妊娠した渚と生まれてくる汐の為に、身を粉にして働く朋也。昼間は早苗が付き添い、秋生も頻繁に通い様子を見に来ていた。体調が優れない渚を気遣いながら、今自分に出来る事。つまり一生懸命に働く事だけに集中していた。そんな時早苗を自宅に送る途中、自分に出会っていなければ、結婚も妊娠せず未だに古河渚として幸せに暮らせる可能性が高かった。だから運命を変えた自分を恨んでいないか尋ねた。それに対する早苗の答えは、朋也の心配が杞憂だと認識させるに十分で、逆に秋生と共に朋也の存在に感謝している旨を伝えた。そして渚は21歳の誕生日を迎え、再びだんご大家族グッズをプレゼントした!



 年が開け正月の挨拶に高校時代の仲間達が集結した。それぞれの人生を歩む中で、渚と朋也

が一足早く家庭を持ち子供が出来た。だから陽平は親友が遠い存在になったと危惧していた。しかし朋也は渚の為に生き、働いた結果が今の自分だと返答した。その答えは、今までの朋也と

渚となんら変わらないと再認識させた。するとことみが、研究しているもう1つの世界について話し始めた。物理的には難しい話だが、繋がりがあり変化もある世界だと認識した朋也達。その時

朋也の脳裏に渚が演じた「たった1人残された少女の話」が浮かんだ。自分でも認識してないが

もう1つの世界を感じるきっかけとなった。



 季節は流れ、街も止まる事無く変化して行く頃、渚の容態に異変が生じた。まだ春は遠くその日は、時を止めるような大雪が降り続いた。まるで世界を閉ざすような雪で、高熱を出し陣痛が始まった渚は、朋也が望んだ病院出産ではなく、自宅出産を余儀なくされた。助産士の八木が

雪の中駆け付け、手を握り続け渚を励ますように促した。3人での新しい生活を望む朋也。苦しみに耐え必ず元気な子供を産むと誓う渚。互いの思いは一致しながら、永遠に感じるほどの長い時間が過ぎた。そしてついに女の赤ちゃんである汐が生まれた。



 初めて抱きあげる喜びを伝える朋也。身体が弱い渚の体力は、汐を出産した事で限界に達っていた。少し休ませて欲しいと言い残し眠るように目が閉じようとしていた。生命の危機を感じ朋也は、必死で渚に近い将来の出来事を話しながら呼びかけた。しかし握っていた腕の力が失われた後、渚が朋也の声に反応する事無く、そのまま息を引き取ってしまった。目標を失った自分が懸命に生きて来たのは、全て渚が居たから。夢と希望と生き甲斐の象徴を失い、気力を失った朋也。渚との出会いが悲劇を生みだしてしまった結果に絶望。最初から出会う事無く、別々の人生を歩むべきだったと自責と後悔の念に囚われた。



 渚の死後朋也の生活は惰性そのものだった。仕事に出かけて食事をして自宅に帰って眠るだけ。かけがえの無い存在を失い、自分を追い詰めるように働き続けた日々。社長に休むように言われても、現実と向き合う事が怖く中々休もうとしない。仕事がなければ今の自分の存在が消えてしまうように、休む時間が苦痛に感じ始め、稼いだ金をパチンコや飲み屋で使った。「この街は

嫌いだ!」ついにはかつての目的もない学生時代の頃のように、街が嫌いになった。それでも将来に向けて自分から行動を起こそうとはせず、目の前の事をただただこなす生活だった。(渚の為に頑張ろうと思っていたが失った結果、現実を直視せず仕事という逃げ場所を見つけ、更にパチンコや飲食に使うだけ。夢や希望を失った抜け殻そのもので、また高校時代に戻ってしまった

のは本当に悲しい。現実を直視しないのは、父直幸と同じじゃないかなって思います。)



 ついには渚との出会いから結婚・出産までを否定して、全てを忘れ考えようとしなかった朋也。汐は古河家に預けられ5年の月日が流れた。蝉が泣いている夏のある日、朋也のアパートのチャイムが鳴った。何度も鳴るチャイムの音を聞き、横になっていた朋也が仕方なくドアを開けた。「こんにちは、朋也さん!1人で来ちゃいました。」ドアの前には、1人で訪れた早苗が立っていた。人との付き合いも極力避けていただろう朋也は、何も片付けていなかった部屋を片付け始め

中に招いた。「駄目ですよ、暑いからって外に出ないと!」夏なのに閉め切り閉じ篭る生活を注意した早苗。「芳野さんにも言われたんですけど、暑い中1人で出掛けるのもおっくうで。」休みの日積極的に外に出ようと考えてなかった朋也。「じゃあ私とデートしましょう!私もたまに若い人とデートしたくなるんです。」早苗は何とか朋也を外に連れ出した。普段余り外を歩く事が少ない朋也にとって、早苗と歩く街並みは大きな変化が生じ、自分だけ時の流れが止まっているように感じていた。(朋也の気持ちと幻想世界の様子が、リンクしている気がするのは私だけ?失ったのはつらいのは、それだけ渚の存在が大きすぎた裏返し。朋也の時間は5年前から止まっている事と感じました。早苗は心配して、朋也の時間を動かすためにデートに誘ったのでは?)



 「朋也さんはこの夏、まとまった休みは取れるんですか?」2人で渚が勤めていたファミリーレストランに移動して、夏休みが取れるかどうか尋ねた早苗。「取れ取れって五月蝿く言われてます会社から!」あえて休もうとしない朋也にも、半ば強制的にまとまった休みが与えられた。「じゃあどこかに行きませんか?今回は皆で出かけましょう。」休みが取れると知り、早苗は自分と

秋生・汐を含めた旅行に誘った。「2人っきりならかなりドキドキです。皆でですか?考えておきます。」秋生も汐もいる旅行と聞いて、下を向き消極的な態度になった朋也。とりあえず考えて置くと言い残し、夜アパートに帰って来た。「早苗です、旅行に行くこと決めましたか?」タイミングを計ったかのように、部屋に入った途端早苗から旅行に行くかどうか尋ねられた。「あっまだ考えてなくて。」戸惑ったように返答した朋也。一方的に話を進める早苗に苦笑いした。しかも電話を切った途端にまた同じ内容の電話がかかって来た。(早苗さんここまでやるのは、絶対に狙いがあるはず。朋也は汐と一緒に暮らしていない。頭の中には、汐という存在は無いに等しい状況。だからそんな2人の関係を構築するきっかけを作ろうとしていると推測しました。)



 「早苗さんには負けました。来週の後半に休みを取って、日曜と合わせて4連休取れるように

連絡しておきます。」早苗の押しに根負けして、結局旅行に行く事を了承した。「早苗さんを裏切るような気がした。ただでさえ何から何まで押し付けているのに。」しかし朋也の心の中には迷いがあった。しかし断れば世話になっている人を裏切る事になる。だから朋也が積極的に関わろうとする訳ではなかった。月日が流れまとまった休みを取り、朋也は古河家に向かった。「ちーす

早苗さん、おっさん。」到着して2人を呼びかけても返答がない。そのまま居間に入ると、机に

切符2枚と置き手紙が残されていた。「朋也さんへ急用が出来たので、秋生さんと一緒に出掛ける事になってしまいました。後の事はよろしくお願いします。」早苗は秋生と一緒に出掛け、後を朋也に任せるという内容が記されていた。手紙を読み戸惑う朋也は、人の足音が聞こえると探しに居間を出た。「汐!」それに気が付き朋也が名前を呼ぶと、物陰から余所余所しい態度で見つめる汐が姿を表した。(早苗さんは確信犯でした。最初からこうするつもりだったんです。朋也は

汐と会っているはずなんですけど、秋生と早苗も一緒に居るときだけ。だから親子だけで会うのはおそらく初めて。まるで知らないお兄さんを見つめる渚そっくりの汐の姿を、渚の思い出が残る

朋也にはどう映ったのか?)



 「こらこら緊張してないで出て来いよ。早苗さんもおっさんも居ないんだどうする?」リュックサックを担いで準備万端の汐に旅行に行くかどうか尋ねた朋也。「旅行に行きたい。早苗さんとアッキーと一緒に。」汐にとって親は、秋生と早苗。だから旅行に行くのは2人だと思っていた。「そりゃ無理だ!2人はいないんだ。」5年間省みなかった朋也にとって、汐は他人の子供同然。だから自分から一緒に旅行に行こうと誘う気などなかった。居間でタバコを吸いながら帰りを待っていると、妙に居づらい雰囲気が漂い違和感を感じ始めた。その様子を隠れて人見知りしながら見つめていた汐。「えっとだなあ多分おっさんも早苗さんも夜になったら帰って来ると思う。だから今日は大人しく待って、1人で遊んでいるんだ。」とりあえず呼び寄せ、待っているように言い聞かせた朋也。しかし一緒に遊んだり話をしたりせず、ほったらかしにした。すると言う通りにした汐が

転んでしまい、亀のおもちゃが壊れてしまった。(普通親子なら一緒に遊んだり、話をしたりすると思うんです。しかし朋也は全て任せて、直接顔も見ようとしていない。汐の存在は、まるで眼中にないみたいな感じです。だから2人の間には、妙な緊張感と重苦しいムードがある。)



 「大丈夫か?怪我はないみたいだな。接着剤があれば直るかな?」まずは転んだ汐を気遣った後、亀が可愛そうに思う表情を見て、自分が直そうと提案した朋也。とりあえず取り付けて、再び元に戻った亀。汐は何も言わずに直った亀を持ってまた走り出した。「まあいいか!」勝手に遊んでいる汐の様子を省みず、朋也は横になりそのまま眠った。しばらくすると眠った朋也を何も言わずに起こそうとした汐。亀の車輪が動かなくなり、直してもらおうと思ったからだ。「これはもう直らないな。捨てちゃうか?」冗談でも突き放すように返答した朋也。しかし汐には冗談では済まなかった。更にはまた早苗の名前を呼び、まるで朋也は父親ではなく他人だった。「腹減ったな

何か食べたいものあるか?」時間は午後2時前。遅い昼食を取ろうとする2人。汐にはリクエストしたい食べ物はなく、朋也1人で買い物に出掛けた。(なんか親子というよりも、子供の扱い方が分からないお兄さんと小さな子供が一緒に居るって感じです。5年の空白は、親子関係を壊してしまったという事になります。そして久々登場の磯貝さんの寂しいという言葉に対して、まるで話を合わせて返答する態度。汐がいないと寂しければ、省みないなんて事は絶対無い。本当に変な親子関係になっちゃいました。)



 スーパーで買って来たのは焼飯の材料。胡椒をふりかけ作っていく朋也。その様子をくしゃみをしながら汐は眺めていた。「ほら食え!」ぶっきらぼうに完成した焼飯をそれぞれ置き、まだまだ慣れない手つきで食べた汐。「ニガイ!早苗さんのご飯が食べたい。」一口食べただけで、焼飯に興味を失い白いご飯を欲しいとリクエストした。「焼飯がおかず代わりとは変な奴だな。」汐の態度に違和感を持つ朋也だったが、いきなり焼飯をどかし白いご飯にふりかけをかけて「いただきます。」と挨拶して食べ始めた。結局何一つ上手く行かなかった親子関係は、午後9時汐が

寝て終了。早苗と秋生も帰ってこず、そのまま朝を迎えた。



 シャッターを開け、花に水をまく朋也の前に「おしっこ!」「大きいの!」わざわざトイレに行く事を言いに来た汐がやって来た。「行って来い!」冷たくあしらうと何も言わずにトイレへ走る汐。2人のぎこちない関係は、1日ぐらいでは変化がなかった。しかしぼんやりと親子で会話をしながら

旅行に出掛ける光景を見てから、朋也の態度に変化が生じた。「旅行行きたいか?じゃあ2人で行くか?」自ら旅行に行こうと誘ったからだ。「うん行きたい!」2つ返事で答えた汐。「いいのか

おっさんも早苗さんも居ないんだぞ。」秋生と早苗が居ない旅でもいいか確認した朋也。「だって来ないんだもん。」2人が居なくても旅行に行きたい汐。「2人とも来ないしなあ、じゃあ2人で行くか!」意志確認して2人で行く事を提案すると、汐もそれに答えて旅に出た。朋也にとって初めて

親子だけで出掛ける旅。ぎこちない様子で手も繋がず、向いている方向は違いながら、同じ目的地へ出発した。(なんかドラマの第1話みたいな感じです。知らない2人がいきなり旅に出るようなそんなたとえがピッタリ。違和感ありまくりの2人の関係が、徐々に近づき親子の絆が構築されるように期待してます。渚が残した希望なのだから。)

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