隠し撮りを駆使して日本のイルカ漁を記録し、米アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞した「ザ・コーヴ」。漁関係者は「一方的な取材だ」と反発している。食文化と動物保護のはざまで論議を呼ぶ映画、撮る方撮られた方の言い分は--。【ロサンゼルス吉富裕倫、鈴木梢、山寺香】

 「スパイ映画のように抜群に良くできたドキュメンタリー」。米紙ニューヨーク・タイムズは昨年、そう絶賛し、イルカ“殺害”については「合法かもしれないが、冷淡で残酷、吐き気を催すほど原始的だ」と伝えた。映画は米製作者組合賞のドキュメンタリー部門なども受賞。欧州や豪州でも高い評価を得ている。

 映画は和歌山県太地町の入り江(コーヴ)で400年続くイルカ漁の実態を追う。配給会社のアンプラグドによると、現地でショー用のイルカの捕獲が行われ、選ばれなかったものが食用となっていることや、入り江に追い込まれたイルカが鉄の棒で刺され、海水が赤く染まる様子を映し出す。イルカ肉が鯨肉と偽って売られていることや、肉から2000ppmという高い値の水銀が検出されたとも主張している。

 撮影では高度な隠し撮りの技術を駆使。フリーダイビング(機材なしの潜水)の世界記録を持つダイバーが、岩に見せかけたカメラや水中録音機を設置したり、遠隔操作の無人飛行船を用いたりした。

 毎日新聞の取材に応じたルイ・シホヨス監督は「太地町役場と漁協で2日間取材交渉し、応じてもらえるなら入り江を撮影しないと言った。しかし彼らは自分たちの見解を述べることすら拒否した」と説明。また「アジアも含めた世界の人が映画を見て感動している。略奪と汚染で生物が危険にさらされている海のことを考えてほしい。日本だけではなく、みんなの問題だ」と訴える。

 一方、映画を見た太地町立公民館の宇佐川彰男館長は「太地の景色を美しく撮り、住民はこんなに残酷なことをしていると巧妙に対比していた。シナリオに合う場面を当てはめ、太地町でない映像もあった」と指摘する。

 「文化の違いや、反対意見はあってもいいが、映画は一方的で紳士的ではない。入り江の漁場にサーフボードを持った外国人女性が乗り込んで来て、真顔で怒る漁師を撮ってジャパニーズマフィアと呼ぶ。これってドキュメンタリーですか?」と憤る。

 「古式捕鯨発祥の地」をPRする太地町をはじめ、全国各地にはイルカ漁の長い歴史と文化がある。農林水産省の海面漁業生産統計調査(08年)によると、全国の漁獲量は9082頭。20年前の約4分の1まで減少している。都道府県知事の許可で漁ができ、和歌山のほかに北海道▽青森▽岩手▽宮城▽千葉▽静岡▽沖縄県で許可されている。

 日本での公開も波乱含みだ。配給会社には、地元の漁協関係者から上映中止を求める要請文が届いた。5~6月に国内30館で上映予定だが、配給元は苦肉の策を駆使。町関係者の顔にぼかしを入れたり、「水銀値の調査結果にはばらつきがある」「イルカ肉の偽装について、太地町は事実ではないと反論している」とテロップを入れるという。また今月6日に上映会を予定していた立教大学は、町関係者の要請で急きょ、中止している。

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