児童労働  根絶できない現実 一部には合法化の試みも | 碧空

児童労働  根絶できない現実 一部には合法化の試みも

児童労働

(ミャンマー 5年に及ぶ強制労働から救出されたサン・ケー・カインさん(17歳) 雇用主に痛めつけられて曲がった指 【10月7日 AFP】)

【途上国児童労働による商品を享受する先進国消費者】
先進国大企業が途上国の劣悪な労働環境のもとで安価な商品を生産し、私を含めた先進国消費者がそれらを消費している・・・という話は、グローバル化した経済の一面であり、残念ながら間違いない事実です。

“劣悪な労働環境”のひとつが児童労働です。

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シリア難民の子供、トルコで英ブランドの衣服を製作=BBC調査****
シリア難民の子供たちがトルコの工場で、英小売大手マークス・アンド・スペンサー(M&S)<MKS.L>やオンラインストアASOS(エイソス)<ASOS.L>のための衣服を製作している。英BBC放送のテレビ番組「パノラマ」の調査で明らかになった。

調査によると、15歳前後のシリア難民が低賃金で長時間、英国に出荷される洋服の製作やアイロンがけを行っていたという。

BBCのジャーナリストらは、マークス・アンド・スペンサーのラベルを工場で撮影。ファッションブランド「Mango(マンゴ)」や「Zara(ザラ)」のダメージ加工のジーンズ製作工場で12時間働き、不適切な保護の下、化学薬品を使用していたシリア難民もいたという。

M&Sの広報は「これまで、シリア人労働者が私たちに製品を供給する工場で雇われている証拠はなかった」とした上で、今回の「非常に深刻で受け入れがたい」発見に大変失望していると述べた。

同社によると、工場で雇われているシリア人の日雇い労働者らに、合法的で安定した雇用を提供できるよう、トルコ側と協議中だという。

一方、マンゴの広報担当者は、番組で紹介されたような「行為は一切容赦しない」と表明。BBCからの通知後、関係工場で緊急の抜き打ち検査を行ったが、「いかなる環境下でも、シリア人の子供の児童労働は発見されなかった」と述べた。

ASOSの広報は「非常に深刻に受け止める」とした上で、番組をまだ見ていないのでコメントは差し控えると語った。

トルコには、紛争が続くシリアから逃れた約300万人が生活しているとみられている。

ロイターの今年の調査でも、シリア難民の子どもたちがトルコの縫製工場で不法な条件の下で働いている証拠が見つかっている。【10月25日 ロイター】
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(人権などの価値観を重視していると考えている)先進国消費者にとっては「不都合な真実」の一端は、ときおりニュースで話題となります。

2013年4月24日にバングラデシュ・ダッカでおきた縫製工場の入ったきた8階建てビル崩壊事故のときも、この問題が指摘されています。
(2013年4月25日ブログ“バングラデシュ 縫製工場入居ビル倒壊で犠牲者多数 ないがしろにされる労働環境・安全”http://ameblo.jp/azianokaze/day-20130425.html

このような問題はバングラデシュだけでなく、広く途上国において存在しており、ブログでも何度か取り上げてきました。最近では、2016年5月31日ブログ“現代の奴隷労働 「私たちが飲む紅茶の陰では、多くの涙が流されている」”http://ameblo.jp/azianokaze/day-20160531.htmlなど。

こうした問題が明るみにでるたびに、関係したとされる企業は「知らなかった」と弁明しますが、仮に知らなかったとしたら、それは“(確認すれば、いろいろと不都合なことが出てくるので)敢えて知ろうとしなかった”ということでしょう。

そしてその利益を最終的に享受しているのが私たち先進国消費者・・・という構図です。

今年に入ってからは、携帯・スマホで使用されるリチウムイオン電池生産において、アップル、サムスン、ソニーといった名だたる世界企業の児童労働への関与が指摘されています。

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アップル、サムスン、ソニー 児童労働を使用しているとして非難される****
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは19日、アップル、サムスン、ソニーが児童労働を使用しているとして、非難する報告書を発表した。

アムネスティ・インターナショナルによると、アフリカのコバルト採掘で児童労働が使用されている。コバルトは、各社がスマートフォンを製造する際に用いられている。

アムネスティ・インターナショナルの報告書では、次のように述べられている- 「アップル、サムスン、ソニーなどの電子機器の製造に特化した主なブランドメーカーは、各社が使用しているコバルトの採掘で児童労働が用いられていないこと、そしてこのコバルトが自社製品で使用されていないことを確認するための基本的な調査を実施できない状態にある」。

アムネスティ・インターナショナルはまた、リチウムイオン電池の製造で使用されているコバルトは、アフリカ中部のコンゴで、危険な環境の中採掘されており、そこでは7歳以上の子供も働いていると主張している。

報告書ではまた、ブローカーたちは児童労働が圧倒的に多い地域でコバルトを入手し、世界の大手企業が使用しているリチウムイオン電池の製造メーカーに転売していると指摘されている。【1月20日 SPUTNIK】
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“国連児童基金(UNICEF)によると、児童らは重い貨物を運ぶなどして鉱山で12時間過ごし、一日に1~2ドルを稼ぐ。2014年は約4万人の児童がコンゴの主にコバルト鉱山での労働に従事していた。”【https://jcc.jp/globali/id/1435/】とも。


【強制労働で虐待を受けた児童は、「家に居たい」とささやくだけ】
児童労働一般の話では、民主化・経済成長著しいミャンマーにおける児童労働の実態について、以下のように報じられています。

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殴られ、やけどを負わされ・・・・児童強制労働の実態 ミャンマー****
ミャンマーのサン・ケー・カインさん(17)は、やけどや傷の痕が残る両手と曲がった指を見るたびに、強制労働させられていた5年間を思い出す──。彼女は、同国にいるとされる、搾取や虐待の危機にさらされた無数の児童労働者の一人だった。

サン・ケー・カインさんは先月、ヤンゴンの洋裁店から救出された。彼女はそこで同じ村出身のもう1人の少女と一緒に、5年間「メイド」として働かされていた。
 
店主一家は2人を殴り、刃物で切り付け、睡眠や食事も十分に与えていなかった。2人は時折投げ与えられるわずかな金銭のために、これら全てを耐え忍んでいた。
 
ミャンマーでは、豊かで都会的な中流階級の家庭が増えつつあるが、その一方で、彼女たち2人と同様にメイドとして働かされる、貧しい地方出身の子どもたちが何万人もいる。
 
人権団体は、家族を養っていける仕事があるとの口車に乗せられる子どもたちの多くが虐待のリスクにさらされていると指摘する。しかし、司法が富裕層を優遇する貧困国にあっては、問題の調査が十分に行われていないのも事実だ。
 
サン・ケー・カインさんの指は、雇用主に痛めつけられてあり得ない角度に曲がっている。心に負った傷が大きく、自身に何が起こったかを語ることもできない。「家に居たい」とささやくだけだ。
 
彼女の代わって詳細を明らかにしたのは、同じ店で同じ苦しみに耐えたタジンさん(16)だ。ヤンゴンから車で数時間の場所にある故郷の村でAFPの取材に応じたタジンさんは、「脚にはアイロンを押し付けられた痕がある。頭にも傷がある」と語った。
 
鼻の上にも傷があった。「これはナイフで切られた時の傷です、私の料理がまずかったとの理由からだった」と当時を振り返った。
 
サン・ケー・カインさんとタジンさんも、他の多くの子どもたち同様、村の友人から良い仕事を紹介するとの約束でヤンゴンに連れて行かれた。
 
少女らの家族は何年にもわたって救出を試み、雇用主に2度掛け合ったが相手にされることはなかった。その後、地元のあるジャーナリストが、国家人権委員会に通報し、ようやく自由を取り戻すことができたのだという。洋裁店の店主と、その成人した2人の子どもは逮捕され、人身売買の罪で訴追された。

■「最も弱い立場」にある子どもたち
非情な軍政が半世紀にわたって続いたミャンマーでは、このたび民主的に選出された新政権が改革を目指す上で、児童労働の撲滅は重要な課題となる。
 
危機管理コンサルティング企業「ベリスク・メープルクロフト」はミャンマーを、児童労働問題がインドやリベリアなどに次いで世界で7番目に深刻な国だとしている。
 
国連(UN)が実施した2014年のデータ分析によると、ミャンマーでは10~17歳の子どもの5人に1人、約170万人が労働に従事しているという。
 
過去に強制労働を経験した子どもたちを支援するNGO「イコーリティー・ミャンマー」のアウン・ミョー・ミン代表は、「彼らは最も弱い立場にある」と指摘する。そして、「そうした子どもたちの多くが恐怖におののきながら生きている。自分は価値のない人間だと感じている。奪われた子ども時代は、二度と取り戻せない」と付け加えた。
 
サン・ケー・カインさんとタジンさんの家族は、警察に2人の救出を繰り返し要請したが、何ら対応してもらえなかったと話した。
 
サン・ケー・カインさんの母親は、娘を働きに出すことは二度とないとしながら、「もうどこへも行かせたりはしない。家に居させるつもり」と語った。
 
一連の事件を受け、ミャンマー国家人権委員会(MNHRC)の委員ら4人が6日、辞意を表明している。同委員会は、委員11人で構成されているが、中には前軍事政権時の公人も含まれているという。【10月7日 AFP】
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暴力による虐待、強制監禁などは論外です。

児童を強制的に、あるいは詐欺的に集めて搾取・虐待している・・・という問題であれば、そうした児童を救い出し、事態を一刻も早く改善すべきということで、話はすっきりします。(実現可能性の問題はまた別ですが)


【「禁止」だけでは話は済まない現実も 一部の国では合法化の試み】
話がすっきりしなくなるのは、児童が(“家族が”と言うべきでしょうか)労働の機会を求めている場合です。多くの途上国の貧困家庭にあっては児童は貴重な労働力であり、単に「児童労働を厳しく禁止する」というだけでは、こうした貧困家庭の生活がたちゆかなくことも懸念されます。

冒頭にトルコにおけるシリア難民児童もそうしたケースのひとつではないでしょうか。
シリア難民受け入れに抗している欧州諸国に対し、トルコが膨大なシリア難民を受け入れているのは事実です。

その点でトルコは欧州の欺瞞性を批判しますが、それはともかく、トルコにおけるシリア難民の生活が非常に苦しい(だからこそ、命がけで欧州に渡ろうとするのでしょう)のも事実であり、シリア難民児童の就労はそうした生活苦を救う手立てのひとつとなっていることが推測されます。

そういう状況下にあって、単に「児童労働を厳しく禁止する」というだけでは問題は解決しません。
トルコが、児童労働なしでも生活できるような支援をシリア難民にしてくれるとは到底考えられませんし、その余裕もないでしょう。

では、どうすればいいのか・・・・

ひとつの選択肢は、児童労働を合法化し、法律の規制のもとで児童の安全と適正な労働環境を保護しようという方策です。根絶が事実上困難なマリファナなど薬物使用についてもとられる方策です。

児童労働問題が深刻なインドでも、こうした“合法化”が模索されています。

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児童労働を一部認める法案可決 インド****
インド下院は26日、家業などで一部の児童労働を認める新しい労働法案を可決した。国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)からは、子どもの発達などに悪影響を及ぼすと懸念する声が上がっている。
 
可決された法案は14歳未満のすべての子どもの労働を原則禁止しているが、家業やスポーツ界、娯楽産業に限っては労働を認めるとした。
 
現行法では危険を伴う仕事に限って14歳未満の労働を禁止しているが、それすら順守されていないと、子どもの人権擁護を訴える活動家らは指摘している。
 
政府は、伝統的な技術の習得が必要な子どももおり、家族も働き手を必要としているとして、放課後や休暇中に一部の労働を可能にした今回の法案可決を支持した。
 
ユニセフは声明を発表し、家業の手伝いを合法化したことは貧困家庭の子どもに一層不利益な状況をもたらすと非難し、「子どもの保護と発達に対しても影響を及ぼす可能性があり、深刻な懸念だ」と述べた。【7月27日 AFP】
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2014年にパキスタンの少女マララさんと共にノーベル平和賞を受賞したインドの人権活動家カイラシュ・サティヤルティさんは、児童労働の撲滅のために長年取り組んできたことが評価されての受賞でしたが、今回の“一部の児童労働を認める新しい労働法案”をどのように考えているのでしょうか。

現状追認に終わってしまう・・・との批判は当然にあるところで、その運用実態のチェックが必要になりますが、「家業」という家庭内に入ってしまうと、なかなか監視も行き届かないことにもなります。

こうした児童労働合法化が世界の国々でどれだけ認められているのかは知りませんが、以前、南米ボリビアの事例が話題になりました。(話題になったということは、世界でもあまり事例がないということでしょう)

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ボリビア、10歳児の就労を合法化 南米最貧国 ****
南米最貧国ボリビアのガルシア副大統領は17日、就労可能年齢を10歳に引き下げる法案に署名し、法案は発効した。

同国では児童労働がまん延しており、法制化により労働者としての権利を擁護する狙い。児童労働を規制する世界の潮流と逆行する政策で、国際社会からは批判も出そうだ。
 
法律は、親の監督下で10歳以上の就労を認め、12歳以上には労働契約の締結を認めた。一方、通学を義務化し、児童虐待を厳罰化した。政府は「ボリビアの実態に即した法律だ」としている。これまでの就労可能年齢は14歳だった。
 
国連児童基金(ユニセフ)によると、ボリビアでは家計を助けるために約50万人の子どもが路上の靴磨きや露店などで働いており、農場や鉱山などでの強制労働も問題となっている。【2014年7月18日 日経】
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南米ボリビアは、先住民出身のモラレス大統領が率いる左派政権で、欧米とは一線を画した政治を目指しています。


上記の児童労働合法化とちょうど同時期、議会議事堂に正面に掲げられた「反時計回り」に時を刻む新しい時計が話題ともなりました。

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議事堂の時計が「反時計回り」に、南半球の住人に敬意 ボリビア****
南米ボリビアの議会議事堂にこのほど「反時計回り」に時を刻む新しい時計がお目見えした。通常の時計と異なり、文字盤には左回りに数字が並ぶ。針も左回りに進む。南半球に暮らす人々に敬意を表したものだという。

政府所在地のラパス中心部にある議事堂にはこれまで、通常の時計が設置されていた。

新しい青銅製の時計についてマルセロ・エリオ議長は24日、「この逆転時計はわれわれにとって、北が南になることを示している」とコメント。「北半球における不公平を、南半球に出現するであろう新たな世界秩序によって終わらせる」必要があることを、新時計の導入を通じて提起したいと説明した。

だが、「逆転時計」にラパス市民は驚き、野党議員からは説明を求める声が上がっている。

ボリビア議会は、先住民アイマラ人で中南米の極左勢力の指導者でもあるエボ・モラレス大統領率いる左翼与党MASが議席の過半数を占めている。(後略)【2014年6月26日 AFP】
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児童労働を規制する世界の潮流と逆行する“合法化”政策が功を奏したのか、現実追認に終わったのか・・・そこは知りません。

下記は、合法化から1年以上経過した時点での、韓国アイドルのオク・テギョンのリポートです。

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ボリビアの有名観光地ウユニ塩湖****
その有名な塩湖の裏側では、5歳から15歳未満の子供が塩工場に閉じ込められて仕事をしているそうです。

火花が飛び散るガスボンベを横に置き燃えるかまどの上の塩の乾燥作業をし、機械のように塩を包装する労働により子供たちが受け取るお金は塩袋1つでW3

一日10時間塩を格闘しながら働くノラちゃん 飢えないために毎日工場を転々としているそうです。【http://2pm.info/2015/12/11/taecyeon-bolivia-kids/
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