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「独立系FP池田洋子のやさしい経済コラム 」の連載は終了いたした。
1年間御購読いただきました皆様、ありがとうございます。
なお、2011年11月1日以降、随時、下記のアメブロでも公表していく予定です。
【お願い】1年間の流れを残したいので、当時現在で公表します。内容にはご注意くださいますようお願いいたします。
下記の内容は、2011年5月25日に公表したものです。
2010年のギリシャショック後の欧州財政危機の連鎖と株価への影響~その1(アイルランドへの影響と更なるギリシャ問題)
5月半ばを過ぎたあたりから、欧州情勢によって株価も為替も一喜一憂する展開が続いています。
そこで今回は特に、アイルランド事情に触れながら、深刻なギリシャの財政問題の今後の展開を考えるとともに、株価への影響も検証していきたいと思います。
~2010年のギリシャ・ショック後に、アイルランドにも財政危機の波が波及~
(1)住宅バブル崩壊により不良債権問題が深刻なアイルランド事情
アイルランドは、2000年~2007年頃まで拡大していた住宅バブルの崩壊の影響もあり、2008年のリーマンショック【「リーマンショック」が起きた背景と、日本が受けた影響について】http://ameblo.jp/asuka0055/entry-11066242282.htmlの後、実体経済が著しく悪化しました。
そのため、銀行の不良債権問題は深刻化し、政府の銀行救済コストも膨らんでいきました。
政府債務残高の増加に歯止めがかからず、アイルランドは、税収が落ち込んで財政難に陥りました。
アイルランド政府は、金融システムの安定化策や景気刺激策を打ち出しましたが、財政赤字は拡大していくばかりでした。
さらに2009年4月以降、不良債権処理策を講じましたが、財政赤字の拡大を食い止めることができず、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス(※1)は、2010年7月19日、アイルランド国債の長期信用格付けを「Aa1」から「Aa2」に格下げしました。
2009年12月22日、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス(※1)は、ギリシャ国債の長期信用格付けを「A1」から「A2」に引下げ、このことがきっかけとなり、アイルランドの財政についても市場で懸念が広がりました。
2010年5月のギリシャに続き、11月21日、アイルランドが欧州連合(EU)(※2)と、国際通貨基金(IMF)(※3)に、金融支援を要請しました。
結局、欧州連合(EU)(※2)と、国際通貨基金(IMF)(※3)から、金融支援を受けることになったアイルランドも、欧州連合(EU)(※2)と、国際通貨基金(IMF)(※3)から金融支援を受けることと引き換えに、追加的な財政赤字削減策を迫られていますが、景気の落ち込みがとまらず、結果として税収が減少し、財政再建が遅れるというジレンマから抜け出せない状態が続いています。
◆不良債権処理が進まず、アイルランドの格付けの、相次ぐ格下げ
(図1)ムーディーズ・インベスターズ・サービスによるギリシャ、アイルランド、ポルトガルの格付け比較表(2011年5月21日現在)

2010年12月17日、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス)(※1)は、アイルランド国債の長期信用格付けを「Aa2」から「Baa1」に引き下げ、見通しを「ネガティブ(弱含み)」と発表しました。
格下げの根拠として、以下の[1]~[3]の理由をあげています。
[1]銀行関連の偶発債務が次々と顕在化することによって、アイルランド政府の信用力がマイナスの影響を受けていること。
[2]アイルランドの経済見通しの不確実性が高まったこと。これは金融サービス、不動産セクターの深刻な下降局面の継続が続いていること。
[3]銀行の偶発債務の顕在化と、経済見通しの不確実性を背景に、アイルランド政府の財政力が大幅に低下していること。
さらに財政再建が不十分と判断すれば、さらなる格下げもあると理由付けしています。
2011年4月15 日、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス)(※1)は、アイルランド国債の長期信用格付けを「Baa1」から「Baa3」へ2 段階引き下げ、今後の格付けの見通しは引き続き「ネガティブ(弱含み)」としました。
格下げの根拠として、以下の[1]~[3]の理由をあげています。
[1]景気のさらなる悪化により、銀行への資産査定(※4)の結果、銀行救済の費用は当初の予想よりも増加しなければならないことが確実となり、そのため、財政は一層の悪化が予測されること。
[2]アイルランド政府の財政力は、ユーロ圏のインフレ抑制を図るための、欧州中央銀行(ECB)(※5)による政策金利引き上げの第一弾による影響を受ける可能性があること。
(図2)主要4カ国政策金利の推移グラフ

また、アイルランドの住宅ローン金利の70%以上が変動金利であるため、金利の上昇が消費者の心理にマイナスの影響を与える可能性が高まっていること。
[3]欧州安定メカニズム(ESM)(※6)が設定する資金支援の提供において、アイルランドの支払能力が、将来的に不確実性が高まるとの予想から、不透明なこと。
さらにアイルランドの今後の景気動向が著しく悪化した場合や、アイルランド政府の打ち出した財政再建計画が計画通りに進まなかった場合には、引き続き「ネガティブ(弱含み)」としています。
(図3)欧州委員会による経済予測(2011年5月13日発表)より作成
ドイツ、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルのGDP比較と、債務残高(GDP比率)

(2)デフォルト(債務不履行)懸念が日々強まるギリシャ事情
◆ギリシャ国債の利回りが過去最高に
2011年5月20日、欧州金融市場では、ギリシャの財政危機が2010年のギリシャ・ショック【2010年のギリシャ・ショックは、世界経済にどんな影響を及ぼしたのか?】の頃よりもさらに深刻化しているため、国債への売り注文が増えて価格が下落し、再びギリシャの10年物国債の利回りが16%台後半へと急上昇してきています。
この16%台後半という数字は、単一通貨ユーロが導入されて以来、過去最高となっています。
ギリシャの10年物国債の利回りが急上昇(価格は下落)してきた要因として、5月17日、ユーロ圏財務相会合議長のユンケル・ルクセンブルク首相が、ギリシャの自助努力の後に「ソフトな再編」を検討する可能性に言及したことが伝わり、金融市場に警戒感が広がったものと思われます。
(図4)主要国の国債利回りの推移グラフ(三菱東京UFJ銀行経済調査室作成2011年4月26日付Factsetより:ユーロ圏の10年物国債利回りグラフデータ)

一方では、欧州系格付け会社フィッチ・レーティングス(※7)が5月20日、ギリシャ国債の長期信用格付けを従来の「BB+(BBプラス)」から「B+(Bプラス)」に3段階引き下げたと発表しました。「B+(Bプラス)」は「非常に投機的」な状態を示しています。
さらに、欧州中央銀行(ECB)(※5)は、ギリシャ国債の償還期限が延長された場合、同国債を欧州中央銀行(ECB)(※5)の資金供給の担保として認めない構えを示唆しています。
そのため、ギリシャ国債の償還期限の延長を支持する、欧州連合(EU)(※2)の一部加盟国との対立も投資家の動揺を誘った模様で、思惑的な売りが出やすい状況です。
今後、将来的に、ギリシャ国債の償還期限の延長が実施されたとしたら、それは債務の返済条件の緩和を意味し、新たな債務再編問題が生じてくることは否めないでしょう。
しかしながら、ドイツのメルケル首相などが、金融支援の新たな枠組みを作る2013年までの債務再編を否定しているようです。
このため、アイルランド、ポルトガルなど、ギリシャと同じように、先行き、財政不安の悪化が予想される国の国債も売りものが増加し(国債の利回りは上昇)しているのだと考えます。
ギリシャ国債の償還期限延長などが検討されていることが表面化して以降は、同国がデフォルト(債務不履行)(※8)に陥るとの懸念が強まってきており、金融市場にとって更なる不安材料になるでしょう。
(3)欧州のニュースが世界の株価にも影響
2011年5月15日、ニューヨーク市警は、国際通貨基金(IMF)(※3)のストロスカーン専務理事を性的暴行の疑いで逮捕し、当局に訴追したことを明らかにしましたが、このニュースが伝わった直後からユーロは、対円でも対ドルに対しても、大きく乱高下し始めました。
(図5)ユーロ・円チャート(3ヶ月、日足)(2011年5月24日21時40分頃)

(図6)ユーロ・ドルチャート(3ヶ月、日足))(2011年5月24日21時40分頃)

そんな折、タイミング悪く、上記のようにギリシャの国債の長期信用格付の格下げが行われ、さらに債務再編問題が議論され始め、ギリシャのデフォルト(債務不履行)(※8)懸念が浮上してきました。
そのため、NYダウも、日経225も売りものに押される展開となり、5月19日以降も株価に不透明感が出てきています。
(図7)NYダウ(5日、15分足)(2011年5月24日21時40分頃)

(図8)日経225(5日、15分足)(2011年5月24日21時40分頃)

米国には、米国固有の事情(金融緩和継続等)もあり、日本には日本固有の事情(原発問題等)もありますが、やはり、5月19日以降は、欧州から伝わるニュースに一喜一憂してしまう流れになってきていますので、今後も注意して相場の流れをウォッチしていくことが重要になります。
次回のコラムは、2010年のギリシャショック後の欧州財政危機の連鎖と株価への影響~その2(ポルトガルへの影響と更なるギリシャ問題)を予定しています。
【用語解説】
(※1)ムーディーズ・インベスターズ・サービス(Moody's Corporation)
米大手債券格付け機関。ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、ジョン・ムーディーによって1900年に設立された最も歴史のある格付会社。1909年にムーディーが最初の債券格付でアルファベットの記号を利用した格付を導入して以来今日まで、この表記法が信用評価の国際的なシンボルとなっている。
ムーディーズの格付け定義の一覧表

(※2)欧州連合(EU)
(EU=European Union の略)。欧州連合(EU)とは、ヨーロッパ連合のこと。1993年11月1日、(※a)マーストリヒト条約の発効により発足した国家連合。
欧州連合(EU)は、経済的な統合を中心に発展してきた欧州共同体(EC)を基礎に、経済通貨統合を進めるとともに、(※b)欧州連合条約に従い、共通外交・安全保障政策、警察・刑事司法協力等のより幅広い協力も進展する政治・経済統合体のこと。統一的な通商政策を実施する世界最大の単一市場を形成し、政治的にも「一つの声」で発言している。
(※a)マーストリヒト条約 (※b)欧州連合条約
マーストリヒト条約(※a)の正式名称は欧州連合条約(※b)という。
マーストリヒト条約は、欧州連合の創設を定めた条約。1991年12月9日、欧州共同体(EC)加盟国間での協議がまとまり、1992年2月7日調印、1993年11月1日、発効された。協議は通貨統合と政治統合の分野について行われた。
(欧州連合(EU)加盟国)
欧州連合(EU)加盟国は27カ国(2011年1月1日現在)
(1)ベルギー、(2)ブルガリア、(3)チェコ、(4)デンマーク、(5)ドイツ、(6)エストニア、(7)ギリシャ、(8)スペイン、(9)フランス、(10)アイルランド、(11)イタリア、(12)キプロス、(13)ラトビア、(14)リトアニア、(15)ルクセンブルク、(16)マルタ、(17)ハンガリー、(18)オランダ、(19)オーストリア、(20)ポーランド、(21)ポルトガル、(22)ルーマニア、(23)スロヴァキア、(24)スロヴェニア、(25)フィンランド、(26)スウェーデン、(27)英国
(ユーロ加盟国)
ユーロ加盟国16ヶ国(2010年5月現在)
2009年1月1日に加盟したスロヴァキアが16カ国目の加盟国。
2011年1月1日にエストニアが17ヶ国目の加盟国になった。
(EU加盟国の内ユーロ加盟国)
1999年1月1日、単一通貨ユーロ導入
ベルギー、ドイツ、アイルランド、スペイン、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、オーストリア、ポルトガル、フィンランド
2001年1月1日、ギリシャ
2002年1月1日、ユーロの登場(ユーロ紙幣と硬貨の紹介)
2007年1月1日、スロヴェニア
2008年1月1日、キプロス、マルタ
2009年1月1日、スロヴァキア
2011年1月1日、エストニア(EUにおける17番目のユーロ導入国)
(※3)国際通貨基金(IMF)
IMF=International Monetary fundの略)。国際通貨基金(IMF)は、国際通貨協力のための世界における中心機関。国際的な金融協力や通貨、為替相場の安定等を担う国際連合の機関。経済危機に陥った途上国を支援する重要な役割も担っている。本部はアメリカ合衆国のワシントンD,C,で、2007年1月現在の加盟国は185カ国。
IMFの主な3つの業務
(1)世界、地域および各国の経済と金融の情勢をモニターし、加盟国に経済政策に関する助言を行う (サーベイランス〈政策監視〉) 。
(2)外貨を融資することで、国際収支の改善に向けた経済政策を支援する。
(3)専門的な技術支援や、政府や中央銀行職員を対象とした研修を行う。
(※4)銀行への資産査定
ストレステスト(資産査定)
2009年にFRB(連邦準備制度理事会)などの米金融当局が、金融機関等の資産の健全性を調べるために実施した検査において、「ストレステスト」という名称を用いた。
米金融当局が行ったストレステスト(資産査定)は、今後2年間に、景気の悪化の程度が想定を越えた場合に、損失がどの程度まで発生するのか予測し、金融機関等がどの程度の資本不足に陥るのかを試算したもの。ストレステスト(資産査定)は、金融機関等の資産内容の透明性を高めると共に、金融システムの安定化を促す目的で、資本増強を示唆するために実施されている。
(※5)欧州中央銀行(ECB)
(ECB=European Central Bankの略)。
ユーロ圏の金融政策を担う中央銀行。1998年6月1日に設立され、ドイツの首都であるフランクフルトに本店がある。
ユーロ圏とは、ユーロ加盟国のこと。つまり、ユーロを通貨として採用しているEU加盟国のことをいう。
(欧州委員会)
欧州委員会は1加盟国より1人ずつ任命される計27人の委員で構成されている。委員会の任期は5年。
基本条約の守護者であり、共同体法を提案し実施する権限をもつ。欧州委員会を譴責する権限をもつのは欧州議会のみです。欧州委員会の委員はそれぞれ1つ以上の政策領域に関して責任分野をもっていますが、決定に関しては連帯責任を負うことになります。
(※6)欧州安定メカニズム(ESM)
2013年6月に運営が開始される国際公法に基づいた恒久的な政府間組織。IMFやECBと共に資金難に陥った国の資金調達の必要性と民間部門の関与の是非を判断すると共に、政府債務の持続可能性を判断する。実質的な融資可能額は5,000億ユーロとなる。
(※7)フィッチ・レーティングス(Fitch Ratings)
フィッチ・レーティングスは、ニューヨークおよびロンドンを本拠地としている国際格付機関。
フィッチ・レーティングスの格付け定義の一覧表

(※8)デフォルト(債務不履行)
国債や社債の利払いが遅れたり、元本の償還が不能になったりして、約束どおりに元本や利払いの支払が行われなくなること。
ソブリンリスクとは、ソブリン(国家)がどの程度信用されているのかという信用の度合いを意味している。
一般的には、新興国において、膨大な財政赤字が膨らんだり、不安定な政治情勢が悪化したりして、政府の債務返済能力が低下した場合に用いられる。つまり、その国がデフォルト(債務不履行)してしまう可能性が高まると、破綻する危険を警戒する意味をこめて、「ソブリンリスクが高い」という具合に使うことが多い。
【参考資料】
■欧州連合-EU-駐日欧州連合代表部
http://www.deljpn.ec.europa.eu/
・(ニュース )「2011~2012年の春季予測: 新たなリスクが生じる中、欧州経済の回復は勢いを維持」原文は(英語)よりユーロ導入国の経済予測。
http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/11/565&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en
■為替どっとコム
http://www.gaitame.com/
■主要4カ国政策金利の推移
http://www.gaitame.com/market/seisakukinri.html
■三菱東京UFJ銀行経済調査室作成(2011年4月26日付Factsetより:ユーロ圏の10年物国債利回りグラフデータ)
http://www.bk.mufg.jp/report/ecostn2011/ldnreport_20110426.pdf
■MSN産経ニュース
http://jp.msn.com/
■世界経済のネタ帳
http://ecodb.net/
■REUTERS PRESIDENT プレジデントロイター
http://president.jp.reuters.com/
■asahi.com:朝日新聞社の速報ニュースサイト
http://www.asahi.com/
■ニュース 速報 YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/
■ムーディーズ・インベスターズ・サービス
http://www.moodys.co.jp/pages/default.aspx
■JAPANESE LANGUAGE RESEARCH
ムーディーズ・インベスターズ・サービス関連の日本語レポート及びプレスリリース
http://www.moodys.com/Pages/JapaneseLanguageResearch.aspx
■フィッチ・レーティングス
http://www.fitchratings.co.jp/web/ja/index
■欧州連合―欧州委員会
http://www.deljpn.ec.europa.eu/union/showpage_jp_union.institutions.institutions01.php
■ADVFN(株価チャート)
http://jp.advfn.com/
■日本経済新聞
http://pr.nikkei.com/index.html


