「敦賀湾原発銀座 [悪性リンパ腫]多発地帯の恐怖」 明石昇二郎著のレビュー | 内部被曝、放射能問題、原発事故、地震、津波についての情報ブログ

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<提言>内部被曝と外部被曝は危険性が全く違います。屋外を外出する場合は、マスク等を着用して放射能を内部被爆しないようにいたしましょう。
東京や関東、東北の放射能が高い場所では、マスクやゴーグルを着けることで内部被曝を最小限にすることができます。

「敦賀湾原発銀座 [悪性リンパ腫]多発地帯の恐怖 (宝島SUGOI文庫)」 明石昇二郎著のレビュー


http://www.amazon.co.jp/product-reviews/4796688900/ref=dp_top_cm_cr_acr_txt?ie=UTF8&showViewpoints=1    から以下を引用

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日本で行われた低線量被曝調査, 2012/3/26  by ひょうたん


 レビュー対象商品: 敦賀湾原発銀座 [悪性リンパ腫]多発地帯の恐怖 (宝島SUGOI文庫) (文庫)


この本は、日本にも放射性物質の低線量被曝を徹底的に実地調査した人々がいた貴重な記録です。低線量被曝の調査は、どこの国でも政府が積極的に取り組もうとしない問題でした。


そのような調査は、だれか勇気のある人が、核がほしい政府やこれでぼろ儲けしている産業界に逆らってするものです。


 そういう人は世界中に現れ、アメリカではジェイ・マーティン グールド さんが核実験地と原発との疫学的関係の立証をし、スウェーデンではトンデルさんがチェルノブイリ事故の健康被害調査を行い、ベラルーシではゴメリ医科大学のバンダジェフスキーさんが同事故の死者の影響調査を行い、それぞれ重大な低線量の被害実態を解明していきました。


こうした努力が、ICRPの絶対安全論を突き崩し、ECRRの低線量被曝の新基準の根拠になっていったそうです。


 日本では、本書のような広域の地域で実態調査をしたというのはおどろくべきことです。これは、プレイボーイ誌の明石さんが中心となり、1994年に敦賀半島の原発銀座の白血病多発の噂を聞いたので、半径10kmの地域を全戸調査したものです。


医療関係者がやらなかったことを、ジャーナリズムの立場から、一念発起して調べています。


 本書には原発の風下地域に悪性リンパ腫が有意にみられ、そのほかダウン症、骨髄癌など、さまざまな疾病が発生していることを突き止めていった経緯が書かれています。


 調査は、学生調査員たちが現地に合宿し、戸別訪問して玄関先で「あなたのお家に癌になった人はいませんか」と聴いて歩いたのですから、それだけでもめげそうです。


苦労の末に調査は完了し、驚くべき病気多発の実態が見いだされました。


市町村行政も県も、当然電力会社も、まったく協力的ではなく、情報が電力から県に流され、県知事は同誌に抗議文を出すというようなあきれた行動をとりました。


疫学統計的な裏付けは充分に取って進めているのですが、市町村が集落の正確な人口を開示しなかったため、少し不備が残りました。


それは調査側の落ち度ではありません。行政側が悪いのです。現在なら情報公開条例があるのが普通なので、請求すれば市町村は開示しなければならないでしょう。


 面白いのは、この事件の数年後、筆者が別件でこの地域を再訪したとき、むしろ住民や市町村に歓迎されたというエピソードです。真実を明らかにするということはそういうことですね。


 調査結果はプレイボーイ誌に4回連載され、調査の全体の経緯が1997年に本としてまとめられ、本書はその改訂増補版だそうです。


 調査員学生が綴った苦心のメモ、ムキになってデータをけなそうとする県の担当者との議論などが詳細に記されていて、読み応えがあります。それだけでなく、学術書顔負けの詳細なデータが記載されています。


 福島原発事故が起きたのち今までの国や県のなさけない対応を見る限り、日本全国で、これから、このような低線量被曝問題が医療や行政、法廷の場で議論されていくことになるのは避けられないでしょう。


チェルノブイリではまだ分かっていなかった被害も解明されていくでしょう。そのときに何が市民側の真実解明の鍵を握っているのか、この本はそれを教えてくれます。


 また、批判精神が欠如した日本のマスコミの醜態を見るにつけ、この本の底流にあるジャーナリズム精神はなんと健全だろうと思います。いい本です。


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第一級のルポータージュ, 2012/5/6 By Yuhki (千葉県)


レビュー対象商品: 敦賀湾原発銀座 [悪性リンパ腫]多発地帯の恐怖 (宝島SUGOI文庫) (文庫)


今回の福島原発の事故をきっかに文庫版として再版されたようです。巻末には2012年1月27日第1刷とあります。


帯には「第一級のルポータージュ」とありますが、記者が耳にした「噂」を元に本格的な調査を開始していくまでの課程が最初で描かれていますが、正直「よくやったな・・・」というのが感想です。


「第一級のルポタージュ」というのも誇張では無いと感じました。内容も奇をてらったものでは無く、データの処理に対する慎重な姿勢と、確認が取れてない参考情報はきちんと省く事も行われており、貴重な資料だと思えます。すばらしい仕事に素直に拍手をおくりたいです。


また、第2章のタイトルにもなっていますが「あなたの家にガンの人はいますか?」と聞いて歩かないといけない調査員の苦痛には読んでいる方も心が痛みました。


本書の半分以上が、調査結果を公開した後の行政や関係機関の反論への対応などのやりとりに使われていますが、問題のある期間を「調査中」としてそれ以外の影響の無い期間のデータを元に発表を行うなど、新聞や公の発表を普通に聞き流して文字通りに受け取ってはいけないという事を意識させられます。


そして、こうした行政や関係機関の対応から、原発の健康の影響に対するきちんとした調査は当時はそもそも行われてなかった。と言う事がわかります。


今でも恐らくこうした調査というのは行われてないのでは無いでしょうか。


放射性物質の影響は、甲状腺ガンや白血病と言われていますが、よく考えると調査も行われてないのに、そうした病気しか無いと思いこんでいた事。


ひょっとしたら、そう言った病名をブラフとして上げられ、そう思いこまされていたのかもと考えると怖い事だなと感じました。


そもそも放射性物質による影響が特定の病気だけと考えるのは不自然な事かもしれません。


この調査でクローズアップされた「悪性リンパ腫」もそうですが、戸別訪問や病名を限定した調査の中では、データとしては採用できなかったものの、様々な病気が発生している事が伺われ、行政によるきちんとした調査が行われれる事が必要ではと思いますが、本書を読むとそれは決して行われる事は無いような印象を受けてしまいます。


最近では泊原発周辺のガン発生率が高い事が指摘されていますが、これもあくまで、原発事故が無い状態での原発周辺の健康への影響を調査した結果であり、福島原発事故の今後の影響を考えると恐ろしい気がします。

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明石昇二郎プロフィール

http://www.rupoken.jp/akashiprof.html   から以下引用



明石昇二郎プロフィール

明石 昇二郎(あかし しょうじろう)
1962年、東京都出身。
ルポライター、ルポルタージュ研究所 代表。

1985年東洋大学社会学部応用社会学科マスコミ学専攻卒業。
1987年『朝日ジャーナル』に青森県六ヶ所村の「核燃料サイクル基地」計画を巡るルポを発表し、ルポライターとしてデビュー。その後、『技術と人間』『フライデー』『週刊プレイボーイ』『週刊現代』『サンデー毎日』『週刊金曜日』『週刊朝日』『世界』などで執筆活動。
ルポの対象とするテーマは、原子力発電、食品公害、著作権など多岐にわたる。築地市場や津軽海峡のマグロにも詳しい。
フリーのテレビディレクターとしても活動し、1994年日本テレビ・ニュースプラス1特集「ニッポン紛争地図」で民放連盟賞受賞。
2004年より日本テレビ・きょうの出来事で「カネミ油症」特集を7回にわたって制作。カネミ油症被害者を長年苦しめてきた国への「仮払金返還」問題をテレビで初めて取り上げた。2007年には日本テレビ・NNNドキュメントで「覚めない悪夢 カネミ油症39年の空白」を制作。
2008年『週刊プレイボーイ』誌上で、クレジットカード会社やサラ金業者から自力で過払い金を回収する模様をレポートした実践ルポ「貧者の埋蔵金・過払い金を奪還せよ!!」をシリーズ連載。連載は集英社より単行本(『過払い金を取り戻せ!!』)にもなった。
2009年米国のグーグル社が引き起こした世界規模の著作権侵害事件「グーグルブック検索和解」事件で、一被害者として単身、グーグル社に立ち向かう。この事件を扱った『週刊プレイボーイ』での連載は集英社新書より出版(『グーグルに異議あり!』)されている。
2010年「ルポルタージュ研究所」を設立。



著作
* 『ニュークリア・レインのあとに―ぼくのルポルタージュ実習―』(1987年、白水社)
* 『六ヶ所「核燃」村長選―村民は選択をしたのか―』(1991年、野草社)
* 『一揆―青森の農民と「核燃」―』(高橋宏氏との共著。1992年、築地書館)
* 『敦賀湾原発銀座〔悪性リンパ腫〕多発地帯の恐怖』(1997年、技術と人間)
* 『責任者、出て来い!』(1999年、毎日新聞社)
* 『シミュレーション・ノンフィクション 原発震災』(編著。2001年、七つ森書館)
* 『愛と希望のルポルタージュ―明石ジャーナル―』(2002年、七つ森書館)
* 『黒い赤ちゃん―カネミ油症34年の空白―』(2002年、講談社)
* 『原発崩壊―誰も想定したくないその日―』(2007年、金曜日)
* 『過払い金を取り戻せ!!』(2009年、集英社)
* 『長井健司を覚えていますか―ミャンマーに散ったジャーナリストの軌跡―』(2009年、集英社)
* 『グーグルに異議あり!』(2010年、集英社)
* 原発崩壊 増補版-想定されていた福島原発事故(2011年、金曜日)
* 原発の闇を暴く (広瀬隆氏との共著。2011年、集英社新書)
* 食品の放射能汚染 完全対策マニュアル (水口憲哉との共著。2011年、別冊宝島)
* 福島原発事故の「犯罪」を裁く(広瀬隆氏、保田行雄氏との共著。2011年、宝島社)
* 敦賀湾原発銀座 [悪性リンパ腫]多発地帯の恐怖 (改訂・増補版。2012年、宝島SUGOI文庫)
* ハンディ版 食品の放射能汚染 完全対策マニュアル (水口憲哉との共著。2012年、宝島社)
* 福島原発事故の正体(2012年、金曜日)