ふふっ… ありがとう
ウンスは少し、はにかみながら、その者の手をとった
こんな扱いを受けたのは、高麗に来てから初めてじゃないかしら
手を借りて段差をおりたウンスは満更でもない様子だ
そうですか？ 隊長はともかくチャン侍医は女人や病人には優しい方だと聞いたことがありますが
そうね チャン先生は優しいわね
でも、こんな事まではしてくれないわ
私の足に合わせてゆっくり歩いてくれるけど…そう言えば、あの人は待ってもくれないわ
腕を掴んだと思ったら真っ直ぐ前を見て、どんどん進んでくの
それで私が遅いと荷物みたいに担いだのよ
泣いて頼んだのにこんな所まで連れてくるしさ
守るから傍に居ろ…って
あれ？ 私 何でそんな事……
ウンスは立ち止まり訝しげな顔をした
記憶が戻り始めておるのでは？
その者は淡々とした口調で言った
そ そうね 少しずつだけど戻ってるのかも
チャン先生も徐々に戻るって言ってくれたもの
ウンスは戸惑いの表情を浮かべたままだ
記憶が戻るのが怖いのですか？
分からない
その者の問いかけにウンスは小さな声で答えた
今、貴女は隊長の事をどうお思いですか？
怖いですか？
顔も見たくないほど嫌いですか？
ウンスは何度も横に首をふる
そんな事無い
ならば良いではないですか
安心して思い出せば良い
その者の言葉にウンスは嬉しそうな笑顔で頷いた
されど…隊長にはまだ内密にされた方がよろしいかと
どうして？
まだ全てを思い出しておらぬのでしょう？
ええ
ならば全てを思い出されてからの方が良いでしょう
それまで、あの方を焦らしてやるのです
押してばかりでは男は逃げ出します
たまには焦らして追いかけさせるのです
今のようにね
凄～い 流石ね
ご指導よろしくお願いしま～す
笑顔でぺこりと頭を下げるウンス
その仕草にその者にも笑みがこぼれる
楽しそうですね
冷ややかな声色に振り返ると顰めっ面の男が仁王立ちしていた
隊長…
ウンスの顔から笑顔が消えた
此方は台風通り過ぎたようです
皆さんの所も被害がありませんように(-人-)
こんな時でもお約束、帰る前にこれ押してね
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