラム教国ではないインドネシア
インドネシアは世界最大のイスラム教人口を擁しながらイスラム教を国教とする「イスラム教国」ではない。よく誤解されるが憲法で宗教の自由を明確に打ち出しており、多文化、多人種、多言語という多様性を内包しながら国家として統一するというのがインドネシアの掲げる高邁な理想なのである。

しかしFPIのようなイスラム急進組織は「他の宗教、異なる文化、人種への寛容を認めない」傾向が強く、アホック知事もキリスト教徒の中国系インドネシア人であることが「狙い撃ち」され、メガワティ党首も「女性でありながら実力を備えた指導者」であることが彼らの「心中にさざ波」を起こしたとされている。(中略)

FPI代表への反撃に警察動く
今、逼塞状態に陥りそうなインドネシアがその寛容と統一を堅持するために最近、「イスラム至上主義」に対する巻き返しに出始めた。

イスラム教の立場を強調しながらあちらこちらで不要な摩擦を繰り返しているFPIに対し、西ジャワ州警察は1月30日、スカルノ初代大統領や「パンチャシラ」といわれる国家原則を侮辱したとしてFPIのハビブ・リジック・シハブ代表を「死者侮辱、国家シンボル侮辱罪」の容疑者に認定した。

これはスカルノ初代大統領の娘にあたるスクマワティ女史が「スカルノのパンチャシラは尻にある」と発言した動画を警察に「侮辱容疑」で告発したことを受けた結果だ。

さらに国家警察はFPI の集会でアラビア文字を書き込んだ国旗が掲げられたことに対して「国家シンボルに関する法律違反」容疑で捜査を進めるなどFPIに対する対抗措置が急速に強まっている。

こうしたインドネシアの動きは、1月20日に就任したドナルド・トランプ米新大統領の政策と無関係ではない。
イスラム教徒やイスラム国からの移民、入国の制限に厳しく対処する方針を示している米新政権に対し、「インドネシアではテロ組織やイスラム至上主義は野放しにはされていないことを国際社会、とくに米新政権にアピールする狙いもこのタイミングでの対応措置には反映されている」と地元紙記者は分析している。

警察の反FPI捜査に抗議するために組織されたのが冒頭の1日のデモで、FPIが組織したデモ隊はシハブ代表が事情聴取を受けていたジャカルタ中心部の警察本部前で抗議を行ったが、厳重な警備を敷いた警察部隊によって混乱には陥らなかった。

不可侵の「寛容と多様性」の精神
ジャカルタ州知事選に端を達した形のイスラム急進派によるイスラム至上運動は、単に知事選に留まらずインドネア社会の原則、根底である「寛容」「多様性」というモラルを揺るがしかねない状況に発展したことで、ジョコ・ウィドド大統領の支持母体でもあるPDIPが反FPIを鮮明に打ち出し、「見て見ぬ振り」「触らぬ神に祟りなし」から風向きが大きく変化しようとしている。

「多様性の中の統一」を掲げるインドネシアにとって、それに反する不寛容、そして独立の父であるスカルノ初代大統領、赤地と白地の国旗、国家原則パンチャシラなどなど「不可侵」に抵触する言動には大きなリスクが伴うことが改めて浮き彫りとなったともいえる。

PDIPのメガワティ党党首、そしてスクマワティ女史はともにスカルノ大統領の娘であることを忘れてはならない。

今回の一連のFPIへの反撃の背後にはインドネシアという国の存在に関わる大きな宿命が関係していることを国民の大多数は感覚的に理解しており、それもFPIのイスラム至上主義が都市部の知識層から反発を受け、地方でも大きな旋風を巻き起こすには至らなかったことに表れている。

警察や政府はその点を正確に見極め、さらにイスラム教徒に厳しい政策を打ち出す米新政権誕生のタイミングをとらえた上で反撃、取り締まりに乗り出したといえる。インドネシアの寛容は懐深く、そして強い。【2月2日 大塚智彦氏 Newsweek】
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「パンチャシラ」とはインドネシアの国是となっている建国5原則をさすもので“、1.唯一神への信仰  2.公正で文化的な人道主義  3.インドネシアの統一 4.合議制と代議制における英知に導かれた民主主義  5.全インドネシア国民に対する社会的公正”【ウィキペディア】からなるもののようです。

多種多様な民族からなる多民族国家インドネシアにおいて、各種族・各宗派・各団体がそれぞれの主張に固執すれば、国家の求心力の維持が難しくなるという懸念から定められたものです。

なお、“唯一神への信仰”ということで“インドネシアではイスラム教、プロテスタント、カトリック、ヒンドゥー教、仏教、儒教の6つの宗教が公認されているが、無神論は違法であり、公言をすると逮捕される可能性がある”【ウィキペディア】とも

アメリカ・トランプ政権誕生は、冒頭のようなイスラム主義を刺激する方向だけでなく、イスラム至上主義を抑え込む方向にも影響しているようです。

最近は、どの国の問題を取り上げてもトランプ政権との関連が問題となります。アメリカの影響力が低下した云々とは言っても、まだまだその影響力の大きさを感じます。

原理主義的な主張に対抗することは非常に社会的リスクを伴う行為ですが、ジョコ大統領はそこに果敢に臨んでいるようです。それだけ、「このまま放置したら・・・」という危機感が強いということでしょう。

また、FPIは、その傍若無人なふるまいから市民の評判がよくないようで、そのあたりの空気を読んでの対応でしょう。

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インドネシアで「ネット規制」 過激派の抑え込みが目的*****
インドネシア政府は二〇一六年に約八十万のインターネットサイトを閉鎖したと発表した。通信情報省の発表によると、内訳は約七十七万がポルノサイト、八十五が過激派サイトだった。

一部、人権擁護派からは不当閉鎖を指摘する声もあるが、政府方針の背景には、イスラム原理主義や支持者による脅迫めいた書き込みや、悪意ある偽造ニュースの拡散が増えていることがある。
 
ウィドド大統領は昨年末、悪意あるネット情報拡散の徹底捜査を閣議で指示。
最近も、大規模デモを組織した原理主義組織「イスラム防衛戦線」(FPI)を、「多様性を尊重する国是をないがしろにした」として捜査中であると明かした。【「選択」2月号】
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アホック裁判の情報は何もありませんが、“2月15日の投票日前に判決が予想される”という従来スケジュールのとおりであれば、もうじきです。

この判決に伴う動きが、インドネシアの“不寛容拡大”にとって、ひとつの節目になると思われます。

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