2011年10月03日

発達障害を理解するために(2) -吃音症から学ぶ-

テーマ:■障害をもって生きるとは
この記事は、シリーズ「発達障害を理解するために-他の障害から学ぶ-」の1つです。このシリーズは、自分自身の障害をよりよく理解するために、他の障害に目を向けて視野を広げて考えることを目的としています。
第1回の記事をご覧になっていない方は、ぜひお読みください。
「発達障害を理解するために(1) -他の障害から学ぶ- 」


私が最近見た映画で、いろいろな人におすすめしているのが…
「英国王のスピーチ」
です。

第83回アカデミー賞作品賞受賞! 主要4部門独占したので、ご存知の方も多いかも知れません。吃音症を抱えていたイギリス国王の実話です。
(Wikipediaより引用)
吃音症(きつおんしょう、英: Stammering symptom)は、発語時に言葉が連続して発せられたり、瞬間あるいは一時的に無音状態が続くなどの言葉が円滑に話せない疾病。言語障害の一種のような症状を示す病気である。どもり、吃音ともいわれる。

「どもりぐらい…」と思われる人もいるかもしれません。吃音について、文章でいくら説明しても、なかなか伝えにくいのですが、この映画では吃音による当事者の辛さや苦しみが痛いほど伝わってきます。もちろん、この映画をみたから吃音症のすべてがわかるわけではありませんし、また、全てをわかったつもりになってもいけません。それは、どんな障害・症状でも同じこと。けれど、この映画が、いままでまったく知る機会のなかった障害・症状を、知るきっかけになればと思います。

まずは、あらすじを読んでみてください。


■Amazonより引用■
スピーチができない男が、国王になった―。
吃音に悩む英国王ジョージ6世が自らを克服し、国民に愛される本当の王になるまでを描いた感動の実話。

ジョージ6世は、王になどなりたくなかった。兄のエドワードが、王室が認めない愛のために王冠を捨てたことから、予期せぬ座についたのだ。しかも彼には、吃音という悩みがあった。スピーチで始まり、スピーチで終わる公務の数々に、いったいどう対処すればいいのか? 心配した妻のエリザベスは、スピーチ矯正の専門家、ライオネルの診療所に自ら足を運ぶ。堅く閉ざした心に原因があると気付いたライオネルは、ユニークな治療法で王の心を解きほぐしていくのだが ―。
----(引用ここまで)

第二次世界大戦の頃のイギリスの国王ジョージ6世のお話です。
子供の頃から吃音がひどく人前で話すことにモーレツなコンプレックスがありました。

実は、ジョージ6世は、国王になる予定はなかったのですが、兄のエドワード8世が一般女性との恋にかけ、国王を退いてしまったために、突然、国王になってしまったのです。

国王になる教育も受けていない上に、吃音という大きなコンプレックスを抱えおり、モーレツに悩みます。国王の大きな役割は、人前でスピーチすることです。しかも、国王ですから、半端ではない重要な場所でのスピーチです。どれだけの責任と緊張でしょう…

私たちは、自分にあった職業を選ぶことができます。

けれど、ジョージ6世は王室に生まれ、兄の突然の退位によって、逃げることができず、もっとも「適性」からかけ離れた仕事に就かざるをえなかったのです。

いろいろな治療を試すけれど、どれもぜんぜん効果なし…。すごく本人は必死なのにぜんぜんダメ…。父親である国王から、読めないスピーチを怒鳴られながら読む練習をするシーンは、あまりにも自分自身の経験に重なって涙がでました。きっと、発達障害の人には身に覚えがある、あのなんともやりきれない悔しさと失望感の混ざった気持ちが伝わってきて、見ていて胸がきゅっと痛くなりました。

指導する側のライオネルの複雑な境遇や心情、常に国王の心によりそう王妃の存在。発達障害の家族や支援者の気持ちに共通するものがあると思います。

扱っているテーマは重いですが、いいタイミングで笑えるコミカルな表現があったりで、決して重苦しくなく、たのしんで見られる映画だと思います。…あまり書くとネタバレになるので、とにかく実際に映画を見ていただければと思います。(映画の公式サイトで予告編を見ることができます。→■英国王のスピーチ公式サイト■

実は、この映画をおすすめする理由はストーリーだけではありません。実はこの映画の裏話として、とても興味深い話がありました。

この映画の脚本家デヴィッド・サイドラー自身が子供の頃から吃音に悩んでいたのです。
当時、イギリス国内では、ジョージ6世の吃音は国民にも有名だったようで、デヴィッドは、親からジョージ6世のスピーチを聞かされたこともあるとか。

DVDのインタビューの中で、デヴィッドがこう話していました。
「私は幼い頃、吃音症だったから、ジョージ6世に自分を重ねていた。だから、こう思った。国王が吃音症を克服して、うまくスピーチができるようになれば、自分にも希望がある。」

これは勝手な私の想像ですが、ジョージ6世自身は、吃音でうまく話せない自分を恥ずかしく感じていたんじゃないかな…と。けれども、実際には、吃音に苦しみながらもスピーチを続ける姿や、吃音を乗り越えようとする国王の姿は、同じ吃音に悩む国民にとっては、大きな希望の光になっていました。

そして希望を受け取った国民の一人、デヴィッド・サイドラーがこの脚本を書いた…。

そう考えると、吃音があったことでジョージ6世は"他の国王にはできない”大きな役割を果たしたのかもしれません。

そして、もうひとつ。
この脚本家デヴィッド・サイドラーは、73歳!
いままで、特にヒット作もない"ぱっとしないTV番組の脚本家"だったそうです。長い間、ジョージ6世の話を脚本にしたくて温めて、やっと花開いたわけです。それも、いきなりアカデミー賞です。

なによりも、デヴィッド自分自身の苦悩をジョージ六世に重ねて表現したことで、より奥深く描けたのだと思うのです。つまり「吃音」の当事者でなければ、作りえなかった作品だったとも言えます。

そして、人は、年齢に関係なく、自分自身の思いのたけをぶつけることで、何かを成し遂げられるのだ…と、ジョージ6世とデヴィッドが教えてくれたような気がしました。

内容だけでなく、映像も音楽も美しいこの映画。
せひ、皆さんも「英国王のスピーチ」をご覧ください!

※補足※
この映画は吹替えなし(原語+日本語字幕)で見るのがおすすめです。コリン・ファースが見事に吃音を演じきっています。日本語吹替えの声優さんは吃音を復元できていないので、私が見た感じでは、いまひとつ吃音の苦しみが伝わってこない気がしました。

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