2009-03-08 19:07:08

第2話 /第一章「トモダチ」

テーマ:②第一章
一瞬、耳を疑った。


彼が口元に浮かべた笑みで、


侮辱されたことに気がつく。




「そんなこと言われる筋合いないと思いますが。


失礼ですけど、これって、ネズミ講ですよね?」




黙ってるなんてできなかった。




「ちょっと・・・!」





あみちゃんが割って入る。





「何を根拠に・・・失礼だな・・・」




男が立ち上がる。




「こういった手法が、完全にネズミ講だと思うんですが、違いますか?」




堤さんは、チッと舌打ちをして、




「なんでこんなヤツ、紹介すんだよ。」




と吐き捨てるように言い、



その場から立ち去った。




「あ・・・」




と、立ち上がるあみちゃん。




アタシは彼女に問いかける。




「100万・・・払っちゃったの?」





「何であんな言い方するの?ひどいじゃない。」





彼女はひどく興奮していた。





「ごめんね・・・でも、あみちゃんだま・・・」





「騙されてるっていうんでしょ?知ってるよ。そんなの。

でも、それでもいいの!」






そして、その場で泣き崩れた・・・





彼女はこんなに、



弱い子だったろうか・・・




ピンサロで、



私の前に立ちはだかってくれた



あの頃の彼女は、



もういない・・・





周りを気にせず、ひとしきり泣いた後、




「ごめん。」




と言って、カバンの中から何かを取り出す。




「○△メンタルクリニック」




と書かれた薬袋から、



クスリを一粒取り出し、口にほおりこんだ。





「かわいそうとか思ってるんでしょ?


分かってる。分かってるけど、


好きなんだもん。どうしようもないじゃない。」






目の前にいる彼女と、あの頃のアタシが重なる。




痛いほどわかる。



その気持ちが・・・・





初めてのソープで、アタシと同じように不安だった彼女。


初めてついた、指名のお客様が、


堤さんだったそうだ。


何度も何度も、通ってくれる彼に、


彼女は心を許していく・・・


そして、


「俺と付き合ってほしい。」



きっと、それが彼の手口なのだ・・・・



弱っている彼女に、その言葉はてきめんだった。



あれよあれよという間に、契約をさせられ、


大量の商品が、家に送られてきた。


親にも言えず、大学時代の友達や、


昔の友達に連絡をする。


けれど、みんなから断られ、


今度は、お店の子にも、売ろうとしたのだ。




「みんなにバカにされたの。


そうやってモモカちゃんみたいに、ねずみ講だって。


その前日まで、仲良かったのに、


彼氏のこと話したら、寄ってたかって無視された。」




 彼女はイライラしながら話し続ける。




「どんなに商品がいいものだ。って話しても、


聞く耳も持たないの。


だから仕返ししてやったの。」





「盗んだの・・やっぱり、あみちゃんなのね・・・」





彼女は力なく、うなずいた。





「ねえ、モモカちゃん、アタシから商品買って。


あんな風に、彼氏のこと邪険に扱わないで、


一緒に仕事やって。


そうすれば・・・・そうすれば・・・・」





3ヶ月の間に。


アタシの知っているあみちゃんは、


どこへ行ってしまったのだろうか?





「解約できないの?」



「消費者センターに相談したら?」




そういう言葉も、彼女には届かない・・・





かける言葉が無くなり、


やがて、沈黙が訪れる。





「じゃあ。もう会うことはないと思うけど。」




と、あみちゃんが、立ち上がった。




「待って。」




と彼女の手をつかむ。




「関わらないほうがいいよ。


モモカちゃんも、頑張ってね。」




とアタシを振り払い、


テーブルに1000円をほおり投げ、


バイバイと手を振って、行ってしまった・・・





2009-03-04 15:44:33

第2話 /第一章「トモダチ」

テーマ:②第一章
「モモカちゃん、どうかした?」



とあみちゃんがつぶやく。



「あ・・うん、なんでもない。ごめんね。」




ごまかすしかなかった。


その場で問いただすなんて、


アタシにはできない。




席に着くと、堤さんと仲良さそうにメニューを広げて、



「何食べる~?」



と嬉しそうなあみちゃん。




アタシは、気が動転したままだ。



どうにか、飲み物だけ注文し、



作り笑顔で彼女たちの様子を見ていた。




「久しぶりだよね~モモカちゃん。」




と屈託のない表情で話し始めるあみちゃん。




「お仕事は、まだされてるんですか?」




と堤さんが聞いてくる。



どこまで知ってるんだろう?と身構えると、




「あ・・・ツーちゃんとはお店で知り合ったの。

だから、仕事のこと知ってるんだ。」




とあみちゃんが言った。




「私、ずっと風俗やめたくていたんだけど、

この不況でしょ。仕事も見つからないし、とりあえずソープやってたの。

でもね、ツーちゃんと出会って・・・ね。」




と彼にウインクをしながら、話し続ける。




「ソープもやめようと思えたし、今すごく幸せだし、

ホントよかったって思ってるんだ。」




「そうなんだ・・・」




笑顔を浮かべ、相槌を打つしかない状況・・・




何が何だか分からない。



そもそも、何故、彼氏をここに連れてきたのか・・・



そして、何故、私のサンダルを履いているのか・・・



わざとなのか?



それとも、私のではないのだろうか?




「モモカさんは、他にお仕事とかされてるんですか?」




1人で、悶々と考え込むアタシに、堤さんが質問する。




「え?いや・・・特には。」




「そうですか・・・普通のお仕事とかは、する予定はないんですか?」




その言葉に、すこしムッとする。




「いえ、いずれは戻る予定ですけど。」




「そうですか。」



と言いながら、堤さんは、バッグから、


書類を取り出し、




「お仕事、一緒にしませんか?」




と唐突に、言った。




「へ?」




訳が分からず、あみちゃんのほうを見ると、


うんうん。とうなずいている。




「僕、健康食品の代理店の仕事をしているんです。

彼女にも、この仕事を、手伝ってもらってます。」




「健康食品・・・・?」





堤さんは、満面の笑みで話し続ける。




「今、月にどのくらい稼いでいらっしゃいます?

100万くらい?それ以上?

でも、今のお仕事じゃ、身体にも負担があるでしょうし、

精神的にも辛いですよね。

長く続けられる仕事でもないと思います。

もし、私の紹介するお仕事で、同じくらいの額が稼げるとしたら、

どうですか?」




堤さんは、ボールペンを取り出して、


息つく間もなく、話し続ける。




「仕組みをお話しますね。

ここをご覧になってください。ここが僕らの親会社です。

健康食品の販売を主にしている会社です。

そして、僕がこの会社から、卸値で食品を購入し、

社員である皆さんに、その商品を卸します。

これを、他の方にセールスして頂いて、売るんです。

数多く売れば、それだけの利益が得られます。

商品はものすごくいいものですので、

初期費用は多少かかりますが、すぐにそれ以上の利益が見込めます。」



マシンガンのように話し続ける堤さん・・・


アタシは、その図と、しくみを見てすぐに、


「ネズミ講」だと気がついた。



もしかすると、あみちゃんもこの男に、騙されているのかもしれない。




「初期費用って、どのくらいかかるんですか?」




男は、回りくどい話を繰り返しながら、


なかなか金額を言おうとしない。


もう一度、



「初期費用は?」



と聞き返すと、



「100万ですけど、これはすぐに元が取れます。

この食品は、本当にすぐれているものですから、

皆さん、とても欲しがるんです。

安いくらいですよ。」




と、笑顔のままいった。






「申し訳ないですが、私は借金がすでにたくさんあるので、

その初期費用は用意できません。」





騙されるつもりなど、毛頭なかったが、


アタシは、あみちゃんの手前、そのように答えた。






「ローンもありますよ、でもすぐに、元は取れます!」





もう一度笑顔。





「いえ・・・無理です。」





と言ったアタシに、



堤さんが顔色を曇らせてつぶやいた。





「一生、ソープ嬢でいるつもりですか?」




と・・・







2009-02-28 00:22:42

第2話 /第一章「トモダチ」

テーマ:②第一章
さすがに、その場で出るわけにはいかず、


アタシは、家に帰るとすぐに電話をかけなおす。



「もしもし。」



少し緊張してかけた電話に、



「もしもし~モモカちゃん!久しぶり~」



前と変わらない、彼女の明るい声。




アタシは、そこで、彼女はやっていない。


と確信した。




「ごめんね~メール返せなくて~

お店めんどくさくなってやめちゃったんだ~

モモカちゃんは頑張ってるんだね~」




同じ戦場で戦っていた友達との会話は


心地がいい。




盗難事件の話はできないまま、



ガールズトークは、2時間経過する。




「ねえ、もしよかったら、明日出勤前にお茶しない?」




明け方になりそうなのを察してか、


あみちゃんが言う。



アタシは、シゴトの前に人に会うと、


出勤しなくなる癖がある。


でも、久しぶりに彼女と会えるなら・・・


と、その誘いを受けた。




盗難事件のこと、話してみようか?


でも、関係ないんだから、話す必要はないか・・・



少しだけ気にしながら、


アタシは次の日、待ち合わせたファミレスへと向かった。




早く出てきたせいか、


彼女はまだ来ていない。


先に席について、メニューを広げた。




ブーブーブー



テーブルに置いた携帯が鳴り出す。




椅子から立ち上がりながら、




「もしもーし」




と電話に出ると、




ちょうど入り口のところで、




「ごめんね~」




とあみちゃんが手を振っている。





その彼女の横には・・・



見知らぬ男性・・・




誰だろう・・・?




彼女は、その男性と一緒にアタシの所まで来て、



「ごめんね~彼氏なの~」



と言った。




「堤です。」



と彼が、手を差し出す。




その差し出された手の意味が分からずに、


戸惑うアタシ。




「もう~ツーちゃんすぐ握手求めるんだから~

やめなよ~モモカちゃんびっくりしてるじゃん~」




あみちゃんが言う。




「あ・・・ごめんなさい。握手ですね。」



と謝ると、



「はじめまして。」



と堤さんは再度、握手を求めてきた。




アタシは、その手を握り、


軽くお辞儀をする。




そして、彼女達の足元に視線を落とした。






え・・・・・?







「ツーちゃん奥入って~」



と、先に席を勧めるあみちゃん。





その間。


アタシは、彼女の足元から、


目が離せなかった・・・・





何で?



どうしてだろう?





その場から動けない・・・




不思議そうに、アタシを見るあみちゃん。






昨日、盗まれたはずの、


アタシのサンダル。




彼女が履いていたのは、


まさにそれだったのだ・・・・







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