妊娠中の食事制限は、アトピーの予防になるの? | 子肌育Blog アトピーに負けない生活。

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妊娠中の食物制限はアトピーを防げるのか


妊娠中の食事制限は、アトピーの予防になるの?


こんにちは。橋本です。


妊娠中のママとおなかの赤ちゃんは「へその緒」でつながっています。


そのため、母親が食べるもので、おなかの赤ちゃんの体質が決まるのではないか?


素朴に、そう思うかもしれません。


「母親が妊娠中に、アレルギーが心配なものを除去した食事にすると、子どものアトピー、アレルギーを防げる」


このような考え方をYESとする研究と、NOとする研究がともに発表されていて、医学者の中でも議論はわかれていました。


が、それはひと昔前のこと。


世界でみると


最近では、NO。つまり、妊娠中の食事制限がアトピーやアレルギー発症の予防にはならない意見が圧倒的に多数を占めています。


アメリカ:小児科学会

ヨーロッパ:小児アレルギー学会

日本:厚生労働化学研究班


先進国を代表する、おもな組織で、妊娠中に食物除去をすることは、「すすめられない」としています。


妊娠中の食事制限は危ない


とくに問題となるのは、三大アレルゲン「卵」「牛乳」「大豆」の除去。


これらは貴重なタンパク源なので、除去をしてしまうと、妊娠中の母子ともに大事な栄養が不足してしまう恐れがあるんですね。


さらに、アレルゲンになりやすい「小麦」を除去しようとすると、精神的に大きな負担になって、母体にとっては危険になります。


はっきり言ってしまうと、妊娠中の食事制限は危険です。


実際に、妊娠中の食事制限を検証すると


妊娠中の母親の食事制限による、子どものアトピー発症予防効果を実際にテストしたランダム化比較試験は、7件あります。


2件で一時的な発症率の低下が指摘されている一方、最も質の高い報告 1) を含め、4件ではまったく予防効果がみられていません。 2, 3, 4, 5, 6, 7)


それが実際のところなんですね。


ピーナッツについて


2000年のアメリカ小児科学会では、「ピーナッツ」のみ、妊娠中の除去をすすめていました。


理由は、


アナフィラキシーショックでの死亡例の8割を占めるアレルゲン

ピーナッツぐらいは除去しても、栄養に影響がない


ということでした。


しかし、妊娠中のピーナッツ除去に効果がないとする最近の研究から、2008年には、「除去をすすめない」ことに方針を変えました。


これは、「妊娠中にピーナッツを除去したらダメですよー」という意味ではなく、「除去するほどの根拠がない」というのを伝えているわけですね。


まとめ


現時点では、妊娠中の食事制限にあきらかなアレルギー発症予防の効果は認められていません。


とくに、「卵」「牛乳」「大豆」「小麦」を制限するような食事は、危険です。


だからといって、好きなように食べるのがいいわけではありません。


特定のものだけを、極端に多く食べるようにしない。


いわゆる「栄養バランスのとれた食事」が、アトピー、アレルギー発症の予防からみてもいいのではないか。


というのが現状ですね。


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参考文献:

1) Miskelly FG, Burr ML, Vaughan-Williams E, Fehily AM, Butland BK, Merrett TG. Infant feeding and allergy. Arch Dis Child. 63:388-93, 1988.

2) Chandra RK, Puri S, Hamed A. Influence of maternal diet during lactation and use of formula feeds on development of atopic eczema in high risk infants. BMJ 299:228-30, 1989.

3) Lilja G, Dannaeus A, Foucard T, graff-Lonnevig V, Johansson SGO, Omen H. Effects of maternal diet during late pregnancy and lactation on the development of atopic disease in infants up to 18 months of age -in two results. Clin exp Allergy 19:473-9,1989.

4) Zeiger RS , Heller S. The development and prediction of atopy in high-risk children: follow-up at age seven years in a prospective randomized study of combined maternal and infant food allergen avoidance. J Allergy Clin Immunol. 95(6):1179-90, 1995.

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6) Hide DW, Matthews S, Tariq S, Arshad SH. Allergen avoidance in infancy and allergy at 4 years of age. Allergy. 51:89-93, 1996.

7) Hide DW, Matthews S, Matthews L, Stevens M, Ridout S, Twiselton R, Gant C, Arshad SH. Effect of allergen avoidance in infancy on allergic manifestations at age two years. J Allergy Clin Immunol. 93:842-6, 1994 .