2010-02-22 15:00:00

■書評■ だから人は本を読む

テーマ:読書術
僕はご承知のとおり読書が好きで、こんな書評ブログにまで時間を使ってアウトプットまでしてしまおうと考える人間であるけれど、サラリーマンの大多数は読書とは縁遠いというのが現実。
僕の周りでもビジネスパーソンとしての仕事ぶりの優秀さに関係なく、ほとんど本を読まないという人はいるし、勉強会で出会うような自己啓発意識の高い人の中にも少なくはない。

本日紹介する一冊は、誰もが知っているであろう大企業、資生堂の元社長である福原義春さんの説く読書論。
文化人・知識人としても著名な福原さんであるが、やはり僕のようなビジネスパーソン(サラリーマン)としては、資生堂という会社で社長を務めるまでになられた方として参考にすべき点を学べる期待に溢れている。

ただ、こうした本を読んでいつも残念だと思うことがある。
福原さんも本書の冒頭で次のように書かれている。

本を読む時間:人が本を読まなくなったのだという。それでいいのだろうかと怪しむ。
何やかやと忙しくて時間がないからだともいう。そんなに忙しければ、朝起きた時に顔を洗わなければいいじゃないか。晩飯を抜いたらどうだろうか。それは困るというなら、どうして本を読むことだけをやめてしまうのか。(p.1)

人生において本を読むということの大切さを、そうしたことと並列に語れるほどのものとして位置づけられていることに、僕としてはとても共感できるのであるが、こうしたメッセージを伝えたい人たちは、残念ながらそもそも本書を手に取らないのである。
(本書に限らず、読書の効用を説く書籍全般に言える。)

当ブログの読者の方であれば、多かれ少なかれ読書に対する関心の高い方々が多いと思われるので、逆にこんなメッセージは釈迦に説法ということにもなりかねず、こうした発信と受信の間に生じるズレが大変にもどかしいのである。

福原さんはこんなことも書かれている。

人生の必需品:読書は人の生存にとっての必需品ではないが、人生の必需品なのだ。(p.2)

寝て起きて、仕事をこなしていくというサイクルだけを考えれば、確かに読書なんてしなくても何とでもなるだろうけれど、そうした日々の積み重ねで作り上げられていく人生を「豊か」にしようと思ったら、やはり読書はかけがえのないものだと思うのだ。
現代においては「潤沢」であるからこそ、そうした大切さが見失われてしまっているのかもしれない。
本というもの、読書体験というものが「稀少」であった時代には、多くの人が「読書」というものを渇望し、本が読めるということをもっと素晴らしいものとして噛み締めていたはずなのに。


そんな本書の内容とは少し離れた僕の想いは置いておくとして。
ただ、本書の福原さんのように、経営者として名を成したビジネスパーソンの方々の読書論などを読んでいて感じることは、読書は成功をもたらさないけれど、成功した人は読書について一家言もっているほどに読書家であるということ。
ビジネスでの成功だけが人生の目的ではないけれど、人生の成功という言い方に変えても通用する現象だと思う。

福原さんの読書論については、特別に目新しいことをおっしゃられているわけではなくて、極めてオーソドックスというか、王道と呼べる考え方である。

本を読むということ:本を読むということは何かと突き詰めて考えていくと、数多くの先人たちの体験や考えかたなどを、私たちが比較的容易にいくらでも吸収することが可能であるということである。(p.46)

古典を推奨し、ハウツー本などはあまり読まないというのもよく言われること。
僕の今年のテーマの一つとして「教養」というものがある。
そのために、ハウツー的な、いわゆる「ビジネス書」を意識的に減らし、古典だったり人生の普遍的な教訓を学べるようなものだったり、哲学や科学などの世の中の本質に近づけるような本を増やすように心がけ始めたところであるが、まさにこうした考え方に触発されてのことだ。
ちなみに、福原さんは「教養」については次のように書かれている。

教養とは:私は、教養とは、読書量や、そこから得られる人生論の量、そしてそこで得られる人間の厚みを糧にして、全人的にどのような存在になれるか、そしてその存在を持って他者にどう影響できるかに本質が宿っていると思う。(p.67)


読書家の方であれば、頷けるところの多い書籍である。
新たな知識を得るというよりも、こうした読書観をもたれている福原さんというビジネスパーソン・文化人・知識人がどんな本に影響を受けてこられたのか、という足跡を追う一冊としてお薦めしておきたい。

できれば普段あまり読書をしないビジネスパーソンにも読んでもらいたいけれど…。
そのためには、こうした本は新書版などで出される方がいいと個人的には思う。
あまり読書をしない人にとって、ハードカバーで1,500円というのは敷居の高いものに映るはず。
特に本書の内容は新書にマッチすると思うのだが。。。


追伸:
福原さんを形作ってきた書籍が数多く紹介されているところが、本書の魅力の一つ。
以下、その中から特に気になった書籍を挙げておきたい。

ガリア戦記 (岩波文庫)
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ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)
リチャード P. ファインマン
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悪童日記 (ハヤカワepi文庫)
アゴタ クリストフ
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地獄の季節 (岩波文庫)
ランボオ
岩波書店
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木を植えた人
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■ 基礎データ
著者: 福原義春
出版社: 東洋経済新報社 2009年9月
ページ数: 198頁
紹介文:
文字・活字文化の継承に向けた、経済界随一の読書家からの提言。

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福原 義春
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■ 他の方の書評記事

賢者の図書館 (Under Construction):
だから人は本を読む

本山賢治の知的(?)ビジネスマン日記:
だから人は本を読む

コメント

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1 ■良書でした!

私も、本当にうなづきながら、読みました。
読書論の中では、とっても記憶に残るフレーズが満載。この本を読んで、読書で人生編集されたって幸せかも!と、なんで私は本を読むのだろう?

という点がすっきりしました。

Takaさんがおっしゃるように、ちょっと周りを見渡すと、読書って、実はほとんど皆さんしていないですよね。我が家の場合は夫の方が量も読むので。。

超有名と思う著者の方もお名前知らない方がとっても多いし、ほとんどかも、とよく思います。
自分が異様な時間を過ごしている?と思うこともあったりして・・・

だれもが知っているであろう・・・福原さん、おそらく私の周りは知らない・・・かもしれない。何ともったいない。

2 ■Re:良書でした!

>コトバ屋@えちごゆうさん

方法論ではない読書論で、人生における読書とは、みたいなところを突いてくれますよね。
やっぱり古典だ!という想いを強くさせられました。
読みたい新刊との間で引き裂かれそうですが(笑)

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