正しい英語を教えちゃる!

我が国のチマタにあふれ続ける珍英語と珍訳を
どげんかせんといかん!


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 「ノルウェイの森」といえば言わずと知れた村上春樹氏の大ベストセラー小説であり、この恋愛物語を映画化した作品も現在大ヒットしているらしい。

 

 「ノルウェイの森」という言葉自体は、ビートルズが書いた歌の題名 Norwegian Wood の「誤訳」である。この誤訳が、しかし、出版界と映画産業にもたらした経済効果は、あなどれましぇん!

 

 

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 昨日、昼食を済ませたあと、私が学内の図書館のロビーでソファにくつろぎながら雑誌を読んでいると、私のクラスを受講している男子学生の一人が、友人二人をともなって私の前へやってきて、「 Norwegian wood って、正確にはどう和訳すべきなんですか?」とたずねた。

 私は、「Norwegian wood は、ノルウェー産の木材だよ」と答えた。

 すると彼は1枚の紙を私に差し出しながら、「それじゃ、このビートルズの歌は、ノルウェー産の木材という題名なんですか?」と、いくらか半信半疑の表情を浮かべながら聞き返した。

 その紙には、ジョン・レノンとポール・マッカートニーが作った Norwegian Wood の歌詞の原文がプリントされていた。

 

 この歌の歌詞は以下の通り。(英語が苦手な方や、英語の初学者または英語にあまり関心のない方は、この英文を読んでいただく必要はない。この歌詞の意味については、のちほどわかりやすく解説させていただく)

 

 

  NORWEGIAN WOOD (This Bird Has Flown)

 

  I once had a girl

  or should I say she once had me

  She showed me her room

  Isn't it good, Norwegian wood

 

  She asked me to stay

  And she told me to sit anywhere

  So I looked around

  And I noticed there wasn't a chair

 

  I sat on a rug, biding my time

  Drinking her wine

  We talked until two

  And then she said, it's time for bed

 

  She told me she worked in the morning

  And started to laugh

  I told her I didn't

  And crawled off to sleep in the bath

 

  And when I awoke I was alone

  This bird has flown

  So I lit a fire

  Isn't it good, Norwegian wood

 

 

 

 

 

 男子学生は、そのあと、インターネット上で入手したというこの歌の日本語訳を3種類、私に見せてくれた。その3つは次の通りである。いずれも原文のまま。


 

  《訳詞その1》

 

  ノルウェーの森

 

  昔僕には女がいた、それとも僕が女にくっついていたと言うべきか

  彼女は僕に部屋を見せてくれた、素敵じゃないか、ノルウェーの森

 

  泊まっていってよと彼女は言い、どこでも好きなところに座ってよと続けた

  それで周りを見回すと、椅子なんてひとつもなかった

 

  僕は敷物の上に座り、彼女のワインを飲みながら時間を潰した

  僕らは2時までおしゃべりし、彼女が「寝る時間だわ」と言った

 

  朝から仕事なのよと、彼女は言って、笑い始めた

  僕は仕事はないからと答え、浴室まで這って行って寝た

 

  そして目を覚ますと僕は一人で、この小鳥は飛び去っていた

  だから僕は火をつけた、素敵じゃないか、ノルウェーの森

 

 

  《訳詞その2》

 

  NORWEGIAN WOOD

 

  あるとき 女をひっかけた いや こっちが引っかけられたのか

  彼女は僕を部屋に招いた ノルウェーの森にいるようだぜ

 

  泊まっていってと彼女は言い 好きなところに座るよう僕を促した

  そこで 僕は部屋を見まわし 椅子がひとつもないのに気づいた

 

  敷物の上に腰をおろし ワインを飲みながら時間をつぶすうち

  すっかり話しこんで2時になった すると彼女 ”もう寝なくちゃ”

 

  朝から仕事があると言って 彼女はおかしそうに笑った

  こっちは暇だと言ってみても始まらず 僕はしかたなく風呂で寝ることにした

 

  翌朝 目が覚めると僕ひとり 可愛い小鳥は飛んでいってしまった

  僕は暖炉に火を入れた ノルウェーの森にいるようだぜ

   

  

  《訳詞その3》

 

  ノルウェーの森

 

  いつかぼくには ひとりの恋人がいた

  彼女の部屋は ノルウェーの 森の中

 

  彼女はぼくに 座るようにといったけれど

  どこを探しても椅子は 見つからなかった

 

  絨毯の上で ワインを飲みながら

  話し続けていると 彼女は言った 寝ましょうと

 

  彼女はぼくに ご苦労様といって笑った

  ぼくはベッドを這い出して 風呂の中で寝込んだ

 

  目覚めると 小鳥はいない 飛び去ったんだ

  それでぼくは ノルウェーの森に 火をつけたんだ

 

 

 その次に彼が見せてくれたのは、彼の言葉によれば、「日本で最大手の、もっとも権威のある音楽出版社シンコー・ミュージック」が発行している「ビートルズ・リリックス101」という書籍の中にある Norwegian Wood のページだった。そこに載っていた訳詞は以下の通り。

 

 

  《訳詞シンコー・ミュージック版》

 

  ノルウェーの森(ノーウェジアン・ウッド)

 

  あるとき、女を引っかけた

  それともこっちが引っかけられたか

  彼女は部屋に誘ってくれたよ

  いいんじゃない、ノルウェーの森みたい

 

  泊まっていくかと俺にたずね

  どこでも好きなところに座って、と言ったのさ

  あたりを見まわして気づいたのは

  そこには椅子がまったくない

 

  俺はじゅうたんに座って、時間を過ごしたよ

  彼女のワインを飲みながら

  夜中の2時まで語り合った

  そしたら彼女が言ったんだ「もう寝なくっちゃ」と

 

  朝から仕事があったんだ

  と言って彼女は笑い出す

  俺は仕事はないのにさ

  結局、風呂場で寝るハメさ

 

  目覚めてみるとひとりぼっち

  小鳥はとんでいってしまったよ

  俺は暖炉に火を入れた

  いいんじゃない、ノルウェーの森みたい

 

 

 ご覧の通り、すべての訳詞において Norwegian Wood が「ノルウェーの森」となっており、どれもが、なんとも不可解で珍妙な内容である。

 「ノルウェーの森って、いったい何やねん? どんな森やねん?」と聞いてみたくなるのは私だけだろうか。

 

 男子学生が、「ノルウェーの森という和訳もアリなんじゃないですか?」とたずねた。「たとえば、何かの比喩とか、シンボルだとか」

 友人も彼に賛同しているようだった。「ただ単に Isn't it good の good に韻を踏ませるために思いついた、何の意味もない言葉かもしれませんよ。英語の歌って、韻を踏ませるために、わけのわからない言葉を無理やりあてはめるケースがけっこうあるじゃないですか」

 

 友人たちのうちの一人は、軽音楽部に籍を置き、ビートルズのコピー・バンドのメンバーでありビートルズの熱心な研究家でもあるらしい。

 彼が言うには、歌の中の Isn't it good, Norwegian Wood という部分は、初めは

Isn't it good, knowing she would「彼女がヤラせてくれるのがわかってるなんて素敵じゃないか」というフレーズだったものの、アイドル・グループの歌としては問題があるということで、knowing she would を Norwegian Wood に変えた、という説も根強くあるらしかった。

 

 ただ、楽曲の歌詞というものはおおむね何度も練り直されて完成されていくものだろうから、この歌詞にどのような「変更履歴」があろうが、そんなことはどうでもいいはずだ。

 問題なのは、実際にビートルズの歌として世に問われた作品のほうである。つまり、Norwegian Wood という題名を付けて発表されたビートルズ・ソングである。

 

 彼らによれば、この歌については、題名や歌詞の意味を巡って、ビートルズ・ファンの間で議論や論争が続いているそうである。

 過去に論争が起こり、そして決着が付いたということではなく、いまだにそれは延々と続いており、結論らしいものは出ていないとのことだ。

 我が国のファンの間でこの歌は、不可解で、難解で、幻想的で、神秘的であると考えられているらしい。

 それも無理のないことである。歌の意味を知りたいと思って訳詞集を買えば、先ほど紹介したようなチンプンカンプンの歌詞を読まされるのである。

 「ノルウェーの森」という言葉を、たとえば哲学の命題か何かだと勘違いしたとしても、仕方のないことだろう。

 

 
  正しい英語を教えちゃる!-woods

 

 

 この歌は難解であるという彼らの話を聞いて私が思い出したのは、一冊の書籍の中に書いてあった Norwegian Wood についての短い文章である。

 15年前に買い求め、半年ほど前に一度読み返した『外国人を笑わせろ!・ジョークで覚える爆笑英会話』という本のコラムの中に、次のような箇所がある。

 

 『「ノルウェイの森」 大ベストセラーの題名として知られるこの「ノルウェイの森」というフレーズは、ビートルズの人気曲 Norwegian Wood[ノーウィージェン・ウッド] の邦題としても有名である。ただ、Norwegian Wood は「ノルウェイの森」という意味ではない。これは「ノルウェイ産の材木」とでも訳すのが正しい。ビートルズのこの歌は、ノルウェイ産の材木を使って作られた部屋を舞台にした一夜の物語であり、歌の主人公は最後にこの部屋に火をつけてしまうという内容である。ちなみに、「ノルウェイの森」を英語で言うとすれば、woods in Norway か a forest in Norway となる』(以上、原文のまま)

 

 私はビートルズ世代より少しあとの、いうなればマイケル・ジャクソン世代の人間だが、洋楽に関心を持つ同世代の若者たちの多くがそうであったように、何年かに一度は訪れるビートルズ・ブームに乗ってこの4人の音楽を追体験していたので、

Norwegian Wood は何度か聴いたことがあった。

 この一文を読んだとき、「へえ、そうなの?」と思い、この歌を収めたCDに付いていた歌詞を慎重に吟味してみたところ、確かにその通りだなと納得させられたことを覚えている。

 

 つまり私の中では、Norwegian Wood の歌詞やタイトルの意味については15年も前に結論が出ており、21世紀の今になっても議論やら論争が続いているという話を聞くと、「へえ、そうなの?」と思ってしまうのである。

 

 

 

  正しい英語を教えちゃる!-wood

 

 

 私は男子学生たちに、「この歌は、難解でもなけりゃ、謎めいてもいないよ。明確なストーリーと具体的な情景がちゃんと描かれている」と告げた。

 彼らが私に見せた4種類の訳詞は、どれもが誤訳のオンパレードであることも教えた。

 レノンとマッカートニーは「ノルウェーの森」などという歌は作っていない。そのような歌は、この世に存在しないのだ。

 

 学生たちにしてみれば、だったらこの歌の本当の意味を教えてくださいよ、センセー、ということになる。

 

 私は、喜んで教えてあげると答えた。それで君たちの論争なるものを終わらせることができるなら、とも付け加えた。

 

 Norwegian wood を「ノルウェーの森」ではないかと思っている限り、彼らの論争が収束することはない。

 いうなれば彼らは、権威ある音楽出版社や訳詞家が「創作」した仮想の迷宮に迷い込み、「ノルウェーの森」という呪文を唱えながら、ありもしない出口を探してさまよい続けているのだ。

 

 学生たちは、午後の講義の時間が迫っていたので、それではまた近いうちに集まりましょうということになり、私は彼らに自分の携帯の番号を教えておいた。

 そして今までのところ、彼らからの電話はかかってこないが、次の集まりには、コピーバンドのメンバーたちも加わることだろうと予想している。

 

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 以上のようないきさつがあって、今私はパソコンの前に座り、この記事を書いている次第である。

 パソコンの画面を前にした当初は、ネットで Norwegian Wood の歌詞の原文をダウンロードし、画面上でそれを翻訳して、そのプリントアウトを彼らに渡すつもりだったが、ついでに詳しい解説も書き込んでプリントアウトしてやったほうが親切だろうと思った。

 

 そのまたついでに、どうせならその解説と訳詞をネットで公開しようと思い立った。公開したところで、果たしてどれほどの人に読んでもらえるかは不明だが、少なくともあの学生たちと、彼らの周囲のビートルズ・ファンたちは読んでくれるだろうと考えた。

 ネットを介した学生たちのクチコミ・ネットワークは、他の大学へも繋がっているので、あるいは予想以上の数の人たちに読んでもらえるかもしれない。

 しかしそれも、私の訳詞が充分に彼らを納得させるものであればの話だろう。そう考えると、ゆめゆめいい加減なことは書けない。

 

 そういうわけで、ここからいよいよ、というより、ようやく、Norwegian Wood の歌詞の説明に入らせていただく。

 

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 ■ THE BEATLES : NORWEGIAN WOOD  解説と訳詞   

                                   By けやき准教授

 

  まずは、もう一度歌詞の原文を見ていただこう

  

  NORWEGIAN WOOD (This Bird Has Flown)

     By John Lennon and Paul McCartney

 

  I once had a girl

 

  Or should I say she once had me

  She showed me her room

  Isn't it good, Norwegian wood

 

  She asked me to stay

 

  And she told me to sit anywhere

  So I looked around

  And I noticed there wasn't a chair


  I sat on a rug, biding my time

  Drinking her wine

  We talked until two

  And then she said, "It's time for bed"

 

  She told me she worked in the morning

 

  And started to laugh

  I told her I didn't

  And crawled off to sleep in the bath

 

  And when I awoke I was alone

 

  This bird has flown

  So I lit a fire

  Isn't it good, Norwegian wood

 

 

 ●まず、タイトルをどうするかだが、これは「ノーウェジアン・ウッド(小鳥は逃げた)」とでもしておけばいいだろう。

 

 

 もちろん、Norwegian の発音は「ノーウェジアン」ではなく「ノーウィージャン」だが、すでに多くのビートルズ・ファンに馴染みがあるであろう「ノーウェジアン」のほうが、しっくりくると思う。

 あるいは、カナ表記をせず、原文のまま「 Norwegian Wood 」にしておくという手もある。

 この歌の題名を、日本語で「ノルウェーの木材」や「ノルウェー産の材木」にするという選択肢は、とりあえず外しておこう。

 理由は、ただ単に語感が良くないからである。

 

 ●本文の第1節1行目の「 I once had a girl 」は、この部分だけ読めば「かつて僕には恋人がいた」や「あるとき女をモノにした」というような意味に受け取れるが、この歌の場合には、「あるとき一人の女の子と、とても親しくなった」というほどの含みである。

 

 

 ●2行目の「 Or should I say she once had me 」は、「彼女が僕と親しくなった、と言うべきか」とも受け取れるし、「彼女に、してやられた、と言うべきか」とも解釈できる。

 

 have という動詞は、文脈次第で「やっつける」や「一杯食わせる」という意味を持つ。たとえば I'll have him next time. は「この次は、あいつをギャフンと言わせてやる」というニュアンスだし、 You had me. は「参った」や「降参だ」である。

 つまり、この一文は、どっちつかずのあいまいな表現である。原文の雰囲気をあまり損なうことなくこの問題を解決するために、和訳語にもあいまいな言葉をあてはめることにしよう。

 たとえば、「彼女に引っかかった、と言うべきか」とすれば、「彼女にナンパされた」という意味にも取れるし、「彼女に一杯食わされた」とも受け取れる。

 

 ●3行目の「 She showed me her room 」は、直訳すれば「彼女は僕に部屋を見せた」だが、これは「彼女は僕を部屋に招きいれた」というニュアンスである。

 

 

 ●4行目の「 Isn't it good, Norwegian wood 」だが、記事の初めに紹介した4つの訳詞で、この部分がすべて「僕」の言葉として訳されていたが、これは初歩的な翻訳ミスである。

 

 この4行目に先立つ3行がすべて過去形で語られているのに、この一文だけが現在形なのだから、これは部屋を見せながら彼女が言った言葉だと考えるべきである。つまり「素敵でしょ、ノルウェーの木材よ」と言っているのだ。

 もしもこれが彼女の部屋を見たときの主人公の感慨だとしたら、この部分も過去形でないと、詞の流れとして奇妙な印象を聴き手に与えてしまう。

 何より、これが彼の言葉なら、彼はなぜ、この部屋に使われている材木がノルウェー産であることを知っているのか。彼は、材木屋の息子なのか。

 この部分の訳詞は、情景を思い描きやすくするために、許容範囲内の拡大解釈を取り入れて、「素敵な内装でしょ、ノルウェーの木材よ」としておこう。

 

 ●第2節の1行目から4行目については、特にわかりにくい箇所はなさそうなので、説明は省略させていただく。

 

 記事の最後に紹介している訳詞の全文を参照していただきたい。

 

 ●第3節の1行目にある「 biding my time 」とは、「時機をうかがいながら」や「チャンスを待ちながら」という意味であり、決して「時間を潰しながら」ではない。

 

 主人公は、敷物の上に座って彼女のワインを飲みながら、期待に胸をふくらませ、彼女とベッドに入れる時がくるのを待っていたのである。

 

 ●第3節4行目にある彼女の言葉「 It's time for bed 」「ベッドに入る時間よ」は、「寝る時間だわ」という意味だが、彼女が彼をベッドへ誘っているようにも受け取れる。

 実際の歌では、このセリフのあとに間奏が入るので、初めてこの部分を聴く人は、エッチな想像をかきたてられるかもしれない。

 しかし、間奏が終わると、彼の思いは遂げられなかったことがわかる。

 

 ●第4節の2行目は、彼女が「明日は朝から仕事なのよ」と言ったあとで、「 And

 

started to laugh 」「彼女は笑い出した」となっている。

 laugh とは「おかしそうに笑う」や「声を出して笑う」という意味である。

 この動詞に前置詞の at が付くと、 laugh at ~ 「~をあざ笑う」や「小馬鹿にする」という意味になる。

 おそらく彼女は、彼のスケベ心を見透かしていたのだろう。それ以外に、ここで彼女が笑い出すべき理由は思いつかない。

 

 ●第4節4行目の「 And crawled off to sleep in the bath 」は、「風呂で寝るために(部屋を)這い出た」だが、実際に彼が亀のように床を這って行ったわけではなく、彼の失望や落胆を表現するために crawl 「這う」という言葉が使われているのだろう。

 

 

 ●さて、いよいよ最後の第5節だが、2行目に「 This bird has flown 」「鳥は飛び去った」とある。

 

 「鳥」とは女の子のことなので、ここは、可愛い女性をイメージさせがちな「小鳥」という訳語をあてておこう。

 

 ●第5節の3行目は、「 So I lit a fire 」「だから僕は火をつけた」である。

 

 彼はいったい何に火をつけたのか。暖炉? この歌の舞台は冬だったのか。彼は、おそらく着のみ着のままで、寒い冬の夜を風呂場で過ごしたのか。

 彼が火をつけたのは、やはり次の行にある Norwegian wood である。つまり彼は、彼女の部屋に火をつけたのだ。

 

 ●第5節の4行目は、この歌の最後をしめくくる1行である。

 

 第1節の4行目にある「 Isn't it good, Norwegian wood 」という言い回しがここでも使われているが、もちろんここでの語り手は「僕」である。

 彼女がノルウェーの木材について自慢げに言ったことを、皮肉っぽく繰り返しているわけだ。

 直訳すれば「いいんじゃない、ノルウェーの木材は」だが、いったい何がいいのか。

 それはやはり、彼はこの部屋に火を放ったのだから、その燃えっぷりがいいのだろうと解釈できる。

 そこで、この一文の和訳は、状況を思い描きやすくするために、若干の修飾を付け加えて、「いい燃えっぷりじゃないか、ノルウェーの木材は」としておこう。

 おそらく彼は、自分を部屋に誘っておきながら、同じベッドではなく、風呂場で一夜を過ごさせた彼女への腹いせに、あるいは、一杯食わされたことへの復讐として、彼女の部屋に、つまりノルウェーの木材に火をつけたのだろう。

 もちろん、人の住まいを燃やしてしまうとは、なんとも過激な行為である。しかし、しょせんこれは歌の中の話であり、メロディーに添えるために創作された架空の物語である。

 レノンやマッカートニーが、実際に誰かの家に火をつけたわけではないのだ。

 

 

 以上の理由をふまえて、The Beatles の Norwegian Wood の全文を私なりに翻訳させていただくと、以下のようになる。

 

 

 もちろん、私の訳詞こそが絶対に正しい、などと思い上がったことを言うつもりはないので、そのことは知っておいていただきたい。

 誤っている箇所があるかもしれないし、ひとりよがりの思い込みに過ぎない部分もあるかもしれない。

 ただ、今の私には、これが精一杯である。

 

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  ノーウェジアン・ウッド(小鳥は逃げた)

 

 

 

  あるとき 女の子と仲良くなった

 

  彼女に引っかかったというべきか

  彼女は僕を部屋に招き入れた

  素敵な内装でしょ ノルウェーの木材よ

 

  彼女は僕に泊まっていってと言い

 

  好きなところに座ってと言った

  僕は部屋を見回してみたが

  椅子なんてなかった

 

  僕は敷物の上に座り ワインを飲みながら

 

  チャンスが訪れるのを待った

  2時までおしゃべりをしたところで

  彼女が言った もう寝ましょう

 

  朝から仕事なのよと彼女は言い

 

  おかしそうに笑い出した

  僕は暇なんだと言って

  風呂場で寝るために すごすごと部屋を出た

 

  目が覚めてみると 僕はひとりぼっち

 

  小鳥は飛び去っていた

  だから僕は火をつけた

  素敵な燃えっぷりじゃないか ノルウェーの木材は  

  

  
  正しい英語を教えちゃる!-fire

                

   

                  (終わり) Copyright 2011. Assistant Prof. Keyaki.

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 『ノルウェイの森』関連記事:「英語と村上春樹とノーベル文学賞」

 

 

 

 

 

 

 

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